主な症状

主な症状

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 統合失調症の症状は多彩ですが、大きく分けると「陽性症状」と「陰性症状」の二つのタイプがあります。簡単に違いを述べると、陽性症状は幻覚や妄想など、本来あるべきではないことがあるように起こる症状です。一方陰性症状は、感情の起伏の平坦化、意欲の低下などで、本来あるべきものがなくなる症状です。陽性症状は病気の急性期に現れ、陰性症状は病気の発症後に徐々に目立ってくることが多いです。なお統合失調症は、これらの症状が現れる前に、何らかの異変(前駆症状)があるものです。それに気付き、早めに治療することによって症状の悪化を防ぐことができます。


《前駆症状》

統合失調症の発症前には、次のような異変が見られることがあります。

前駆症状

 統合失調症の発症前には、次のような異変が見られることがあります。

  • 夜眠れない(昼夜逆転の睡眠パターンに変化)
  • 部屋に閉じこもるようになる
  • 口数が少なくなる
  • 身なりに構わなくなる
  • 性格が変化する
  • 他人に対して猜疑心が強くなる
  • 人間関係に問題が起こる
  • イライラしやすくなる
  • 集中力が低下する
  • 成績が急に下がる
  • 奇妙な話し方をする
  • 奇異な行動をとる

 例えば突然に学校へ行かなくなり、部屋に引きこもって、服も着替えず、また歯磨きもしない、顔も洗わないなど、周りの人が見て理解できないような行動をとるようになったときは、統合失調症の可能性があります。

陽性症状

 陽性症状は統合失調症の一つのタイプで、発症後の急性期には、現実と非現実の境が顕著にぼやけてきて、幻覚や妄想が出現します。思考の一貫性が低下し、話の内容にまとまりが欠けてきて、現実への適応能力が低下します。例えば、耳元で絶えず誰かが自分の悪口を言っている幻聴があったりして、物事に集中できなくなり、眠ることさえも困難になります。陽性症状の主なものは、「幻覚(幻聴が主、まれに幻視など)」「妄想」「思考の障害(洞察力の欠如、支離滅裂な言語など)」「強いイライラ」「激しい興奮」などがあります。これらは統合失調症を特徴づける症状で、原因としては、脳内神経伝達物質の一つであるドーパミンの機能異常が深く関与していると考えられており、治療によって比較的容易にコントロールすることができます。

陰性症状

 統合失調症の症状のもう一つのタイプに陰性症状があります。個人差はありますが、感情の起伏に乏しく、意欲が低下し、興味も減退します。自発性、感情、意欲、興味などは、私たちが活動する際には不可欠なもので、これらの機能が低下するのが陰性症状の特徴です。具体的な症状として、感情の鈍麻、興味の喪失、引きこもり、意欲の低下、身だしなみや衛生面にかまわなくなる、食事に無関心、気分の落ち込みなどがあります。この陰性症状は、陽性症状と比べると目立ちにくい症状ですが、急性期を過ぎて社会的機能を回復していく上で、問題になりやすい症状です。孤独な環境に陥りやすく、環境的な要因が陰性症状の悪化に関与することがあるので、周囲の理解やサポートが回復の過程で重要なサポートとなります。

幻覚

 幻覚は、統合失調症の代表的な症状の一つです。実際にないものが、感覚として感じられることで、最も多いのが聴覚の幻覚、つまり「幻聴」症状です。誰もいないのに人の声が聞こえてくる、他の音に混じって声が聞こえてくる、複数の人が自分のことを話し合っているのが聞こえてきたりします。主に、非難したり、命令したりする声が聞こえてくることが多いです。「お前は馬鹿だ」と批判されたり、「あっちへ行ってくれ」と命令されたり、「いまトイレに入ったな」と本人を監視しているような内容の声です。

幻聴のタイプには、次のようなものがあります。①何かをしようとすると、それに対するコメントが聞こえてきます(多くの場合は、ネガティブなコメントです)。②命令をする声が聞こえてきます。③複数の人が会話をしていて、しばしば自分の噂や悪口を言っている声が聞こえてきます。④自分の頭の中の考えが、外部の別の声として聞こえてきます。自分の考えが、声となってはっきり聞こえてくる症状ですが、不思議な現象といえます。

幻聴は、他人にはなかなか気付かれませんが、身近な人が幻聴の症状で悩んでいる場合、本人の言動を注意深く観察していると、そのサインを読み取ることができます。誰かに話しかけているような感じ、誰もいないのに会話をしているような感じ、誰もいない空間へ向かって叫んでいるような感じ、また幻聴に聞き入ってニヤニヤ笑ったり(空笑い)、幻聴との対話でブツブツ言ったり(独り言)する言動です。

幻聴は本人にとっては、非常にうるさく、不快なもので、聞こえてくる声のせいで眠れなくなったり、仕事に集中できなくなったり、物事を楽しめなくなったりして、日常生活や社会生活を送るうえで障害となってきます。また、幻聴によって、自分自身がコントロールされてしまう危険もあります。幻聴から被害妄想が生じることもあります。幻聴が聞こえたら、早めの治療が必要です。

この他、幻覚には、見えるはずのないものが見える「幻視」、ご飯が青酸カリの味がするといった「幻味」、身体を触られているという「幻触」など、いわゆる人間の五感である視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のすべてに起こる可能性があります。幻覚がみられる病気には、この統合失調症のほか、てんかん、薬物中毒、薬物からの離脱症状、脳腫瘍、脳炎などがあります。 

妄想

 妄想も、統合失調症の代表的な症状の一つです。妄想とは、明らかに誤った考えを根拠もないのに信じてしまう状態です。周囲が、説得したり誤りを指摘して見せても、それを受け入れることができません。このように、普通に考えればあり得ないことを、現実のことだと固く信じてしまう状態は、心の調子がかなり悪くなった時に出現します。妄想でも、いろいろな種類があり、一番よく見られるのが被害妄想です。

被害妄想で多いのが、誰かに尾行されている、見張られている、盗聴されている、噂をされている、自分のことが放送されているといった内容のものです。被害妄想でもいろいろあって「警察が自分を尾行している」といった追跡妄想、「街中にいる人の中に敵が紛れていて、自分を襲おうとしている」といった迫害妄想、「近くに住む人の咳払いは、自分への警告だ」とか、「テレビのニュースキャスターが、自分に特別なメッセージを知らせてきた」といった関係妄想、「道を歩いていると、皆が自分をジロジロ見ている」といったように、他人から注目されている注察妄想などの他、「飲食物に毒を入れられた」と思い込む被毒妄想、「自分の物を盗られた」と思い込む盗害妄想、「悪い病気にかかっている」と思い込む心気妄想、「財産を失ってしまった」と思い込む貧困妄想、「自分は罪深い人間で、皆に迷惑をかけている」と思い込む罪業妄想、「自分は世界を動かす力がある」「自分は特別に選ばれた人間である」と思い込む誇大妄想などがあります。また「盗聴器が仕掛けられている」「皆が自分の悪口を言っている」「夫が浮気をしている」などの被害妄想もあります。

妄想に近い症状としてあるのは、「思っていることが声となって聞こえてくる」という考想化声、「自分の考えに反し、誰かが自分の考えや体を操っている」という作為体験、「自分の考えが社会や世界に知れ渡っている」という考想伝播などがあります。これらの症状は自我障害といって、自分が行っているという感覚が損なわれていることから起こる症状です。

生活上の障害となる症状

 統合失調症では、幻覚や妄想のほかに日常生活や社会生活における障害が現れるのが特徴で、適切な会話・行動・作業ができにくくなることによって認められる症状です。これらの症状は陰性症状と言われるものです。病気による症状とは異なってわかりにくい症状で、患者さん本人も説明しにくい症状です。したがって、周りの人からは常識がない、社会性がない、気配りがない、怠けているなどと誤解されることもあります。

《知的障害による症状》

 主に会話と行動面で症状が現れます。例えば、日常的な会話をしていても、話のピントがずれる、話題が飛ぶ、相手の話のポイントが掴めない、何を言いたいのかわからなくなり、話が支離滅裂になります。考えが急に中断され、突然何も言わなくなることもあります。いわゆる知的な障害によるもので、考えをまとめることが出来ない症状です。これは行動障害としても現れます。仕事をしていても行動の能率が悪くなり、作業ミスが多くなります。何のための行動をしているのか滅裂になります。そのうちに、興奮して騒いだり、独り言を言ったり、おかしくもないのに笑ったり、その辺をあちこち歩き回ったりすることもあります。

《感情障害による症状》

 感情の動きが乏しくなるために起こる障害です。症状としては、喜怒哀楽が少なくなり、周囲に対して無関心になり、表情も乏しくなってきます。この感情障害は、自分の感情と他人の感情の理解という双方において生じます。自分の感情における障害は、感情の動きが少ない、物事に対して適切な感情がわきにくい、感情を適切に表せずに表情が乏しくなり固くなる、それなのに不安や緊張が強く現れる症状です。他人の感情については、相手を理解するのが苦手になり、相手の気持を理解できなくなり、誤解することが多くなります。したがって、人間関係が希薄になって、自分の世界に閉じこもり、家からほとんど出なくなります。


《病識の障害による症状》

 統合失調症の場合、自分自身が病気であることを認識出来なくなります。幻覚や妄想のような症状が、病気による症状であることに自分で気付くことができなくなります。幻覚や妄想が病気の症状であると周りから言われても、そう思えないのです。しかし、治療が進んで病状が改善してくると、自分の症状について、徐々に認識できるようになります。ただし、自分以外の他の患者さんについては、それが病気の症状であると認識できますので、判断能力そのものの障害ではないのです。他人の立場から自分を見て、自分の誤りを正していくという機能が障害されていることが原因となっているからです。

病期別にみた症状

《急性期の症状》

 統合失調症の急性期においては、幻覚、妄想、興奮などの陽性症状が前景に出てきます。また、感情的に不安定で切迫感が強い状態になります。さらに、食欲が低下し、睡眠障害や昼夜逆転のリズムなど、身体面でも顕著な変化が起きてきます。そのため、周囲とのコミュニケーションが障害され、病識も欠如してきます。

《回復期の症状》

 統合失調症の回復期は、他に臨界期とか寛解後疲弊病期、転回期などとも呼ばれ、PPD(精神病後抑うつ)もこの時期に出現します。初回エピソードで、幻聴が消失する割合は、90%程度です。この割合は、再発を繰り返すごとに低下するため、再発の防止が治療上重要になってきます。また、陰性症状が目立つのもこの時期からです。 

《安定期の症状》

 安定期では、陽性症状および陰性症状ともにある程度固定しますが、すべての人が慢性化するわけではなく、だいたい70~80%のケースで何らかの症状が残ります。特に、陰性症状が強い場合は能力障害をきたし、抗精神病薬が効きにくく、心理社会的治療が適応されます。

《前駆症状と再発早期徴候》

 一般に先駆症状として、神経衰弱様状態、神経症症状(離人・強迫など)、抑うつ症状、一過性の精神病症状、などがあります。また、社会適応も悪くなり、成績低下や不登校、欠勤などの行動面において変化がよく見られます。一方、再発早期徴候は人によってほぼ一定しており、神経症症状や軽度の精神病症状、さらには不眠などの身体症状がよく見られます。この時期の持続期間には、かなりの個人差があり、数日から数カ月の差があるため、介入を難しくしている要因になっています。

【症状出現の頻度】

《幻覚》

  • ・幻聴……………………………………71
  • ・注釈幻声………………………………34
  • ・会話性幻声……………………………31
  • ・身体幻覚・幻触………………………15
  • ・幻嗅……………………………………5
  • ・幻視……………………………………31
  • ・幻覚の総合重症度……………………70

《妄想》

  • ・被害妄想………………………………67
  • ・嫉妬妄想………………………………3
  • ・罪業・罪責妄想………………………29
  • ・誇大妄想………………………………32
  • ・宗教妄想………………………………25
  • ・身体妄想………………………………24
  • ・関係念慮・関係妄想…………………35
  • ・影響妄想………………………………37
  • ・考想察知………………………………34
  • ・考想伝播………………………………14
  • ・考想吹入………………………………19
  • ・考想奪取………………………………17
  • ・妄想の総合重症度……………………85

《奇異な行動》

  • ・衣服と外観……………………………12
  • ・社会的・性的行動……………………24
  • ・攻撃的・焦燥的行動…………………19
  • ・反復的または常同的行動……………11
  • ・奇異な行動の総合評価………………16

《陽性の思考形式障害》

  • ・話題の脱線(連合弛緩)……………33
  • ・的外れ応答……………………………33
  • ・支離滅裂(言葉のサラダ・分裂言語症)……9
  • ・非論理性………………………………10
  • ・迂遠……………………………………14
  • ・会話の促迫……………………………13
  • ・注意転導性会話………………………13
  • ・音韻固執………………………………1
  • ・陽性の思考形式障害の総合評価……42

《感情の平板化・情動鈍麻》

  • ・表情変化欠如……………………………88
  • ・自発的動きの減少………………………55
  • ・身振りによる表現の減少………………58
  • ・視線による表現の減少…………………56
  • ・情動反応性欠如…………………………44
  • ・場にそぐわない情動……………………50
  • ・声の抑揚の欠如…………………………50
  • ・情動の平板化・情動鈍麻の総合評価…88

《思考の貧困》

  • ・会話量の貧困……………………………49
  • ・会話内容の貧困…………………………40
  • ・途絶………………………………………14
  • ・反応潜時の延長…………………………22
  • ・思考の貧困の総合評価…………………52

《意欲・発動性欠如》

  • ・身だしなみと清潔度……………………74
  • ・職業、学業持続性欠如…………………89
  • ・身体的不活発……………………………68
  • ・意欲・発動性欠如の総合評価…………90

《快感消失・非社交性》

  • ・娯楽への関心と余暇活動………………79
  • ・性的関心と性行為………………………35
  • ・親密さや親近感を感じる能力…………60
  • ・友人関係…………………………………87
  • ・快感消失・非社交性の総合評価………87

《注意の障害》

  • ・社会的状況での注意の障害……………56
  • ・精神作業中の注意の障害………………52
  • ・注意の障害の総合評価…………………66


※アイオワ大学の入院患者を対象に評価した陽性症状と陰性症状の出現頻度。