アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ®)についてcolumn

Update:2023.02.06

アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ®)について

目次

アトモキセチン塩酸塩(商品名:ストラテラ®)とは

 アトモキセチンはイーライリリーアンドカンパニーにて創薬された選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤に分類される注意欠如多動障害(AD/HD)治療薬で、「ストラテラ」という商品名で販売されています。

 AD/HD の治療薬として一般的に用いられてきた中枢刺激薬とは異なる薬理学的特性を持っており、世界で初めての非中枢刺激性治療薬として2002年にアメリカで承認され、その後、日本でも2009年にAD/HD治療薬として承認・販売されています。

 中枢刺激薬はAD/HDに対して速攻で効果を発揮しますが、依存性のリスクがあるため流通に制限がかけられています。登録された特別な医師しか処方することができません。しかしアトモキセチンのような非中枢刺激性治療薬は、即効性はないものの安全性が高く、依存症を起こしにくいのが特徴です。2週ほど服用を続けると徐々に症状の改善がみられ、6週間ほどで6割以上の患者で十分な反応が得られるといわれています。

アトモキセチン塩酸塩の作用について

 注意欠如多動障害(AD/HD)は、学齢期の子供に多くみられる精神的な発達障害の1つです。不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)といった症状がみられます。症状のあらわれ方は患者によって異なり、不注意の症状が優勢の方や、多動・衝動の症状が優勢の方、混在してどちらの症状もある方がいます。

以前まではAD/HDは注意欠陥多動性障害とよばれていましたが、2013年に注意欠如多動症/注意欠如多動性障害という名前に変更されました。

 AD/HDの原因は現在でもまだ完全には判明していませんが、様々な研究によって脳の機能に問題があることで、注意や行動をコントロールすることが難しくなって発症していると考えられています。

 AD/HDの原因が完全に解明されていない以上、アトモキセチンもどのようなメカニズムでAD/HDに効いているかは正確にわかってはいません。しかし様々な試験の結果、アトモキセチンは脳内の神経細胞間で情報を伝える神経伝達物質ノルアドレナリンの量を調節し、不注意や多動・衝動的で落ち着きがないなどの症状を改善していると考えられています。

 

アトモキセチン塩酸塩の服用方法について

アトモキセチンの服用方法については以下の通りです。

18歳未満の患者は、1日体重1kg当たりアトモキセチンとして0.5mgの服用から開始します。その後、症状に応じて1日体重1kg当たり0.8mgまで増量して服用し、さらに1.2mgまで増量します。維持量としては1日1.2〜1.8mg/kgを服用します。

増量する場合は1週間以上の間隔をあけ、いずれの場合も1日2回に分けて服用します。症状により適宜増減しますが、1日量はアトモキセチンとして体重1kg当たり1.8mgか120mgのいずれか少ない量を超えて服用してはいけません。

18歳以上の患者は、1日アトモキセチンとして40mgの服用から開始し、その後1日80mgまで増量した後、維持量として1日80〜120mgを服用します。

増量する場合は1日80mgまでの増量は1週間以上の間隔をあけ、その後の増量は2週間以上の間隔をあけます。いずれの場合も1日1回または1日2回に分けて服用します。なお、症状により適宜増減しますが、1日量は120mgを超えて服用してはいけません。

アトモキセチン塩酸塩の注意点について

国内外で行われた試験において、以下のような副作用が報告されています。

消化器症状

  • 悪心(嘔吐前のむかつき):5%
  • 食欲減退:9%
  • 腹痛、嘔吐、便秘、口渇:5%以上
  • 下痢、消化不良、口内乾燥:1~5%未満

精神神経系

  • 傾眠(眠気):8%
  • 頭痛:4%
  • 浮動性めまい(体がふわふわする感じ)、不眠症:5%以上
  • 睡眠障害、易刺激性、不快気分:1~5%未満

循環器

  • 動悸:5%以上

その他

  • 体重減少:5%以上

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはアトモキセチンを服用することができません。

  • 過去にアトモキセチンを服用してアレルギー症状を起こしたことがある方
  • モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤[セレギリン塩酸塩(エフピー)、ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)、サフィナミドメシル酸塩(エクフィナ)]を投与中または投与中止後14日間以内の方
  • 心血管に重篤な障害のある方
  • 褐色細胞腫の方、または過去に褐色細胞腫であった方
  • 閉塞隅角緑内障のある方

MAO阻害剤といわれるモノアミンオキシダーゼ阻害剤とアトモキセチンを一緒に服用すると、セロトニンの分解が阻害され脳内セロトニン濃度が異常に高まってしまい、セロトニン症候群という副作用を起こすおそれがあります。急に精神的に落ち着かなくなる、体が震える、汗が出る、脈が速くなる、発熱、筋肉がこわばる、手足がぴくつくなどの症状があらわれます。

また、アトモキセチンを服用している間は眠気、めまいなどがあらわれることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意する必要があります。もし、これらの症状を自覚した場合には、すみやかに機械の操作を中断してください。