社交不安障害 (あがり症)とは

社交不安障害 (あがり症)とは

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社交不安障害 (あがり症)とは ※ 旧称:社会不安障害

 社交不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)は、アメリカにおける大規模な疫学調査によって高い生涯有病率が知られるようになり、それ以来、社会生活上の障害が大きい疾患の一つとして注目を集めています。またそれに伴い、近年多くの研究や症例報告が行われ、発症原因についても様々な報告がなされています。

社交不安障害を一言でいえば、社会での交際の場や人前や観衆の前で何らかの行為をするとき、強い不安や緊張、恐怖を感じたり、またその状況を避けたりすることによって、日常生活に支障をきたす病気のことです。社交不安障害の人は、人前で常に恥ずかしい思いをしたり、困惑したり、悪い評価をされるのではないかと心配をしたり、他人にじろじろ見られているのではないかという不安に陥っています。病気ではない人においても、人前で何か行為をしようとすると、神経質になったり、内気になったり臆病になったりすることはよくあります。ある研究によると、人口の約40%の人は慢性的に「恥ずかしい」という不安の気持ちを常に持っているといいます。社交不安障害と診断される人は、この「不安」症状が普通の人と比べて顕著で持続的であるという点が特徴的です。それゆえに、強い苦痛を伴い、職業や学業、人間関係をはじめとする日常生活の機能全般に支障をきたすことになります。社交不安障害の人が、しばしば不安や恐怖を感じる場面というのは以下のような状況においてです。

  • 初対面の人と会って会話をするとき。
  • 多くの人前で話すとき。
  • 人前で電話をしたり、文字を書いたりするとき。
  • 目上の人と会話をしたり食事をするとき。
  • 会議や議論の場で、自分の意見を述べるとき。
  • パーティーや集会に参加するとき。
  • 異性と話したりするとき。
  • 授業中に指名されて意見を述べるとき。
  • 人前で失敗したとき。
  • 多くの人の注目を浴びるとき。
  • その他の社交の場で。

 このように、様々な場面や状況において恐怖を感じますが、これにはもちろん個人差があります。一つの特定の場面(たとえばスピーチの場面)のみで恐怖を感じる人もいれば、2~3の状況で恐怖を感じたり、さらにはほとんどすべての社交場面において恐怖と苦痛、不安を感じる人もいます。症状の現れ方や度合い、発症頻度は人によって違います。また赤面、震え、発汗などの身体症状を伴うこともあります。

この社交不安障害は、中学生や高校生などの年代に最も多く発症しています。思春期は、自意識が芽生える年頃でもあり、他人から自分はどう見られているのかが気になります。人の視線を強く意識するようになり、人前で失敗したくない、失敗したらどうしようという不安が強まります。発症のきっかけも「授業中に先生に指名されてうまく答えられなかった」とか、「異性の前で、上がってしまって赤面した」とか、「壇上で大勢の人の前で話そうとしたら、急に頭の中が真っ白になって、立ちすくんでしまった」など、人によって様々です。共通して言えることは、1人でいるときは問題なくできることが、人が見ている前ではできなくなることです。また、一度失敗すると、「次も失敗するのではないか」という不安に襲われ、その状況を避けようとします。他人から見ればささいなことが、本人にとってみれば大きな不安であり恐怖なのです。

これまであがり症や赤面恐怖、また対人恐怖などは本人の性格の問題として考えられており、性格だから仕方ない、そのうちに治るだろうと考え、人知れず悩みをかかえて生活していた人がたくさんいました。実は、これらの症状は社交不安障害という病気であり、治療すれば治る確率が高いことが近年になってわかってきました。この社交不安障害は、一つの精神疾患であり、長い経過をたどる不安障害の一つで、薬物療法や認知行動療法で治すことが十分可能であることが、最近の精神医学の進歩によって証明されています。

社交不安障害の概念と歴史的経緯

 社交不安障害という病気の概念は、今から30数年ほど前、アメリカ精神医学会(APA)が発表した『精神障害の分類と診断の手引(DSM-Ⅲ)』(1980年改訂 第3版)において、「社交恐怖」が登場したのが最初です。そして14年後の1994年に、改訂版(DSM-Ⅳ)が出され、ここで社交恐怖に「社交不安障害」が併記されました。最近は、社交恐怖より「社交不安障害」という病名が多く使われるようになりました。(この社交不安障害を「社会不安障害(あがり症・対人恐怖)」と呼ぶ場合も多いですが、日本精神神経学会で再検討した結果、「社交不安障害」という呼称に変更されています。本章でも基本的には「社交不安障害」を用いています)。いずれにしても、社交不安障害は、病名ができて、20年そこそこの浅い歴史しか経っていない新しい概念の病気です。


これでわかるように、社交不安障害と社交恐怖(Social Phobia)の概念は基本的に同じです。それは、DSM-Ⅲにおける社交恐怖において「人の視線にさらされるような状況における恐怖」や「自分が人前で恥をかいて、困ってどうしたらよいかわからないような行為をするかもしれないという恐怖」と説明し、臨床的な特徴としています。さらに、社交恐怖の人は「そうした状況や行為を避けようとするが、それができない場合は強い不安や苦痛を感じる」と述べているように、社交不安障害の概念と同じ内容になっています。

ところで、日本では以前から「対人恐怖」という概念がありました。その説明では「他人と同席する場面で、強い不安や緊張が生まれ、他人に軽蔑されたりしないか、他人に不快感を与えたりするのではないかと悩むことから、対人場面を避ける神経症」となっています。この症状は、森田神経質という概念の中心的な病態としてもあげられており、それに伴う視線恐怖、赤面恐怖、体臭恐怖などについても記述されています。このことから、対人恐怖の概念は社交恐怖ときわめて類似しており、共通していることが明らかといえます。

日本における対人恐怖の歴史は古く、100年ほど前から精神科臨床で注目されていた病気です。病態としての概念は広く、気遣いや人見知りなど対人関係における正常な範囲での緊張から、神経症レベルの恐怖症、さらには精神病との鑑別に迷うようなものまで、様々な症例が含まれていて、対人恐怖という病名のもとに多様な患者を対象にした研究が数多くなされてきました。したがって、対人恐怖は精神科医だけに限らず、広く一般の人にも知られていた病気であり、民間療法のような書籍も多く出版されて実践されてきました。こうした長い歴史のなかで日本独自の対人恐怖に対する診断や治療法が確立されてきたことを考えると、日本の社交恐怖(Social Phobia)の研究は、世界に先駆けて進められていたともいえます。

何よりも、社交恐怖という病気の概念が、世界で初めて登場したのが1980年(DSM-Ⅲ)という近年のことで、それまではどこの国にもSocial Phobiaという言葉は存在しなかったばかりか、諸外国の精神医学の専門書等にもそれに類似した症例や研究論文はほとんど見られませんでした。したがって、DSM-Ⅲで発表されるまでは、対人恐怖は日本特有の文化や社会と密接に関連した日本にしかない病態として考えられていたので、DSM-Ⅲで対人恐怖と同じ症例が世界各国に存在すると言われても、日本の精神科の関係者にとってはにわかにSocial Phobiaを素直に受け入れることはできなかったのです。しかし、いつまでもSocial Phobiaを無視する訳にはいかなくなりました。まず、1980年にアメリカ精神医学会のDSM-Ⅲに病態としてのSocial Phobiaが登場し、1992年には世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第10改訂版(ICD-10:精神および行動の障害-臨床記述と診断ガイドライン)にも登場するようになりました。そして1994年に改訂版(DSM-Ⅳ)で社交恐怖と社交不安障害が併記されるに至り、その後も諸外国からも研究論文や症例報告等が相次いで専門誌などに発表されるなかで、日本の対人恐怖を世界基準としての社交不安障害に合わせざるを得なくなりました。さらに、厚生省(厚生労働省)による保険病名をWHO分類(社交恐怖)に準拠するよう指示があったことも、大きな理由となっています。こうした経緯のなかで、1994年のDSM-ⅣにおいてSocial Phobia(Social Anxiety Disorder)という形で併記されたことで、今日国内においても社交不安障害という病名で呼ばれるようになったのです。

社交不安障害とはどういう病態のことをいうのか、その診断基準となっているのが、1994年にアメリカ精神医学会が改訂したDSM-Ⅳ(詳しくは「診断」の章)、および1992年にWHOが改訂したICD-10(詳しくは「診断」の章)等です。この中で、DSM-Ⅳでは「他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況、または行為をするという状況の1つまたはそれ以上に対する顕著で持続的な恐怖を抱き、しばしば恐怖を抱く状況を回避する」と定義しています。またICD-10では「他人にじろじろ見られることが恐怖」と記述されているように、社交不安障害の概念が明らかにされています

一般的な症状

 社交不安障害の症状の特徴は、DSM-Ⅳ(アメリカ精神医学会・精神疾患の分類と診断の手引き)の診断基準から見て取ることができます。そこには、「社会的な状況に対して顕著な恐怖を感じ、患者自身においても病識があって、恐怖を回避するので社会生活が困難となるために苦痛を著しく感じる」とあります。さらに、身体面でも赤面や震え、発汗などの不安症状がでることを恐れると明記されています。

では実際に、社交不安障害の患者における不安や恐怖、また回避行動の状況とはどういうことなのかというと、まず挙げられるのは人前での会話や書字、大勢の人がいる場所での飲食、知らない人との面談などがあります。そのような状況や場面において、患者は相手に声の震えや顔のひきつり、手の震えなどを気付かれ、自分は恥ずかしい思いをするのではないかと考えて、非常に不安になります。そのため、人前で話したり食べたり書いたりすることを避けようとします。このように、社交不安障害の患者はいつも不安症状を体験しており、同時に不安に伴う生理的な反応が現れるのもこの疾患の特徴です。その生理的な反応である身体症状として現れる主なものといえば、赤面、発汗、動悸、手指振戦(手の震え)、声の震え、胃腸の不快感、下痢などが挙げられます。

社交不安障害の患者の症状を健常者と比較した調査報告があります。それによると、社交不安障害の患者グループにおける恐怖と回避の頻度の高い順は、①多くの人前で話す、②他人の視線を浴びる、③人前で字を書いたり演奏したりする、④目上の人と話す、⑤社交的な集まりに出る、の順序となっていました。これに対し、健常者グループが恐怖と感じる頻度の一番高いのは「人に叱られる」であり、次に「人の前で話す」となっています。これでわかるように、社交不安障害の患者および健常者においても、双方に共通していることは「人前で話す」ことが最も恐怖であり不安であることがわかったのです。では、違いは何かというと、患者のグループで2番目に頻度の高かった「他人の視線を浴びる」が、健常者においては有意に低い頻度であることがわかったのです。この結果から言えることは、患者は「人の視線を浴びる」ことで、健常者と比較して想像上の恐怖を感じる傾向にあるということです。また「スピーチ恐怖」は健常者にも多いという観点から、病理性は低いという考察をしている点は興味深いところです。一方、身体症状についての調査によると、患者では「発汗」「震え」「動悸」「赤面」「筋肉のこわばり」の順に頻度が高くなっており、これを健常者の身体症状と比較すると、「震え」「筋肉のこわばり」については患者のグループにおいて多く見られることから、より病的な身体症状であると結論しています。以上のことから、社交不安障害の症状の特徴としては「他人の視線」に対する不安や恐れが強い傾向にあり、身体症状では「顔のこわばり」や「震え」が多く見られる点にあります。

一般的には、誰でも人前で話をしたり初対面の人に会ったりするときは、多かれ少なかれ緊張します。これを「社会不安」といいます。ところが、その緊張が極度に高まって苦痛を感じ、社会生活に支障をきたすような状態になると社交不安障害といって、治療の対象になります。社交不安障害の症状は「心の症状」と「体の症状」の両面において現れ、具体的には次のようなものが挙げられます。

精神症状

1.人前で話すとき極度に緊張する
 「スピーチ恐怖」といわれ、会議での発言、披露宴のスピーチ、朝礼のあいさつ、PTAの集まりでの発言など、人前で話す機会が増えたことをきっかけに、しばしば現れる症状です。言葉に詰まってしまったり、しどろもどろになったり、声や体が震えるなど緊張の現れかたは様々です。とくに初対面の人の前で話す時とか、肩書きの偉い人の前で話すとか、大勢の人に囲まれて面接を受けるなどは、非常に高いハードルになります。このほか、デートなども怖くなります。彼女と話すとき過度に緊張したり、おしゃれなレストランに行くこと自体が苦痛になったり、周りの人が注目しているのではないかと気になったりします。それによって結婚が破綻したとか、学校へ登校できなくなったとか、会社に出勤できなくなったなど、現実の生活に支障をきたすようになったら病的な状態と考えられます。
2.人前で字を書こうとすると手が震えてしまう
 結婚式や葬式などのときに受付の人の前で記帳したり、窓口係の面前で申込書を書いたりするときに、手が震えて字がうまく書けない状態になります。会社でも、営業で出向いて相手に説明しようとしたとき手が固まってしまい、震えて字が書けなくなることもあります。また学生なら、黒板に板書できなくなって、講義や授業に出るのが億劫になります。いったん意識しだすと、人前で字を書くことに恐怖感を覚え、ますます震えが強くなります。書くとき手の筋肉がこわばって、実際に書くと震えたような字になりますが、これを書痙といいます。
3.電話に出るのが怖い
 「電話恐怖」といわれ、オフィスなどで電話をとれないというタイプです。電話で話すとき舌がもつれたり、声が震えたり上ずったりするのではないかと気になったり、周りの人がいる中で電話応対に失敗するのではないか、また電話の相手に変に思われはしないか、などという強い不安感を抱きます。たとえば、就職活動しようと思っても電話が怖くて躊躇し、ましてや面接など怖く感じてしまいます。
4.人と一緒だと食事がのどを通らない
 これは「会食恐怖」と呼ばれるタイプです。自分の食べ方が相手に不安感を与えるのではないかと考え、人と一緒に食事することが怖くなります。レストランに行っても、人に見られていると思って緊張し、食事がのどに詰まります。「美味しそうに食べられない」「噛んだり飲んだりする音がうるさいのではないか」「全部食べなければ」などと気になります。
5.お茶を出したりするとき手が震える
 来客にお茶を出すとき手が震えたり、名刺を交換したりするときや、酒の席で酌をするときに手が震える人もいます。
6.1対1になるのが怖い
 相手が仲のよい友達であっても、1対1になると緊張感を強いられる人もいます。また相手が異性の場合、とくに緊張感が高まり、会話できなくなってしまう人も少なくありません。
7.目上の人の前で話せなくなってしまう
 会社の上司など、目上の人の前での会話が極端に苦手という人もいます。「ダメな人間だと思われはしないか」という思いが緊張感となって、満足な受け答えができなくなってしまいます。
8.初対面の相手にはガチガチに
 初めての相手にどう思われるのか、変に思われはしないか、どう振る舞えばよいか分からなくなってしまうことがあります。あとで、その時の様子を思いだし、あれこれ思い悩む人もよくいます。
9.顔見知り程度の人との対面が苦手
 それほど親しくはないが、見知らぬ人でもない、といった人との交流に対しては、強い緊張感や恐怖を覚えることがあります。つまり、顔見知り程度の人との関係では、どのくらいの距離を保てばよいのかが難しいからです。お茶会やPTAの集会などが恐怖の場にもなります。
10.人前でお腹が鳴るのではないかと心配でたまらない
 人前で「お腹が鳴ったらどうしよう」「おならが出たらどうしよう」と強く悩む人もいます。シーンと静まり返った席上や会議の場、静かな職場などではさらに悩みは強くなります。満腹の状態でなければ、人が集まる場所に行けなくなるため、行動範囲が狭くなってきます。
11.近くに人がいると排尿できなくなってしまう
 職場のトイレや公衆トイレなどで、他の人が入ってきたり、後ろに並ばれたりすると、「早く用を足さなければ」といった思いが強くなり、かえって出なくなってしまうタイプで「排尿恐怖」といわれます。誰もいないトイレなら、普通に排尿できます。
12.他人の視線が怖い
 他人から見つめられると、「視線に射られるような感じ」を受けたり、「自分の行動がいつも監視されているような気がして緊張する」「他人が自分のことをうわさしているような気がする」と訴える人も少なくありません。他人の目に自分がどう映っているのか気になって、行動が制約されてきます。
13.自分の視線が不快感を与えそうで怖い
 自分の目つきや視線が、相手に不快感を与えているのではないかと思うと、どこに目を向けていればよいかわからないという人もいます。したがって、人と一緒にいること自体が苦痛になってきます。
14.家以外の場では常に緊張を強いられる
 ごく親しい人は除いて、外ではどんな相手に対しても緊張を覚え、体がガチガチになってしまう人もいます。
15.他人の言葉や表情にひどく敏感
 他の人の言葉や表情を深読みしたり、他人の心のうちを推測したりして落ち込みます。人との接触が怖くなったりします。
16.コミュニケーションの取り方がわからない
 会社の同僚やクラスメイトと何を話せばよいのか、どんなふうに声をかければよいのか、話しかけられたらどう返答すればよいのか、コミュニケーションの取り方が分からず、あれこれ思い悩みます。
17.どこにいても孤立してしまう
 自分以外の人はみな仲が良いように見えて、その中に入っていけない、溶け込んでいけない、浮いてしまって孤立してしまう思いになります。したがって、人との接触そのものに強い苦痛を感じるようになります。

身体症状

1.赤面
 緊張したり、恥ずかしい思いをしたり、うろたえたりすると、誰でも頬が紅潮したりしますが、それが自然な現象とは思えず、赤面する自分を強く恥じる人がいます。したがって、人前に立ったり、目上の人や異性などと話したり、赤面しそうな状況をことごとく避けるようになります。こういうタイプは「赤面恐怖」と呼ばれています。
2.震え
 手の震えや体の震えなど、緊張感が震え(振戦)として現れることはよくあります。しかし、意識しだすとますます悪化することがあります。手や体が震えると、職業上において深刻な問題になることがあります。医師であれば手術ができなくなったり、看護師であれば注射器を扱えなくなり、理容師であればカミソリを使えなくなったり、演奏家であれば人前で楽器を演奏できなくなったりします。
3.発汗
 緊張が高まってくる場面で、流れるような汗をかき、なかなか止まらないことに悩む人もいます。発汗が気になって、人との接触をためらうようになったりします。緊張すると汗がでるのを「発汗恐怖」といいます。
4.動悸、頭痛、吐き気、口の渇き、息苦しさ、顔のこわばり、便秘や下痢、めまい
 緊張を感じると、いろいろな身体症状が現れ、悪循環に陥って悩みの種になり、苦手意識がさらに強まってきます。

 以上にあげた社交不安障害の症状は、人それぞれによって現れ方が違います。普通の人でも人前で話そうとしたり、初対面の人に会ったりすると、多少の緊張感は当たり前ですが、問題は緊張や恐怖が度を超して極度の苦悩となり、社会生活に支障をきたす場合です。この状況を社交不安障害といい、治療を要する対象になるのです。中には、緊張感に伴う症状は「性格の問題」にすぎないと思い込み、なかなか苦しみを訴えられずにいる人も大勢います。また、家族やごく親しい友人と過ごすプライベートな場面では、とくに問題が生じない場合も少なくありません。そのために、「疾患である」と認識されず、それは「極度のあがり性」とか「心配性」などといって片付けられてしまう例も多くあります。

しかし、本人の悩みは深刻で、自ら行動範囲を狭めてしまい、社会生活に溶け込めずに孤立していくこともあります。

社交不安障害の根底には、対人接触における苦痛があります。その特徴的なものが視線への恐れです。「見られている」と感じるために、社会的な場面で緊張が極度に高まっていきます。動物は一般に相手を威嚇するために「じっと見つめる」という行動をとります。人間も動物の一種であるために、「見つめられること」で恐怖感がわき起こるのは当然と言えます。ただ、人間が誰かに視線を投げかけられる場合、マイナスの感情だけが込められているというわけではありませんが、それでも他人の視線に恐怖を抱くことが多いです。人とのかかわりに苦痛を感じる状態を、日本では昔から「対人恐怖」とよんでいます。社交不安障害と対人恐怖はまったく同じものではありませんが、重なるところがあります。社交不安障害の基本的な症状は、社会的な場面で起こる不安や恐怖といった心理的な問題ですが、同時に患者にとっては身体的な症状も悩みの種です。いずれにしても、社交不安障害は治療可能な疾患ですので、過度の苦痛を感じたら早期に受診する必要があります。

疾患の原因

 社交不安障害の原因については、現在のところよく分かっていません。発症の原因は単一なものではなく、複数の要因が関与しているものと思われます。不安や恐怖感が増幅されやすい脳内の生物学的要因、育ち方や経験などからくる環境的要因、また遺伝的要因などが考えられます。発症への影響は、遺伝的な要因よりも、育ち方や社会的な場面での経験など環境的な要因のほうが強いと考えられています。とくに育ち方の環境においては、過保護な育ち方をした人、逆に厳しく育てられて励まされたり褒められたりした経験がない人などに多いといわれます。これは、ストレス状況下で身の処し方を学ぶ機会が少なかったことや、同じ状況下で「うまくいった」という実感を得る機会が少なかったことが関係しているものと思われます。

生物学的原因

 原因がはっきりと解明されていないものの、社交不安障害を発症している患者においては、神経内分泌学的見地からの研究によって、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質が不足していることが分かっています。セロトニンやドーパミンなど、脳に存在する多くの神経伝達物質は、私達がもっている意欲や不安、喜びなど様々な感情を調節しています。何らかの理由で、この神経伝達物質のバランスが崩れると、不安を感じやすくなるのではないかと言われています。

まず、セロトニン機能に関しては、神経伝達物質の一つであるセロトニンが不足することで脳の機能バランスが崩れ、不安を誘発して社交不安障害を発症させている要因の一つと考えられています。このセロトニン機能の障害は、おもにシナプス後5-HT受容体の感受性の上昇によるものと言われます。この機能調整に、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による治療の有効性が確認されていることからも、セロトニン機能が社交不安障害の病態に関与していることは十分考えられます。ドーパミンと社交不安障害の関係性においては、パーキンソン病患者に社交不安障害の患者が多いことから、ドーパミン系の機能低下が関与しているのではないかと推測されています。それはSPECTによる脳画像を診断した研究で、社交不安障害の患者の線条体におけるドーパミンD2受容体の結合性の低下や、ドーパミン再取り込み部位の減少などがこれまでの研究で指摘されています。さらに、ノルアドレナリンの関与についても、これまでの研究で受容体機能の鈍化があげられています。このほかの神経伝達物質の関与においては、視床におけるコリン、クレアチニン、N-アセチルアスパラテートの代謝機能低下が挙げられています。このように、様々な神経伝達物質の機能異常が指摘されていますが、それは単独の神経伝達物質の異常によるものではなく、複数の神経伝達物質の相互関係のなかで病態を形成しているものと考えられます。

ここで、脳のシステムの面から不安や恐怖の正体はどのようになっているのか、そのメカニズムを少し見てみます。

 脳の下部には生命維持に欠かせない働きをしている脳幹部がありますが、ここに「網様体」という部位があって、五感の知覚をトータルの刺激として「視床」に伝えています。視床は網様体から伝えられた刺激を大脳に送りますが、大脳の底の方に位置する「線条体」で、視床から送られてきた刺激を調節して大脳に送っています。この調節には神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンが正常に働いて刺激を抑制していますが、このセロトニンやドーパミンが減少すると線条体の機能不全がおこります。線条体の機能が悪くなると、網様体から伝わってきた刺激が十分に調節されずに大脳(大脳新皮質、大脳辺縁系)に送られてしまいます。刺激が調節されずに大脳に送られると、大脳は不安と恐怖におびえ緊張が高まって、大脳全体が興奮して覚醒した状態になります。

最近の研究では、海馬や扁桃体を中心とした大脳辺縁系が活性化して、強い不安を生み出しているのではないかと注目されています。とくに扁桃体は、様々な刺激に対して不安や恐怖を獲得する過程で、重要な役割を果たしているものと考えられます。扁桃体は、感覚入力を担う視床、物事を捉える前頭前野、記憶をつかさどる海馬、自律神経をコントロールする視床下部などと神経ネットワークを形成しています。このネットワークを介して、扁桃体は刺激に対する恐怖を学習し、危険を察知して回避する防御機能を担っています。したがって、私たちが危険を想像したり察知したりすると、扁桃体の神経細胞が興奮して予期不安や恐怖を引き起こします。さらにその興奮は、交感神経を刺激して活動性を亢進し、震え、発汗、心拍数や呼吸数の増加、などの身体症状を出現させます。扁桃体は人間の旧脳の部分で、人間の不安・心配・恐怖を感じる機能を受け持っています。通常扁桃体は神経細胞ネットワークの情報伝達を通じて、背外側前頭前野(DLPFC)という場所によってコントロールされています。通常、神経細胞ネットワークの情報伝達には、神経細胞同士をつなぐ樹状突起の接合部であるシナプスにおいて、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質の分泌が必要です。


ところが、社交不安障害では、このシナプスにおけるセロトニンの分泌が悪くなるために、扁桃体のコントロールがうまく機能しなくなり、過剰な不安・心配・恐怖が生じます。そのため、近年では、シナプスにおいて、セロトニンの再取り込みを阻害するSSRIという薬物により、シナプス間隙でのセロトニン濃度を上昇させ、神経細胞ネットワークの情報伝達を活性させることによって、社交不安障害を根本的に治療することが可能となりました。

体験的・性格的・遺伝的・環境的な要因

 では、なぜセロトニンなどの神経伝達物質が不足したりするのかということですが、その原因として考えられることは「体験的要因」「性格的要因」「遺伝的要因」が複雑に絡み合って神経伝達物質に影響を及ぼし、ひいては社交不安障害を発症させる要因となっているものと考えられます。


まず「体験的要因」とは、人の注目が集まる中で「とても恥ずかしい思いをした」「屈辱的な扱いを受けた」「頭の中が真っ白になったりした」など、主に人前での自分自身の失敗体験をいいます。また、他の人が失敗して恥ずかしい思いをしているのを見て、それを無意識に自分に置き換えてしまう間接体験も含まれます。そして心の中では「なんてみっともない姿を見せてしまったのか」と自分を過剰に責めたりします。こうしたいやな体験や経験をすると、“いや”な部分ばかりを強調して考え込んでしまい、もう二度とこのような体験はしたくないと思いはじめます。その強い思いは、今度は恐れている“いや”な状況を回避し続けようとします。その不安や恐怖はいっこうに解消されないばかりか、むしろ増大していくばかりです。もちろん人前で恥ずかしい思いをしたという経験をした人が、すべて社交不安障害になるわけではありません。

また「性格的要因」とは、「自分を常に良く見せようとする人」「完璧主義の人」「他人からの評価を気にしすぎる人」「引っ込み思案で人見知りの激しい人」といった性格の人のことです。このような性格の人は、人前で失敗することを過剰に恐れるため、恥をかきそうな場面を避け続ける「回避行動」の傾向があります。成功体験を経験する機会が少なくなるために、社交不安障害が発症しやすくなるのです。逆に前向きな性格の人は、人前で失敗してもくよくよせず、どんな場面でも避けずに立ち向かう傾向があるので「成功体験」を得やすく、自分に自信がもてるため発症しにくいと考えられます。これは遺伝的な要素もありますが、引っ込み思案の性格の子供は、親もまたそうした傾向が強いです。引っ込み思案の親の回避行動をみて、子供がそれを学習してしまうという面があるのです。

次に「遺伝的要因」ですが、これは生まれつき脳内の神経伝達機能に何らかの異常があることによる発症要因です。このような遺伝的要因をもっている人は、不安や恐怖を感じやすく、それが極度の緊張へとつながっていき、発症のしやすさにつながっているものと考えられます。健康な人の場合、両親や兄弟や子供など身近な血縁者では、社交不安障害を発症する確率は5%ですが、全般性社会不安障害(あがり症・対人恐怖)の患者の場合、発症の確率は16%に上がるという報告があります。また双子の場合、2人とも患者である確率は、二卵性よりも一卵性のほうが高いという報告もあります。いずれにしても、単一の要因ではなく、複数の要因が背景にあるものと思われます。


最後に「環境要因」です。この環境要因も社交不安障害の発症に関与していると考えられています。社交不安障害の患者の子供の場合、両親の恐怖反応を日常的に観察することによって恐怖を学び、両親の恐怖に対する回避行動を見ていて回避のパターンを学習していくと言われます。実際に、社交不安障害の患者の回避行動をみていると、母親の回避行動パターンによく似ていることが指摘されています。これはおそらく、両親の子供への過保護的な行動がストレス状況に暴露される機会を少なくしており、それが子供にとってコーピングスキル(対応能力)が獲得できない理由になっているものと考えられます。したがって、ストレス状況に遭遇すると予期不安を強く感じ、回避行動をとるものと思われます。両親が社交不安障害の患者であるという環境要因が、子供を社交不安障害の患者に育ててしまうというものです。

社交不安障害の持続原因

 社交不安障害の病態の一つとして、症状が持続し長引くという特徴があります。社交不安障害の場合、いったん発症すると不安感が悪循環し、ネガティブな経験を持続することになります。先に発現した不安が、次の社会的状況下においてもまた失敗するのではないかという考えでいっぱいになり、実際の社会状況下での行動が障害されてしまうことがあります。このようなネガティブな経験が重なっていくことで、今度は将来的に起こりうる社会的状況に対してそれが予期不安となって、不安がいっそう増幅されます。そこで、その恐怖状態となっている社会的状況を避けようとし、実際に回避することによって不安が軽減されますので、さらに回避行動が強まることになります。確かに回避すれば不安は一時的に軽減されますが、回避行動をとることによって、かえって社会状況下でのポジティブな経験をする機会が失われることにもなります。つまり、ネガティブな認知が強く継続することになります。こうして、社交不安障害は、予期不安が回避行動を生み、回避行動がまた予期不安を強めるといった悪循環となって症状を持続させている原因となっています。この悪循環を断ち切ることが症状回復への手がかりとなり、心理療法としての行動療法が大きな意味を持つことになるのです。

疫学的統計頻度

生涯有病率

 はじめに、1993年に行われたアメリカの「精神保健疫学調査」の報告から見ることにします。これは、アメリカ34州172都市の15~54歳の住民8,098人を対象にした疫学調査です。それによると、アメリカの社交不安障害生涯有病率は全体で13.3%(内訳は男性が11.1%、女性は15.5%)と報告しています。つまり、一生のうち一度でも社交不安障害にかかる率が、7.5人に1人いることになります。また、1年有病率は7.9%と報告しています。アメリカではその後、2003年にデータの再検討がおこなわれ、臨床的に医療が必要なケースでは約7%と報告しています。各社会的状況における苦痛の生涯有病率は、①「公衆の前で話す」が30.2%、②「小グループで話す」が15.2%、③「用がないのに人に話しかける」が13.7%、④「外出先でトイレを使う」が6.6%、⑤「誰かが見ている前で書く」が6.4%、⑥「公衆の前で食べたり飲んだりする」が2.7%でした。そして、何らかの社会的状況において苦痛を感じる割合が38.6%でした。また何らかのスピーチに対する苦痛を感じる人は17.8%で、その中で社交不安障害と診断された人は35.8%でした。スピーチ以外の状況で苦痛を感じる人は20.9%おり、そのうち社交不安障害と診断された割合は64.0%でした。この調査から、スピーチに苦痛を感じる人の病理性は低いことを示唆しています。

一方、同じころスイスで行われた調査によると、生涯有病率は16.0%と非常に高く、6~7人に1人が社交不安障害にかかると報告しています。また。ドイツにおいても、14~24歳の思春期や青年期の人達3,021人を対象にした疫学調査がおこなわれました。その結果、社交不安障害の生涯有病率は、男性で4.9%、女性で9.5%あり、そのうち3分の1は全般性社交不安障害でした。

では日本における社交不安障害の発症率はというと、2002年の調査で生涯有病率が2.3%という報告があります。内訳は男性が2.7%、女性が2.1%です。この他、3~5%という調査報告もあります。欧米に比べれば少ないですが、それでも約40人に1人が社交不安障害に罹患していることになります。この数値は、日本の精神疾患のなかでは「うつ病」についで多い疾患といえます。うつ病による自殺の頻度と社交不安障害による自殺の頻度では、それほど変わらないのに、うつ病に関しては自殺克服のための国家的プロジュクトが進められていることを考えると、社交不安障害に対する社会的な認知度はまだまだ低いといわなければなりません。

発症年齢

 次に、社交不安障害の発症年齢ですが、かなり早い年代で発症することが分かっています。研究者によって多少の差がありますが、平均発症年齢は15.5歳という報告がります。10代半ばでの発症が多く、日本においては中学3年生から高校1年前後の時期です。この発症年齢には二つの高い時期があり、一つのピークは5歳以下、もう一つは13歳とされています。つまり5歳ころまでと、11~15歳ころにピークがあり、25歳までにほぼ発症してそれ以降の発症は非常に少なくなっています。この発症年齢は、欧米でもアジアでもそれほど変わりません。カナダにおけるスピーチ恐怖の研究では、13歳までに50%、17歳までに75%、19歳までに90%が発症しており、25歳以降の発症はまれです。

このように社交不安障害は10代、20代の若い世代で発症することは知られていますが、では受診年齢はどうかというと、必ずしも発症年齢と一致しません。実際に医療機関を受診する人の平均年齢は、発症年齢よりも10歳以上も高くなっているという報告もあります。症状に悩みながらも、長い間、助けを求めずに我慢している人がいかに多いかがわかります。発症年齢が若いということは、早めに受診して治療しなければ、長期にわたって社交不安障害という病気に苦しめられ続けることになります。発症してから症状が改善していく人もいますが、なかなか症状が改善せず、悪化していく人も多くいます。長期に経過し、慢性疾患になることもあります。罹患期間の平均は、短いものでも10年から20年、長くなると30年という報告もあります。人前に出て話したり、人前で何かをしたりして、収拾のつかない恥ずかしい行為をしてしまうのではないか考えて恐怖となり、その辛い思いから回避しようという行為を重ねることもあって、社会的にも孤立していき、約7割の人が他の精神疾患を発症するという経過をたどります。多く見られる併存疾患としては、うつ病などの気分障害、パニック障害などの不安障害、アルコール依存症などが挙げられます。また、摂食障害やパーソナリティ障害、自殺企図なども見られます。

プライマリーケアでの有病率

 社交不安障害の患者は、最初から専門医を訪ねることは少ないです。たいていは、何らかの身体症状を訴え、一般的な医療機関などを最初に訪ねて受診するケースが多いです。そこで、このようなプライマリーケアにおける有病率はどの程度になっているか知ることも重要なことです。アメリカでは、何らかの精神障害を発症した人の場合、1年以内に医療機関を訪れています。報告によると、社交不安障害の患者のプライマリーケアにおける有病率は、2.9%、4.9%、7.0%といった報告があります。女性に多く、平均年齢は15.1歳で他の不安障害の患者より若い傾向にあり、学歴も低いです。また、他の精神障害との合併率も高く、大うつ病とは33~58.3%、全般性不安障害とは26.8~30.6%、物質乱用障害とは23.6~25%合併率となっています。

社交不安障害の場合、自殺への思いを持つ人も多く、特にうつ病を合併すると自殺企図の割合が高くなります。全般性社交不安障害の人においては、社会機能が顕著に低下し、医療機関へ頻繁に通っていることもわかりました。そして、社交不安障害の患者においては、治療を受けている人が少なく、治療薬を投与されている患者は20%以下という結果になっています。さらに特徴的なことは、パーキンソン病の患者において、しばしば社交不安障害がみられることが調査結果で明らかにされています。それによると、不安障害が24.5%あり、社交不安障害は11.5%でした。一方、不安障害の患者を追跡調査した結果、パーキンソン病が0.5%ほどみつかり、そうでない人と比べてパーキンソン病の発症率が1.5倍と高くなっていることもわかっています。

スピーチ恐怖の有病率

 社交不安障害の中で、もっとも多く見られる病態はスピーチ恐怖で、社交不安障害の患者の89.4%がスピーチ恐怖をもっています。スピーチ恐怖だけを訴える社交不安障害の患者は、全体の約3分の1割を占めているという報告があります。全般性社交不安障害の患者と、スピーチ恐怖のみを持っている患者を比較検討した結果、全般性社交不安障害の患者の方がより若く、教育水準や就労率が低く、また重症で、不安や抑うつが強く、認知機能も貧困であったという報告があります。つまり、スピーチ恐怖は他の社交不安障害とは異なった病態であることを示唆しています。

カナダで行われたスピーチ恐怖の有病率の調査によると、回答者の約3割強において人前で話すことに過剰な不安を感じているという結果がでています。その発症年齢も早く、13歳までに50%の人が、17歳までに75%の人が、20歳までに90%の人が発症しています。スピーチ恐怖の内容を複数回答でみると、「恥をかく」が64%、「頭が真っ白になる」が74%、「話しつづけることができない」が63%、「バカなことを言ったりわけのわからないことを言ったりする」が59%、「震えやその他の不安の身体症状」が80%となっています。また、スピーチ恐怖で仕事に支障をきたす人が2%、社会生活で1%、教育で4%、著明な苦痛を感じる人は8%おり、DSM-Ⅲ-Rの診断基準にあてはめると、スピーチ恐怖の有病率は10%に達しているといいます。しかし、スピーチ恐怖の95%の人がスピーチ恐怖以外の恐怖状況を持っていることも明らかになっています。スピーチ恐怖は、非全般性社交不安障害のなかでは恐怖がもっとも強いことを示しています。

まとめ

 社交不安障害は、有病率の高い精神疾患です。発症年齢も若く、自殺行動も多く、社会機能の障害も早期から認められる病気です。また、後年はうつ病やパニック障害、アルコール中毒などを発症させる基盤となる精神障害でもあります。これまで、数々の報告から明らかになったのは、社交不安障害の傾向があると考えられる人は、10人に1~2人の割合にのぼっています。社会生活に大きな問題が生じているが1.9%、社会生活上、大きな問題が生じている、または本人の苦痛が著しいが7.1%、社会生活に問題が生じている、または苦痛をかかえている、が18.7%と多く、「自分だけが異常」と考えがちですが、似たような悩みを持つ人はたくさんいます。社交不安障害が疾患として認識されるようになってからまだ歴史も浅く、診断基準や調査方法、調査対象となった集団によっては数字も大きく変わってきます。受診が遅れ治療しないまま放っておくと社会的な損失も大きくなるため、早期の受診と治療が必要です。なお、疫学的な研究では男性より女性に多く発症しています。

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