HSCとは
HSCとは、「Highly Sensitive Child=非常に敏感な子」と日本で言われています。大人に対して言われている「HSP(Highly Sensitive Person)」と同様で、周りの環境に過剰に反応し、繊細過ぎて少しの出来事でも傷つきやすいという特徴があります。
しかし、大人と違って子どもの場合は、集団行動や学校生活に対して馴染めず不登校になってしまう傾向が多いとされています。自分の子どもがHSCであると理解しておらず、不登校になった我が子を見て悩んでしまう保護者も多いことでしょう。
このHSCは、1996年にアメリカの心理学者である、エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。日本人の子どものおよそ5人に1人は、HSCの気質があると言われています。たとえば、1クラス40人の児童がいる教室には、およそ8人のHSCがいる計算になります。
これは気質の一つであり、医学的に診断される疾患ではありません。後天的に発症したものではなく、生まれつきの気質のため、HSCそのものに対する治療もないのです。大人になっても気質は変わらないことが多く、HSCが成長し大人になってからHSPであるケースは多いでしょう。
このようにHSCは多くの人が持っている気質であり、その程度の差により日常生活に支障が出るのか、普通の生活が送れるのか変わります。「親の育て方が悪い」という原因ではなく、あくまでも気質に過ぎません。そして「ネガティブなもの」でもないということを知っておきましょう。
HSCの特徴
HSCには主に「DOES」という4つの特徴があります。これはHSCであれば、ほとんどの子どもが当てはまる性質になります。
D(プロセスの処理が深い:Depth of processing)
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少しの情報から多くのことを察する周囲の空気を敏感に察知する行動するまでに時間がかかる間違うことを恐れ慎重になりやすい |
O(刺激を強く受けやすい:easily Overstimulated)
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暑さや寒さなどの環境の変化に弱い痛みも感じやすい音やにおい、肌触りに敏感合わない服やチクチクする服が苦手 |
E(感情的な反応が強い:Emotional responsiveness)
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友達が怒られている様子を見ると、自分のことのように感じる不公平なことに強く反応する |
S(微妙な刺激に対する共感と敏感さを持っている:empathy and sensitive to Subtle stimuli
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表情や声の調子など小さな変化に気づく他人の髪型や周囲のちょっとした環境の変化に気づく他人の機嫌を察する芸術作品への観察力が鋭い |
これらは育ってきた環境などに左右されるものではなく、その子の気質になります。ただし、感覚過敏やこだわり、集団生活が苦手だという特徴が、よく「発達障害」と混同されます。子どもが小さいほど、その見分けは難しいでしょう。
子どもがHSCに当てはまるかチェックしてみましょう
エレイン・N・アーロン博士は、HSCの気質に多く当てはまる「敏感さ」「繊細さ」をチェックする項目も開発しています。自分の子どもが「HSCかもしれない」と悩んだら、次の項目に当てはまるかチェックしてみましょう。
- すぐびっくりする。
- チクチクするような服、くつ下の縫い目、肌に触れる襟元のタグなどをいやがる。
- サプライズしてあげてもほとんど喜ばない。
- 厳しい罰を与えるよりも、優しく間違いを正す方が言うことをわかってくれる。
- わたしの気持ちをよく察するように感じる。
- 年齢の割には難しい言葉をつかう。
- ほんのかすかな匂いにも気がづく。
- 優れたユーモアのセンスをもっている。
- 直感力が優れているように思える。
- 興奮したことがあった日はなかなか眠れない。
- 大きな変化にはうまく対応できない。
- 服が濡れたり砂で汚れた時は着替えたがる。
- 質問を山のようにぶつけてくる。
- 完璧主義なところがある。
- 他人の苦しみによく気がつく。
- 静かな遊びが好き。
- 深い示唆に富む質問をしてくる。
- 痛みにとても敏感。
- うるさい場所を苦にする。
- 微妙なことによく気がつく(何かものを移動させた時や、人の外見の変化などについて)。
- 高い場所に上る前に、安全かどうかじっくり考える。
- 知らない人がいると、一番良い時の実力を発揮できない。
- ものごとを深く感じとる。
引用元:The Highly Sensitive Person
この23個のチェック項目のうち、「はい」が13個もしくは13個以上であった場合、HSCである可能性が高いとされています。だからと言って、必ずしもその子がHSCの気質があるか確定するものではありません。その子の気質を知るための参考として、チェックリストを活用しましょう。
HSCは不登校の原因になるケースが多い
HSCは、HSCではない子どもと比べて「周りが気になる」「周囲の状況を察する」という過剰な目配りができる子である上に、あらゆる感情を自分の中に吸収してしまい、集団生活を送ることに過剰な疲れを感じるでしょう。
たとえば、クラス替えをしたり担任が変わったりといった新しい状況でも、敏感に反応してしまい過剰に疲れるものです。本人が楽しいと思う学校のイベントは、終わった後にどっと疲労感が襲いかかり、人一倍疲弊することが多いです。
このような状況から、HSCは不登校になるケースが多いとされています。ただし、敏感であることだけが原因で不登校になるわけではありません。「学校に登校すること自体がストレス、労力が大きい」という状況だと知っておきましょう。
敏感な気質の子どもとの付き合い方
HSCのように敏感な気質を持つ子どもに対して、保護者や学校の先生たちは「気にし過ぎだ」「気にしないで」という言葉がけはしない方が良いでしょう。また、HSCではない子どもと比べることもやめましょう。その子の敏感で繊細な気質を、しっかりと受け止め、子どものペースに寄り添いながら前に進むことが大切です。
まずは、ここで「HSCの特徴について」知った上で、その子をよく見てあげましょう。
ありのままの子どもの姿を見てあげる
敏感で繊細な気質は、その子の個性です。「周りのことによく気づく」「共感力が高い」「感情豊か」などの特徴は、その子が持つ長所となるでしょう。
自分の子どもがどのような気質を持ち、どのようなことが得意なのか、ありのままの子どもの姿を見てあげましょう。全てをネガティブなものとして見ず、「できること・苦手なこと」を理解してあげることが大切です。
安心感を与える声がけをする
HSCは、様々な刺激を敏感に受けとる鋭い感覚を持っています。ただ、その受け取った感情などを上手に言葉で表現することが難しいという面もあります。そのために、不安が強くなる傾向があります。
そこで、保護者や学校の先生はその子が安心して生活を送られるように、体調や気持ちを代弁してあげる声がけをすることが大切です。
自己肯定感を高めてあげる
HSCは、自己肯定感を高めたり維持したりすることが難しい傾向にあります。そのため、保護者や学校の先生がHSCの子どもと関わる場合、自己肯定感を高める声がけが大切です。
「周りの友達が楽しそうに出来ている」という状況において、HSCの場合は同じように楽しく出来ず苦痛ですらある場合が多いのです。そのような状況では、「自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまいます。
しっかり休息を取らせてあげる
HSCの子は、人一倍情報を吸収して疲弊し、不安や恐怖なども強く感じています。保護者や先生は優しく温かく見守り、しっかり休息を取らせてあげることで、少しずつ自分の「敏感さ」と上手に付き合っていけるように成長するでしょう。
もし、本人に頭痛や腹痛、吐き気、睡眠障害などが現れている場合は、自律神経失調症などの可能性があります。その場合は、学校をお休みし専門機関で相談しながら、ゆっくり心身を休ませることが大切です。