クロチアゼパム(商品名:リーゼ)とは
クロチアゼパムは、日本で開発されたお薬でリーゼという名称で1979年に販売が開始されました。最初に「リーゼ顆粒10%」が販売され、その後「リーゼ錠5㎎」と「リーゼ錠10㎎」が発売されました。現在ではジェネリック医薬品も多く販売されており、その場合名前にクロチアゼパムがつきます(以降、クロチアゼパムで統一します)。
クロチアゼパムはベンゾジアゼピン系に分類されるお薬で、日本だけでなく世界中で古くから使用されています。ベンゾジアゼピン系のお薬は20種類以上あり、全般に抗不安作用や鎮静作用、催眠作用といった作用を有します。お薬によっては選択的に抗不安作用が強かったり、作用時間がとても短かったりとそれぞれのお薬に特徴があります。クロチアゼパムは他のベンゾジアゼピン系のお薬と比べて比較的効果が早く現れますが、作用の持続時間は短い「短時間作用型」のお薬になります。効果は服用してから1時間内にピークを迎え、その後3~6時間ほど持続します。作用の強弱としては一般的に他のベンゾジアゼピン系のお薬と比べると、比較的弱いとされており、軽度の不安感や緊張感といった症状を有する患者さんに用いられることが多いです。作用は弱い場合でもベンゾジアゼピン系のお薬には注意すべき副作用も多く存在します。特に作用時間が短いお薬ほどそういったリスクが高いとされており、漫然とした長期間の服用は避けるべきです。そういったリスクもあるためクロチアゼパムは2008年より一度に処方できる上限が30日分と制限されています。
クロチアゼパムの作用について
クロチアゼパムは、抗不安作用や催眠作用、筋弛緩作用(筋肉のこわばりを和らげる作用)があり、服用後速やかに効果が発現します。具体的な効能効果は以下の通りです。
- 自律神経失調症※1による、めまい、肩こり、食欲不振など
- 心身症※2による身体症候ならびに不安・緊張・心気・抑うつ・睡眠障害
- 麻酔前薬
※1自律神経失調症:自律神経(交感神経や副交感神経のこと)のバランスが乱れ、心や身体に不調をきたす症状のこと
※2 心身症:心が原因で過呼吸や頭痛といった身体的な症状を引き起こす病気のこと
心が原因で不調をきたした患者さんの場合、通常よりも脳が過剰に働いてしまい不安感や緊張感を強く感じたり、眠れなくなったり、時には胃腸障害や肩こりといったさまざまな症状を引き起こします。クロチアゼパムの作用は、脳の働きを抑えてやることでこれらの症状を全般的に抑えることができます。作用としては他のベンゾジアピン系のお薬と比べると弱いため、軽度の症状でお悩みの患者さんに適したお薬です。即効性を期待できるお薬ですが、持続時間は短いため持続を目的とする場合は1日3回程度服用する必要があります。
クロチアゼパムの服用方法について
クロチアゼパムは以下の用量が販売されています。
2022年6月時点では10%顆粒は先発品であるリーゼのみ販売されており、ジェネリック医薬品では販売されていません。
服用方法に関しては、患者の症状や状態に応じて最適な用量、服用回数を医師が判断しますが、基本的には15~30mgを1日3回に分けて服用します。手術前の不安感などに対しては手術前夜もしくは手術前に10~15mgを単回で服用します。
クロチアゼパムの注意点について
クロチアゼパムは比較的作用が弱いお薬ですが、副作用が発現する頻度としては他のベンゾジアゼピン系のお薬とさほど変わりはありません。
主な副作用としては以下のものがあります。
- 眠気:2.78%
- ふらつき:0.78%
- 倦怠感:0.41%
脳の働きを抑える作用により抗不安作用などの優れた効果がある一方で、眠気やふらつきといった副作用が現れることも多いです。そのため、服用期間中には自動車などの運転は避けて下さい。また、長期間お薬を服用すると依存が形成されることがあるため,漫然と使い続けるべきではありません。依存性が生じた場合、同じ量のお薬を服用しても効き目が薄くなったり、もっと多くお薬が欲しくなったりしてしまいます。さらに、依存が形成された場合にお薬をいきなり減らしたり断薬するとこれまでの症状が一気に悪化してしまう離脱症状が起きる可能性もあります。日々の病状や副作用の有無など医師や医療スタッフに相談しつつ、ゆっくりと服用量を減らしていける工夫をしていきましょう。
服用できない/注意が必要な患者さん
以下の患者さんはクロチアゼパムを服用してはいけません。
また、以下の患者さんは医師の指示を仰ぎ、少量から開始するなど慎重な服用が必要です。
- 肝臓、腎臓に障害のある患者さん
- 授乳中、妊娠中の患者さん
- 高齢者の患者さん
クロチアゼパムを含めベンゾジアゼピン系のお薬は肝臓で代謝され、主に尿中に排泄されます。そのため肝臓や腎臓が悪い患者さんは体内にお薬がとどまりやすく効果や副作用が強く出てしまうことがあります。一般的に65歳以上の高齢者の患者さんは肝臓や腎臓の働きが落ちていることが多いため注意が必要です。 その他、妊婦や授乳の患者さんも注意が必要です。動物実験において胎児への影響(催奇形性)が確認されているため、特に妊娠初期の患者さんは予め服用の必要性について医師に相談するようにしてください。