発達障害者が受けられる支援やサービスについてcolumn

Update:2022.07.11

発達障害者が受けられる支援やサービスについて

目次

発達障害者が受けられる支援やサービスについて

発達障害を持った子どもや大人が利用できる、障害福祉サービスという支援制度があります。これは、国や都道府県、各市町村などの自治体が提供している、障害を持つ方に向けて自立支援や療育を行ってくれる支援制度です。

もちろん、発達障害の方だけではなく、他の精神障害者や身体障害者、知的障害者、難病により身体の一部に障害を持つ方が利用できます。

障害福祉サービスは、日常生活における困りごとや子どもの発達の程度に合った支援を受けられるため、本人や家族、周りの方にとってメリットが大きいと言えるでしょう。

ここでは、発達障害者(児)における障害福祉サービスについて、サービス内容や利用方法、費用などを具体的に解説します。

1.発達障害における障害福祉サービスとは

発達障害については、もともと障害者自立支援法に基づき、福祉サービスの利用対象となっていましたが、2010年の法改正により障害者の範囲に含まれることが規定され、障害福祉サービスの利用も可能となりました。

障害福祉サービスの中には、障害者手帳を持っていない場合でも必要性を認められれば受けられるものがあります。それは、定められている法律に基づきます。

発達障害者の支援を定めている法律として、「障害者総合支援法」と「児童福祉法」の2つです。

法律

内容

障害者総合支援法

身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者)、難病などを対象とした法律。

  • 自立支援給付(障害者のニーズに応じて、直接サービスを行う)
  • 地域生活支援事業(自立した生活を送るために、地域の特性や利用者の状況に合わせてサービスを行う)

児童福祉法

身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病をもつ18歳未満の児童を対象とした法律。

  • 障害児通所支援(施設に通い、日常生活や集団生活の力を身につける)
  • 障害児入所支援(施設に入所し、日常生活に必要な知識や技術を身につける)

障害者総合支援法は、大人の発達障害者の支援を定めており、障害福祉サービスと地域生活支援事業の二つが受けられる特徴があります。

それぞれの支援内容について、次項で具体的に解説していきます。

2.発達障害者・発達障害児が受けられる支援内容

18歳以上の大人の発達障害者に対する支援は、障害者総合支援法に基き、18歳未満の子どもの発達障害に対する支援は、児童福祉法で定められています。

それぞれの法律により、発達障害を持つ方が受けられる支援内容は、次のように定められています。

①障害者総合支援法

サービス内容は、大きく分けて「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つです。

 

サービス内容

自立支援給付

障害者のニーズに応じて、個別に行われるサービスのこと。対象者の自宅に訪問して受けられるサービス、施設に通所・入所するサービス、自立促進のために受けられる就労支援などがある。

  • 障害福祉サービス(介護給付、訓練等給付)
  • 自立支援医療(育成医療、更生医療、精神通院医療)
  • 相談支援事業(基本相談支援、地域相談支援、計画相談支援)
  • 補装具

地域生活支援事業

障害者が自立した生活を送るために、地域の特色や利用者の状況・環境に合わせた支援が受けられること。

  • 必須事業(相談支援、移動支援、成年後見制度支援、日常生活用具の給付または貸与、意思疎通支援など)
  • 任意事業(日常生活支援、社会参加支援、就業・就労支援など)

この中でも、任意事業として日中一時支援事業というものがあります。障害の程度に合わせて、日中に事業所や施設などで見守りや訓練を行うことで、障害者を持つ家族が仕事をしたり、一時的な休息を作ったりできる支援です。

これらは障害者手帳を持っていなくても、申請をすることで支援が受けられます。

発達障害者本人への支援だけではなく、ご家族にとってもメリットが大きいサービスです。少しでも支援が必要だと感じた場合は、お住まいの市区町村の担当課に相談することをおすすめします。

②児童福祉法

児童福祉法で定められている発達障害の子どもが受けられるサービスは、大きく分けて「入所支援」と「通所支援」です。

 

サービス内容

相談支援

発達障害の子ども本人やその保護者が、障害福祉サービスを利用したい場合、どのようなサービスが受けられるのか相談できる支援のこと。

  • 障害福祉サービスの利用計画立案
  • 施設、利用者との連絡調整

障害児通所支援

障害のある子どもが施設に通い、必要なサービスを受ける支援のこと。

  • 児童発達支援(未就学児を対象に、生活能力の向上に必要な訓練、社会的交流を行う)
  • 医療型児童発達支援(身体的な障害がある児童に対して、発達支援や治療を行う)
  • 放課後等デイサービス(6~18歳の就学児童を対象に、生活能力の向上に必要な訓練、社会的交流促進を行う)
  • 保育所等訪問支援(保育園や幼稚園に通う障害を持つ子どもを対象に、集団生活に適応するための支援を行う)

障害児入所支援

障害のある子どもを施設に入所させ、必要なサービスを提供する支援のこと。児童相談所や市区町村の保健センター、医師などにより療育の必要性を認められた場合に入所できる。

  • 福祉型障害児入所施設(介護などの福祉サービスを行う)
  • 医療型障害児入所施設(福祉サービスに併せて、治療も行う)

短期入所

発達障害の子どもが、児童養護施設などの施設に短期入所できるサービス。入所の条件としては、以下のような場合が挙げられる。

  • 保護者の病気、仕事上の理由
  • 育児不安や育児疲れ
  • 障害児の看病疲れ

発達障害の子どもに対する障害福祉サービスは、子ども本人の生活能力向上などを目的とした支援の他に、保護者の仕事や一時的な休息を確保することを目的とした側面もあります。

保護者が身体的・精神的負担を感じている場合は、一度市区町村の窓口に相談してみると良いでしょう。

3.発達障害者が利用できる障害福祉サービスの利用方法

障害福祉サービスを利用するためには、まずはお住まいの市区町村に申請をする必要があります。職員が、発達障害者の心身の状況や環境などの聞き取りを行い、障害者支援区分の認定をした上で支給決定を受けるといった流れになります。

申請には、障害者のある本人、子どもである場合は保護者が行うことになっています。他に、障害者本人の意思に基づき、依頼を受けた代理人も申請ができます。その場合、委任状などの書類は必要ありません。

具体的な利用の流れは次のとおりです。

  1. 市区町村の窓口に申請する(主に、障害福祉課が担当となる場合が多い)
  2. 障害支援区分の認定を受ける
  3. サービス等利用計画書の作成
  4. 支給の決定
  5. 利用開始

主に、利用者側が行うことは窓口への申請のみとなっています。申請後は聞き取りをした内容をもとに、一連の流れに沿って支給決定されて利用開始となります。

サービスを受けるにあたり、一定期間で障害の程度や環境などの確認を行い、サービス内容を見直す機会があります。

4.障害福祉サービスを利用する際の費用など

上記に挙げた障害福祉サービスを利用するにあたり、必要となる費用はサービスによって異なることを知っておきましょう。

まず、サービスを受けるかどうかを相談すること自体に費用はかかりません。受けるサービスによっては利用料を負担する場合があるでしょう。

その場合の負担額は、利用者やその世帯の所得を考慮した負担上限額となっています。2021年1月時点では、以下のような負担額の区分が決められています。

  • 生活保護世帯・・・負担額0円
  • 市町村税非課税世帯(世帯収入300万円以下)・・・負担額0円
  • 市町村税課税世帯のうち世帯収入600万円以下・・・月額9,300円
  • 市町村税課税世帯のうち世帯収入600万円以上・・・月額37,200円

このように1ヵ月に必要となる負担額は決まっていますが、障害の程度によっては医療や介護を必要とする場合があるでしょう。その場合は、減免対象となるケースもあるため、窓口で確認してください。

5.まとめ

障害福祉サービスは、障害のある子どもや大人を対象として様々な支援が受けられる制度です。18歳以上の大人に対しては障害者総合支援法、18歳未満の子どもの発達障害に対しては児童福祉法に基づいた支援内容となっています。

障害者手帳を持たない方でも、申請することで必要性が認められた場合はサービスが受けられます。

様々なサービスがあり、個々に合わせてサービス等利用計画書を立案することで、発達障害を持つ方でも必要なサポートを受けながら日常生活を送ったり働けたりできます。

本人や保護者の方、周りの方が少しでも障害による困難さを感じている場合は、一度ご相談してみてください。

そして、発達障害を持ちながらでも、ご自分にとって安心した暮らしができるよう支援を受けることを考えていきましょう。