統合失調症 治療方法column

Update:2023.10.15

統合失調症 治療方法とは

統合失調症の治療は、抗精神病薬による症状の管理と心理社会的アプローチが中心です。抗精神病薬は幻覚や妄想の症状を軽減するために使用され、種類や用量は患者に合わせて調整されます。心理療法では認知行動療法や対人関係療法が行われ、患者の症状に対する理解やコピング戦略の提供が行われます。

統合失調症 治療方法

目次

受診に当たって

何科を受診すればよいか

 統合失調症も他の病気と同様、「早期発見・早期治療」がポインとになります。早くに発見し、早くに治療すれば、回復もすみやかです。逆に治療が遅れると症状もこじれ、薬を飲んでもなかなか改善しません。また。急性期の患者さんは、自分が病気だとは感じていないため、病院へ行くのを拒否する人も多く見られます。本人の様子がおかしいなと思ったら、まずは家族や周囲の人だけでも医師や保健所などに相談しましょう。家の中で抱え込まず、外に助けを求めることが大切です。

まず、病院選びのポイントですが、最初は何科に行けばよいのか迷います。統合失調症は心の病気ですので、心の専門医がいるところを受診します。総合病院であれば、「精神科」「神経科」「精神神経科」が専門です。個人医院なら、「精神科」「メンタルクリニック」などの名称を使っているところが多いです。ただし、「神経内科」「脳神経外科」は名前がよく似ていますが、治療する病気はまったく異なるので、注意してください。なお受診する際は、なるべく患者さんと一緒に周囲の人がつき添って行くのが望ましいです。発症の時期や患者さんの様子などについては、周囲の人の情報が診断のうえで非常に役立つからです。ただ、患者さんによっては、家族が診察に同席することを嫌がる場合があります。そのような時は、席を外して患者さんと医師が話し、家族はカウンセラーやソーシャルワーカーなどの医療スタッフと面談するとよいでしょう。普段、患者さんの家での様子や既往歴、またささいな事でもよいから気づいたことを率直に伝えるようにします。

また、本人や家族を含め、精神科に行くことをためらう人も、まだまだ多いようです。かつての「精神分裂病」のイメージがあるためかもしれません。精神科に行くのを拒んだら、地域の保健所や精神保健福祉センターなどに相談するのもひとつの方法です。保健所から相談員や医師が訪問してくれて、患者さんと面談したり、受診を促したりしてくれます。また、精神科を受診できたとしても、医師に対する第一印象が悪かったというケースも中にはあります。統合失調症の治療は、長期間にわたりますので、患者さんと医師との相性も大切なポイントになります。ただ、第一印象だけで相性は決められません。医師が忙しくて話す時間がとれなかった場合は、看護師や保健所の相談員にも話をして、上手につき合う工夫や努力も必要です。大事なことは、転院を繰り返していると、治療も十分できなくなり、病気の回復にも影響してきます。


受診を嫌がる患者さんの場合 

 興奮が激しいときや、不安感で疑い深くなっているときは、患者さんは病院へ行くのを拒むことがあります。そんな時、家族は本人に対して、決して受診を強要したり、叱ったりしないことです。「調子が悪そうだから、病院で診てもらった方がいいよ」と、理由をはっきりさせて受診をすすめます。また「あなたのことを心配しているの」と伝えると、その時は嫌がっても、後になって自分から「病院へ行ってくる」と言い出すこともあります。患者さんの興奮がひどく、家族とのあつれきが生じているような時は、本人と親しく、信頼関係のある人に同席してもらうと良い場合があります。

また、患者さん自身が不眠などの不調を感じているような場合は、「それを医師に相談してみよう」とか、「症状の背景には神経の疲れがあるようだ」と言って、精神科への受診を勧めます。別の科を受診したりすると、「検査をしたが異常が認められない」という診断結果を招くことになるので、避けたいものです。中には、精神科と聞くだけでショックを受ける患者さんもいます。周囲の人が「この先生のもとで治療をすれば、絶対によくなる」と、患者さんに伝えることで、通院治療を受け入れることもあります。

いずれにしても、受診をしたがらないからと言って、散歩や買い物に行くと言って病院へ連れていくことは、絶対に止めたいものです。うそをついて病院へ行っても、家族への不信感を植え付けるだけです。何よりも患者さん自身が、だまされたという気持で医師に会っても、その医師を信頼して治療を受けることは難しくなります。

一方、入院を嫌がる患者さんの場合は、医師も交えて話し合うことが大事です。「先生が入院するように言っていたから」ではなく、「私たち家族も入院に賛成している」という意思を伝えるようにします。入院治療が望ましいのに、本人の同意が得られない場合には、医師と家族の合意によって、入院が決められる医療保護入院もあります。患者さんによっては、入院と聞いただけで「見捨てられる」「ひどい」と思う人もいます。入院を勧める場合は「入院があなたにとって一番良いことである」と、根気よく、簡潔な言葉で伝えるようにします。

入院が必要な場合というのは、患者さんの興奮がひどく、暴力を振るったり自分を傷つけたりするような場合です。入院は、家族にとっても疲労が解消されたり、イライラした気持にゆとりができたりします。入院したら、今後の見通しについて医師から説明を受け、治療についての情報を、患者さんと家族が共有しておく必要があります。入院先も「ここなら大丈夫」と思えるところを選ぶことが大切です。

薬物療法

治療効果が高い併用療法 

 統合失調症の治療は、薬物療法が基本です。しかし、より治療効果を高めるためには、薬物療法に心理社会的療法(心理教育、生活技能訓練〈SST〉、作業療法、家族技能訓練など)を組み合わせて行います。これは、薬だけの治療よりも、患者さんの生活能力や、患者さんを支える家族のケア能力を高めて、これらを組み合わせることで、よりすぐれた治療効果が得られていることが、国際的な研究報告によって明らかにされています。その中で、1年後の再入院率が最も低かったのが、「薬物療法と家族技能訓練」の組み合わせと、「薬物療法とリハビリテーション」の併用で、いずれも8%と低い率でした。また、「薬物療法と支持的な精神療法」を受けたグループは20%、「薬物療法と自己洞察を求める精神療法」を受けたグループは30%、という再入院率でした。「薬物療法」だけでも30%というから、いかに併用治療が功を奏しているかがわかります。他方、「薬物療法もしない」「全く治療をしない」状況では、70%という高い再入院率であることが明らかになっています。いずれにしても、統合失調症の治療においては、薬物療法が大前提であることはいうまでもありません。

抗精神病薬には2種類ある 

 統合失調症の治療薬は、大きく分けると「抗精神病薬」と「補助治療薬」です。ただし、治療の中心として使われる薬は抗精神病薬であって、補助治療薬はあくまでも、うつ・不安・不眠などの精神症状が現れたときに併用される薬のことです。ここで使われる補助治療薬は向精神薬の「抗うつ薬」「気分安定薬」「抗てんかん薬」「抗不安薬」「睡眠薬」などです。

統合失調症の治療の主力である抗精神病薬は、1950年代初頭に「クロルプロマジン」という薬が登場したのがその始まりで、統合失調症の治療薬としては画期的なことでした。そして現在でも、統合失調症の治療にはなくてはならない薬です。その後も、抗精神病薬は異なった化学構造の薬が多く開発されてきました。だだし、この抗精神病薬は急性期の陽性症状(妄想、幻覚、興奮など)には非常に有効な薬ですが、慢性期の陰性症状(感情の平板化、意欲の低下など)にはあまり効果が認められないという欠点がありました。そこで、陰性症状などに効果があり、錐体外路障害(震え)などの副作用が少ない薬が開発されました。これが第二世代と呼ばれる「非定型抗精神病薬」(新規抗精神病薬)です。これに対し、以前に開発された薬を「定型抗精神病薬」(従来型抗精神病薬)と呼んでおり、抗精神病薬にはこの2種類があります。 


抗精神病薬の主な働き

 抗精神病薬が統合失調症に有効であることは、医学的にも十分証明されています。薬による治療で、統合失調症の患者さんのおよそ70%において症状(陽性症状)の改善がみられ、25%の患者さんにおいては軽度の改善または変化がなく、残りの5%は悪化するという報告があります。この有効性は、肺炎に対するペニシリンの効果、また結核に対するストレプトマイシンの効果にも匹敵するものとされています。ではその有効性はどのような作用によるものか、具体的にどのような症状を改善するのか、抗精神病薬の特徴について以下まとめてみました。

【ドーパミンの情報伝達作用を抑える】
 抗精神病薬には、定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬を合わせると、さまざまな種類の薬がありますが、これらには共通の作用があります。それは、ドーパミンの情報伝達を抑える作用です。脳内には140億以上の神経細胞があって、細胞と細胞同士が、神経伝達物質という化学物質をやり取りして情報を伝え、脳のあらゆる活動を支えています。神経伝達物質にはいくつもの種類があって、それぞれ伝える情報が異なります。ドーパミンも神経伝達物質のひとつで、体を動かしたり、食欲中枢の働きを弱めたり、精神作用に関係する情報を伝える働きをしています。ドーパミンはうきうきした感情を高めてくれますが、多すぎると過覚醒の状態になって、逆にイライラし、不安感や緊張感が強くなってきます。統合失調症では、このドーパミンが神経細胞から多く出すぎる状態にあることがわかっています。これが、幻聴や妄想の起こる原因と考えられています。抗精神病薬は、このドーパミンを受け取る受容体に結合して、ドーパミンの作用をブロックすることによって、統合失調症の症状を改善するものと考えられています。

【幻聴や被害妄想を改善する】
抗精神病薬は、幻聴や妄想などの陽性症状を改善し、または軽減する作用があることは確かです。中でも攻撃的な行動、あるいは奇異な行動に対しては効果があり、ほとんどの患者さんの行動が穏やかになります。また、「自殺しろ」といった幻聴、「盗聴されている、監視されている」といった被害妄想においても、完全に消えたり軽減したりする効果があります。激しい幻聴が四六時中起きていたのが、1日に1~2度ぐらいに減り、静かな雑音程度に軽減します。このように、統合失調症の中心症状に効果があることは、抗精神病薬の大きな利点と言えます。
【興奮状態を抑える】
 統合失調症では、妄想や強い不安・緊張のために、興奮することがありますが、抗精神病薬を使うことによって、興奮を鎮めることが可能です。
【知覚を改善する】
知覚とは、ものを見たり聞いたりして、入ってきた情報を脳が認識する機能のことです。統合失調症の場合、周りの人が何か言ったとき、耳はその音を受け取りますが、脳がその言葉を理解できないのです。抗精神病薬は知覚を正常にする働きがあるので、現実をそのまま見たり聞いたり、感じたり、理解できるように改善してくれます。
【不安感や恐怖感を軽減する】
抗精神病薬を使った患者さんの実感として、「不安感や恐怖感が和らいだ」といいます。不安感や恐怖感は、適応障害のひとつで、外部で起こっている事に対応できなくなって現れます。抗精神病薬は、このような精神症状を軽減する働きがあります。
【意欲の回復効果がある】
統合失調症になると、脳の活動が低下して感情の平板化や無関心、思考の貧困などの陰性症状が現れます。特に、消耗期や回復期には意欲の低下が大きな問題となります。抗精神病薬には、脳の障害を回復させる働きがあり、仕事や生活ができるようにはなりますが、この意欲回復効果はすべての人に効果がでるというわけではなく、20%程度の人には効果がでます。
【再発の防止効果がある】 症状は一時的に改善できても、障害が起こっている脳の神経細胞の機能回復には時間がかかります。したがって、急性期の症状がおさまっても、薬を止めるのは危険です。消耗期にも回復期にも、再発のおそれが常にあるため、薬を飲み続けることが再発防止につながります。

現在使われている主な抗精神病薬

 抗精神病薬は、「定型抗精神病薬」(従来型抗精神病薬)と「非定型抗精神病薬」(新規抗精神病薬)の2つに分類されます。1950代以降に作られた初めの抗精神病薬を「定型抗精神病薬」といい、そして主に2000年前後以降に開発された薬を「非定型抗精神病薬」と分けていますが、実際に薬が体内に入ってからの作用の違いは不明で、明確な基準はありません。ただ、これまでの作用を大まかに分ければ、定型タイプは主に脳内のドーパミン受容体に作用して陽性症状を改善するのに対し、非定型タイプはドーパミン受容体に加え、さらに多様な受容体に作用して陰性症状の改善に効果があるとされています。最近では、「非定型抗精神病薬」が統合失調症の第一選択薬として用いられていますので、初めに非定型、続いて定型の薬について説明を加えていきます。 

「非定型抗精神病薬」(新規抗精神病薬)

 非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬の後に開発された比較的新しい薬で、作用の違いから「SDA系」「MARTA系」「DSS系」の3つのタイプに分けられています。この非定型抗精神病薬は、陽性症状については従来型の定型抗精神病薬と同程度、もしくはそれ以上の効果があり、陰性症状に対する効果も優れています。また認知機能の障害についても、改善効果があるとされています。
非定型抗精神病薬は、定型タイプとは化学構造や作用が異なっているため、錐体外路症状(パーキンソン症候群にみられる筋肉のこわばりや遅い動作、ふるえなど)の副作用は、比較的起こりにくくなっています。また、体が勝手にくねくね動いてしまう遅発性ジスキネジアといわれる慢性的な副作用も現れにくくなっています。薬を服用しても、副作用による困った症状があまり現れないことから、患者さんに拒否感が少なく、服用の継続がしやすいという利点があります。ただし、新しい薬が必ずしもその人に効くとは限りません。現在、抗精神病薬の処方は非定型抗精神病薬を中心とした流れにありますが、急性期の激しい症状を鎮めたり、回復を助けたりするためには、今でも定型タイプの薬はなくてはなりません。薬の効き方には個人差があり、向き不向きもあります。また、薬を別のものに切り替えるときは、副作用が強くなったり症状が悪化したりすることもありますので、必ず医師とよく相談してから行ってください。
非定型抗精神病薬を用いるときの注意点としては、服用量が多くなると、薬によっては従来型の抗精神病薬と同じような副作用が起こりやすくなります。また、非定型抗精神病薬の一部の薬においては、体重増加による肥満、高血糖、糖尿病の発病、生活習慣病の憎悪といった副作用がおこることもありますので、服用中は全身の健康管理については十分注意する必要があります。また、日本においては、現在、糖尿病にかかっている人や、過去に糖尿病にかかったことがある人は、非定型抗精神病薬のオランザピンとフマル酸クエチアピンは使用できません。薬の処方においては慎重に選択しなければならないため、患者さんはもちろん、その家族が糖尿病にかかっている場合、糖尿病の危険因子(肥満、高血糖など)のある場合は、必ず主治医に伝えるようにします。非定型抗精神病薬の中から、どの薬をどのような患者さんに処方するかは、医師の経験と判断によって決められます。

【SDA系】(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)

 SDA(Serotonin-Dopamine Antagonist)は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンとドーパミンの受容体の働きを、遮断する作用のある薬です。過剰に放出されているドーパミンを抑制して、陽性症状を改善します。また、セロトニンの作用を抑制することで、前頭前皮質のドーパミン活性が高まり、陰性症状を改善する効果もあります。錐体外路症状が少ないのも特徴です。

リスペリドン(商品名:リスパダール)
非定型抗精神病薬の代表的な薬です。第一選択薬として用いられる事が多く、幻覚・妄想に対する早い効果が期待できます。ドーパミン拮抗作用とセロトニン拮抗作用のほか、アドレナリンやヒスタミンの各種受容体にも結合します。海外のデータでは、幻覚や妄想などの陽性症状に対し、定型抗精神病薬のハロペリドールよりも高い有効性を示したのは、このリスペリドンだけでした。また再発率も低くなっています。1日の用量は2~6mg。初めて発病した場合の初期推奨用量は1~4mg。剤形は、錠剤、細粒、内用液、口腔内崩壊錠、注射剤があります。効き方がシャープなので、治療を開始して4~8週目ぐらいに、患者さんは自分の環境を急激に認識するようになります。こういうときは、より強い不安感を抱きがちになるため、医師との面談を密にもつことが大切です。
ペロスピロン(商品名:ルーラン)
ペロスピロンは、ドーパミン拮抗作用とセロトニン拮抗作用をもちますが、神経伝達物質の受容体に対する作用には、違いがあると考えられます。また、アドレナリンやヒスタミンの各種受容体や、アドレナリンα1にも結合します。ペロスピロンは、幻覚や妄想などの陽性症状、また感情的引きこもりや運動撃退などの陰性症状、さらに抑うつ的な元気のない患者さんに用いると効果が期待できます。1日の用量は、12~48mgで、最初は12mgから初め、次第に増量します。剤形は錠剤です。注意点としては車の運転、危険を伴う機械操作などは控えます。また、脱水を起こしたり、栄養不良などで体が消耗している人は、悪性症候群を起こしやすいので注意が必要です。
ブロナンセリン(商品名:ロナセン)
ドーパミンやセロトニン5-HT2A受容体に選択的に結合し作用します。同じSDA系のリスベリドンやペロスピロンと比べると、ドーパミン受容体に結合する力が強いので、幻覚や妄想に効果が認められます。しかし、アドレナリン、ヒスタミン、ムスカリンなどの受容体に結合して遮断する作用は低いとされています。1日の用量は、8~24mg。最初は8mgから始め、次第に増量していきます。剤形は錠剤と細粒(粉末)があります。

【MARTA系】(多元受容体作用抗精神病薬)

 MARTA(Multi-Acting Receptor Target Antipsychotics)は、セロトニンやドーパミンだけでなく、さまざまな神経伝達物質の受容体に作用して、過剰な働きを遮断する薬です。SDAと同じように前頭前皮質のドーパミン活性を活発にするため、陰性症状にも効果があります。

オラザピン(商品名:ジプレキサ)
ドーパミン、セロトニン、アドレナリン、ヒスタミン、ムスカリンなどの各種受容体に結合して作用します。陰性症状と抑うつ症状の改善に効果があります。また、ジスキネジア(舌や口の付随運動)や錐体外路症状が現れにくいため、抗パーキンソン薬などの使用が少なくて済みます。初めて症状が現れた場合では、定型抗精神病薬であるハロペリドールよりも、再発率が低く、また再発までの期間が長くなるという報告もあります。急性期の1日の用量は10~20mgです。最初は、5~10mgから始めてしだいに増量していきます。剤形は、錠剤と細粒があり、急性期にきちんと薬を飲むことができない場合は、口腔内崩壊錠が使われることもあります。注意点は、他の抗精神病薬と比べて体重増加の可能性が高くなることや、高血糖および糖尿病性昏睡になる症例も報告されています。口が渇いて水分を大量に摂り、多尿・頻尿などが現れたときは、服薬を中断し、医師の診断を受けます。
フマル酸クエチアピン(商品名:セロクエル)
この薬は、ドーパミン受容体よりもセロトニン受容体に対して高い作用があります。アドレナリンやヒスタミン受容体にも結合して作用します。陽性症症状や陰性症状、認知(思考)機能の改善に有効です。特に抑うつ的な患者さんに用いると効果があります。また、これまで抗精神病薬では十分に効果がなかった場合にも使われます。さらに、長期に薬を使用していて、錐体外路症状やホルモン系の副作用(性機能不全、月経異常など)が現れている人が、薬を切り替えるときの選択肢としても期待されています。糖尿病の人には使えません。1日の用量は、150~600mg。最初は50~75mgから始め、次第に増量していきます。剤形は、錠剤と細粒があります。注意点は、体重増加や惰眠の副作用が指摘されています。また、高血糖や糖尿病性ケトアシドーシス(酸血症)との関連が否定できないため、糖尿病の患者さんや糖尿病の既往歴のある人の使用は禁忌です。

【DSS系】(ドーパミンシステム安定薬)

 DSS(Dopamine System Stabilizer)は、ドーパミンが過剰に働いているときは抑制し、少量しか放出されていないときは、刺激して放出するように作用する薬です。陽性症状も陰性症状も、どちらにも効果のある薬です。

アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)
 2006年に発売された新時代の抗精神病薬です。ドーパミンの経路を完全に遮断しないので、副作用がより少なくなることが期待されています。ドーパミンのほか、セロトニン、アドレナリン、ヒスタミンなどの受容体に結合します。その中で、ドーパミンが過剰の場合は遮断し、不足している場合はそれを刺激する作用があり、ドーパミンシステムを安定させる働きがあるのが特徴的です。陽性症状や陰性症状、不安や抑うつ症状に効果があるとされ、気分を安定させる効果も認められています。他の非定型抗精神病薬と比較して、眠気が少なく、肥満や糖尿病といった代謝系の副作用が少ないのが特徴的です。錐体外路症状が少なく、また血液中のプロラクチン(性機能にかかわるホルモン)の濃度を上げないために、男性の性機能不全や、女性の月経異常などの副作用も少ないとされています。1日の用量は、6~24mg。最初は6~12mgから始め、その後増量していきます。剤形は錠剤と細粒、内用液があります。
注意点は、鎮静効果が弱いために急性期の症状改善には、反応が鈍い感があります。しかしその際、不必要に薬の量を増やさないことが重要です。また、他の薬からの切り替えを急激に行うと、リバウンドなどの影響によって、症状が不安定になるリスクがあります。他の抗精神病薬との併用は、薬の特徴を殺してしまうので、単剤での使用が望まれます。

【その他の薬】

 このほか、治療に難しい病態に効果が期待されている非定型抗精神病薬があります。欧米ではすでに治療が行われ、日本では2009年4月に承認された新規の抗精神病薬としてクロザピンがあります。

クロザピン(商品名:クロザリル)
ドーパミン、セロトニン、ムスカリン、アドレナリン、ヒスタミンなど、広範囲の受容体に結合して、それぞれの神経伝達物質の作用が高まるように刺激します。その特徴は、以下のような点が挙げられています。
  1. 錐体外路性の副作用が現れにくい。
  2. 血中のプロラクチン値が上昇しにくい。
  3. 攻撃性、死にたいと思う、自殺を図るなどの強い衝動性に有効である。
  4. 遅発性のジストニア(筋肉の緊張が続くことによって、体が斜めに傾いたりする)や、ジスキネジア(体の一部が勝手にくねくね動いてしまう)を憎悪させることが少ない。
  5. 初めて発病した際の陽性症状や、他の抗精神病薬による治療でも改善を示さない場合の第一選択薬となる。 

 一方、マイナス面としては、重い副作用があります。最も重い副作用としては無顆粒球症があり、血液中の白血球である顆粒球が減少して、細菌や真菌による重症の感染症を併発します。1%の頻度で、無顆粒球症が発現するといわれますので、クロザピンの服用中は、定期的に血液検査を行う必要があります。この他、便秘、頻脈、体重増加、血糖値の上昇、2型糖尿病なども報告されています。

「定型抗精神病薬」(従来型抗精神病薬)

 定型抗精神病薬は、非定型精神病薬より先に登場した薬で、1952年にクロルプロマジン塩酸塩が最初に統合失調症の治療薬として導入され、半世紀以上が経過しています。定型抗精神病薬には3つのタイプがあり、「フェノチアジン系」「ブチロフェノン系」「ベンザミド系」に分類されます。効果は、主にドーパミン受容体D2に結合して、過剰に作用しているドーパミンを遮断する働きがあります。特に、陽性症状である幻覚や妄想などに対しては高い効果を示し、鎮静作用があります。

しかし、感情の平板化、意欲の低下などの陰性症状に対しては、効果は不十分です。また副作用においても、体がこわばったり手が震えたりするパーキンソン症状、じっとしていられず下肢を動かしたり歩き回ったりするアカシジア、悪性症候群(発熱、発汗、嚥下困難、頻脈、血圧上昇など)といった錐体外路性の副作用が認められます。このほか、自律神経系の副作用(のどが渇く、便秘など)や、女性では高プロラクチン血症によって、月経が止まる、乳汁の分泌などの副作用を引き起こしやすくなります。陽性症状を改善する主な定型抗精神病薬には、以下のような特徴や効果があります。

【フェノチアジン系】

・クロルプロマジン(商品名:コントミン、ウインタミン)
1952年から使われている最も古典的な抗精神病薬で、定型抗精神病薬の代表的な薬のひとつです。主な作用は、ドーパミンやアドレナリン受容体の遮断です。この他、アセチルコリン受容体、セロトニン受容体などに結合して働きます。幻想や妄想などの陽性症状に効果があり、興奮や攻撃性、不安などの鎮静作用にも効果をもたらします。
・レボメプロマジン(商品名:ヒルナミン、ソフミン、レボトミン)
遮断作用は、ドーパミン、アドレナリン、ムスカリン、ヒスタミンなどの受容体において有効です。また、鎮静・催眠作用や、情動の安定作用が高いため、興奮しやすい、よく怒る、攻撃性が強い、不安や焦燥などといった激しい症状を鎮めるために処方されることが多い薬です。一方、幻覚や妄想などへの効果が弱いため、このような症状がある場合は、他の薬と合わせて使われます。服用の際の注意点としては、強い鎮静作用をもつため、眠気、ふらつきなどの副作用に注意する必要があります。また、抗コリン作用があるため、口の渇き、かすみ目、便秘、不整脈、腸閉塞などにも注意が必要です。

・フルフェナジン(商品名:フルメジン)
強力なドーパミン遮断作用がありますが、セロトニン、アドレナリン、ムスカリン性アセチルコリンなどの受容体遮断作用は弱いです。幻覚、妄想、不安、緊張感には有効です。通常の量を使っている限り、鎮静作用は弱く、過鎮静は少ないといえます。この薬は陽性症状が多い急性期によく使われ、また亜急性期から慢性期にみられる陽性症状や陰性症状などの改善にも使われます。注意点は、副作用として錐体外路症状、口の渇き、便秘などがみられます。この場合は、抗パーキンソン薬など、他の薬に変更することで対処は可能です。また、白血球減少、血小板減少、体重増加、血圧降下、女性の月経異常、乳汁異常、悪性症候群、麻痺性イレウス(腸閉塞)、睡眠障害などの副作用が現れる場合がありますので、身体的な対症療法が必要です。

【ブチロフェノン系】

・ハロペリドール(商品名:セレネース、ケセラン、ハロステン、リントン)
抗精神病薬の中でも代表的な薬のひとつで、ドーパミン神経系の活動を下げるとされています。認知症やアルコール依存症のせん妄状態の改善にも使われます。幻覚や妄想の治療に使われますが、反応しない場合もあります。その時は他の薬に切り替えたりします。注意点は、体調が悪くなったり、発熱などがあったりする場合は、服用を止めて、必ず医師に伝えます。また、錐体外路症状が現れた場合は、早めに他の薬に変更します。

・ブロムペリドール(商品名:インプロメン)
より選択的なドーパミン受容体遮断作用があります。ハロペリドールと同じく、幻覚や妄想に効果がありますが、体の動きがおかしくなる錐体外路症状や過鎮静は比較的少なくなります。若い患者さんで病気への意識が少ない人には、抗パーキンソン薬を併用します。年齢の高い人はふらつきに注意する必要があります。

【主な抗精神病薬】

非定型抗精神病薬(新規抗精神病薬)
分類 薬品名 商品名 効果や特徴
SDA系 リスペリドン リスパダール 幻覚や妄想に有効。錐体外路症状などの副作用が少ない。
  ペロスピロン ルーラン 幻覚や妄想に有効。陰性症状や神経症状にも効果が認められている。
MARTA系 フマル酸クエチアピン セロクエル 陽性症状、陰性症状、認知機能の改善。
  オランザピン ジプレキサ 陰性症状や抑うつ症状の改善。
DSS系 アリピプラゾール エビリファイ 陽性症状や陰性症状の改善。副作用がすくない。
定型抗精神病薬(従来型抗精神病薬)
分類 薬品名 商品名 効果や特徴
フェノチアジン系 クロルプロマジン コントミン、ウインタミンなど 鎮静効果。幻覚、妄想、興奮にも有効。
  レボメプロマジン ヒルナミン、レボトミンなど 鎮静や催眠効果。情動安定作用が高い。
  ゾテピン ロドピンなど 鎮静効果。陰性症状や認知機能の改善。
  プロペリシアジン ニューレプチルなど 高い攻撃性に有効。起立性低血圧を起こすことがある。
  フルフェナジン フルメジン 幻覚や妄想、不安や緊張感に有効。
  ペルフェナジンマレイン酸塩 ピーゼットシーなど 錐体外路性の副作用が比較的少ない。
  プロクロルペラジン ノバミンなど 吐き気、嘔吐などを抑える作用もある。
ブチロフェノン系 ハロペリドール セレネースなど 幻覚や妄想に対する作用が強い。不安や緊張感に有効。鎮静作用は弱く、錐体外路性の副作用が起こりやすい。
  ブロムペリドール インプロメン 幻覚や妄想に効果がある。不安や緊張感をやわらげる。
  チミペロン トロペロン ○○○○○○○○○○○○○
  スピペロン スピロピタン ○○○○○○○○○○○○○
  モペロン塩酸塩 ルバトレン ○○○○○○○○○○○○○
ベンザミド系 スルピリド ドグマチールなど 高用量では統合失調症の陽性症状を抑える作用がある。低用量では抗うつ作用がある。
  スルトプリド塩酸塩 バルネチール 幻覚、妄想、興奮に対して強く作用する。
  ネモナプリド エミレース 興奮を抑える作用がある。
  チアプリド塩酸塩 グラマリール 精神疾患に対する作用は弱い。脳梗塞の後遺症に伴う興奮や徘徊、せん妄およびジスキネジアの改善に用いる。
その他 ゾデピン ロドピンなど 鎮静作用に優れ、錐体外路性の副作用は起こりにくい。
  ピモジド オーラップ 統合失調症のほか、小児の自閉症症状や精神遅滞に伴う諸症状にも用いる。

薬の種類、用量、期間は人によって違う

 統合失調症を初めて発病した患者さんには、非定型抗精神病薬(新規抗精神病薬)が第一選択薬となります。また、再発した患者さんも同じですが、それまでの治療で定型抗精神病薬が効いていて、生活のうえで困るような副作用がなく、患者さんが希望する場合は、そのまま継続して服用します。初めて発病した患者さんについては、どの非定型抗精神病薬から始めるかについては、糖尿病の既往歴や現在糖尿病にかかっていないかを確認してから決められます。

用量は、少量から始めて、速やかに十分な量まで増量していきます。薬の作用が発揮されるまで、2~4週間かかりますが、その間に顕著な副作用がでた場合は、他の薬を選択することになります。治療に用いる薬の選択や用量は、症状に対する効果と副作用のバランスによって決められます。どの薬がもっとも合うのか、適切な用量はどのくらいかは、患者さんによって異なりますので、一律に判断できません。大事なことは、患者さんの服用した際の実感が重要なポイントになります。周囲から見て取れない主観的な抑うつ感や不快な副作用がありますと、薬を止めてしまう患者さんが多いからです。したがって、「頭がボーッとする」「体がだるい」「不愉快な気分になる」といった副作用を実感したら、主治医に伝えることが大切です。医師は、患者さんの主観的な報告を重視して治療方針を考え、場合によっては薬の変更もあります。いずれにしても、使う薬の種類・量・期間は患者さによって大きく異なり、効果や副作用の現れ方も違ってきます。

薬選びの手がかり

 どのような薬が、どのような患者さんに、どのように反応するかについては、答えはありません。つまり、抗精神病薬の処方には決まりはなく、医師が判断して、その患者さんに合わせたオーダーメイドの処方となります。なぜ、人によって反応が違うのかも不明です。考えられるのは、脳のどの部分で、神経伝達物質のアンバランスが生じて、統合失調症を起こしているのか、そして薬の作用がそれとマッチするのかどうかで、反応が決まるのではないかと考えられます。薬選びで、現在わかっている手がかりといえば、次のような点です

  1. ある薬を使ったら、よい反応をみせた場合、その患者さんにとっては将来もその薬が効果を現すことが期待できます。
  2. 家族の1人が統合失調症にかかって、ある薬によく反応した場合、家族の他の人が同じ病気になったときも、同じ薬が効くことが期待できます。薬に対する反応は、遺伝的な要素がかかわっているものと思われます。
  3. ある薬を最初に投与したとき、患者さんに適合せず不快感を示した薬は、将来においてもその患者さんへの効果は期待できません。 
 

以上の観点から、患者さんや家族は、どんな薬がどのくらいの量を投与され、反応はどうだったのかを記録しておくとよいでしょう。将来、改めて薬を選択するとき、非常に参考になります。

投与する量について

 抗精神病薬が効果を現す量は、患者さんによってかなりのバラツキがあることがわかっています。それは、神経伝達物質の体内での処理能力(吸収や排泄)は、人によって異なるからです。また、遺伝的な体質との関係も考えられます。例えば、アルコールでもわずか30mlで酔っぱらう人もいれば、1リットルを飲んでも酔わない人がいるように、抗精神病薬も同じようなことが考えられます。抗精神病薬の血中濃度が同じレベルに達するのには、ある患者さんは10mgで十分なのに、他の患者さんは400mgも必要な場合があります。このように、薬の適量は患者さんによって全部違います。

抗精神病薬は、薬ごとに治療の適量範囲があります。それよりも少ない量を使えば、少ない分だけ再発の危険性が高くなり、反対に適量範囲を超えて服用すれば、治療効果が下がるばかりか、強い副作用が現れます。ただ、意識的に薬の用量を少なくする「低容量戦略」という治療法があります。再発を起こす危険性もありますが、人によっては副作用が少なく、本来の性格が出てきて活発になる可能性もあります。 

服用する期間

 薬の体内処理能力は、人によって違いますので、効果が出る時間や期間も異なってきます。抗精神病薬を投与して、48時間以内に劇的な効果をみせる人もいれば、数カ月もかかってゆっくり反応する人もいます。アメリカでの調査によると、投与してから最良の改善をみせるまでの平均期間は、35週と報告しています。このうち、半数の患者さんは11週で改善しているため、残りの半数は、かなり長期間がかかっていることが考えられます。一般的に、再発を繰り返す人ほど、服用期間は長くなります。また、年齢を重ねていくに従って、薬の量も減らしていけますし、最終的には止めることもできます。

薬物療法を継続する時の注意点

初めて発病した場合

 初めて発病した患者さんの場合は、1種類の非定型抗精神病薬を少量から飲み始めます。当然ながら、始めて抗精神病薬を服用するとなると、恐怖感があると思います。急性期の激しい症状があるときは、患者さんの多くは病識がないことが多いです。そこで、服用しようとしている薬は、患者さんが困っている不眠やイライラなどの症状に、どのように効くのか、またどのような副作用があるのか、十分に医師が説明したうえで服用を始めることが重要です。

薬について説明する際は、患者さん本人と一緒に家族の方も同席してもらいます。疑問点や不安に思われていることがあったら、自由に質問してもらい、患者さんや家族の方に十分に納得してもらってから、薬物治療を始めることが大切です。最初の納得や理解、薬の服用感などが、その後の長い治療過程に大きく影響をするからです。

再発した場合

 再発の原因で、最も多いのが「服薬の中断」です。このような時は、なぜ薬を飲むのを止めたのか、原因を明らかにすることが大切です。服薬の中断理由として多いのは、次のような点です。

  • よくなったので、薬を飲み続けなくてもよいと思った。
  • 家族が、薬を飲み続けなくてもいいと考え、本人に止めるように勧めた。
  • 長期間服用することで、副作用が心配になった。
  • 患者さん本人が感じている主観的な副作用(抑うつ症状、アカシジアなど)があって、日常生活にも影響を及ぼしていながら、そのことを主治医にうまく伝えられずに中断した。

 以上のような理由で、服薬を中止した場合は、治療戦略を見直す必要があります。また、服薬を継続していたにもかかわらず、再発した場合は、ストレスの原因となっている環境要因を洗い出し、ストレスの軽減に努めるとともに、薬の服用量を見直し、薬の変更も考えます。これらについては、患者さんと医師が率直に話し合える関係にあることが重要です。

回復期・安定期にける薬物療法の注意点

 回復期に入っても、急性期に有効であった非定型抗精神病薬は、同じ用量で継続して服用し、6カ月間は経過を観ます。すぐに薬を変えたり、量を減らしたりすると、症状が逆戻りすることがあります。薬や用量の変更は、一定の期間を服用して経過を観察したあと、安定期に入ってから行います。安定期以降も薬物療法は継続して行われます。定型抗精神病薬を長期間にわたって飲み続けている患者さんは、非定型抗精神病薬に切り替えることもありますが、ゆっくり時間をかけて行うことが大切です。回復期から安定期にかけては、抑うつ症状や過鎮静などを起こさないように気をつけます。特に抑うつ症状が生じると、自殺や服薬の中断につながることがありますので、注意が必要です。

服薬が困難な場合

 抗精神病薬は、基本的には口から飲む内服薬(錠剤または粉薬)です。しかし、どうしても服用が困難な場合があります。このような場合は、やむなく注射薬を使います。筋肉注射または静脈投与(静脈による注射、または点滴として投与)をして、まずは激しい症状を鎮静する必要があります。注射薬は、消化管を通さないため、体内に吸収されやすいという利点があります。

《注射薬を使うケース》
急性期で患者さんが激しく興奮したり、混乱したりしている状態で、規則的に薬を服用することが困難な場合。
内服薬では十分な効果が現れないため、より効果を高めたい場合。
《注射薬の使い方》
・注射薬は、普通は筋肉注射が行われます。吸収が早いため、内服薬の5倍ほどの量を一度に体内に入れることができます。
・筋肉注射は、普通は臀部(おしり)に行いますが、腕にする場合もあります。
・興奮などによって、食事もとれないほど消耗が激しい患者さんは入院してもらい、安静を保ちながら、点滴で静脈に投与する場合もあります。
《注射薬の注意点》
・筋肉注射は、注射をした部分の筋肉を痛めるので、あまり過度に注射はできません。一時的な措置として考えます。
・多量の薬を一度に体内に入れるため、急激な作用でトラブルが起こらないように注意します。

※注射薬には「デポ剤」と呼ばれる油性の製剤もあり、これは筋肉に注射すると、ゆっくりと時間をかけて体内に取り込まれる薬です。デポ剤を使えば、毎日薬を飲まなくても、2週間に一度、あるいは4週間に一度の注射で済みます。薬の種類に限りがありますが、合っている人には便利だともいえます。デポ剤の使用は、薬を飲むのをためらったり、忘れてしまったり、また患者さん自身が病気という認識がなく、薬を飲むのをやめてしまったり、たびたび再発を起こすケースなどに使われます。