[統合失調症]疫学的統計頻度column

Update:2023.10.15

[統合失調症]疫学的統計頻度とは

統合失調症は世界中で約1%の人々に影響し、発症年齢は10代後半から30代初頭が多いです。男女比はほぼ同等で、発展途上国でも頻度は変わりません。遺伝的、神経生物学的、環境的な要因が関与し、社会的・職業的機能に影響を及ぼします。治療は長期化を防ぐためにも、早期のサポートや治療が重要です。

[統合失調症]疫学的統計頻度

目次

疫学的統計頻度

2008年に行われた厚生労働省の患者調査によると、ある1日に統合失調症、またはそれに近い診断名で医療機関を受診している患者さんの数は25.3万人で、そのうち入院している人は18.7万人となっています。ここから推計した受診中の患者さんの総数は、約79.5万人と報告しています。では、受診していない人も含めて、統合失調症の人は国内にどのくらいいるのか、その実態については、日本ではこれまで十分な調査が行われていません。世界各国からの調査研究や報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症にかかる人は人口の0.7%といわれ、生涯罹患率でみると0.3~2.0%と言われます。一般的に言われている生涯有病率は、約0.85%(120人に1人)、または1%前後とも言われています。また、ある一時点で統合失調症にかかっている人は人口の0.46%にあたり、時点有病率でみると0.19~1.0%といわれます。そして、1年間の新たな発症数は、人口10万人あたり15人(8~40人)くらいとされています。

一方、男女差はないとされてきましたが、診断基準に基づいて狭く診断した場合の最近の報告によると、男性1.4に対して女性1.0と、やや男性の方が多いとされています。発症年齢では男性よりも女性の方が遅めです。また、発症においては遺伝的要素も多少あります。両親のいずれかが統合失調症の場合は、その子どもの発病率は10~12%、両親とも統合失調症にかかっていた場合は、さらに高くて48%程度の割合で子どもが発病するとされています。では、双子や多胎児の場合はどうかというと、一卵性双生児では1人が統合失調症を発病した場合、もう1人も必ず発病するとは限りません。一致率は、約36%程度です。二卵性双生児では約14%といわれています。一方、一卵性の四つ子の全員が統合失調症にかかった事例もありますが、経過や症状はそれぞれバラバラであったという報告もあります。統合失調症の遺伝に対する考え方は、病気が遺伝するというよりも、生物学的な脆弱性が遺伝すると考えた方が妥当かもしれません。

発症年齢については、思春期から青年期で、10歳代後半から30~40歳代までに多く発症しています。ピークは、男性が18~25歳、女性が26~45歳くらいで、まれに中学生~高校生くらいの若年や、40歳後半以降の年代にも発症がみられることもあります。

1990年代にデンマーク、オランダ、スウェーデンなどのヨーロッパの国で、統合失調症の疫学的調査研究が先行して行われました。それでわかった特徴的なことは、都市生活が統合失調症の明確なリスク要因であることでした。デンマーク人175万人を対象にした大規模な調査研究によると、コペンハーゲンという大都市に生まれた人は、地方生まれの人に比べて、統合失調症のリスクが2.5倍と多く、小都市に生まれた人はその中間でした。何がこの違いの原因になっているかは不明ですが、調査でわかったことは、15歳までの若いころ、都会の中心部で暮らしていた人が最も高リスクだったということです。

この調査研究で、もう一つ特徴的なことは、ヨーロッパへ移り住んできた人は、生粋のヨーロッパ人に比べて統合失調症のリスクが高いという報告でした。移民二世は、その親よりも高く、アフリカ系移民の発症率が最も高かったといいます。特に、アフリカ系カリブ人は、他の人々に比べて統合失調症の治療を受ける割合が9倍だったことが、イギリスの3都市での調査でわかりました。さらに、イギリスの疫学者・カークブライド(ケンブリッジ大学)等の調査研究によると、選挙の投票率が高いなど社会的つながりの強い地域では、統合失調症の発病率が比較的低いことを見いだしています。

ヨーロッパで行われた人種と統合失調症の関係についての調査は、その後アメリカでも調査研究が行われ、コロンビア大学のブレスネイハン等は、健康保険に加入しているカルフォニア州住民の1万2000人を対象に調査を行いました。それによると、アフリカ系アメリカ人は統合失調症による入院率が白人の2倍という結果のデータがでました。同調査は、さらにオークランド群生まれの人達で、人口密度の高い地域で生まれた人は、統合失調症の発症リスクが2~3倍と高いものの、人種による差はないといいます。理由として、不健康で過密な都市部の人達は、有害化学物質や病原体にさらされる機会が多いほか、幼少時に獲得した精神疾患素因の影響も考えられるとしています。生まれた後の環境要因がゲノムに化学的な変化を生じさせているとするならば、統合失調症の原因は、地理学と遺伝学の交わるところにあるのかもしれないという見解を示唆しているともいえます。

この他、アメリカで行われた別の調査では、日照量の多い地域と、土壌中のセレン濃度の多い地域では罹患者は極めて珍しく、そうでない地域では有病率の比較で相対リスクが高いとの結果も報告されています。研究対象となった地域や人種などにより、罹患率の差があり、また診断基準にも左右されるため、その意味は明らかではありません。