クロルジアゼポキシド(商品名:コントール・バランス)とは
クロルジアゼポキシドは気分をリラックスさせ、不安や緊張をやわらげたり、寝つきをよくする抗不安薬で、武田薬品からは「コントール」、丸石製薬からは「バランス」という商品名で販売されています(以降クロルジアゼポキシドにて統一)。
クロルジアゼポキシドは1957年にスイスのロシュ研究所で合成された抗不安薬です。現在でも精神科領域で広く使用されているベンゾジアゼピン系に分類されるお薬で、その中で最初に開発されたお薬です。
現在抗不安薬といえば一般的にベンゾジアゼピン系と認識されますが、それらが登場する前の1955年に初めて販売された抗不安薬があります。メプロバメート(商品名:アトラキシン)というお薬で、ノイローゼやイライラに対して販売されていました。しかし、作用が弱いため高用量の服用が必要で、投与を中止した際に禁断症状が発現しやすい等という問題があり数年で姿を消すことになります。これらのメプロパメートの欠点を抑え、患者さんにとって使いやすいお薬として登場したクロルジアゼポキシドは広く普及することとなりました。
不安、緊張、焦燥などに優れた治療効果を発揮しつつ、注意事項を守れば比較的副作用を起こしにくいことから1961年の販売から現在に至るまで臨床で用いられています。不安や緊張を症状の中核とする神経症に限らず、心身症、うつ病などによる不安、緊張、焦りなどを緩和し、かんしゃくに対しても発作と性格変化を同時に改善するなど、その適応は広いです。
クロルジアゼポキシドの作用について
古くからの呼び方で精神科領域の治療薬は大きく「メジャートランキライザー」と「マイナートランキライザー」の2つに分類できます。
メジャートランキライザーとは、現在では一般的に抗精神病薬ともいわれ、主に統合失調症やアルコール依存症などに用いられています。強い抗精神作用がある薬で、マイナートランキライザーでは対応できないような極度の不安を取り除くのに用いられています。急性の精神障害の治療や、その他にも幅広い精神疾患に使用されています。
マイナートランキライザーは、クロルジアゼポキシドを含むベンゾジアゼピン系などの抗不安薬のことをいいます。服用することで脳の特定の部位に作用し、脳が興奮している状態を鎮め、不安や緊張をやわらげる作用があります。主に神経症における不安・緊張・抑うつ、うつ病における不安・緊張、心身症(胃・十二指腸潰瘍、高血圧症)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつの治療に用いられています。
クロルジアゼポキシドの服用方法について
クロルジアゼポキシドの服用方法については以下の通りです。
通常、成人は1日クロルジアゼポキシドとして20〜60mgを2〜3回に分けて服用します。小児は1日10〜20mgを2〜4回に分けて服用します。
いずれの服用方法も治療を受ける疾患や年齢・症状により適宜増減します。
服用し忘れた場合は、気がついた時に1回分を服用します。ただし、次の服用時間が4時間以内の場合は、服用せず、次に服用する時間から飲みます。絶対に2回分を一度に服用しないようにしてください。
クロルジアゼポキシドの注意点について
クロルジアゼポキシドは使用成績調査などの副作用発現頻度が明確となる調査が行われていないため、正確な副作用発現頻度はわかっていません。文献などを参考に集計された副作用の発現頻度は以下の通りです。
- 精神神経系
- 眠気:5%以上
- ふらつき、めまい、歩行失調、頭痛、多幸症:1~5%未満
- 肝臓
- 循環器
- 消化器
- 悪心(嘔吐前のむかつき)、便秘、口渇(口の渇き):1~5%未満
- 過敏症
- 骨格筋
クロルジアゼポキシドを含めたベンゾジアゼピン系のお薬全般にいえる副作用で注意すべきものに依存や離脱症状があります。ベンゾジアゼピン系のお薬を長期間服用すると同じ量服用していても効き目が弱くなったり、1日に何度も服用したくなる依存が形成されることがあります。また、服用する量を急激に減らしたり、中止したりすると、けいれん発作、せん妄(軽度の意識障害、興奮状態、幻覚、妄想)、手足や首のふるえ)、不眠、不安といった離脱症状があらわれることがあるので、医師や薬剤師の指示通りに服用することが大切です。
服用できない/注意が必要な患者さん
以下の患者さんはクロルジアゼポキシドを服用することができません。
- 緑内障の方(症状を悪化させることがあります。)
- 重症筋無力症の方(筋弛緩作用により症状が悪化するおそれがあります。)
以下の患者さんは慎重に使う必要があります。使い始める前に医師または薬剤師に相談してください。
- 心臓、肝臓、腎臓に障害のある方
- 呼吸器系に疾患を有する方
- 妊娠中・授乳中の方
また、クロルジアゼポキシドを服用している間は眠気、めまいなどがあらわれることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意する必要があります。もし、これらの症状を自覚した場合には、すみやかに機械の操作を中断してください。また、クロルジアゼポキシドの作用はお酒とよく似ています。そのため、お薬の服用期間中に飲酒をすることで作用が強く発現することがあるため飲酒は控えるようにしましょう。