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WAIS-IV・WISC-IV知能検査とは?

WAIS-IV・WISC-IV知能検査とは?

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WAIS-IV・WISC-IV知能検査とは?

日常生活や職場において、苦手なことやあったりコミュニケーションがうまくいかなかったりという悩みを抱えている方々は多いと言われています。

その中でも、生活に支障を来すほどの困りごとがあり、「もしかしたら自分は発達障害なのかもしれない」「わが子が発達障害の傾向があるのかもしれない」と思っている方もいるでしょう。

ご自分やお子さんが、発達障害を持つ場合と同じ傾向にあるかどうかを調べるために、知能検査を行うことがあります。そこで世界各地で使用されているのが、『WAIS-IV・WISC‐Ⅳ知能検査』です。

ここでは、WAIS-IV・WISC‐Ⅳ知能検査について、検査の目的や内容、実施方法、結果で分かることなどを詳しく解説してきます。

1.WAIS-Ⅳ・WISC‐Ⅳ知能検査とは

WAIS-IV・WISC‐Ⅳ知能検査は、ウェクスラー式知能検査です。この知能検査は、1993年刊行のウェクスラー・ベルビュー知能検査を起源としている70年以上の歴史がある知能検査です。

この検査は、世界各国の知能検査で使われている世界共通の検査です。国内では、児童期と成人期において最も多く使われています。

ウェクスラー式知能検査は、年齢に応じて以下の3種類に分けられています。

  • WPPSI:幼児用(対象年齢2~7歳)
  • WISC(ウィスク):児童用(対象年齢5歳~16歳11ヶ月)
  • WAIS(ウェイス):成人用(対象年齢16歳~90歳11ヶ月)

どの検査も、公認心理士や臨床心理士などの心理専門家と1対1で個別に行われます。

この検査の特徴としては、児童期から成人期における、人間の知的発達面やその経年的構造の理解や変化を捉えるために測定されるものです。

また、発達障害においては検査の結果に一定の傾向がみられることが分かっています。ただし、この知能検査のみで発達障害であると診断できるものではありません。

全体的な知的能力や記憶、処理能力などを測定できるため、発達障害の診断やサポートに活用されていることが特徴的です。以前に一度検査を受けたことがある場合は、回答を記憶している可能性があり、正確な判断ができなくなります。そのため、再度検査を受ける場合は、最低でも1年以上できれば2~3年ほどの間隔を空けることが望ましいでしょう。

2.どんな目的で知能検査を実施するのか

知能検査を行う目的は、発達障害を診断することではありません。世界共通で定められている知的発達の水準と比べて、自分の知的発達はどうなのかということを知る目的で行われます。よって、以下のような点を知ることができます。

  • 他の人と比較し、自分の特徴を知ることができる
  • 自分の能力の凸凹を知ることができる
  • 今後の生活を送るためのヒントが知れる

たとえば、子どもの知的発達においては、小学校や中学校入学前のタイミングで実施されることが多いでしょう。知的発達を比較するだけではなく、子どもの得意・不得意の分野を明確に知ることも可能です。

特に、個人が苦手としている点では、家庭や学校、職場において支障を来す場合が多くみられます。そのトラブルの原因や対処法を知るために、知能検査は重要な手がかりとなるでしょう。

また、苦手な分野をどの程度まで苦手か知ることや、得意な分野について知ることも大切です。得意な分野を活かして、力がより発揮できる環境を整えることができます。学校や職場、家庭での生活において、少しでも負担の軽減に繋げられるでしょう。

発達障害の知能検査は、年齢によって分けられる検査方法があります。以下のとおりです。

  • 田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)
  • 新版K式発達検査
  • ウェクスラー式知能検査

この中で、今回取り上げているのは、ウェクスラー式知能検査のWAIS-Ⅳ、WISC‐Ⅳです。これは、IQを求めるだけではなく、脳の発達の程度を導き、総合的に知的能力を判断する目的として用いられます。

3.WAIS-Ⅳ・WISC‐Ⅳ知能検査の内容

WAIS-Ⅳ、WISC‐Ⅳ知能検査は、10種類の基本下位検査と、必要であれば行う5種類の補助下位検査の合計15つの検査で構成されます。検査を行い、全検査IQと4つの指標得点の合成得点を算出していきます。この合成得点から、子どもの知的発達や発達障害を持つ方をより多面的に把握します。

全検査IQはFSIQとも呼ばれ、全体的な認知能力を表す項目で、補助検査を除く10種類の基本下位検査の合計から算出されます。また、4つの指標得点については、WAIS-Ⅳ、WISC‐Ⅳ知能検査それぞれの内容を紹介します。

①WAIS-Ⅳの構成

WAIS-Ⅳの対象年齢は、16歳0ヶ月~90歳11ヶ月としている知能検査です。

4つの指標得点は、「言語理解指標(VCI)」「知覚推理指標(PRI)」「ワーキングメモリー指標(WMI)」「処理速度指標(PSI)」の4種類です。

 

内容

①言語理解指標(VCI)

言語による理解力、推理力、思考力に関する指標。これらの力により、言語を使ったコミュニケーションを取り、言葉で説明したり推論したりすることを測る指標。

  • 基本下位検査項目:類似、単語、知識
  • 補助下位検査項目:理解

②知覚推理指標(PRI)

視覚的な情報を把握し推理したり、視覚的情報に合わせて身体を動かしたりという力に関する指標。新しい情報に対しても、解決する力や対応力も関係している指標。

  • 基本下位検査項目:積木模様、行列推理、パズル補助下位
  • 検査項目:バランス(16歳~69歳のみ)、絵の完成

③ワーキングメモリー指標(WMI)

一時的に情報を記憶しながら処理する能力に関する指標。ワーキングメモリーは口頭での指示を理解する力、読み書き算数といった学習能力、集中力に大きく関わる指標。

  • 基本下位検査項目:数唱、算数補助下位
  • 検査項目:語音整列(16歳~69歳のみ)

④処理速度指標(PSI)

 情報を処理するスピードに関する指標。マイペースで切り替えが苦手な場合は、得点が低くなることがある。

  • 基本下位検査項目:記号探し、符号補助下位
  • 検査項目:絵の抹消(16歳~69歳のみ)

②WISC‐Ⅳの構成

WISC-Ⅳの対象年齢は、5歳0ヶ月~16歳11ヶ月としている知能検査です。

4つの指標得点は、「言語理解指標(VCI)」「知覚推理指標(PRI)」「ワーキングメモリー指標(WMI)」「処理速度指標(PSI)」の4種類です。

 

内容

①言語理解指標(VCI)

言語による理解力、推理力、思考力に関する指標。これらの力により、言語を使ったコミュニケーションを取り、言葉で説明したり推論したりすることを測る指標。

  • 基本下位検査項目:類似、単語、知識補助下位
  • 検査項目:知識、語の推理

②知覚推理指標(PRI)

視覚的な情報を把握し推理したり、視覚的情報に合わせて身体を動かしたりという力に関する指標。新しい情報に対しても、解決する力や対応力も関係している指標。

  • 基本下位検査項目:積木模様、行列推理、絵の概念補助下位
  • 検査項目:絵の完成

③ワーキングメモリー指標(WMI)

一時的に情報を記憶しながら処理する能力に関する指標。ワーキングメモリーは口頭での指示を理解する力、読み書き算数といった学習能力、集中力に大きく関わる指標。

  • 基本下位検査項目:数唱、語音整列補助下位
  • 検査項目:算数

④処理速度指標(PSI)

 情報を処理するスピードに関する指標。マイペースで切り替えが苦手な場合は、得点が低くなることがある。

  • 基本下位検査項目:記号探し、符号補助下位
  • 検査項目:絵の抹消

③どのような能力を測定しているのか

上記で挙げたそれぞれの項目について、内容は以下のとおりです。どのような能力を測定するのか、具体的に解説します。

 

項目

内容

 

全検査IQ

4つの群指数の合計

群指数

言語理解指標(VCI)

類似と単語と知識(と理解)の合計

言語的なことに対する理解や把握の能力

知覚推理指標(PRI)

積木模様と行列推理とパズル(とバランスと絵の完成)の合計

目で見て物事を理解したり操作したりする能力

ワーキングメモリー指標(WMI)

数唱と算数(と語音整列)の合計

記憶や注意集中力に関する能力

処理速度指標(PSI)

記号探しと符合(と絵の抹消)の合計

手先の器用さやスピードに関する能力

言語理解

類似

2つの言葉の共通点や類似点を答える

概念を理解し、推理する能力

単語

単語の意味を答える

単語の知識や言語概念の形成について

知識

一般的な知識に関する質問に答える

一般的な事実に関する知識の量や学習について

理解

一般原則や社会的状況についての質問に答える

社会性や一般常識を理解する能力

知覚推理

積木模様

モデルと同じ模様を積木を使って作成する

抽象的な視覚刺激を分析して統合する能力

行列推理

不完全な行列を完成させるのにもっとも適切なものを選ぶ

流動性知能や視覚性知能、空間に関する能力

パズル

組み合わせると見本と同じになるものを選ぶ

視覚刺激の分析に関する能力

バランス

天秤が釣り合うために適切な重りを選ぶ

量的な推理、類比的な推理の能力

絵の完成

提示された絵の中で欠けているものを答える

重要なところとそうではないところの見分けの能力

ワーキングメモリー

数唱

耳で聞いた数字を復唱する

記憶力や注意力に関する能力

算数

算数の文章題を暗算で答える

計算能力や記憶力に関する能力

語音整列

かなと数字を順番に並べる

記憶力、継次処理、注意力に関する能力

処理速度

記号探し

刺激となる記号があるかどうかを探す

作業効率や集中力に関する能力

符号

見本となる記号を書き写す

視覚的な認知やスピードに関する能力

絵の抹消

さまざまな図形の中から特定の図形を探す

選択的な注意や運動に関する能力

このように、WAIS-ⅣとWISC-Ⅳ知能検査は、多角的な方面から検査を行うことで知的能力を総合的に判定します。

4.WAIS-Ⅳ・WISC‐Ⅳ知能検査の実施方法

WAIS-ⅣとWISC-Ⅳは、検査自体は約60~90分で全体の検査時間は約2時間になります。本人の回答時間や実施する下位検査によって、時間は変動するということを覚えておきましょう。

人によっては、長時間になってしまい、途中休憩をはさんだり別日に調整したりといったこともあります。

検査はできるかぎり静かな環境で行い、集中力が保てる落ち着いた雰囲気の部屋で実施します。

また、知能検査は部屋に入るとすぐに始まるわけではありません。検査を受けるという状況は、初めは緊張している方がほとんどであり、まずは雑談を取り入れて緊張をほぐしていきます。これから始まる検査の説明をしたり、何か質問がないか聞いたりしてから始めます。

検査を実施する側と受ける側で、コミュニケーションがうまく取れない場合は、スムーズに検査が入れないこともあります。そのため、安心して検査が受けられるように環境を整え、信頼関係を築くことが大切です。

下位検査においては、実施する順番があらかじめ決まっています。最初は簡単に取り組める、楽しみながら受けられる検査からスタートし、検査に対するモチベーションを保ちながら最後まで受けられるように工夫されています。

いくつかの下位検査は、問題数も決まっています。正解することで次の項目に進みますが、途中で間違いが何度か続くと他の下位検査に移るという方法になっています。そして、最後になればなるほど難しい検査になります。

また、検査の中にはストップウォッチで計測しながら行うものがあり、時間を気にして焦ってしまうという場合もあるでしょう。しかし、それもまた課題の大切な要素となります。日常生活のある状況において、焦るという場面にも必ず出会うからです。

5.WAIS-Ⅳ・WISC‐Ⅳ知能検査の結果の味方

WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査は、全検査IQと4つの群指数の合計得点を平均100点として数値化します。平均値の前後における意味は、以下のとおりです。

得点

分類

全体の割合(%)

130以上

非常に高い

2.5

120~129

高い

7.2

110~119

平均の上

16.6

90~109

平均

49.5

80~89

平均の下

15.6

70~79

低い

6.5

69以下

非常に低い

2.1

4つの群指数と15個の下位検査の数値は、人によって項目にバラつきがある場合があります。数値が高いところ、低いところとバラつきがみられる場合は、得意・不得意の差が激しいということが分かります。

この差が、人によっては日常生活や社会生活で支障を来す場合があるでしょう。

また、4つの群指数において得点が高い人、得点が低い人で分かることがあります。以下にまとめました。

項目

結果

①言語理解

得点が高い

言語を用いてまとめたり、説明したりすることが得意。語彙力も豊富。学校の勉強ができる、明文化されていない社会的ルールを感じることができる。

ただし、言語理解が得意であることが必ずしも、コミュニケーション力の高さにつながるわけではない。

得点が低い

言葉の意味を正確に捉えられず、コミュニケーションにおいて相手が伝えたいことが理解できない場合がある。

具体的な言葉でイメージしやすくしたり、お互いに認識の確認をしたりすることが大切になる。指示する時は、短く区切ってシンプルに。絵や図が入ったマニュアルがあると、理解しやすくなる。

②知覚推理

得点が高い

視覚から得た情報を理解し、整理したり推論したりすることが得意な傾向がある。数学であれば、図形の問題や論理的に考える問題が得意。

常識的な情報、空気を読める力が強い、瞬時に間隔的にその状況における他人の考えを汲み取ることも得意。

得点が低い

視覚から得た情報を捉えることが苦手で、図や表、地図の読み取りが難しい、見通しを立てることが困難な傾向がある。

情報を省略し過ぎず、言葉での説明を補足すると良い。視覚情報はシンプルに、活動の目的と工程を明示するといった工夫が必要。

考えるのにゆっくりと時間をかけるタイプの人では、この指標が低くなることがある。そのため、「論理的な思考が苦手」とは言い切れない。

③ワーキングメモリー

得点が高い

聞いた情報を頭の中で整理し、考えることが得意。数学であれば、暗算が得意。職場において、口頭指示が受け取りやすく、複数の指示を整理することができる。

会議においては、他の人の話を聞きながら自分の考えをまとめることも得意としている。短期的な集中も得意な傾向がある。

得点が低い

耳から入った情報を覚えたり、頭の中で処理したりすることが苦手な傾向がある。口頭での指示が覚えられなかったり、電話対応が苦手だったりする。

指示を受けたらメモを取る、メールや書類による指示を始めに後から確認できるようにする、指示は1つ1つ小出しにする、録音を取りながら話を聞くといった工夫が必要。

ワーキングメモリーは、読み書きや計算にも関係している。文章の概念を図解化する、電子機器を用いて計算を行うといった工夫で困難を軽減できる。

④処理速度

得点が高い

単純な作業をスピーディーに行うことが得意な傾向。器用な人が多く、細やかな作業を確実に短時間でこなせるタイプ。

決まったマニュアルに沿って作業をしたり、一連の流れを繰り返して行ったりといった単純な作業が得意。

得点が低い

単純な作業が平均よりゆっくりだったり、速度は平均的でもケアレスミスが多かったりといった傾向がある。

作業をする際は、作業時間の調整や作業を区切り集中力を保つような環境を作る工夫が必要。

ケアレスミスが多い場合は、ミスが起きそうな部分を他の人にダブルチェックしてもらうと良い。

学校の勉強であれば、「黒板の文字をノートに書き写す」といったことが苦手。書字の苦手さは、社会人になれPCを使用することで解消できることが多い。

知能と学力は関係していることがありますが、学力は学習環境や興味関心の程度などによって変化しうるものでもあります。

さらに検査を受ける際、個人によっては緊張でいつも通りの力が発揮できないこともあります。そのため、判定で出た結果は必ずしも正確性があるというわけでもありません。

言語理解指標(VCI)は、言葉の理解に関わる機能であり、子どもの場合は日常的に物の名前を教えたり、本を読み聞かせしたりすることで獲得しやすく伸びやすい能力と言えます。

このように検査で得られた結果は、本人の特性を知る一つの手段として、今後の生活に役立てる材料としましょう。

6.WAIS-Ⅳ・WISC‐Ⅳ知能検査の結果で分かること

WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査は、本人のありのままの状態を評価することが重要となります。そのため、検査内容を誰かに聞いたり調べたりといったことはしないようにしましょう。

事前に検査内容を知ってしまうと、正確に診断ができません。今後における生活のヒントが得られず、検査を受ける意味がなくなるでしょう。

また、検査の結果だけで発達障害であると診断するものではありません。知能検査で発達障害の傾向がある、知能の低下がみられるといった判定が出たとしても、社会的な適応に影響がないケースも多いです。知能が低いとされている人でも、社会生活や仕事ができるという人も多くいます。

この知能検査によって、様々なことが分かります。主に以下の3つです。

①発達障害の傾向、可能性が分かる

発達障害には、自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害、学習障害など、それぞれ症状の特性があります。一つの発達障害の特性だけを持っている人もいれば、複数の特性を併せ持った人もいます。

そのため、どの発達障害の特性に該当しそうなのか、どのような傾向があるのかなどをWAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査の指標によって見えやすくすることを目的として専門医が使用しています。

例えば、発達障害の子どもにはワーキングメモリーの情報処理能力が低いという特徴が多いと言われています。日常会話において、2つ以上の情報を処理する必要がある内容の場合があるでしょう。発達障害のない人では、一つの動作をしながら片方の質問に対する答えを伝えるという情報処理は、無意識のうちに行えています。

しかし、発達障害を持つ人の場合は、どちらか一方の情報処理しか行えないという特徴があります。そのため、周りの人から見れば、「言うことを聞いてくれない」「適当に対応されている」という印象を受けてしまうでしょう。

本人は決して、言うことを聞かないわけでもなく適当に対応しているわけでもありません。ワーキングメモリーが低いため、しっかりと対応しているつもりでも、指示された通りの対応ができない特徴があるのです。

このような発達障害の特徴は、本人も周りの人も認識していないことが多いでしょう。

そこでWAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査では、個々の言語的・動作的IQを知ることができます。それらの得点差を測ることで、発達障害の特性を持つ可能性があるかどうか判断します。これらの差が大きいほど、発達障害の可能性が高いと言えるでしょう。

ただし確定診断を行うためには、より具体的な問診やQEEG検査などの脳波検査を受けた上で、より正確に現れている発達障害の特性を見つけ出す必要があります。

この知能検査だけでは、発達障害であることを診断できず、発達障害の傾向があることやその特性がどの程度あるのかを把握する目的として用いられます。

②得意なこと・苦手なことが分かる

発達障害の子どもや大人は、自分自身の困りごとについて、相手に分かりやすいように具体的に伝えることが苦手な場合があります。そのような場合、WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査によって苦手な分野を把握しやすくなる、といった特徴があります。

困りごとの他にも、実は得意な分野も見つけやすくなるという特徴もあり、得意な部分を伸ばしていけるというヒントにつながるでしょう。

特に発達障害の子どもや大人の場合は、本人や周りの方は障害の特徴による苦手分野にだけ目が行きやすくなります。そのため、自己肯定感が低くなり、より社会生活を送ることが難しくなるでしょう。

子どもの場合は周囲と比べてしまい、自分の出来なさを嫌になり、何をしてもうまくいかないという状況から、不登校になったりうつ病や不安障害などの精神障害を引き起こしたりする可能性があります。

このような中で、知能検査により得意な分野に注目することで、心理的にも良い影響を与えます。社会的にも支障を来すリスクを抑えながら仕事ができるように、配置や部署を変えたり業務を任せたりできるでしょう。

WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査を通して、苦手な分野だけではなく得意な分野を知ることを大切にしてください。

③生活におけるヒントが分かる

WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査では、4つの指標があり合計得点が算出されます。そのため、得意な分野・苦手な分野を見つけやすい検査となっています。

発達障害かもしれないと思ったり、苦手なことがあって日常生活や社会生活において支障を来していると思ったりしている場合は、この知能検査において生活のヒントが見つかりやすくなるでしょう。

例えば、仕事において「口頭で受けた指示通りに、仕事ができない」といった苦手な面があると考えます。そこで、WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査を受けた場合、言語指標としてコミュニケーションを図ることに問題はなくても、聴覚で受け取った情報が理解しにくいといった場合が考えられます。

この検査結果から、「口頭指示ではなく、文章で指示を受け取る」といった方法を取ることで解消できるかもしれないとヒントを見つけることができます。

このように、検査結果で得られた特徴は、自分の困りごとを明確にした上で解決策を考えるヒントとして活用できると言えます。

他に、授業中に先生が話していることを理解できないという子どもの場合はどうでしょうか。耳で聴いた情報は理解しにくいが、黒板に書いた文字を追えば理解できるケースがあります。つまり、ワーキングメモリーの得点が低く、聴覚で得た情報は頭の中で整理、処理できないという状況と言えます。

この場合、先生が話す授業内容はプリントアウトして配布し、そのプリントを見ながら授業を受けることで、スムーズに授業内容が理解できるようになります。

また、発達障害の人に多くみられるワーキングメモリーの低さに対しては、一度にたくさんの情報を与えないことや難しいとしても繰り返し行うことが大切です。

頭の中で情報を処理することが難しい場合でも、一度に少ない情報を繰り返すことで、毎日の習慣として身につき、長期的な記憶としてしっかり残すことができると言われています。

このように、WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査を受けることで、その人に合った生活の工夫を考えることができます。そして、自分なりに工夫できるようになり、少しずつ日常生活における困りごとが減っていくことも期待できるでしょう。

7.WAIS-Ⅳ・WISC‐Ⅳ知能検査はどこで出来る?費用は?

WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査は、教育支援センターや児童相談所、学校などの公的機関、医療機関、民間のカウンセリングルームで受けられます。

検査を実施しているかどうかを直接確認することも可能ですが、発達障害者支援センターで実施している機関をお問い合わせできます。発達障害者支援センターは、各都道府県に設置されている機関です。

⇒参考「発達障害支援センターとは?サービス内容や対象者について」

検査を受ける機関によっては、検査時間の設定があります。約2時間かかる検査ですので、その日のうちに終了する場合と何日かに分けて検査を行う場合があります。

また、検査当日に心理士から検査結果のフィードバックを受けることが可能です。時間は要しますが、フィードバックを受けながら、自分がどのような発達障害の傾向があるのか、弱みや強みはどの程度なのかを確認していきます。

そして、日常生活や社会生活における困りごとを解消するヒントを一緒に考えることができます。

検査費用については、検査を行う機関によって多種多様です。公的な病院での検査は保険診療が多いですが、クリニックでは自費診療となることが多いとされています。

検査を受けたいと考えている病院や関係機関に、費用を含めた検査内容についてお問い合わせしてみましょう。

8.まとめ

日常生活や学校生活、社会生活において、周りの人と比べて「自分はどうしてできないのだろう」「ミスが多い」「コミュニケーションがスムーズに取れない」といった状況はとても辛いものです。

その原因となるのは、発達障害の傾向があるからという場合があるかもしれません。

WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査によって、どのような発達障害の傾向があるのかを知り、自分や子どもの得意なこと・苦手なことを発見してみましょう。

その結果によっては、日常生活や社会生活が少しでも楽になるよう、工夫できる手がかりを見つけられます。

ただし、注意して欲しいことは、このWAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査は発達障害の診断を行うものではないということです。発達障害の疑いがある場合、この知能検査により強み・弱みを確認し、日頃の困りごとへの対応策を考えることを目的としています。

発達障害を正確に診断するためには、精神科医による問診を行い、QEEG検査という脳波検査を受けることが必要となります。脳の状態を客観的に把握し、発達障害の確定診断と今後の治療計画に役立てられます。

QEEG検査は、発達障害の診断までは至らないけれども、発達障害の可能性があるといったグレーゾーンの方でも診断が可能になる検査です。1人ひとりに合った治療計画を立てられるでしょう。

まずは、発達障害の可能性がある場合や困りごとが強く、生活に支障を来しつつあるという場合は、まずは一度関係機関に相談し、WAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ知能検査を受けてみましょう。