社交不安障害 の診断基準

社交不安障害 の診断基準

この記事のもくじ

 1980年の「精神障害の分類と診断の手引き」第3版(DSM-Ⅲ)において、社交不安障害の診断基準が示されて以降、欧米では様々な研究が進められてきました。以前はまれな病態であるという認識であったため、認知もされず治療もされなかった病気でしたが、その後大規模な疫学調査が行われ、生涯有病率も高いことがわかり、さらに社会生活においても障害が大きいことが明らかになってきました。治療についても、薬物療法をはじめ認知行動療法や精神療法などの研究も進み、高い有効性があることもわかってきました。また、臨床症状評価尺度の研究や開発も行なわれてきました。

DSM-ⅢおよびDSM-Ⅳによる診断

 DSM-Ⅲには、「他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況または行為をする状況に対して、顕著で持続的な恐怖を抱き、自分が恥をかいたり、恥ずかしい思いをするように行動すること(または不安症状を露呈したりすること)を恐れる状態である」と記しています。つまり、社交不安障害の患者においては、他人と話をしたり他人の前で行動したりするとき、自分は恥ずかしい思いをするのではないかと非常に心配になって、毎日の生活や仕事に支障をきたすようになります。また、自分が恐れている社会状況や対人関係が起こる可能性があると、強い不安感に襲われ、今度はそれを避けようとします。それが避けられない状況になると、非常に強い苦痛を感じます。

社交不安障害の人が不安や恐怖を感じる状況、また回避の対象となる状況として多いのは、「人前で話したり書いたりする」「公共の場所で食べたり飲んだりすること」「目上の人や、あまりよく知らない人との面会」などです。このような状況で、声が震えたり、手が震えたり、顔がひきつったりして恥をかくのではないか、と考えて非常に不安になります。ですから、人前で話したり食べたり書いたりすることを避けるようになります。試験や面接などで評価されることも苦手です。このように日常的にいつも不安や恐怖を体験していると、生理的な反応も現れやすくなり、動悸、発汗、振戦、紅潮、声の震え、胃腸の不快、下痢などの身体的症状が発現することがあります。重症化していくと、症状がパニック発作の基準を満たすこともあります。社交不安障害は2つの種類に分けられ、一つは非全般性社交不安障害、もう一つは全般性社交不安障害です。非全般性というのは、特定の状況(例えば、人前で話をする場合など)において、それが1つか2つ程度の状況に限って症状を訴えるものです。これに対し、全般性は文字通りほとんどの社会的状況の全般において症状を訴える病態で、非全般性よりは重症と考えられます。

その後の研究で病態の輪郭が明確に

 社交不安障害の研究が進むにつれて、DSM-ⅢからDSM-Ⅲ-Rへ、さらにDSM-Ⅳへと診断基準が推移することによって、社交不安障害の病態の輪郭がより明確になってきました。まず、DSM-ⅢのⅠ軸診断では、「人前で話す」「人前で字を書く」「会食する」「公衆トイレを使用する」といった、特定の社会的状況に対しての恐怖が強調されていました。ここでは主に、行為状況に対する恐怖や不安症状が示されていて、単一恐怖の一種という程度の認識でした。一方、全般的な社会的状況に対する恐怖症状や回避行動をとる症例は、Ⅱ軸診断の回避性人格障害に分類されていました。しかし、その後において大規模な疫学調査などが行われて、社交不安障害は有病率が高いこと、うつ病やアルコール依存の併発が多いことなどが明らかになりました。さらに、社交不安障害の患者は特定の社会的状況に限らず、仕事や学業、婚姻など日常生活全般にわたって大きな支障をきたしていることが明らかになったのです。

こうした状況を踏まえて、DSM-Ⅲ-Rでは、1つや2つの社会的状況における症状の他に、様々な社会的状況において恐怖や不安、回避行動を示す全般性の特定をしたのが変更点の大きなポイントです。これによって、社交不安障害は非全般性と全般性の2つの亜型に分類されることになりました。また、全般性社交不安障害と回避性人格障害との関係性については検討されていますが、アメリカでは両者は診断的に重複していると考えられているようです。

そしてDSM-Ⅳにおいては、他人に見られることによる赤面や震えや発汗などの恐怖症状が診断基準に明記されたのが特徴的です。これらの社会的状況に現れる不安症状をコントロールできなくなることによって、また他者から注視され、失敗して恥ずかしい振る舞いをしたらどうしようかという予期不安に陥り、それが悪循環となって恐れることが示されたのです。同時に、恐怖は状況依存性または状況誘発性のパニック発作の形をとることがあると明記されています。また、子供の社交不安障害について注釈が加えられるようになり、その不安が大人との交流だけでなく、同年代の子供との間でも起こるものでなければならないと記載されています。

臨床症状評価尺度

 社交不安障害を正確に診断し適切に治療するためには、診断の手順と情報収集が先決となります。そのための評価尺度としては、面接者評価尺度、自己記入式重症度質問紙、行動評定などがあります。一般的に使用される測定ツールについて以下見てみたいと思います。

①LSAS:《面接者評価尺度》
 LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale)は治療者評価尺度で、テストA(不安や恐怖を感じる度合い)とテストB(回避行動をする度合い)があり、それぞれ24項目からなっています。設問は、広範囲にわたる社交場面や行為場面についての重症度を評価するためにつくられています。患者は、一連の社会的状況について、1週間の恐怖と回避の程度について最も感じている度合いを1つだけ選びます。テストAで、対人交流や行為に対する不安や恐怖感の度合いをチェックして合計点をだし、テストBでは対人交流や行為からの回避の度合いをチェックして合計点を出し、双方を合算します。LSASの心理測定学的特性について検証した研究はあまり行われていませんが、治療効果においては良い結果を得ており、この評価尺度の信頼性と妥当性を裏付けるものとなっています。
②BSPS:《面接者評価尺度》
 BSPS(Brief Social Phobia Scale)は、18項目からなる面接者評価尺度で、社交不安障害症状の重症度を評価するために作成されたものです。LSASと同様に、患者は様々な社交場面において、1週間の恐怖感と回避で最も感じている度合いを選んで得点とします。BSPSは、質問に含まれる社交場面の数はLSASよりも少ないけれど、社交場面で生じる身体症状についても質問しています。BSPS評価尺度の特徴は、LSASやADIS-Ⅳよりも短い尺度で、実施時間も5~15分程度で評価できる点です。ただし、評価をより高めるためには、他の面接形式の評価尺度と併用することを奨めています。また恐怖感や回避についての下位尺度は、身体症状についての下位尺度と比較すると、心理測定学的に優れていると言われます。
③ADIS-Ⅳ《面接者評価尺度》
 ADIS-Ⅳ(Anxiety Disorders Interview Schedule for DSM-Ⅳ)は、治療者が行う半構造化面接です。この評価尺度では、精神的問題についての診断のための情報と、そのほか重症度の情報も得ることができます。具体的には、不安障害、気分障害、身体表現性障害、物質関連障害に関する情報が含まれています。治療者は、面接を実施するにあたっては広範囲の訓練を必要とします。また、面接は数時間といった長時間を要します。このような欠点はあるものの、社交不安障害症状の有無を評価する明確な基準があることや、多くの社交場面における恐怖や回避の程度を評価する利点があるということです。また、ADIS-Ⅳの高い信頼性と妥当性についても評価されています。
④SPIN《自己記入式重症度質問紙》
 SPIN(Social Phobia Inventory)は17項目の設問からなっている自己記入式質問紙です。社交不安障害にともなう一連の症状について、回答者がどの程度困っているのかが評価できます。内容は、恐怖感、回避、生理的覚醒の3下位尺度から構成されています。SPINの回答は、患者の1週間前の状態が回答されるので、治療期間中であれば1週間ごとの経過を測定するのに有効な尺度といえます。またSPINの利点といえば、実施の所要時間が数分という短さなので、患者は治療する前にすぐに回答することができます。カットオフ得点が19点(最高得点は68点)とあって、社交不安障害の人とそうでない人とを弁別するのに有効とされています。
⑤SPS《自己記入式重症度質問紙》
 SPS(Social Phobia Scale)は、20項目について回答する自己記入式質問紙で、他人から見られることに対する不安に焦点があてられています。回答者は、様々な社交状況ついて、どの程度の不安(「まったくあてはまらない」から「非常にあてはまる」の段階)に思っているかを回答します。尺度の状況には「公衆トイレを使う」「他の人たちがすでに着席している部屋に入る」「人前で気が遠くなったり気分が悪くなったりする」「人前で飲食をする」などがあります。簡便な尺度なので数分で回答できます。したがって、これを使って治療時の経過を毎週確認することもできます。SPSは治療効果への感度もよく、信頼性の高い質問紙となっています。
⑥SIAS《自己記入式重症度質問紙》
 SIAS(Social Interaction Anxiety Scale)は、SPSと併せて作成された自己記入式質問紙で、他人と交流する際の恐怖を評価するものです。具体的には「 パーティーに参加する」「会話中に困惑して話す」など、全部で19項目なので簡便で容易に実施可能です。SPSと同様に治療効果への感度はよく、尺度も関連していますが、評価においては異なる概念があるとされています。
⑦BAT《行動アプローチテスト》
 BAT(Behavioral Approach Tests)は行動アプローチテストといわれるもので、患者に恐怖の対象となる状況に直面するように教え、恐怖の対象となる行動をとるように指示し、その反応を確認するテストです。具体的な反応項目というのは、主観的な恐怖感の評価、逃避や回避、安全確保行動、不安の思考、身体感覚、状況の一側面の変化に対する反応などです。このBAT方式を用いることで、面接式や自己記入式の評価だけでは得られない重要な情報を得ることができます。一例としては、自分の恐怖感を最小限に評価する患者においては、ある状況からの回避について「ほとんどない」または「まったくない」と報告する場合がありますが、実際の状況に直面すると、身体が硬直することもあり得ます。またこのBATは、治療効果を評価するためにも有効な手段になり得ます。行動過程における行為の変化から、治療の効果についての情報を得ることもできます。

社交不安障害でよく使われるBATは、患者に「他者と」「集団で」「ビデオカメラの前でスピーチをしてもらう」などの課題です。社交不安障害において最も恐怖の状況の一つといえば、スピーチです。スピーチ恐怖こそが、社交不安障害の診断のうえで重要なポイントになるからです。他のBATの例では、「自分から会話をしてもらう」「人前で自己紹介をしてもらう」などがあります。一般に臨床場面では、患者の恐怖や治療目標に関連した状況を選び、個人個人に合わせたBATを用いることが肝要となります。実際にBATを行なう場合は、最も強い恐怖の場面を治療者と患者で選びます。治療の前後においてその恐怖の場面に直面してもらい、治療期間中に複数回実施してもらうこともあります。BATを実施している間は、患者は自分の感じる苦痛の度合いを治療者に伝えます。0から100(または0から10でもよい)の段階(「全く恐怖がない」から「これ以上の恐怖はない」)の尺度で、患者の主観的な恐怖感を報告してもらい評価します。

DSM-Ⅳ-TRとICD-10の診断基準

 社交不安障害の診断には、世界の精神科医が使っているアメリカの精神医学会による『精神疾患の分類と診断の手引き』(DSM-Ⅳ-TR)の中の「社交不安障害の診断基準」か、またはWHO編の『精神および行動の障害』(ICD-10)による診断ガイドラインが使われます。DSM-Ⅳ-TRは、社会生活面に支障が現れていることを条件にしている点で、ICD-10より診断基準は厳密になっているのが特徴です。DSM-Ⅳ-TRでは、社会恐怖(社交不安障害)と表記されていますが、社会恐怖というと別の社会不安を想起させるイメージがあるために、日本では一般的に社交不安障害SAD(Social Anxiety Disorder)、または社会不安障害(あがり症・対人恐怖)という病名が一般的に使われています。DSM-Ⅳ-TRの診断基準は、一般の人には少し解りにくい文章ですが、まず全文をそのまま掲載します。

社交不安障害の診断基準(DSM-Ⅳ-TR)

  • A. よく知らない人達の前で、他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況、または行為をするという状況の1つまたはそれ以上に対する顕著で持続的な恐怖。その人は、自分が恥をかかされたり、恥ずかしい思いをしたりするような形で行動(または不安症状を呈したり)することを恐れる。  注:子供の場合は、よく知っている人とは年齢相応の社会関係をもつ能力があるという証拠が存在し、その不安が、大人との交流だけでなく、同時代の子供との間でも起こるものでなければならない。
  • B. 恐怖している社会的状況への暴露によって、ほとんど必ず不安反応が誘発され、それは状況依存性、または状況誘発性のパニック発作の形をとることがある。
    注:子供の場合は、泣く、かんしゃくを起こす、立ちすくむ、またはよく知らない人と交流する状況から遠ざかるという形で、恐怖が表現されることがある。
  • C. その人は、恐怖が過剰であること、または不合理であることを認識している。
    注:子供の場合、こうした特徴のない場合もある。
  • D. 恐怖している社会的状況、または行為をする状況は回避されているか、またはそうでなければ、強い不安または苦痛を感じながら耐え忍んでいる。
  • E. 恐怖している社会的状況、または行為をする状況の回避、不安を伴う予期、または苦痛のために、その人の正常な毎日の生活習慣、職業上の(学業上の)機能、または社会活動または他者との関係が障害されており、またはその恐怖症があるために著しい苦痛を感じている。
  • F. 18歳未満の人の場合、持続期間は少なくとも6カ月である。
  • G. その恐怖または回避は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではなく、他の精神疾患(例:広場恐怖を伴う、または伴わないパニック障害、分離不安障害、身体醜形障害、広汎性発達障害、またはスキゾイドパーソナリティ障害)ではうまく説明されない。
  • H. 一般身体疾患または他の精神疾患が存在している場合、基準Aの恐怖はそれに関連がない。例えば、恐怖は、吃音、パーキンソン病の振戦、または神経性無食欲症または神経性大食症の異常な食行動を示すことへの恐怖でもない。
  • ▼該当すれば特定せよ
    全般性 恐怖がほとんどの社会的状況に関連している場合(例:会話を始めたり続けたりすること、小さいグループに参加すること、デートすること、目上の人に話をすること、パーティーに参加すること)
    注:回避性パーソナリティ障害の追加診断も考慮すること。

 以上が、DSM-Ⅳ-TRに掲載されている社交不安障害の診断基準ですが、これを読んだだけでは、なかなか一般の人には理解されにくい表現です。そこで、解りやすい言葉で表現した内容を次にまとめてみました。

  • A. 他人から注目される状況や、他人が見ている場所で何かをするとき、また知らない人と交流をするときなど、他人の視線を浴びながら何か行為するといった場面で、常に著しい恐怖感を抱く。面目を失ったり、恥をかいたり、おかしな行動や不安な姿を見せたりして、恥ずかしい思いをするのではないかと恐れる。
  • B. 恐怖感を抱くような状況にさらされると、ほとんどいつも不安を生じる。その不安は、状況に深く結びついていて、「パニック発作」を誘発することがある。
  • C. 自分自身が抱いている恐怖感や不安が、普通の人が感じているものよりも過剰であり、不合理であることを認識している。つまり、自分が思っているほど恐れなくてもよいと分かっているのに、そうなってしまう。
  • D. 恐怖感を抱く状況にならないように、それを避けようと行動してしまう。または、強い不安や苦痛を感じながらも耐え忍んでいる。
  • E. これらの恐れている社交不安を避け、強い不安に苦しめられることで、日常生活や社会生活、人間関係に著しい支障をきたしている。
  • F. 18歳未満の人は、このような状況が、少なくとも6カ月以上続いている。
  • G. この恐怖を回避する行為は、薬物や内科疾患を原因とするものでもなければ、その他の精神疾患の症状でもない。
  • H. 内科的疾患やほかの精神障害がある場合、その疾患と障害の症状は診断基準Aの恐怖とは関係しない。

 診断基準のBに「パニック発作の形をとることがある」とあります。このパニック障害に対しては、しばしば誤解されることがありますので、もう一度ここで診断基準に添った判断を整理しておきたいと思います。パニック発作は、一般的に「パニック状態になる」とか「パニックに陥る」といわれるものではありません。これは一過性の混乱状態を指すものであって、パニック発作とは異なります。パニック障害は、後で示すパニック発作の診断基準によって正しく判定されますが、しばしば誤解されるのが、過去にパニック発作を一度、または数回起こしただけで、その人をパニック障害がある人と判断してしまうケースがありますが、それだけでパニック障害がある人とは言えません。パニック障害は、パニック発作を繰り返し起こし、それによって日常生活に支障をきたす場合において、はじめてパニック障害と呼ばれます。このことは、精神科医の間では共通の認識となっていますが、精神科医以外の医師や、一般の人たちの間でしばしば誤解されていることです。パニック障害のメカニズムについては、近年、かなり解明されてきていますが、パニック障害の場合、serotonin関連疾患であり、適切な治療を早期に受けなければ、パニック性不安うつ病と呼ばれる非定型うつ病の病態を持ったうつ病を発症しますので、早期の段階から積極的な治療を要します。

ここで、社交不安障害の診断基準にあるパニック発作は、アメリカ精神医学会のDSM-Ⅳに示されている診断基準によって判定されます。確認のために以下にパニック発作の診断基準をあげておきます。

パニック発作の診断基準

 強い恐怖または不快を感じ、はっきりと他と区別できる期間で、そのとき以下の症状のうち4つ、またはそれ以上が突然に発現し、10分以内にその頂点に達する場合をパニック発作と診断します。

  1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは震え、手足のしびれ
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 嘔気または腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  9. 現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分自身から離れている感じ)
  10. コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
  11. 死ぬことに対する恐怖
  12. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  13. 冷感または熱感

 診断基準では4つ以上となっていますが、多くのパニック発作では、ほとんどすべての項目を満たしています。また、診断基準ぎりぎりの症状で判断に迷うような場合は、パニック発作でないことがほとんどです。このパニック障害の他に、社交不安障害と区別すべき他の精神疾患として、分離不安障害(小さい子供に認められる精神障害で、親から離れるときに、本人も意識しないような強い不安が出現するもの)、身体醜形障害(自分の体の全部、あるいは一部が醜いという妄想的な確信を抱き、そのことによって日常あるいは社会生活上に支障を来しているもの)、広汎性発達障害(自閉症やアスペルガー症候群)、統合失調質人格障害などがあります。とくに、社交不安障害と統合失調質人格障害との区別が重要になりますので、ここで統合失調質人格障害の診断基準を確認しておきます。

2つの人格障害と社交不安障害との関係

 DSM-Ⅳ-TRの診断基準では、2つの人格障害と社交不安障害の関連性について触れています。一つは「統合失調質人格障害」、もう一つは「回避性人格障害」です。この2つの人格障害と社交不安障害の区別を認識しておくためにも、2つの人格障害の診断基準を挙げておきます。

統合失調質人格障害の診断基準

A 社会的関係からの遊離や、対人関係状況で感情表現の範囲が限定されるなどの広範な様式である。成人期早期に始まり、以下に述べる種々の状況で明らかになる。以下のうち4つ、またはそれ以上によって示される。

  • ① 家族の一員であることを含めて、親密な関係を持ちたいと思わない。または、それを楽しく感じない。
  • ② ほとんどいつも孤立した行動を選択する。
  • ③ 他人と性体験を持つことに対する興味が、もしあったとしても、少ししかない。
  • ④ 喜びを感じられるような活動が、もしあったとしても、少ししかない。
  • ⑤ 第一度親族(親または子)以外には、親しい友人または信頼できる人がいない。
  • ⑥ 他人の賞賛や批判に対して無関心に見える。
  • ⑦ 情緒的な冷たさ、よそよそしさ、また平板な感情。

B 統合失調症、気分障害、精神疾患性の特徴を伴うものや、他の精神疾患性障害または広汎性発達障害の経過中にのみ起こるものではなく、一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものでもない。

注:統合失調症の発症前に基準が満たされている場合には、“病前”と付け加える。

 これで分かるように、統合失調質人格障害の人は社会から撤退しているのですが、それは生活全般にわたっていて、限定された状況だけではありません。また、統合失調質人格障害の人は、あらゆる対人関係において、他人との接触にまったく無関心であるのに対し、社交不安障害の人は他者との関係性に関して敏感すぎる、という点が正反対の特徴といえます。

もう一つの人格障害である「回避性人格障害」ですが、これは社交不安障害の全般性タイプとして、回避性人格障害の追加診断も考慮すべきであると記載されています。これは、回避性人格障害と社交不安障害の区別が難しいということを意味しているだけでなく、治療においては並列して行ってもかまわないことを示唆しています。普通、人格障害というと、不安定な対人関係が長期にわたって続いているような人達をいい、普通に生きられない人達の場合です。しかし、社交不安障害の人は、対人関係から撤退することはあっても、不安定な人間関係をつくることはあまりしないことを考えると、この二つの疾患は別のものとして考える必要があります。。ただし、重度の社交不安障害の人においては、社会から完全に撤退するために、回避性人格障害との鑑別が必要です。しかし、この鑑別が困難であることや、追加診断もしなければならないのです。ただ、回避性人格障害にかかる人の割合は、社交不安障害の人の1割程度ですから、回避性人格障害の診断基準を満たすような人は、ほとんどが社交不安障害の診断基準も満たしていると考えられます。

したがって、二つの疾患にかかっていることを追加診断で必要以上に求める必要はなく、重症の社交不安障害であれば、ほとんどは回避性人格障害の診断基準を満たしていますし、治療法にも大きな違いはないのです。ここで、回避性人格障害の診断基準を示しておきます。

回避性人格障害の診断基準

 社会的制止や不適切感、および否定的評価に対して過敏に反応してしまう広範な様式である。成人期早期までに始まり、以下に述べる様々の状況で明らかになる。以下のうち、4つまたはそれ以上によって示される。

  1. 批判、否認、または拒絶されることに対する恐怖のために、対人接触のある職業的活動を避ける。
  2. 好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたいと思わない。
  3. 恥をかかされると、またはバカにされることを恐れるために、親密な関係のなかでも遠慮を示す。
  4. 社会的な状況では、批判されること、または拒絶されることに心がとらわれている。
  5. 不適切感を恐れるために、新しい対人関係状況で制止が起こる。
  6. 自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、または他の人より劣っていると思っている。
  7. 恥ずかしことになるかもしれないという理由で、個人的な危険をおかすこと、または新しい活動に取りかかることに、異常なほど引っ込み思案である。

社交不安障害の診断基準(ICD-10)

 WHO編の『精神および行動の障害』(ICD-10)による診断ガイドラインです。

  • A. 比較的小さなグループで、他人にじろじろ見られることが恐怖の中心であり、ふつう社会的場面を避ける。
  • B. 通常、自己評価が低く批判を恐れる。
  • C. パニック発作にいたり得る、赤面、震え、嘔気、尿意頻迫が訴えられることがある。
  • D. 恐怖状況を避けるか、強い不安をもって耐える。忌避がしばしば著明、ほぼ完全な社会的ひきこもりがみられることがある。
  • E. 不安は特別な社会的状況にしばしばみられるか、それに限られる恐怖をもつ状況を可能なら避ける。
  • F. 社交不安障害と広場恐怖の区別が困難な場合は、広場恐怖が優先される。パニック障害は、恐怖症のない場合のみ診断される。
  • ※ 社交不安障害は、限局型(公衆の場面での食事、異性とのつきあい、人前でのスピーチなどに限られる場合)と、びまん型(ほとんどすべての社会的状況が関与する場合)に分けられる。

重症度の評価について

 社交不安障害の場合、客観的に「これは重い」「これは軽い」症状である、といった特定はできません。重いか軽いかは、その症状が患者自身にとって、どれだけ社会生活や日常生活に支障を与えているかによって決まるからです。さらに治療法においても、その患者が置かれている環境によって大きく左右されますので、どのような治療法を選択すればよいのかも変わってきます。とくに、症状の重い軽いは、その患者がストレスを感じる環境(例えば新しい職場、新しいクラスなど)がいつ生じたのかによって左右されますし、また現在置かれている環境によっても変化します。つまり、時の経過とともに症状の程度は刻々変化しているということです。

一般に、精神科のクリニックを受診するきっかけでもっとも多いのは「人前で緊張して話せなくなった」というケースです。サラリーマンであれば、営業先でお客さんと話すのに思うように言葉が出てこなかった、学生であれば人前で発表するのに自分を見失って何も話せなくなった、子育て中の母親であれば幼稚園の集まりで意見を求められたが頭の中が真っ白になった、というものです。まだまだ、精神科や心療内科を受診することに抵抗感があるなかで、「人前で自分が出せない」と苦しみ、藁にもすがりたい気持ちで受診する人が多いのです。「人前で緊張する」「人前で話せない」という切実な訴えが、患者にとっては寝ても覚めても心の負担となっています。

一方、軽い症状といっても、その症状がどれだけ患者の生活に支障を与えているかにかかっています。例えば、結婚式や葬式の名簿に記帳するとき手が震える、会話をするとき顔が赤くなる、など普通の人からみれば些細なことかもしれませんが、そのことで結婚式や葬式に出席できなかったりすれば、そのこと自体が社交不安障害なのです。ただ、このような症状は、結婚式や葬式やデート以外では起こらない、限定的なものです。ある特殊な状況以外は苦痛を感じない、つまり生活全般にわたって支障をきたしていないという意味では軽症ともいえます。

社交不安障害の診断テストのいろいろ

 現在、診断基準にもとづいて作成された「社交不安障害診断テスト(チェックシート)」には、様々なタイプがあります。比較的簡単なものから、チェック項目が多いものまで、幾つかのパターンがありますので紹介します。

診断テスト・1

 このシートは、早期発見を目的としたチェックシートで、社交不安障害が気になる方は簡単にチェックできます。早い段階で病気に気がつくことは、治療効果を上げるためにも必要です。ただし、このシートの結果だけで、病気だと決めつけることは大変危険です。チェックの結果、異常を見つけたら、まず専門医の診断を受けましょう。

  • ① この1カ月のうちに、人前で注目されることに強く恐怖を感じましたか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は②へ)
  • ② 恥ずかしい思いをするかもしれない状況・行動に、不安を感じますか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は③へ)
  • ③ 必ず強い恐怖や不安を感じる状況がありますか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は④へ)
  • ④ それらの不安は、自分でも常軌を逸していると思いますか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は⑤へ)
  • ⑤ 恐怖を感じる場所や状況を避けたり、苦痛があっても耐え忍んでいますか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は⑥へ)
  • ⑥ その恐怖や不安のために、生活習慣、仕事、学校生活や人間関係がうまくいかないと思いますか? または、うまくいかないのではないかと恐れることが苦痛になっていますか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は⑦へ)
  • ⑦ 人と接することのほとんどが苦痛だと感じていますか? また、避けてしまうことはありますか?
  •    □はい   □いいえ    (はいの場合は⑥へ)

【診断結果】
・ ⑥まで進んだ人(つまり⑦には該当しなかった人)は、非全般型の社交不安障害の恐れがあります。
・ ⑦まで進んだ人は、全般型の社交不安障害の恐れがあります。
・ ⑥まで進まなかった人はは、今のところ、社交不安障害である可能性は低いといえます。気になるようでしたら、専門医への相談をおすすめします。

診断テスト・2

 これは、Sheehan D.V.らによって作成された「M・I・N・I(the Mini-International Neuropsychiatric Interview)」という質問法です。DSM-Ⅳに基づく「M・I・N・I」の問診票を平易に表現すると以下のようになります。

  • ① 人前で話す、食事をする、字を書くなどのときに、人から注目されていると思うと怖くなったり、とまどったりする。
  • ② 自分でも恐がりすぎていると思う。
  • ③ その恐怖は、わざと避けたり、じっと我慢したりしなければならないほどである。
  • ④ それによって仕事や日常生活が妨げられている。

【診断結果】
・以上、4項目の内容をすべて満たせば、社交不安障害の疑いがあります。

診断テスト・3

 以下の設問に対して、「その通り」と思ったら( )の中に 1点を、「そんなことはない」と思ったら( )の中に 0点を記入してください。

  • ① 他人の視線に恐怖を感じる。見られている感じがたまらなくイヤ。( )点
  • ② 人前で話すのが怖い。スピーチを頼まれると恐怖を感じる。( )点
  • ③ 怒っている人を目の前にすると、激しく動揺してしまう。( )点
  • ④ ストレス発散で友人にカラオケを誘われたが、怖くて歌えなかった。( )点
  • ⑤ 人前で字を書きたくない。手がブルブル震えてみっともないから。( )点
  • ⑥ 電話での応対がまったく苦手。電話で話すのが怖い。( )点
  • ⑦ 緊張すると汗がダラダラ出て止まらない。発汗が異常である。( )点
  • ⑧ 人の集まりが大の苦手。何を話せばよいかわからず、浮いてしまう。( )点
  • ⑨ すぐに顔が真っ赤になって気分が最悪に。止めようがない。( )点
  • ⑩ 初対面の人に自分から話しかけられない。( )点
  • ⑪ レストランでの会食が苦手。ひどく緊張して、食事がのどを通らなくなってしまう。( )点
  • ⑫ 自分の失態を忘れようとして、また不安感をなくそうとして、アルコールに頼りがち。( )点
  •                                <合計点=   >点

【診断結果】
7~12点……社交不安障害の疑いがあります。ただしここで示す判定結果は大まかな目安です。専門医に相談しましょう。
1~6点……苦手な状況が限られていても、苦痛が大きく、その状況を避けるためにあらゆる努力をしている状態なら、社交不安障害の疑いがあります。気になったら、専門医に相談を。
0点……社交不安障害の疑いは、ほとんどありません。

 

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