社交不安障害 治療方法column

Update:2023.10.15

社交不安障害 治療方法とは

社交不安障害の治療には、認知行動療法と薬物治療が主に用いられます。恐怖や過度の不安を引き起こす考えや行動を変え、新しい対処法を学ぶことを重視します。暴露療法も一部含まれ、恐れられる状況に徐々に慣れる訓練を行います。薬物療法の中で抗不安薬や抗うつ薬は、軽減や症状の管理に効果があると言われています。

社交不安障害  治療方法

目次

何科を受診すればよいか

 統合失調症も他の病気と同様、「早期発見・早期治療」がポインとになります。早くに発見し、早くに治療すれば、回復もすみやかです。逆に治療が遅れると症状もこじれ、薬を飲んでもなかなか改善しません。また。急性期の患者さんは、自分が病気だとは感じていないため、病院へ行くのを拒否する人も多く見られます。本人の様子がおかしいなと思ったら、まずは家族や周囲の人だけでも医師や保健所などに相談しましょう。家の中で抱え込まず、外に助けを求めることが大切です。

まず、病院選びのポイントですが、最初は何科に行けばよいのか迷います。統合失調症は心の病気ですので、心の専門医がいるところを受診します。総合病院であれば、「精神科」「神経科」「精神神経科」が専門です。個人医院なら、「精神科」「メンタルクリニック」などの名称を使っているところが多いです。ただし、「神経内科」「脳神経外科」は名前がよく似ていますが、治療する病気はまったく異なるので、注意してください。なお受診する際は、なるべく患者さんと一緒に周囲の人がつき添って行くのが望ましいです。発症の時期や患者さんの様子などについては、周囲の人の情報が診断のうえで非常に役立つからです。ただ、患者さんによっては、家族が診察に同席することを嫌がる場合があります。そのような時は、席を外して患者さんと医師が話し、家族はカウンセラーやソーシャルワーカーなどの医療スタッフと面談するとよいでしょう。普段、患者さんの家での様子や既往歴、またささいな事でもよいから気づいたことを率直に伝えるようにします。

また、本人や家族を含め、精神科に行くことをためらう人も、まだまだ多いようです。かつての「精神分裂病」のイメージがあるためかもしれません。精神科に行くのを拒んだら、地域の保健所や精神保健福祉センターなどに相談するのもひとつの方法です。保健所から相談員や医師が訪問してくれて、患者さんと面談したり、受診を促したりしてくれます。また、精神科を受診できたとしても、医師に対する第一印象が悪かったというケースも中にはあります。統合失調症の治療は、長期間にわたりますので、患者さんと医師との相性も大切なポイントになります。ただ、第一印象だけで相性は決められません。医師が忙しくて話す時間がとれなかった場合は、看護師や保健所の相談員にも話をして、上手につき合う工夫や努力も必要です。大事なことは、転院を繰り返していると、治療も十分できなくなり、病気の回復にも影響してきます。

受診を嫌がる患者さんの場合 

 興奮が激しいときや、不安感で疑い深くなっているときは、患者さんは病院へ行くのを拒むことがあります。そんな時、家族は本人に対して、決して受診を強要したり、叱ったりしないことです。「調子が悪そうだから、病院で診てもらった方がいいよ」と、理由をはっきりさせて受診をすすめます。また「あなたのことを心配しているの」と伝えると、その時は嫌がっても、後になって自分から「病院へ行ってくる」と言い出すこともあります。患者さんの興奮がひどく、家族とのあつれきが生じているような時は、本人と親しく、信頼関係のある人に同席してもらうと良い場合があります。

また、患者さん自身が不眠などの不調を感じているような場合は、「それを医師に相談してみよう」とか、「症状の背景には神経の疲れがあるようだ」と言って、精神科への受診を勧めます。別の科を受診したりすると、「検査をしたが異常が認められない」という診断結果を招くことになるので、避けたいものです。中には、精神科と聞くだけでショックを受ける患者さんもいます。周囲の人が「この先生のもとで治療をすれば、絶対によくなる」と、患者さんに伝えることで、通院治療を受け入れることもあります。

いずれにしても、受診をしたがらないからと言って、散歩や買い物に行くと言って病院へ連れていくことは、絶対に止めたいものです。うそをついて病院へ行っても、家族への不信感を植え付けるだけです。何よりも患者さん自身が、だまされたという気持で医師に会っても、その医師を信頼して治療を受けることは難しくなります。

一方、入院を嫌がる患者さんの場合は、医師も交えて話し合うことが大事です。「先生が入院するように言っていたから」ではなく、「私たち家族も入院に賛成している」という意思を伝えるようにします。入院治療が望ましいのに、本人の同意が得られない場合には、医師と家族の合意によって、入院が決められる医療保護入院もあります。患者さんによっては、入院と聞いただけで「見捨てられる」「ひどい」と思う人もいます。入院を勧める場合は「入院があなたにとって一番良いことである」と、根気よく、簡潔な言葉で伝えるようにします。

入院が必要な場合というのは、患者さんの興奮がひどく、暴力を振るったり自分を傷つけたりするような場合です。入院は、家族にとっても疲労が解消されたり、イライラした気持にゆとりができたりします。入院したら、今後の見通しについて医師から説明を受け、治療についての情報を、患者さんと家族が共有しておく必要があります。入院先も「ここなら大丈夫」と思えるところを選ぶことが大切です。

二つの治療法

 社交不安障害の治療には、現在、大きく分けて「薬物療法」と「精神療法」の二つがあります。薬物療法というのは、薬を用いて社交不安障害の症状を抑え、改善をはかる治療法のことです。主に使われる薬は「SSRI」「TCA(三環系抗うつ薬)」「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」「βブロッカー」(β遮断薬)などです。一方、精神療法は他に「心理療法」または「カウンセリング」とも呼ばれています。この精神療法の中には「認知行動療法(CBT=Cognitive Behavioral Therapy)」と「対人関係療法(IPT=Interpersonal Psychotherapy)」の二つの療法があって、患者と医師などの治療者が話し合いによって問題を解決していく治療法です。

社交不安障害には、全般性社交不安障害(ほとんどすべての状況で著しい不安を感じる)と非全般性社交不安障害(特定の社会的状況、たとえば人前で話したり文字を書いたりするときだけ強い不安や恐怖を感じる)の二つに分けられますが、後者の非全般性社交不安障害の患者の場合は、薬よりも認知行動療法を中心に治療する場合が一般的です。しかし、患者によっては、SSRIが効果的な場合もありますし、また不安症状を抑えるためにベンゾジアゼピン系抗不安薬やβブロッカーなどを頓服薬として使用することもあります。全般性社交不安障害の症状が重い患者においては、薬物療法と精神療法を組み合わせた治療が行われます。初めは、SSRIなどの薬物をつかって治療をすすめていきますが、薬物だけでいったんは改善しても、再発することが少なくないことから、認知行動療法なども併用して治療をすすめていくことになります。

薬物療法

 社交不安障害の治療に用いられる薬には、大きく三つのタイプに分けられます。一つは行動パターンを変えるための薬として「SSRI」、二つ目に不安を軽くするための薬として「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」、三つ目に身体の症状を抑制するための薬として「βブロッカー」の三タイプで、それぞれの特徴をいかし、患者の状態に合わせて適切に組み合わせながら治療をすすめていきます。

【SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)】
 現在、社交不安障害の薬物療法の基本となる薬がこのSSRIで、主にフルボキサミン(商品名ではルボックスやデプロメールなど)などが基本的な治療薬として使われています。この薬は抗うつ薬の一種で、不安を生じにくくさせることから、回避行動を減少させ、新たな行動パターンの獲得が期待できます。比較的、症状が重い全般性社交不安障害の患者や、その他の精神障害を併存している社交不安障害の患者に効果があります。また、それほど重くない不安障害にも効果がある場合もあります。1年程度は、定期的に服薬を続けることが望まれます。

SSRIは、もともとは新しいタイプのうつ病治療薬として開発された薬で、アメリカやヨーロッパでは1980年代から使われていました。この薬の特徴は、脳内伝達物質であるセロトニンなどに関連した神経系に作用する薬で、うつ病だけではなく不安障害に対しても効果があることがわかってきました。不安で思いつめている人には、ホッと息をつかせる効果があります。副作用としては、飲み始めに吐き気などの胃腸症状や軽い頭痛などが出ることがありますが、通常は内服を開始して1~2週間で改善します。そのほか眠気や性機能障害が出現することもあります。また、賦活症候群(アクティベーションシンドローム)といって、薬を飲み始めたころに、かえって不安やうつが強くなったり、焦燥感が高まったりすることがあります。この副作用は、しばらく飲み続けた後にでることもあります。またこの他に、SSRIの薬を急に飲むのを止めたり、量を減らしたりしたとき、焦燥感、不安、知覚障害、睡眠障害、めまい、嘔気、発汗などの症状が出ることがあります。時によっては、うつ症状や不安が強くなったり、死にたいと思ったりすること(これらの症状を離脱症状と呼びます)もありますので、自分の判断だけで薬の量を急に減らしたり止めたりせず、医師とよく相談しながら服薬することが大切です。

【TCA(三環系抗うつ薬)】
 この薬も、SSRIと同様に、神経細胞の樹状突起接合部(シナプス)において、セロトニンの再取り込みを阻害することによって、セロトニンの濃度を高めて神経の伝達をスムースにして、DLPFC(背外側前頭前野)が扁桃体をコントロールするのを助けることによって、不安・心配・恐怖を軽減します。また、セロトニンだけではなく、ノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質の再取り込みも阻害して、意欲を高める作用もあります。


【ベンゾジアゼピン系抗不安薬】

この薬は、脳内神経伝達物質の一種であるギャバの働きを調整することによって、不安症状や興奮を改善する薬です。SSRIより即効性があり、定期的に服用することもありますが、必要な時だけ頓服として使うという方法が一般的です。定期的に常用すると依存が形成されますので注意が必要です。ベンゾジアゼピン系抗不安薬には、超短時間作用型のアルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、エチゾラム(デパス)、ロラゼパム(ワイパックス)、ジアゼパム(セルシン、ホリゾンなど)、超長時間作用型のロフラゼプ酸エチル(メイラックス)、フルトプラゼパム(レスタス)をはじめ、多くの種類の薬が使われていますが、効果がすぐに現れすぐに消えていくものや、比較的長時間にわたって効果があるものなど、タイプは様々です。患者の症状に合わせて使い分けていきます。
社交不安障害の患者においては、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬を、SSRI、TCAと併用して、治療の初期に使うことがあります。これは、とくに不安が強い患者に最初に服用してもらうことで、薬の有効性を実感してもらい、今後の治療をより取り組みやすくする効果もあります。副作用としては、めまい、眠気、食欲不振、疲労感、ふらつきなどが見られます。欧米の医学界からは、副作用や依存性の可能性があるとして、使用は短期にとどめるなど慎重に使用するように勧めていることもあり、患者の症状や治療経過を見ながら、慎重かつ柔軟に処方することが大切です。
【βブロッカー(β遮断薬)】
 不安や緊張が高まると、動悸、息切れ、発汗、震えなどの身体症状がでてきますが、これらを抑制する時に使われる薬がβブロッカーです。必要時のみの頓服的使用が一般的です。動悸や息切れなどの身体症状は、アドレナリン(脳内神経伝達物質の一種)が全身の交感神経を刺激することによって起きていることがわかっています。βブロッカーは、このアドレナリンが結合する神経細胞のβ受容体を遮断する働きがあり、それをブロックすることによって交感神経の刺激が抑制されて、症状が緩和するというものです。社交不安障害の人が、強い不安や緊張を感じやすい場面、たとえば大勢の人がいる会議の場で、大事な発表をしなければならないような時、会議の直前に服用することによって症状を抑えようというものです。つまり、ある特定の状況や場面で、強い不安を感じる非全般性社交不安障害の患者で、しかも比較的病状が軽い場合において、抗不安薬やβブロッカーなどの薬を頓服薬として服用します。その場合、βブロッカーなどの処方の目的が、一時的な身体症状を抑えることもありますが、むしろ服用することそのものよりも、薬を常時携帯することで一定の安心感が持てるという効果の方が大きいのです。もし、頻繁に使用しなければならないような場合は、頓服薬ではなく、継続的に使用する薬物療法の方が望ましいと考えます。

 心理療法には、「認知行動療法」と「対人関係療法」の二つがあって、うつ病や社交不安障害を含めた不安障害の治療法として注目されています。社交不安障害における心理療法は、SSRIなどの薬物による治療と匹敵する効果があることがこれまでに報告されています。その二つの療法の概要について、以下説明していきます。

心理療法 ~認知行動療法~

 認知行動療法(CBT=Cognitive Behavioral Therapy)は、ドナルドマイケンバウムの著作タイトルに初めて使われ、アルバートエリスやアーロンベックにより、初めはうつ病に対する治療法として確立されました。患者の苦痛の原因となっている歪んだ思考や考え方、感じ方(認知)を発見し、それを検証し、修正を行っていくことで治療を行なうものです。認知行動療法は、「認知療法」と「行動療法」の二つの治療法を組み合わせたものです。認知療法とは、考え方に働きかける治療法で、思考のパターンが極端に悲観的であったり否定的であったりする場合に、その修正を図ることができます。一方、行動療法は文字通り行動面に働きかける治療法です。生活には必要ない不合理な行動が習慣になり、それが生活上の支障となっているとき、その習慣を変えることに用いられます。

最近になって、この認知行動療法を行う患者が非常に増えています。たとえば、うつ病などの気分障害、双極性障害(躁うつ病)、様々な恐怖症、社交不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、薬物(麻薬・覚醒剤・シンナーなど)の乱用やアルコール依存症、強迫性障害、発達障害、摂食障害、パーソナリティー障害など、非常に多岐にわたって治療が行われています。イギリスやアメリカなどの国では、認知行動療法が、うつ病や不安障害治療の第一選択となっています。認知行動療法と薬物療法を組み合わせた治療法では、単体を用いる治療法に比べて非常に高い治療効果が得られることが、科学的に立証されています。

日本認知療法学会や日本行動療法学会では、毎年おこなわれる大会で多くのワークショップを開き、その普及に努めていますが、現段階ではこの認知行動療法の治療を受けることができる精神科クリニックや心療内科クリニックは非常に少なく、日本ではこの治療法が普及しているとは言えないのが現状です。また、臨床心理士や精神保健福祉士などの養成機関においても、認知行動療法を習得できる機関はごく一部に過ぎず、アメリカやイギリスに比べて大きく遅れており、今後の早急な改善が求められています。

では、認知行動療法とはどんな治療法なのでしょうか?人間の認知(思考・考え方・感じ方・捉え方)は千差万別であり、同じ出来事でも、人によって認知の仕方(感じ方)は様々です。たとえば、「配偶者が自分よりも先に亡くなった」という出来事が起きた場合、Aさんにとっては絶望的であり生きる希望を失って自分も死んでしまいたい、という認知が起こり、Bさんにおいては配偶者に十分な恩返しができず、今となっては取り返しがつかないと自分を責めるという認知が起こり、Cさんにとっては配偶者と生前においてはたくさんの楽しい思い出があり、十分な恩返しができたので安らかに眠って欲しいという認知が起こり、Dさんにとっては窮屈で息苦しい関係から解放され、清々したという認知が起こります。このように、同じ出来事であっても人によって認知の仕方が様々です。このように、Aさんにとってみれば自分も死んでしまいたいほど辛く悲しいことと感じるのに対し、Cさんは思い残すこともなく亡くなった配偶者に感謝することができ、気持ちの整理ができているといったように、まったく正反対の感じ方(認知)が起きる可能性があるのです。

また、たとえば「勤めていた会社で、リストラにあって失業した」という出来事が起こった場合でも、Aさんにとっては、自分には能力がなく自分が失敗したためにリストラにあって、もはやどこの会社に再就職しても同じように失敗してリストラにあうのではないかと思い、死んでしまいたいという認知が起こり、Bさんにとっては勤めていた会社は自分にとって最適とは思えず、これを機に再就職して心機一転頑張りたいという認知が起こり、Cさんにとっては、最近過労ぎみでちょうど良い機会なので、かねてより楽しみにしていた海外旅行にいって十分に楽しみたいという認知が起こります。

また、二人の男性が同時に一人の女性に好意をよせていて、二人はその女性をデートに誘ったところ、女性はどちらも断ったとします。そのとき、二人のうちの一人の男性は「自分には魅力がなく、どんな女性にも好かれない」と考えて落ち込みますが、もう一方の男性はデートに断られたことはがっかりしたが、「たまたま運が悪かっただけで大したことではない」「この世にはたくさんの女性がいる」と気にしていないという認知の違いが起こります。

以上の事例でわかるように、つまり人間はいろいろな考え方・感じ方・捉え方(認知)の中から、一つの考え方・感じ方・捉え方(認知)を選択しているにすぎないということです。このようにある出来事に対して、それが自分にとって苦痛だったり不都合だったりする認知を、いかに自分にとって幸福になり、好都合となる認知に変えていくか、その作業や方法が認知行動療法と考えればわかりやすいのではないかと思います。人間というのは、心理的苦痛を感じているときは思考の柔軟性を欠き、認知が歪んだものになる傾向があります。つまり情報処理の方法(認知)が歪んでしまうわけです。

この歪んだ情報処理には、幾つかのパターンがあります。そのパターンとは、「全か無かの思考」「結論の飛躍」「読心術」「レッテル貼り」「感情的理由づけ」などです。全か無かの思考というのは、状況を二者択一的に考えることです。たとえば「有名大学に進学できなければ自分は終わりだ」(大学に進学していない人も幸せに暮らしている人がたくさんいるとは考えられない)や、「会社をリストラになったら死ぬしかない」(リストラになっても、再就職して幸福に暮らしている人がたくさんいるとは考えられない)や、「自分は低所得なので、また自分は容姿に自信がないので結婚などできない」(普通だとこんな考え方はしませんが、そのことで悩んでいる人はこのように考える方が多いです)などです。

結論の飛躍というのは、何事も性急に判断してしまうことです。たとえば、会社に入社して2~3日でこの仕事は自分に適性がないと思い込み退職することや、認知行動療法を受けても初回の治療だけでこの治療では自分は治らないと思い込むことや、たった1社の会社面接が不合格になっただけで、自分はどこにも就職できないと決めつけることや、結婚して2~3カ月も経たないうちに配偶者とはやっていけないと離婚を考えたりすることです。また読心術とは、何の証拠もなく他者の考えを思い描くことです。たとえば、「会社の上司が自分に仕事をたくさん命じるのは、上司に嫌われているからだ」(上司が自分を頼りにしているとは考えられない)と思い込んだり、「近所の人に挨拶したら返事が返ってこなかったので、自分はのけ者にされている」(近所の人は、単に愛想が悪い人なのかもしれないとは考えられない)と思い込んだり、「付き合っている異性の笑顔が少なかったので、もう嫌われてしまった」(異性が体調不良であったとか、たまたまその時機嫌が悪かっただけだ)とは考えられないなどです。

次にレッテル貼りというのは、自分自身の行動に対してではなく、自分自身にレッテルを貼ってしまうことで、たとえば「大学入試に失敗したということは、自分は落ちこぼれだ」(1回ぐらい大学入試に失敗したからといって、また再度挑戦すればよいとは考えられない)とレッテルを貼ってしまうことや、また「1回のお見合いで失敗したということは、自分は負け組だ」(お見合いというのは通常1回ではなかなか決まらないというふうには思えない)とレッテルを貼ってしまうことや、また「自分の給料が安いということは、自分は落伍者だ」(給料だけで人間の評価が決まるわけではないとは思えない)とレッテルを貼ってしまうことです。

最後に感情的理由づけというのは、そのように感じることを事実だと決めつけてしまうことです。たとえば「私は今の仕事が向いていないと感じる、だからそれは事実に違いない」(他人からの評価を考慮に入れない)と決めつけたり、「自分はあの人に嫌われていると感じる、だからそれは事実に違いない」(あの人に確認したわけでもないのに)と決めつけたり、「自分は落伍者だと感じる、だからそれは事実に違いない」(他人からの客観的な評価を考慮にいれない)と決めつけたりすることです。

以上述べてきたように、社交不安障害においては、基本的に認知が偏っているために不安が生み出されていますので、それを客観的に見つめて、いろいろな角度から認知を検証していく治療法としての認知療法があるのです。さらに不安障害は、「ある状況では不安になるのが当然」ということに身体が慣れてしまっているため、それを徐々に変化させていくのが行動療法的アプローチです。たとえば、高所恐怖症の人であれば、少しずつ高いところに慣れていって、段階的に恐怖の対象に慣れていくという段階的暴露法があります。このほか、社交不安障害に対する認知行動療法で、しばしば用いられる社会技能訓練(SST=Social Skills Training)という技法がありますが、これは実際に対人コミュニケーションの仕方をトレーニングしていくものです。

いずれにしても、認知行動療法は多くの臨床試験で効果が示されており、薬物療法と比べると再発率が低いというデータがあります。もちろん、万能の治療方法というわけではありません。

心理療法~対人関係療法(人間関係療法)~

 対人関係療法というのは、双方において影響しあっている対人関係の機能を改善していくことによって、不安症状を減じていく療法です。考え方としては、「不安がなくなれば対人関係が楽になる」という思いで治療するのではなく、「少しの不安を感じながらも、対人関係を改善していけば、自信がついて不安も軽くなってくる」という方向で取り組むことです。これまでも述べてきたように、社交不安障害の人は「否定的(ネガティブ)な評価を恐れる→だから対人関係を避ける→ますます否定的な評価を恐れる」といった悪循環に陥っているわけですから、それを対人関係療法でもって「否定的な評価を恐れる→実際に人とやりとりしてみたら、ある程度の成果が実感できた→少し自信がつき、次のやりとりをしてみる気になった」という方向へ、自分を軌道修正していくことです。少しずつ自分をコントロールしていくのです。もちろんこれは地道な作業ですが、しかし努力して繰り返していけば、徐々に変化は起きてきます。これは、ある意味で実験のようなもので、とにかくやってみることに意義があり、失敗に思えることも含めて一つ一つ前に進んでみることが成功体験であり、自信につながっていくものです。

社交不安障害における対人関係療法は、定型的には16回ぐらいの面接をするなかで行われます。では毎週面接をおこなえば4カ月間ぐらいで完全に治るのかというと、そう簡単なものではありませんが、面接のやり方がわかると、続けていく段階で自分はよくなるという感覚がもてるようになります。つまり、不安が減じたという実感であり体験であり経験です。その延長線上に、自分で自分をコントロールできるようになれば、不安が不安でなくなるようになります。対人関係療法のポイントをまとめると、次のようになります。

自分をもっと認める

 人間関係がぎくしゃくしてくると、人間はつい悪者探しをしたくなります。まじめに考えようとする人の場合、その悪者は往々にして自分自身になります。自分の欠点を探し出して、自分たたきを始めます。自分で自分のあら捜しをしますから、欠点はいくらでも見つかりますし、辛さは増すばかりです。しかし、人間はそんなに簡単に自分を変えることは出来ません。欠点もありますが、それ以上に現在の自分にもプラス面がいろいろあるはずです。自分で自分のことを受け入れていないのであれば、他の人はそれ以上に受け入れてくれないものです。もっと自分のことを信じて、ありのままの自分を受け入れるところから始めることが大切です。

問題点は何かを具体的に考えてみる

 人付き合いがうまくいかなくなって原因探しをするときに、人間性を批判しがちです。「こんなことをした自分は駄目な人間だ」と自分を責めたり、「こんなことをするなんてひどいやつだ」と相手を責めたりするのです。しかし、それでは事態の解決になりません。なぜ人間関係がうまくいかないのかといった大きな問題ではなく、お互いの間にどのようなことが起きていて、どの部分でうまくいかなくなっているのかということを丁寧に考えてみることが必要です。そうして具体的な問題を浮き彫りにすることができれば、それに対する解決法も見つかりやすくなります。

完璧な人間関係はない

 人間関係がうまくいかなくなると、生じている問題にばかりに目を向けて、自分を追い込んでいってしまうことがあります。「これがいけない」、「あれがいけない」と、次々と問題が目に付いて、取り返しがつかないような気持ちになってしまうのです。しかし、すべてがうまくいく完璧な人間関係などありません。お互い違う世界に生きている人間なのですから、うまくいくこともあれば、ぶつかることだってあります。いくら恋人でも、家族でも、人はそれぞれ違う世界に生きています。「何でもわかりあえるはずだ」、「なんでもわかってもらえるはずだ」と期待しすぎると、人間関係は辛くなるばかりです。

意見の食い違いを恐れすぎない

 人間関係が窮屈だと感じているとき、人間は少しでも意見が食い違ってはいけないと考えて、自分の気持ちを抑え込んでいることがよくあります。しかも、そうしたことは親しい人の間で起こりやすくなります。相手の人を大切だと思えば思うほど、同じ考えでいたいと思うからです。少しの食い違いが、取り返しのつかない問題になるのではないかと恐れることさえあります。しかし、少しくらい意見が違っても、それですべてがだめになってしまうことは滅多にありません。そうした食い違いがあっても、それを認め合うことで人間関係に幅が出てきます。それくらいでだめになる関係であれば、どんなに配慮をしても、いずれどこかで破綻してしまうでしょうし、それはそれで構わないのです。

言いづらいこともしっかりと伝える

 相手の人と違う意見を口にするのはなかなか難しいものです。「相手が不快な気持ちになるのではないか」、「腹を立ててしまうのではないか」と言った心配が、次々と頭に浮かんできます。しかし、はっきりと口にしなければ伝わらないこともあります。黙っていたために、かえって後で関係がこじれてしまうことさえあります。要は、それをどのように伝えるかなのです。かといって、無理して気のきいたことを言おうとする必要もありません。相手の気持ちを傷つけすぎないように、表現の仕方さえ工夫すればよいのです。どうしても自分から言いにくいことは、他の人に伝えてもらうというやり方もあります。自分の意見を伝えることを恐れすぎないことが大切です。

言葉に頼り過ぎない

 自分の気持ちを相手の人に伝えるとき、言葉が大切な役割を果たすことはもちろんですが、言葉だけですべてが済むわけではありません。言葉が持つ意味は人によって違いますし、お互いの関係によって意味が違ってくることもあります。「それでいいよ」という同じ言葉でも、本当に同意していることもあれば、しぶしぶ同意していることも、腹立たしく感じていることもあります。人付き合いでは、言葉にならない言葉を伝えたり、感じ取ったりする必要があります。コミュニケーションは、言葉の内容はもちろん、態度や雰囲気、言葉の抑揚や調子など、私たちの存在すべてを使って行うものなのです。

思い込みから自由になる

 人間は現実を現実のまま客観的に見ているわけではありません。現実判断には、かなり自分なりの思い込みが影響しています。だからこそ、相手のことを即座に直感的に理解して、リズミカルな人間関係を作り上げることもできますが、いったんその歯車が狂いだすと、マイナス思考がどんどんわいてきて、関係がぎくしゃくしていくこともあります。「私のことが嫌いなんだろうか」という疑問が、「私のことを嫌いに違いない」という思い込みに変わるのに、そんなに時間はかかりません。人間関係が辛くなったときには、自分の思い込みに根拠があるかどうか、立ち止まって考えてみることも大切です。

思い切って自分流を捨てる

 人間関係に限らず、私たちは、自分のしていることがうまくいかなくなればなるほど、自分流のやり方にこだわるようになります。問題が起きると、人間はまず自分がやり慣れた方法で対処しようとします。それが一番良いと感じるからそうするのですが、それだけに、その方法がうまくいかないと自分が否定されたように感じて、ますますそのやり方にこだわるようになります。「うまくいかないはずがない」と考えて、自分流にこだわってしまうのです。それでは問題が解決できるはずがありません。思い切って自分流を捨てて、新しい視点から問題を眺めてみることも必要です。

困ってもよい

 人間は、すべての人といつも仲良くできるわけではありません。相性のあう人、あわない人、いろいろいます。仲のいい人であっても、ときには喧嘩をします。大事なことは、そうした問題が起きたときにどのように解決するかなのです。問題を一つ一つ解決して、それをその後の人間関係に生かせばよいのです。困らなければ問題は見えてきませんし、困る中に解決のヒントが隠されていることがよくあります。困ることを恐れず、自分を信じ、相手の人を信じて辛抱強く付き合ううちに、また新しい人間関係が出来上がってきます。

  • とにかく、30秒でいいから、相手の話をじっくり聞いて、「つらいだろうね」「楽しかったね」「せつないね」と、短い感情表現をする。
  • たまには親しい人に、「1日1回はあなたの声を聞かないと落ちつかないわ」と、返事のあとに一言う。別れるときは、「また、会おうね」「待っているからね」と、ひとことつけ加える。
  • 話すときは、相手が割りこめるように間をつくって話す。また、会議ではないのだから、話の流れにあまり縛られないように。
  • 相手の短所(欠点、弱点)が見えたりして、あからさまになっているときは、あえてふれないでそっとしておいてあげる。そういうときは、むしろ、自分のカッコ悪い部分を出してみる。
  • 家庭や職場や町内で、親子、上司と部下、隣近所のトラブルや争いごとがあったら、そこに物理的に近づいてみる。勇気が出せたら、そのあいだを割って通り過ぎてみよう。「あっ、すみません」と言って。
  • 相談や悩みごとをもちかけられたとき、アドバイスや励ましを求められても、ひと息つきながら、うなずくだけでまず聞きつづけてみる。
  • ごちゃごちゃに疲れたら少し離れて、またさびしくなったらすんなりと戻っていける。そんな日常をもてるように努力してみる。
  • 親や上司や友人に腹が立ったりしたら、「その人と自分との関係、その人の置かれている立場に腹が立っているんだ」と思って、「親(上司)だから、そんなふうに言いたくなるんだよね」と、少しへりくだり、つぶやいてみる。
  • 「なじんでいる」ことに対して、喜んで、具体的にほめてあげる。
  • 身近な人が失敗したときは、それがその人のすべてだとは思わず、こんな部分もあるんだと見直してあげる。そして、心の底から「しかたがないよ、そんなこともあるよ」と、あきらめでもなく、なぐさめでもなく、言ってあげる。
  • まわりの人に本音をはいてもらうためには、建て前や開き直りや見せかけでなく、自分の弱さもふくめ、自ら本音で話す。
  • 自信のない「心のくせ」が湧き起こってくるようなら、そのくせを最初にみんなの前で、「私、人前に立つとすぐあがってしまって」「僕、不安になると声が小さくなって」「私、ドキドキすると突っけんどんになるんですよ」などと、可能な範囲で打ち明けてみる。
  • 大切な人から見捨てられそうな不安が湧いたときには、相手に対し、自分の足りないところ、迷惑や悲しい思いをさせている部分について、ごまかさず、埋めあわせをするよう努力する。
  • 向こう三軒両隣、まず相手の目を見て、次に声に出して「おはようございます」と挨拶してみよう。ちょっと迷ったときでも、ひとまず頭を下げてみる。

心理療法~社交不安障害アサーショントレーニング~

〈アサーションとは何か〉を理解する前に、まずあなたの今現在における自己表現について簡単にチェックしてみましょう。

次のアサーション度チェックリストに答えてください。あなたが普段どうしているかを考えて、文章の後の(はい・いいえ)のいずれかを○で囲んでください。さて、「いいえ」の数はいくつありましたか。「いいえ」と答えた項目は、あなたが自己表現できていない、あるいは苦手な領域です。「いいえ」が半分以上あった人は、普段の生活や人間関係にやや支障を感じているかもしれません。

「はい」の数が、10以上あれば、あなたのアサーション度は、普通以上ということができます。

【アサーティブ度テスト】

※以下の各質問の□はい、または□いいえを選んで丸で囲んでください。

  1. あなたは誰かにいい感じを持ったときに、その気持ちを表現出来ますか?
    □はい   □いいえ
  2. あなたは自分の長所や、成し遂げたことを人に言うことができますか?
    □はい   □いいえ
  3. あなたは自分が神経質になっているときや緊張しているときに、それを受け入れることができますか?
    □はい   □いいえ
  4. あなたは見知らぬ人たちの会話の中に気楽に入っていくことができますか?
    □はい   □いいえ
  5. あなたは会話の場から立ち去ったり、別れを言ったりすることができますか?
    □はい   □いいえ
  6. あなたは自分が知らないことやわからないことがあったとき、そのことについて説明を求めることができますか?
    □はい   □いいえ
  7. あなたは人に援助を求めることが出来ますか?
    □はい   □いいえ
  8. あなたが人と異なった意見や感じを持っているとき、それを表現することが出来ますか?
    □はい   □いいえ
  9. あなたは自分が間違っているとき、それを認めることが出来ますか?
    □はい   □いいえ
  10. あなたは適切な批判を述べることが出来ますか?
    □はい   □いいえ
  11. 人から誉められたとき、素直に対応できますか?
    □はい   □いいえ
  12. あなたの行為を批判されたとき、受け答えができますか?
    □はい   □いいえ
  13. あなたに対する不当な要求を拒否することができますか?
    □はい   □いいえ
  14. 長電話や長話のとき、あなたは自分から切る提案ができますか?
    □はい   □いいえ
  15. あなたの話を中断して話し出した人に注意することができますか?
    □はい   □いいえ
  16. あなたはパーティーや催し物への招待を受けたり断ったりできますか?
    □はい   □いいえ
  17. 押し売りを断ることが出来ますか?
    □はい   □いいえ
  18. あなたが注文した通りのもの(料理や洋服など)が来なかったとき、そのことを言って交渉できますか?
    □はい   □いいえ
  19. あなたに対する人の好意がわずらわしいとき、断ることが出来ますか?
    □はい   □いいえ
  20. あなたが援助や助言を求められたとき、必要であれば断ることができますか?
    □はい   □いいえ

漢方薬治療

 

柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
神経質でビクビクして不安が強く、よく動悸を起こす場合や、対人恐怖や視線恐怖があり人からどう思われているかが過度に不安になるタイプに用いられる。投与量は7.5mg/日

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
適応は柴胡加竜骨牡蠣湯と似るが、もう少し体力が弱い人や、気力が低下している人に用いる。冷えが強い人、胃が弱い人、うつ兆候がある人、寝汗をかく人などの恐怖・不安・不眠が対象となる。投与量は7.5mg/日

甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
柴胡系と違い、パニックや過換気症候群を起こす患者や、泣いてばかりで、時に衝動的な行動を起こす患者、フラッシュバックに伴う悲哀的感情のある患者に用いる。体力が弱くても使用でき、頓服としても利用される。投与量は7.5mg/日

桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
動悸・不安・緊張・不眠などの場合に用いるが、特にフラッシュバックや悪夢の繰り返しなどがある場合に有効。投与量は7.5mg/日

加味逍遙散(かみしょうようさん)
月経周期に関連しておこる不安障害、更年期障害に伴う神経症状、月経症状に伴う不安・イライラ・強迫観念・動悸・胸部症状に用いられる。投与量は7.5mg/日

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
鬱々として不安を伴い、食事がのどを通らない場合に用いられる。投与量は7.5mg/日

加味帰脾湯(かみきひとう)
不安だけでなく、体力・気力が低下している場合に用いる。投与量は7.5mg/日

治療に要する期間と回復率

 一般的には、薬物治療と認知行動療法、行動療法、アサーショントレーニング、EMDRなどを組み合わせて約1年間の治療をおこなうと、およそ80%の方が治癒(発病前の状態に戻る)します。

社交不安障害で、長年にわたって悩んでいる人も多いです。若い人でも数年以上、中高年ですと30~40年以上の人もいますが、そんな方でも、SSRIを中心にした薬物療法と認知行動療法的な治療で多くの方が改善しています。また、長期間悩んでいた方の2割前後の方は、数カ月程度の治療ですっかり症状がとれ、人生が変わったといって喜ばれる人もいます。

ただし薬物療法に取り組む過程で、薬の効果が出るまでにはある程度の時間がかかります。とくにSSRIなどの抗うつ薬は、効果を実感するまでに2~3週間かかることがありますので、飲んですぐに効果がでなかったからといってがっかりすることはありません。また、不安症状に対して薬を処方する場合、最初は少量から始めて、経過をみながら次第に量を増やしていくことがよくあります。それは、患者の病状が悪いから増やすのではなくて、薬が体内に吸収したり排泄したりするスピードや血中の薬の濃度、その薬が脳の神経にどれくらい届くかなどは個人差が大きいため、同じような症状の方に同じ薬を使用するにしても、効果を上げるためには人によってみな量は違うということです。

それと、症状が改善したからといって、すぐに薬をやめてしまわないことです。とくに自分の判断で勝手に飲むのをやめることはよくありません。もちろん人によって異なりますが、薬物療法の場合は再び症状が出てくる可能性が高くなります。再発をできるだけ起こさないためにも、症状が改善してから1年ぐらいは薬を飲み続けたほうが安全です。一方、SSRIの治療では薬の効き過ぎにも注意が必要です。いずれにしても、副作用のことなどを含め、疑問や心配事があったら自分だけで判断せず、医師に相談や質問をして、適切な薬の使い方をみにつけ、あせらずに治療に取り組むことが大切です。

※参考文献

  • 『カプラン臨床精神医学テキスト』(メディカル・サイエンス・インターナショナル刊)
  • 『DSM-Ⅳ-TR精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院刊)
  • 『専門医をめざす人の精神医学〈第2版〉』(精神医学講座担当者会議/医学書院刊)
  • 『社交不安障害』(水島広子著/創元社刊)
  • 『社会不安障害(あがり症・対人恐怖)』(田島治著/筑摩書房刊)
  • 『社交不安障害』(マーチン・M・アントニー、カレン・ロワ著/鈴木伸一監訳/金剛出版刊)
  • 『社会不安障害(あがり症・対人恐怖)治療のストラテジー』(小山司編著/先端医学社刊)
  • 『臨床精神薬理』Vol.13,No.4(星和書店刊)
  • 『知らなかった社会不安障害(あがり症・対人恐怖)という病気』(磯辺潮著/講談社刊)
  • 『社会不安障害(あがり症・対人恐怖)のすべてがわかる本』(貝谷久宣著/講談社刊)
  • 『不安症を治す』(大野裕著/幻冬舎刊)
  • 『専門医に学ぶこころのケア』(久保木富房編集/メジカルビユー社刊)
  • 『不安と葛藤』(田代信維著/九州大学出版会刊)
  • 『不安障害がよくわかる本』(福西勇夫監修/主婦と生活社刊)
  • 『よくわかる社会不安障害(あがり症・対人恐怖)』(山田和夫/主婦の友社刊)
  • 『外来診療のご案内』(前田雅春/前田クリニック刊)