複雑性PTSD その2column

Update:2023.10.15

複雑性PTSD その2とは

複雑性PTSDの症状には、恐怖、不安、怒りなどの強い感情の他に、自己評価の低下、対人関係の困難、自己認識の歪み、感情の調整の困難、無力感、孤立感などが含まれます。過去のトラウマが日常生活に悪影響を及ぼすことが特徴と言われ、専門家による心理療法が一般的に治療として用いられます。

複雑性PTSD その2

目次

複雑性PTSD(C-PTSD)とは

複雑性PTSD(C-PTSD)は、通常のPTSDとは異なり、長期にわたる慢性的なトラウマ体験によって引き起こされる精神障害です。PTSDが単一の外的ストレスによって引き起こされるのに対し、C-PTSDは、継続的で多数の外的ストレスによって引き起こされます。複雑性PTSDの症状には、恐怖、孤独感、不安、自己評価の低下、対人関係の問題などが含まれます。C-PTSDは、長期にわたる身体的、性的、心理的虐待、拘束、宗教的な洗脳、戦争などの過酷な環境下での経験によって引き起こされます。

複雑性PTSD(C-PTSD)の症状

複雑性PTSDの症状には、以下のものが含まれます。

  • 恐怖:複雑性PTSDの人は、過去のトラウマ体験が引き起こす恐怖や不安を感じ、外部の刺激に対して過剰な反応を示すことがあります。これによって、脳のアラート機能が過剰に働くため、身体に痛みや不快感が生じます。
  • 孤独感:複雑性PTSDの人は、常に孤独を感じ、誰かとつながることができないと感じることがあります。過去のトラウマ体験により、自己保護のために感情をシャットアウトする傾向があるため、他人との繋がりが希薄になります。
  • 不安定な感情:複雑性PTSDの人は、怒り、悲しみ、喜びなどの感情をコントロールできなくなることがあります。これは、トラウマ体験が引き起こす脳内の化学変化によるもので、常に不安定な感情状態が続くことがあります。
  • 自己評価の低下:複雑性PTSDの人は、自分自身に対して否定的な感情を持ち、自己評価が低下します。自分自身が原因であると思われるトラウマ体験により、自己評価が低下し、自分自身に対する不信感や無価値感が生じる

複雑性PTSD(C-PTSD)の原因

複雑性PTSD(C-PTSD)の原因は、長期間にわたる身体的、性的、心理的虐待、拘束、宗教的な洗脳、戦争など、慢性的なストレスによる多数の外的ストレスが原因となります。これらの経験により、脳内のホルモンや神経系が変化し、恐怖や不安、孤独感、不安定な感情、自己評価の低下などが引き起こされます。

  • 肉体的虐待:肉体的虐待とは、暴力、拘束、拷問などによって引き起こされる身体的な傷害です。身体的虐待によって、犠牲者は長期間にわたって身体的な苦痛や症状を抱えることがあります。
  • 性行為の虐待:性的虐待は、性的関係を強要されることや、性的な行為を目撃することによって引き起こされます。性的虐待によって、犠牲者は長期間にわたって恥や罪悪感、性的問題を抱えることがあります。
  • 心理的虐待:心理的虐待は、恐怖、脅迫、屈辱、無視などによって引き起こされます。心理的虐待によって、犠牲者は自己評価の低下、自己否定、不安、孤独感、うつ病などを抱えることがあります。
  • 宗教的な洗脳:宗教的な洗脳は、独自の価値観や信仰によって、個人の自由意志や思考を奪うことを目的としています。宗教的な洗脳によって、犠牲者は自己同一性の喪失、自己否定、自己不信、孤独感、人間関係の問題などを抱えることがあります。
  • 戦争体験:戦争体験は、爆発音、激しい戦闘、恐怖などによって引き起こされます。戦争体験によって、犠牲者はPTSDやC-PTSD、不安、うつ病、自殺などを抱えることがあります。

複雑性PTSD(C-PTSD)の治療法

複雑性PTSDの治療には、薬物療法や心理療法など、複数の方法があります。治療の目的は、症状の軽減や悪化の防止、日常生活への回復を促すことです。 

  • 薬物療法:抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入剤などが用いられます。これらの薬物は、症状の軽減や安眠を促進することができますが、C-PTSDそのものを治療する効果はないことが多いため、症状緩和のための補助的な治療として利用されます。
  • 心理療法:心理療法には、認知行動療法、EMDR、感情を調整する治療法などがあります。これらの治療法は、C-PTSDの症状に焦点を当て、症状緩和や回復を促進することができます。
  • 認知行動療法:この治療法は、現実的な認知を促進することで、C-PTSDの症状を軽減することを目的としています。自己評価の低下や自己否定、過剰な恐怖反応などの症状に対処するため、患者に自己観察や問題解決のスキルを教え、行動の変容を目指します。
  • EMDR:この治療法は、眼球運動によって脳の神経回路を変化させることで、トラウマを軽減することを目的としています。患者が過去のトラウマを思い出し、同時に目で左右に動かすことで、トラウマの情報を脳が再処理することを促します。
  • 感情を調整する治療法:この治療法は、過去のトラウマが引き起こす感情の問題に焦点を当て、感情を調整することを目的としています。患者は、感情を調整するために、自分自身に対する思いやりや自分自身を受け入れるスキルを身につけます。

EMDR

EMDRは、Eye Movement Desensitization and Reprocessing(アイ・ムーブメント・ディセンシティゼーション・アンド・リプロセシング)の略語であり、トラウマ後ストレス障害(PTSD)の治療に用いられる心理療法の一種です。 

EMDRでは、トラウマに関するイメージや感情を呼び起こしながら、目の運動を促すことによって、脳の神経回路を再処理することを目的としています。患者は、トラウマに関する情景を思い出しながら、治療者が提示する目の運動(視線の左右移動や音の左右移動)に従います。このことで、脳内での情報処理が改善され、トラウマによる不快な感情や身体的反応を軽減することが期待されます。

グループ療法

グループ療法:グループ療法は、同様の体験を持つ患者が集まって、経験を共有し、支え合う治療法です。この治療法は、個人療法と比較して、治療費の負担が少なく、患者が他人と接する機会を増やすことができるなどのメリットがあります。

グループ療法では、治療を受ける患者たちが、お互いに自分自身の体験を共有し、互いに支え合うことで回復を目指します。グループ療法の中で、患者たちは自分自身が疎外されていないことを実感し、自己肯定感を高めることができます。また、他人と共に体験を共有することで、自分の問題が個人的なものではないことを理解することができます。

グループ療法では、治療者が話題を提供し、患者たちは自分自身の経験を共有することができます。治療者は、患者たちの話を聞き、それぞれに応じた支援を提供します。また、患者たちが自分自身の状況について話し合うことで、自己理解を深めることができます。

グループ療法は、個人療法と比較して、他人と接する機会が増えるため、社交不安障害や孤独感などの症状を改善することができます。また、グループ療法に参加することで、自分自身に対する洞察力を深め、他人に対する理解力を高めることができます。治療終了後も、患者たちは、治療を通じて得られた人間関係を維持し、支え合うことができます。

ただし、グループ療法にはいくつかの注意点があります。例えば、患者たちが過去のトラウマを語る場合、他の患者たちにトラウマの情報が伝わることがあります。そのため、治療者は、患者たちが自己開示する際のプライバシーを保護する必要があります。