COVID-19(新型コロナウイルス感染症)普通の風邪と何が違うについて解説
新型コロナウィルス感染症の後遺症の原因は明らかにはなっていませんが。サイトカインストームによるもの、ウイルスの活動による影響などが考えられています。またSARS-CoV2が体内に侵入する足がかりとしているACE-2が肺、脳、鼻粘膜、心臓、血管内皮に存在することも関係があると言われています。ACE-2があるとその細胞にはウイルスが侵入でき、ウイルスが侵入した細胞は破壊されてしまうのでACE-2が存在する細胞がある部分はCOVID-19に罹患した時に障害を受けることになります。障害を受けた後に何らかの理由で修復がうまくいかなければ長期にわたって後遺症として症状が残るということが考えられるのです。
長期間にわたって猛威を振るCOVID-19普通の風邪と何が違う?病態・治療・後遺症について解説します。
2019年に中国の武漢で初めて報告されてから現在に至るまで世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症COVID-19。我が国でも多くの感染者が出ており、重症化したり命を落とす人も多数出てしまいました。COVID-19が出現した当時には「ただの風邪ではないか」という声もありましたが、いわゆる「風邪」と呼ばれるウイルス感染症とは明確に異なる特徴があります。それによって風邪ではみられないような重症化例や後遺症が残る例が出現しており、そこがCOVID-19の怖いところであると言えます。
今回はCOVID-19が普通の風邪とは違う理由を解説し、なぜ重症化しやすいのか、後遺症が残るのかについて解説していきます。
そもそもCOVID-19とは
COVID-19とは2019年に中国の武漢で発見された新型コロナウイルスSARS-CoV2が引き起こす呼吸器疾患です。COVID-19はウイルス名ではなく病気の名前でCorona Virus Disease 2019の略で「2019年に見つかったコロナウイルスによる病気」という意味になります。ウイルス名のSARSはSevere Acute Respiratory Syndrome(重症急性呼吸器症候群)を表しCoV2はコロナウイルスの2つ目という意味です。
もともと2003年にSARSを引き起こすコロナウイルスであるSARS-CoVが発見されており、それと同様の傾向を持つウイルスの2つ目としてこの名前がついたのです。
元のウイルスがどこから出てきたかはいまだにはっきりとわかっていませんがコウモリを宿主として存在していたウイルスであると推測されています。
2022年7月時点で5.52億人が感染し634万人を超える死者が出ています。
COVID-19の臨床経過
COVID-19が重症化する理由を理解するためにはまずCOVID-19の臨床経過を知る必要があります。まずSARS-CoV2に感染すると風邪のような症状が出現します。8割程度の患者は1週間程度風邪のような症状が出るだけで改善します。しかし2割程度の人は肺炎を引き起こし呼吸苦が出現し入院が必要になります。さらに重症化すると人工呼吸器管理が必要になる場合もあります。
つまり最初1週間―10日間は風邪と同じような症状がでる段階があり、その後に肺炎を起こし重症化する段階があるということになります。
どのようにしてこのような段階を経ていくのかについては次項目以降で解説をしていきます。
COVID-19が重症化するときには何が起こっているのか
SARS-CoV2が体内に侵入してその後重症化するまでにどのようなことが起こっているのかについて詳しくみていきましょう。まずウイルスが宿主である生物の中で増殖するためには細胞の中に侵入する必要があります。細胞の中に侵入したウイルスは自らの遺伝子
を複製して、分裂していきます。十分な数に分裂したら細胞の壁を破って外に出て、さらに他の細胞に侵入をします。そのままにしておくと細胞がたくさん壊されてしまうので宿主側も黙ってはいません。体に備わった免疫機能を駆使してウイルスの排除を試みるのです。まずは体温を上げて免疫を活性化させることを試みます。そのためウイルスに感染すると初期には発熱が起こるのです。さらにウイルスを排泄させるために咳をしたり鼻水が出たりするのです。このようにウイルスに感染するといわゆる風邪症状が出現します。
COVID-19の場合でも発症から1週間の風邪のような症状が出ている期間はこれと同じことが起こっています。つまり軽症で済んでいる人の場合は基本的には風邪と同じようなメカニズムで症状が出現しているのです。
ではなぜSARS-CoV2によって引き起こされる感染症であるCOVID-19は重症化するのでしょうか。それにはいくつかの原因があります。まずSARS-CoV2が細胞に侵入するときの経路が関係しています。SARS-CoV2の表面にはスパイクと呼ばれる突起物があります。このスパイクが宿主の細胞の表面に発現しているACE-2という酵素タンパク質に結合して、それを足がかりに細胞の中に侵入します。ウイルスが細胞に侵入するときにこのACE-2が消費されます。COVID-19の重症化にはこのACE-2の消費が関連していると言われています。
ACE-2はAngiotensinIとAngiotensinIIという酵素を分解する働きをもっています。AngiotensinI AngiotensinIIは血管を収縮させ血圧を上げる作用をもち、心臓の負荷を増大させます。また免疫などに関連する炎症を引き起こすケモカインやサイトカインと呼ばれる物質を産生させる働きも持っています。つまりSARS-CoV2が体内に侵入して増殖している中で、体の免疫の働きが不十分でウイルスの排除に時間がかかってしまうと、AngiotensinIとAngiotensinII の働きが強くなり、高血圧や強い炎症が引き起こされるのです。
またこの一連の流れで生産されたサイトカインの1種であるIL-6の酸性を増大させるIL-6AMPという増幅経路がありこれにより炎症を引き起こす物質であるサイトカインが爆発的に増加するサイトカインストームと呼ばれる現象が起こり、体の中で非常に強い炎症が発生するのです。この炎症が肺炎としてあらわれてCOVID-19が重症化してしまうのです。
本来炎症は免疫など自分の体を守るために起こるものなのですがそれが目的外のところで暴走して起こってしまって自分の体を傷つけてしまうという状況になっているのです。
長い解説になってしまいましたが端的にまとめると、ウイルスが侵入してそれに体が反応する初期の段階は通常のウイルス感染症と同様のメカニズムで症状が出ます。ウイルスの排除に手間取るとACE-2が枯渇して炎症を引き起こす物質であるサイトカインが急激に産生されてサイトカインストームと呼ばれる状況を引き起こし、強い炎症を引き起こして炎症が生じるのです。
COVID-19の治療について
前項目でCOVID-19の臨床経過は2つの段階に分かれているということを解説しました。が治療はどのようになっているのでしょうか。
COVID-19の治療にはウイルスが侵入して増殖している初期の段階に行う治療と、重症化する時期に引き起こされているサイトカインストームを抑制する治療があります。それぞれを見ていきましょう。
まずウイルスが侵入してから早い段階の治療です。この段階ではとにかくウイルスの増殖を防ぐことが重要です。使用する薬剤はモルヌピラビル(商品名;ラゲブリオ)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)、レムデシビル(商品名:ベクルリー)と言ったものがあります。それぞれ解説していきます。
モルヌピラビルはRNAポリメラーゼという酵素を阻害する薬剤です。ウイルスの遺伝子はRNAでできていて、細胞の中でウイルスが分裂するためにこのRNAを複製する必要があります、RNAを複製するための酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を防ぐのがこのモルヌピラビルの作用となります。モルヌピラビルは発症早期の重症化していないときに内服する薬剤です。2021年5月に軽症または中等症に該当する入院していない成人患者で発症から5日以内であり重症化するリスク因子を持つ患者を対象とした臨床試験が行われました。被験者はモルヌピラビルを処方された実薬群とプラセボ(ラゲブリオに見せかけた偽の薬)を処方されたプラセボ群に1:1に振り分けられました。
主要評価項目として入院・死亡の確率を比較しています。結果、入院・死亡の確率はプラセボ群で9.7%、実薬群で6.8%となっています。死亡に関してはプラセボ群9名、実薬群1名となっており死亡や入院の可能性を有意に低減させたということになります。
抗体カクテル療法はSARS-CoV2が細胞の中に侵入するために持っているスパイクに結合する抗体を投与する治療です。抗体がスパイクに結合することでウイルスが細胞に侵入することができなくなりウイルスの増殖を防ぐのです。現在使われている抗体はソトロビマブという成分です。米国、カナダ、ブラジル、スペインの4カ国37ヶ所の患者を対象にした臨床研究で効果が確認されています。症状発症5日以内で重症化リスクのある患者さんを対象にしています。ソトロビマブを投与する群とプラセボを投与する群に1:1で振り分け、入院・死亡率を比較しました。結果入院・死亡率はプラセボ群は21%であったのに対してソトロビマブ群では1%でした。こちらも有意に入院・死亡率を低下させるという結果になっています。
レムデシビル
レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発された薬剤です。ウイルスが分裂する際に行うRNAの複製を阻害するRNAポリメラーゼというタイプの薬剤です。
レムデシビルはCOVID-19の病態が完全に明らかになる前に登場した薬剤であり、世界中で多くの臨床研究が行われ、レムでシビルを投与することで治癒が速くなるという結果がでた試験もあれば有意な差がなかったとする論文もあります。このようなばらつきを生み出した原因としてはCOVID-19では早期のウイルスが増殖する時期に抗ウイルス薬を入れていないと、その後に起こるサイトカインストームは抗ウイルス薬では制御できないためあまり十分な効果がえられないためであると考えらます。発症早期にレムでシビルを投与すると効果があるという考えが現在主流になっており、広く使われています。
発症早期はウイルスが活動していてそのウイルスの排除が遅れると先述のようにサイトカインストームが引き起こされてそれによる大きな炎症により肺の状態が悪くなってしまいます。COVID-19の治療はまずウイルスを素早く排除するための治療が重要になるのです。
ただ、これらの治療で必ずウイルスが早期に排除することができるとは限らず残念ながら肺炎を起こしてしまう方も多いです。炎症が起こる時期になったらウイルスの排除と並行して炎症を抑える治療をしていく必要があります。
炎症を抑える治療としては、デキサメタゾンが最もよく使われています。
デキサメタゾンはステロイドの1種です。ステロイドには炎症反応を引き起こす細胞の増殖を抑える作用があります。ステロイドはウイルスが感染して初期の肺炎を起こしていない時期には適応にならず、炎症が引き起こされて肺炎や呼吸不全をおこした時期の患者が良い適応とされています。このデキサメタゾンの効果はRECOVERY試験という臨床試験で確かめられています。イギリスで行われた大規模な臨床試験で、通常治療に加えてデキサメタゾンを追加する群2104名と通常治療のみの群4321名を比較した試験で、入院から28日の死亡率を比較するものです。結果として酸素投与などが必要のない患者では特に効果は見られませんでした。酸素投与が必要な患者では死亡率が20%低下しました。また人工呼吸器の装着が必要な患者においては死亡率が35%低下しています。このことから初期はウイルスの活動による症状なので炎症を抑える治療にあまり効果はなく、肺炎が起こった時は体の中の炎症を抑える治療が有効であるということがわかってきたのです。
RECOVERY試験の結果から炎症を抑える薬剤がCOVID-19の治療に有効であるということがわかりました。そのためさまざまな抗炎症作用を持つ薬剤がCOVID-19の治療に使われるようになっています。
そのうちの一つにトシリズマブという薬剤があります。トシリズマブは元々関節リウマチによって起こる関節炎を抑制するために使われている薬です。関節リウマチがあり、トシリズマブを使用している患者さんではCOVID-19が重症化しにくい傾向があったことから使われるようになりました。トシリズマブは炎症を引き起こす物質であるサイトカインの一種であるIL-6の働きを阻害します。細胞に存在するIL-6受容体に結合してその働きを抑え、IL-6が働かなくすることでサイトカインストームを引き起こすことを防ぎます。
アメリカの後ろ向き観察研究で人工呼吸器管理の重症COVID-19患者154名のうちトシリズマブ投与群78名の患者は死亡率が50%程度低下していたという研究があります。
ここまで治療を見ていきましたが、COVID-19の病気の進み方に対応していることがわかるかと思います。初期のウイルスが増殖して風邪のような症状が出ている時期にはウイルスの増殖を防ぐ治療。その後の大きな炎症が起こっている時期には炎症を抑える治療を行い、全身状態の悪化を防いで、ウイルスの影響がなくなっていくのをまつというのが現状のCOVID-19の治療ということになるのです。
COVID-19の後遺症
今まで説明してきたようにCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV2は単純なウイルス感染症の症状だけでなく、強い炎症を引き起こします。そしてその結果、今までに存在しているウイルス感染症と比べて重症化の割合が高く多彩な症状を引き起こします。そしてそれらの症状が、感染症がなくなった後にも残ったり、新たに症状が出現したりする場合があります。
- 世界保健機関(WHO)によると後遺症とはCOVID-19に罹患した人に見られ少なくとも2ヶ月以上持続し、また他疾患による症状として説明がつかないもの
と定義されています。
副作用として代表的なものとしては、呼吸器症状があります。肺の中で大きな炎症が起こった場合はそれによる肺の損傷が長期にわたって残ります。それにより少し運動しただけで呼吸が苦しくなる息切れや、胸痛などが起こります。肺の炎症が残っていると喀痰や咳の症状が残ることも考えられます。
また呼吸器以外の全身症状が残ることがあります。関節痛や筋肉痛、倦怠感といった風邪の初期に出てくるような全身症状がCOVID-19治癒後にも長期間続くことがあると言われています。
肉体的な症状だけでなく、記憶力や集中力の低下、不眠、頭痛、抑うつといった精神神経症状が出現することも知られています。
そのほかの症状として嗅覚障害や味覚障害、動悸、下痢、腹痛などが出現するということも知られています。
後遺症の種類や頻度、持続期間に関しては国内外でさまざまな研究がなされています。
2020年の2月-6月の間に国立国際医療研究センターが行った調査があります。同センターを退院した患者78人を対象として、電話のインタビューを行ったというものです。電話した78人のうち電話が繋がらなかったり、退院後に死亡した例を除いた63人のデータが得られました。平均年齢は48.1歳でした。発症から2ヶ月後でも48%の人に、約4ヶ月たっても27%の患者さんに後遺症がありました。
後遺症の具体的な内容を見てみると、
症状発現時に発熱、咳嗽、倦怠感、呼吸困難、味覚障害、喀痰増加、胸痛があった人はそれぞれ71.4%、63.5%、55.6%、42.9%、43.5%、40.3%、25.4%、9.5%でした。
発症30日に症状が残っていた人の割合は咳嗽:7.9%、倦怠感:15.9%、呼吸困難:17.5%、味覚障害:4.8%、味覚異常:16.1%でした。そして60日経ってもなお、咳は6.3%、倦怠感は9.5%、呼吸困難は11.1%、味覚障害は1.6%、味覚異常は9.7%でした。この結果を見てみると60日経ってなお症状が存在するというのは決して珍しくないということが言えます。
またこの研究では20代の人が12人、30代の人が参加しています。20代の人で後遺症を認めた人は75%、30代で後遺症を認めた人は83%であり、決して若いからといって後遺症は出ないということはないということが示されています。
COVID-19の後遺症のリスクは?
COVID-19の後遺症がなぜ残るのかについてはまだ十分に解明がされていない状況です。ただ研究を進めていく中でわかっていることもあります。見ていきましょう。
まず後遺症のリスク因子ですが、
高齢、肥満、女性、発症時の症状が5つ以上、といったものが挙げられています。
また発症時の症状が重症であるほど後遺症を残す可能性が高いこともわかっています。
ただし後遺症のリスク因子については研究がまだまだ途中段階なので新たなリスク因子が判明する可能性もあります。
ここに挙げている5つのリスク因子に該当しない人の場合でも後遺症を残すリスクはありますので油断せずに感染対策をすることが非常に重要です。
COVID-19後遺症の病態は?
COVID-19の後遺症の病態は明確には明らかになってはいません。さまざまな病態が複雑に絡んでいると言われています。英国の国立衛生研究所では以下のようなものが考えられています。
1、急性期の症状が長引いている
まずは発症して短期間の間に出た症状が長引くものです。前述のようにCOVID-19ではサイトカインストームによる非常に強い炎症を引き起こし、肺炎を来します。その炎症が肺の構造の繊維化(肺の構成成分の繊維質が増えて硬くなってしまうこと)を引き起こします。それにより肺の機能が低下して息切れや呼吸困難感が持続し、咳や痰も長期間にわたって続きます。
2、ウイルス感染後疲労症候群
ウイルス感染して回復してから現れるもので、脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下といった症状を呈する症候群です。こちらは感染による肉体的精神的ストレスが関連した症状であると考えられており、SARS-CoV2の直接的な作用というわけではないようです。ただしこちらもまだ未解明なので未知のSARS-CoV2の作用が見つかる可能性はあると思われます。
3、集中治療後症候群
COVID-19の重症患者は集中治療が必要になる場合があります。集中治療では多くの機械(人工呼吸器や点滴のルートなど)がつながっており、動くこともままならならないことが多くあります。また集中治療室では1日を通してモニターの音が鳴っていて、時間の流れが分かりにくい環境となっています。また家族や友人との面会もできないことがあります。このような環境下に置かれたことによる精神的肉体的ストレスによって、さまざまな症状が出現します。集中治療後症候群はCOVID-19以外の症例でも長期の集中治療を余儀なくされた場合に起こる一般的な病態です。重症COVID-19の後遺症にも関わっている可能性は高いと思われます。
4、心臓や脳への影響
COVID-19の症状としては呼吸器症状がメインなのですが、感染によって血液が固まって血管が詰まる血栓症のリスクが上がることが報告されています。これによって心臓や脳に何らかの影響が出る可能性があります。また脳の症状として髄膜炎や脳炎を引き起こした例も少ないながら報告されており、臨床的に脳症と断定できないような軽微な脳神経症状を引き起こしている可能性も否定できません。心臓への影響としては心膜炎や心筋炎の報告もあります
COVID-19の後遺症の原因は?
後遺症の原因は明らかにはなっていませんが。サイトカインストームによるもの、ウイルスの活動による影響などが考えられています。またSARS-CoV2が体内に侵入する足がかりとしているACE-2が肺、脳、鼻粘膜、心臓、血管内皮に存在することも関係があると言われています。ACE-2があるとその細胞にはウイルスが侵入でき、ウイルスが侵入した細胞は破壊されてしまうのでACE-2が存在する細胞がある部分はCOVID-19に罹患した時に障害を受けることになります。障害を受けた後に何らかの理由で修復がうまくいかなければ長期にわたって後遺症として症状が残るということが考えられるのです。
COVID-19の治療とは
残念ながら現時点でCOVID-19の後遺症に対して確立された治療は存在しません。現在ある症状に対して、それを和らげるための治療を行なっていく対症療法が基本となっています。今後さらにCOVID-19の病態の理解が進んでいくことで有効な治療が見つかっていくことが期待されています。
コロナはただの風邪というにはあまりにも後遺症が多く長く続きます。中には生活の質(quality of life:QOL)を大幅に下げてしまうようなものも含まれています。COVID-19に罹患しないような感染対策を十分に行い、ワクチン接種も可能な限り行うことをお勧めします。症状からCOVID-19が疑われるような時には重症化を防ぐために早期に医療機関に連絡し、受診などの指示を受けるようにしてください。
まとめ
今回はCOVID-19の病態や治療・後遺症について解説をしていきました。「コロナはただの風邪」というような主張を見聞きすることもありますが、発症後期に大きな炎症を引き起こすという点で、ただの風邪とは明確に区別すべき感染症であると言えます。またそれによって多彩で長期間にわたる後遺症を残すことも明らかになっています。若年者や軽症患者でも後遺症は出現し長期間残る場合があります。これらの後遺症で生活の質が下がることを防ぐためにまずはCOVID-19に感染しないことが最も重要と言えます。また重症化すると後遺症の出現率が上昇することが考えられます。重症化を防ぐためにも基礎疾患をお持ちの方は普段から基礎疾患の治療をしっかり受けて、ワクチン接種を行い症状に気づいた時にはなるべく早期の医療機関への相談を検討してください。
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