タンドスピロンクエン酸塩(商品名:セディール)とはcolumn

Update:2023.03.06

タンドスピロンクエン酸塩(商品名:セディール)とは

目次

タンドスピロンクエン酸塩(商品名:セディール)とは

 タンドスピロンクエン酸塩(以下タンドスピロン)は、セディールという商品名で販売されている抗不安薬です。日本においては1996年に住友ファーマによって5㎎錠および10㎎錠の販売が開始され、2006年に20㎎錠が販売されました。現在では、住友ファーマ以外からもジェネリック医薬品が複数のメーカーから販売されています。

代表的な抗不安薬の1つにベンゾジアゼピン系のお薬が挙げられますが、タンドスピロンはベンゾジアゼピン系とは全く異なるメカニズムで抗不安作用を発揮します。うつ状態にある患者さんは通常よりも脳の働きが活発に働いており、それにより強い不安を感じたり、眠りにくいといった症状が発現します。ベンゾジアゼピン系抗不安薬の場合、脳内のGABA受容体に作用することで活発に働いている脳にブレーキをかけ、リラックスさせる方向に働きかけます。効果の発現も早く、強い不安を感じた時だけに使用したり、日常的に服用することもできます。ただし、優れた効き目を有しますが、依存症などの副作用に注意しながら服用する必要があります。一方タンドスピロンの場合、GABA受容体には作用せずセロトニン受容体に作用します。このセロトニンという物質とうつは密接に関係していることが分かっており、タンドスピロンはその受容体に作用することでうつ症状を改善していきます。ベンゾジアゼピンとは異なり依存などの副作用はほぼ無く、高齢の患者さんにも使用しやすいお薬ですが、効果の発現に時間を要します。一般的に服用開始後1週間~2週間程度で効果が徐々に現れるため、医師の指示通り継続するようにしましょう。

 

タンドスピロンクエン酸塩の作用について

 タンドスピロンの効能効果は以下の通りです。

  • 神経症における抑うつ、恐怖
  • 心身症における身体症候ならびに抑うつ、不安、焦り、睡眠障害

 

神経症とは、こころが原因で強い不安や強迫観念を感じてしまう病気で現在では一般的に不安障害や強迫症と言われます。心身症についてはこころが原因で身体に不調が生じる病気のことで、例えば緊張でお腹が痛くなったり、頭痛を生じたりします。タンドスピロンはこのような症状に対して改善効果が認められています。

 タンドスピロンはセロトニン受容体に作用することで症状を改善します。セロトニンに関連するお薬は他にもあり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)といったお薬があります。これらはタンドスピロンと同様にセロトニン受容体にも作用しますが、その他の方法でも症状改善にアプローチができるお薬です。複数の方向から症状改善にアプローチできるため治療効果も高いですが、その反面患者さんによっては副作用発現に繋がってしまうことがあります。タンドスピロンは選択的にセロトニン受容体のみに作用するため、幅広い患者さんに使用できるお薬です。

 

タンドスピロンクエン酸塩の投与方法について

 タンドスピロンには以下の用量が販売されています。

  • 5㎎錠
  • 10㎎錠
  • 20㎎錠

 

 通常、成人に対しては1日30㎎を3回に分けて服用してもらいます。年齢や症状によって適宜増減することは可能ですが最大用量は1日60㎎です。

 副作用も少なく使いやすいお薬ですが、タンドスピロンには以下のような短所があります。

  • 効果の持続時間が短いこと
  • 効果が発現するまでに時間がかかること

 

 タンドスピロンは、服用後体内への吸収が速く、1時間程度で最高血中濃度となりますが、そこから1時間程度で約半分が分解されてしまいます。そのため、作用を持続させるためには1日に3回程度は服用が必要となります。また、タンドスピロンによる治療を開始してすぐに効果が得られるわけではなく、1週間~2週間程度継続して服用しなければ治療効果が得られないことが分かっています。しかし、ベンゾジアゼピン系などの他の抗不安薬と組み合わせて使用するなど現在では治療の選択肢が広がり、患者さんに最適な治療を提供できるようになりました。

 

タンドスピロンクエン酸塩の注意点について

 タンドスピロンの開発中に認められた副作用は以下の通りです。

  • 眠気:2.96%
  • 悪心(嘔吐前の胃のむかつき):0.9%
  • 倦怠感(だるさ):0.76%
  • 食欲不振:0.69%
  • 口喝(口の渇き):0.55%

 

眠気などの副作用が認められていますが、他の抗不安薬、抗うつ薬と比較すると発現頻度は非常に低くとても使いやすいお薬と言えます。しかし、車の運転中や危険を伴う機械の操作中に眠気が生じる可能性もあるため、服用期間中はそれらの運転操作は控えるようにしてください。

 

服用できない/注意が必要な患者さん

 タンドスピロンを服用してはいけない特定の患者さんや併用してはいけないお薬は特にありません。ただし、このお薬は肝臓で分解され腎臓(尿から)にて排泄されます。そのため、高齢の患者さんなど肝臓や腎臓の働きが弱っている方は注意が必要です。また、妊娠中や授乳中の方については、胎児および母乳中にお薬が移行することが分かっています。動物実験において胎児の発達に影響を与えたことが分かっているため服用の必要性について医師や薬剤師に相談するようにしてください。