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愛着障害

愛着障害

この記事のもくじ

1.愛着障害とは

愛着障害とは、乳幼少期に何らかの原因により、母親や父親など特定の養育者との愛着形成がうまくいかず問題を抱えている状態のことを言います。

乳幼児期の子どもは、自分の欲求や感情をうまく伝えられません。お腹が空いたとき、眠たいとき、オムツが汚れたときなどに泣いて周りに伝えます。そこで、母親などの特定の養育者が必ず自分のところに駆けつけて、優しい声掛けと愛情あふれるコミュニケーションをとってくれることで、子どもは安心します。

子どもは自分が安心していられる居場所を見つけ、養育者と共に生活していく中で愛着を形成していきます。この愛着は、今後の人生の様々な土台となり、心の発達には欠かせない要素になっています。

愛着障害のある子どもは、愛着形成から得られる自尊心や自立心、社会性などが育たずに成長していきます。大人になってから、社会の中で他人とうまくコミュニケーションが取れなかったり、自己肯定感が下がったりと「社会生活のしづらさ」を感じることでしょう。対人関係や社会性に困難がある大人の中には、愛着障害の可能性がある方もいると言われています。

2.愛着が大切な理由

乳幼児期に愛着を形成することは、子どもの健康的な身体と心の成長や大人になってからの社会生活において重要な土台となります。子どもと養育者との間に愛着を築くことで、次のような効果が期待できると言われています。

人への信頼感が芽生える

乳幼児期に養育者との間に愛着が形成された子どもは、自分の欲求を満たしてもらえたという気持ちから、人への信頼感が芽生えてきます。

そして普段の生活の中で、特定の養育者に無条件で甘えられる経験を繰り返すことで、人との信頼関係を築けるようになります。その上で、人と関わったり会話をしたりすることに楽しさや喜びを感じられる大人に成長できるのです。

心理的な安心感を得られる

一番に自分を理解してくれる、何かあった時は守ってくれる、そのような養育者がいることで、子どもは安心して家庭から外の社会に飛び出していくことができます。

無条件で甘えられて、何でも頼れる存在が養育者であり、子どもにとっては心の拠り所となる存在です。その心理的な安心感がある子どもは、たとえ不安や怖い状況に遭遇しても、「自分は1人ではない」「守ってくれる人がいる」と思い、いろいろなことに挑戦できる心に成長していきます。

コミュニケーション能力を高める

コミュニケーションは相手と向き合って、気持ちを通わせることで成り立ちます。愛着が形成されると、子どもは自分の気持ちや要求を伝えたり、相手からの要求も受け取ったりできるようになるでしょう。

子どもと養育者の間で、このようなコミュニケーションが取れる関係にあると、自分からどう相手に気持ちを伝えればいいのかを学ぶことができます。そして、社会で生活していく上で欠かせない、コミュニケーション能力や自分の考えを表現する力を高めることに繋がるでしょう。

このように、子どもの頃に養育者との間でしっかり愛着形成ができているということは、子どもの心の成長を促し、様々な力を身につける土台となるのです。

3.愛着障害の原因

愛着障害とは、乳幼児期に子どもと養育者の間に何らかの原因でしっかり愛着が形成されず、様々な問題を引き起こします。その原因には、次のようなことが挙げられます。

  • 養育者との離別、死別などで愛着形成の対象がいなくなる
  • 養育者によるネグレクト、無視、無関心
  • 身体的虐待を受けた
  • 養育者が頻繁に替わる
  • 養育者による厳格なしつけ、体罰を受けた
  • 兄弟との差別、優劣をつけられた
  • 褒められることが極端に少ない環境だった

他にも愛着障害となる原因はあります。ただ、これらの出来事を乳幼児期の子どもが経験することで、安心感や自分の居場所を得られずに愛着形成されないまま大人になってしまうのです。

子どもの頃に愛着形成がされなかった大人は、社会に出てから「人間関係でトラブルを起こす」「うまく自分の気持ちや考えを伝えられない」「人の目を気にしてばかりで疲れる」といった、生きづらさを感じてしまうケースが多いです。

4.愛着障害の分類・診断

愛着障害には医学的な分類として2つのタイプがあり、「反応性アタッチメント障害」と「脱却制型愛着障害」で診断を分けることになります。この2つのタイプは、正反対な特徴があります。反応性アタッチメント障害は人に対して過剰に警戒するタイプである一方で、脱却制型愛着障害は人に対して過度に馴れ馴れしいといったタイプと定義されています。

それぞれのタイプについて、詳しい症状や診断について紹介していきます。

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

反応性アタッチメント障害は、反応性愛着障害とも呼ばれます。人に対して過剰に警戒するタイプであり、人にうまく頼ることができません。乳幼児期に、養育者が無視や無関心、ネグレクトなどの不適切な養育を行ったことが原因であることが多いです。

子どもの頃、養育者に無条件に甘えることや助けてもらったことがなく、安心できる居場所がないといった経験から、どうやって誰に助けを求めればよいのか分からなくなってしまいます。

反応性アタッチメント障害の特徴は、次のとおりです。

  • 他人を信用できない
  • 恐怖心や警戒心が強い
  • 人の言葉に深く傷つく
  • 自傷行為がみられる
  • 嘘をつきやすい
  • 体調不良を起こしやすい
  • ちょっとしたことで酷く落ち込む
  • 自己肯定感が低い
  • いつも人目を気にしてビクビクしている
  • 感情の起伏が少ない
  • 謝れない

このように「自分の存在価値」が分からなくなり、他人を信じられず頼れない、自分や他人を攻撃する、自分の評価が低い、感情を出せないといった問題を起こしやすいと言えます。

脱却制型愛着障害(脱却制性対人交流障害)

脱却制型愛着障害は、脱却制性対人交流障害とも呼ばれます。人に対して過度に馴れ馴れしいタイプであり、無差別に人に甘えることができます。初対面の人にもかまわずべったり抱きつこうとしたり、協調性が欠落していたりと発達障害に似ているとされています。

特定の養育者との愛着形成がうまくできないことなどが原因となり、注意を引くために情動的な行動をする場合もあります。

脱却制型愛着障害の特徴は、次のとおりです。

  • 誰にでもかまわず抱きつく、馴れ馴れしい
  • 周りの注意を引くために大声を出す
  • 人によって態度を変えることはない
  • 落ち着きがない
  • 乱暴な言動がある
  • わがままな言動をする
  • 強情で意地悪さがある
  • 嘘をつきやすい

このように、自分が示す愛着の範囲が分からず、知らない人まで広範囲に愛着を求めます。たとえば自分ではなく兄弟ばかりを期待する養育者の興味や関心を、自分に目を向けさせるために上記の行動を取ります。

愛着障害はどちらのタイプであっても、対人関係や情緒面に影響を与えてしまい、「問題のある子」と思われることも多いでしょう。大人になっても仕事や家庭の中で、生きづらさを感じて辛い想いをすることになります。

5.子どもの愛着障害

愛着障害は、乳幼児期の愛着形成がうまくいかなかったことが原因であり、医学的に子どもを対象とした障害に位置付けされています。「反応性アタッチメント障害」と「脱却制型愛着障害」は、異なるタイプの愛着障害ですが、共通した特徴があると言われています。具体的には、次のような特徴です。

  • 食べる量が少なく、身体が周りより小さい
  • 体調不良を起こしやすい
  • 自分や他人を傷つける
  • 大人を試すような行動をする
  • 理由もなく嘘をつく
  • 睡眠障害や摂食障害がある

そして、愛着障害でも「反応性アタッチメント障害」か「脱却制型愛着障害」どちらなのか、次の特徴をもとに判断していきます。

 

特徴

反応性アタッチメント障害

人に対して過剰な警戒心や恐怖心を持ち、困りごとがあってもうまく頼れない

脱却制型愛着障害

誰にでも馴れ馴れしく近寄ったり、抱きついたりできる

ただし、子どもの愛着障害においては他の発達障害とも関連している可能性があるため、はっきりと判断することが難しいと言われています。

反応性アタッチメント障害の子どもに見られる、感情の起伏が乏しい、他の子と交流ができないといった特徴は、自閉症スペクトラム障害とも似ているため区別が難しいでしょう。また、脱却制型愛着障害においても、情動的な行動や落ち着きのない言動などがみられ、ADHD(注意欠如・多動症)とも似ているため、判断が難しいでしょう。

6.大人の愛着障害

愛着障害は子どもだけに起きるものではありません。乳幼児期に養育者と愛着形成されないまま大人になった場合は、愛着障害の症状がそのまま続いているケースがあります。

愛着障害を持ったまま社会に出ることで、対人関係に悩んだり仕事がうまくいかなかったりと辛い想いをする方もいます。ただし、本人も周りの人もそれが愛着障害という心の病気であることに、自覚もなく気づかない場合が多いでしょう。

子どもの愛着障害とは異なる、大人の愛着障害の特徴について詳しくご紹介します。

対人関係がうまくいかない

愛着形成に何らかの問題があった場合、大人になってから他人との適切な距離感を保つことが難しく感じます。仕事において、周りの人とうまくコミュニケーションが取れず、大きな失敗を起こしたりいつも上司から叱られたりといった状況になりやすいでじょう。

また、恋人ができて結婚しても家庭生活がうまくいかない、自分の子どもにどう愛情を注いでいいか分からず、時には虐待の加害者になってしまうケースもあります。

情緒面が不安定

乳幼児期に養育者と気持ちを交わし、無条件の愛情を受けてことなかった場合、大人になってから情緒が不安定になる場合があります。他人から言われたことにひどく落ち込んだり、その逆で攻撃的になったりと、感情をうまくコントロールできないことが多いです。

周りからは、「融通が利かない」「一旦怒ると手に負えない」「極端で話し合いができない」などのコミュニケーションにおいて問題が出てきます。建設的な話し合いができないことで、仕事や家庭生活がうまくいかないという状況になりやすいと言えます。

アイデンティティの確立が困難

アイデンティティとは、自我同一性と言われるもので、「自分が誰なのかを知る」ことを、アイデンティティを確立すると言います。乳幼児期は養育者が様々なことを選択・決定しますが、中学生~大学生の頃になると自分で考えて選択する機会が多くなってきます。本来は、この青年期にアイデンティティが確立し、自分で次のようなことを考えて選択し、決定します。

自分はどんな人間なのか どんな性格なのか 何をやりたいのか どんな職業につきたいのか そのためにどんな学校に入ればいいのか 自分は一体何者か

このようなことを考えて決定するといった経験を繰り返すことで、「自分」という存在を発見します。これがアイデンティティの確立です。

このアイデンティティを確立させるためには、子どもの頃に愛着形成がなされて、自己肯定感や好奇心、積極性などの土台が出来ていることが大切なのです。しかし、大人になってからも愛着障害が続いていると、アイデンティティの確立が困難となり、人生の選択や決定をする場面で苦労を伴うことになります。

また、大人の愛着障害は他の病気を引き起こす可能性もあります。主に次のような病気です。

  • うつ病
  • 心身症
  • 不安障害
  • 摂食障害
  • 睡眠障害
  • 自律神経失調症
  • 境界性パーソナリティー障害

このように愛着障害によって、仕事や家庭などの生活のしづらさを感じるだけではなく、二次的に病気を引き起こす場合があります。ただし、適切な治療や生活の工夫によって症状を和らげることもできるでしょう。

7.愛着障害の治療、対処方法

愛着障害は、乳幼児期の子どもと養育者の間に何らかの原因があり、愛着形成できなかったことで起きる後天的なものです。そのため、愛着障害自体を薬物療法などで治すという方法は、最善の方法ではありません。たとえば、前述しているとおり愛着障害によって、うつ病や心身症などの二次的疾患を発症した場合は、その疾患の治療を受けることになるでしょう。

ここでは、子どもと大人の愛着障害において、それぞれの治療法・対処方法についてご紹介します。

子どもの愛着障害の治療、対処法

子どもの愛着障害の場合、まずは安全基地を形成することから始まります。子どもが特定の養育者に対して、安心感や信頼感を抱ける対象になるようにサポートします。このサポートは子どもだけではなく、養育者や子どもの周りにいる家族を含めてアプローチすることが大切です。

たとえば養育者が虐待をしている場合は、子どもを保護するといった対応をしたり、経済的に苦しい家庭状況で子どもと向き合えない養育者であれば、行政や民間が協力して育児や家事をサポートする体制を整えたりといった対処法を考えることになります。

愛着障害を起こす原因となるものを、どう解決し無くしていくのか、その方法を考えてアプローチしていくことで、子どもの愛着障害の改善が可能となるでしょう。

大人の愛着障害の治療、対処法

大人の愛着障害の場合は、実親との愛着形成を重視するというよりも、友人や職場の同僚、恋人やパートナーなどと良い関わりができることが大切です。ありのままの自分を受け入れてもらえたり、自分を守ってくれたりする人が身近に存在していることで、安心できる自分の居場所を確保することができます。

この「安心できる居場所」があることで、感情的・衝動的にならずに対人関係を築けたり、自己肯定感や自尊心を下げることがなくなったりと改善が期待できるでしょう。

その結果、愛着障害による症状も改善される可能性があります。

このように、愛着障害の治療に最も大切なことは「安心できる場所」「安全基地」を作るための環境を提供することだと言えるでしょう。