グアンファシン塩酸塩(インチュニブ®)についてcolumn

Update:2023.03.06

グアンファシン塩酸塩(インチュニブ®)について

目次

グアンファシン塩酸塩(商品名:インチュニブ)とは

 グアンファシンは注意欠如多動障害あるいは注意欠陥多動性障害(AD/HD)の適応を取得した選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬で、「インチュニブ」という商品名で販売されています。過去には本態性高血圧症治療薬として「エスタリック」という商品名でも販売されていました。

 2009年9月にアメリカで初めてAD/HD治療薬として承認されて以降、2019年4月現在では世界36ヵ国でAD/HDの適応症を取得しています。日本では2011年11月に塩野義製薬株式会社と英国のShire plcが国内共同開発・商業化のライセンスを締結し、2017年3月に小児におけるAD/HDの適応症を取得し、製造販売を開始しました。2019年6月には、世界で初めて18歳以上の患者のAD/HDの適応も取得しています。

 AD/HD治療薬は大きく分けて、中枢刺激薬と非中枢刺激薬の2つに分けることができます。グアンファシンは非中枢刺激薬に分類されています。

 中枢刺激薬は即効性があるかわりに依存性などのリスクがあり、危険性が高いため、流通に大幅な制限がかけられています。しかし、グアンファシンなどの非中枢刺激薬は即効性がないかわりに安全性が高く、依存症を起こしにくいです。

飲み始めてすぐに効果は得られませんが、飲み続けると徐々に脳内で作用を発揮し、AD/HDの症状を改善します。6歳以上18歳未満の患者に対して投与したところ、1週または2週からAD/HDの症状が改善したと報告されています。

 

グアンファシン塩酸塩の作用について

 注意欠如多動障害(AD/HD)は、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)といった症状がみられる発達障害です。

以前まではAD/HDは注意欠陥多動性障害とよばれていましたが、2013年に注意欠如多動症/注意欠如多動性障害という名前に変更されました。

 AD/HDの原因は現在でもまだ完全には判明していませんが、様々な研究によって脳の神経伝達に何らかの異常があることで、注意や行動をコントロールすることが難しくなっているのではと考えられています。

グアンファシンは選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬に分類されています。脳内のアドレナリン受容体を刺激し、神経伝達を増強させることでAD/HDを治療するのだと考えられています。ただし、AD/HDに対して治療効果が得られることはわかっていますが、詳細な作用機序についてはまだわかっていません。

 

グアンファシン塩酸塩の服用方法について

グアンファシンの服用方法については以下の通りです。

  • 18歳未満の患者は、通常、体重50kg未満の場合は1回グアンファシンとして1mg、体重50kg以上の場合は1回2mgを1日1回服用することから開始します。
  • 1週間以上の間隔をあけて1mgずつ維持量(体重17~25kgは1mg、体重25~38kgは2mg、体重38~50kgは3mg、体重50~63kgは4mg、体重63~75kgは5mg、体重75kg以上は6mg)まで増やします。
  • 症状により適宜増減しますが、最高量(体重17~25kgは2mg、体重25~34kgは3mg、体重34~42kgは4mg、体重42~50kgは5mg、体重50kg以上は6mg)を越えて服用はできません。
  • 18歳以上の患者は、通常、1回2mgを1日1回服用することから開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ維持量(4〜6mg)まで増やします。症状により適宜増減しますが、最高量(6mg)は越えて服用できません。

グアンファシン塩酸塩の注意点について

国内臨床試験および市販後調査において、以下のような副作用が報告されています。

精神神経系

  • 傾眠(眠気):8%
  • 頭痛、不眠、めまい:5%以上

消化器

  • 口渇(口の渇き)、便秘:5%以上

その他

  • 倦怠感:5%以上

 

 重大な副作用としては、低血圧(20.5%)、徐脈(14.9%)が報告されています。これらがあらわれ、失神に至る場合もあります。

また、死にたいと考える自殺念慮や、実際に自殺を企てる自殺企図のリスクが高くなることがあるともいわれています。

 

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはグアンファシンを服用することができません。

  •  過去にグアンファシンを服用してアレルギー症状を起こしたことがある方
  •  妊婦または妊娠している可能性のある方
  •  脈が遅くなる不整脈の1つである房室ブロック(第二度、第三度)のある方

 

以下の患者さんは慎重に使う必要があります。使い始める前に医師または薬剤師に告げる必要があります。

  •  低血圧、起立性低血圧、徐脈、心血管疾患のある方、または過去にこれらの症状のあった方、血圧を低下または脈拍数を減少させる薬剤を飲んでいる方
  •  高血圧のある方、または過去に高血圧のあった方
  •  不整脈のある方、または過去に不整脈のあった方、先天性QT延長症候群の方、またはQT延長を起こすことが知られている薬剤を飲んでいる方
  •  狭心症および心筋梗塞などの虚血性心疾患のある方、または過去にこれらの症状のあった方
  •  脳梗塞などの脳血管に障害のある方
  •  肝臓に重度の障害のある方
  •  腎臓に重度の障害のある方
  •  抑うつ状態にある方

 

また、グアンファシンを服用している間は眠気、めまいなどが現れることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意する必要があります。もし、これらの症状を自覚した場合には、すみやかに機械の操作を中断してください。