コラムcolumn

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群

この記事のもくじ

1.過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは、精神的ストレスや自律神経失調症などの不調が原因で、腸が刺激に対して過敏な状態となり便通の異常を引き起こす病気です。通常の検査では腸に炎症や潰瘍などが認められないのにもかかわらず、慢性的に腹部膨満感や腹痛、下痢や便秘などの便通異常が現れます。

過敏性腸症候群は約10~15%にみられる、有病率の高い病気です。女性の方が発症しやすく、年齢とともに減少すると分かっています。発症しやすい場面は、「入学後」「新学期」「入社後」「部署異動後」「転職後」など、環境の変化により大きなストレスがかかった時に発症しやすいと言われています。

命に直結している病気ではありませんが、お腹の痛み、繰り返す便秘や下痢などの症状により、日常生活に支障を来すものです。しかしながら、過敏性腸症候群により不安障害や気分障害、抑うつ状態などに陥った場合は、過敏性腸症候群の主症状(腹部や便通の異常)の改善とともに、精神症状に対する治療を行う必要が出てくるでしょう。

2.過敏性腸症候群の原因とは

過敏性腸症候群は、腸の内蔵神経が様々な物質や感情的要素など、何らかの原因で過敏になっていることが考えられますが、原因はハッキリと明確になってはいません。

その何らかの原因として挙げられるのは、次のとおりです。

ストレスや不安によるもの 細菌やウイルス感染によるもの 食物耐性症やアレルギーによるもの 高カロリー・高脂肪食 特定の食べ物 下剤などの薬

それぞれ具体的に解説していきます。

 

特徴

ストレスや不安

ストレスや不安、抑うつ、恐怖などに長期間さらされていると、様々な症状を引き起こす心身症の一つ。

細菌やウイルス感染後

サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌性胃腸炎や、ロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎の後に起こる。

食物耐性症やアレルギー

最も多いのは、「乳糖不耐症」。例えば、牛乳やヨーグルト、アイスクリームなどを食べた後に消化吸収されないまま大腸に届く。その過程で腹痛や便通の異常を来す。

高カロリー食・高脂肪食

揚げ物や塩分の濃い物、脂質が多い食べ物など。消化吸収の機能が追い付かないことで、腹痛やあ便通の異常を来す。

特定の食べ物

小腸で吸収されない成分の食べ物で、それが原因で腹痛や下痢、お腹が張ってしまう。

食べ物の例とは、小麦・乳製品・豆類・チョコレート・コーヒー・茶・一部の人工甘味料・野菜などが挙げられます。ただし、多くの食品は複数の成分を含んでおり、原因となる食べ物を特定することは難しい。

下剤などの薬

便秘傾向の場合に服用した下剤により、大腸が過剰に刺激されて症状が起きる。

原因となる刺激があっても、必ずしも症状が出るわけではありません。また、どの原因が症状の出現に関係しているのか、はっきりと明確にはできないということが特徴です。

3.過敏性腸症候群の症状や特徴

過敏性腸症候群は特に、10代~20代の若い年代に発症する傾向があります。症状が起きて、治まるというサイクルを繰り返すことが特徴的です。

主な症状には、次のようなものがあります。

排便に伴う腹痛 排便すると緩和する腹痛 便秘や下痢、軟便や硬便が変化する 腹部の張り、膨隆 便に粘液が混じる 排便後の残便感 痛みは持続する鈍痛、けいれん痛 ガスが溜まる 吐き気 頭痛 疲労 抑うつ、不安などの気分の不調 筋肉痛 集中力

症状が重い場合は、すぐにトイレに行けないような場面や状況を避けて生活しなければと、日常生活に支障を来すことがあります。

また、過敏性腸症候群は便の形状により、「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」の4つの型に分けられます。主な特徴は次のとおりです。

特徴

便秘型

主に女性が多い。腸がけいれんを起こして便が腸に滞留する。そのために腹痛が起き、ガスも多くなる。しかし、スッキリと排便できずにお腹が張った状態が続く。

排便すると小さくコロコロとした硬い便が出るだけで、残便感がみられる。

下痢型

主に男性が多い。急にお腹がグルグルと鳴り、激しい腹痛と水のような下痢が排便される。排便した後は症状が落ち着くが、1日に何回も同じ症状が起きる。

トイレに間に合わないかもしれないと不安で、外出できずにストレスとなり、さらに症状が増す。

混合型

激しい腹痛を伴い、便秘と下痢を繰り返す。

分類不能型

腹部の膨満感や鳴り、ガスが漏れてしまうなどの、上の3タイプと異なる症状が出る。

過敏性腸症候群は、腹痛や繰り返される下痢と便秘により、日常生活全般において支障を来します。

4.過敏性腸症候群の診断

過敏性腸症候群は機能障害と分類され、腸の運動や神経の感受性などの機能が正常に機能していない状態と言えます。しかし、内視鏡検査やレントゲン検査、血液検査などでは特に異常は認められないことが特徴的です。このため、過敏性腸症候群は症状の特徴から診断されることになります。

過敏性腸症候群は、ローマ基準に従って診断されます。「過去3ヵ月間に少なくとも週1回の頻度で腹痛がみられ、かつ以下の基準の2つ以上に該当する場合」は確定です。

排便に関連した痛みがある 痛みが排便回数の変化(便秘または下痢)に連動している 痛みが便の硬さの変化に連動している

また、クローン病や潰瘍性大腸炎、大腸がん、大腸炎などの他の病気との判別をするために、血液検査や便検査、直腸指診、超音波検査、大腸内視鏡検査などの検査を行います。

また、ストレスや情緒的な問題により症状が誘発されることが多いため、ストレスの原因となる背景や抑うつ症状、不安障害、気分障害などが隠されていないか問診をします。

さらに、過敏性腸症候群からクローン病や潰瘍性大腸炎に移行する確率も高いと言われています。たとえ過敏性腸症候群と診断されても、「便に血が混じる」「体重が減る」などの別の症状が出た場合は、再検査を行う必要があります。

5.過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療として、主に「食生活などの生活習慣の改善を行うこと」「ストレスの原因を取り除くこと」「薬物治療」が挙げられます。

食生活などの生活習慣の改善を行う

最も重視するのが、食生活などの生活習慣を改善することです。暴飲暴食や深夜の食事、脂肪分の多い食事などを避けて規則正しい食生活を心がけることが大切です。
辛い物や香辛料などの刺激が強い物やアルコールを控えることも必要です。また、食物繊維と水分を十分に取り、3食毎日同じ時間帯に食事しましょう。

ストレスを溜めない生活

また、ストレスを溜めないような生活を送ることが治療になり、しっかりと睡眠を取り休養し適度な運動を行う生活に変えていきます。
日常生活において、自分がリラックスできる時間を作りましょう。趣味の時間をゆっくりと過ごし、散歩や軽いスポーツなどで気分転換することも大切です。

薬物治療を行う

過敏性腸症候群は、便の形から「下痢型」「便秘型」「混合型」「分類不能型」に分けられ、腹痛などの症状とあわせて薬物治療を行います。主には、消化管の機能を改善する薬剤を服用したり、便の水分バランスを整える薬剤や下痢や便秘などの症状を緩和させる薬剤を服用したりします。
また、自律神経失調症や精神疾患などが現れている場合は、抗不安薬や抗うつ薬などを服用することもあります。抗うつ薬は、睡眠障害や抑うつ、不安の緩和だけではなく、多くの過敏性腸症候群の人で腹痛や下痢、腹部膨満の症状を緩和させるのに役立ちます。
過敏性腸症候群の症状や長期間の治療とうまく付き合っていく上で、多くの場合は認知行動療法や精神療法、催眠療法などを取り入れると効果的です。