ルラシドン(ラツーダ®)についてcolumn

Update:2023.03.07

ルラシドン(ラツーダ®)について

目次

ルラシドン(商品名:ラツーダ)とは

 ルラシドンは「ラツーダ」という商品名で販売されているお薬で、双極性障害(躁うつ病)や統合失調症の治療に用いられています。日本の住友ファーマ株式会社が新規に見出したお薬で海外では2010年より、日本においては2020年から販売されています。

 双極性障害とは別名「躁うつ病」とも呼ばれ、気分が高揚し誰にでも話しかけたり非常に活動的になる躁状態と、気分が落ち込み活力や感情が乏しくなるうつ状態、そして躁状態でもうつ状態でもない通常状態の3つの状態を繰り返す病気のことを言います。一般的には躁状態よりもうつ状態の方が期間が長く、その分患者さんや介護者の負担は大きく、両者の生活の質(QOL)を大きく下げる病気の1つです。また、双極性障害は再発しやすい病気であり、治療において重要なのは躁状態やうつ状態を再発させないことです。治療は薬物治療が基本となり、躁状態、うつ状態、通常状態それぞれにおいて患者さんに最適なお薬を服用することになります。ルラシドンは、これらの状態の内、うつ状態の改善効果が認められているお薬です。また、リチウムもしくはバルプロ酸という古くから双極性障害治療に用いられているお薬とルラシドンを併用することによって、躁状態・うつ状態の再発が抑えられたという報告もあります※。

 双極性障害を発症する詳しい原因はまだ分かっておりませんが、精神的なストレスや遺伝的な要因が原因の1つであると言われています。一般的に双極性障害の治療は長期に渡ることが多く、お薬の効き目や、副作用などの安全性にも十分配慮しながら継続していく必要があります。

ルラシドンの作用について

 私たちが感じる様々な感情は全て脳内の神経系によりコントロールされています。愉悦感や不安感などの感情は、セロトニンやドパミン、アドレナリンといった神経伝達物質がそれぞれの神経間で綿密なコミュニケーションをとることによってバランスが保たれています。セロトニンによって働きが制御されている神経系をセロトニン神経系といい、主に不安・イライラなどの感情や、痛みなどに関わっています。ドパミンは気持ちを高揚させたり、筋肉を動かす際の運動に関連しています。ルラシドンは、このセロトニンやドパミンを特異的に抑制する働きがあるため、セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)という種類に分類されています。SDAに分類されるお薬は他にもいくつかあり、それらはルラシドン同様、双極性障害や統合失調症の治療に用いられています。

 ルラシドンが他のSDAと異なる点として、鎮静作用が他のSDAよりも弱く、その代わり不安症状の改善効果が高い点です。そのため、双極性障害においては、躁状態よりもうつ状態の改善に効果を発揮します。

ルラシドンの服用方法について

ルラシドンの服用方法については以下の通りです。

双極性障害におけるうつ状態改善に用いる場合、通常、成人は1回20〜60mgを1日1回食後に服用します。20mgの服用から始め、年齢・症状によって適宜増減を行います。増量する場合は1日量として20mgずつ徐々に増量を行いますが、1日最大量は60mgを超えないように調整します。

双極性障害治療においては基本的にうつ状態の改善目的に使用されるお薬で、うつ状態が改善した場合は投与を継続すべきか患者さんの状態を診て判断します。

 

ルラシドンの注意点について

過去に双極性障害治療において認められた主な副作用は以下の通りです。

  • アカシジア(じっとしていられない、そわそわする):13.0%
  • 振戦(しんせん/意図しない手足の振るえ):6.6%
  • 悪心(嘔吐前の胃のむかつき):6.5%
  • 傾眠:2.7%
  • 嘔吐:2.2%
  • 浮動性めまい(ふわふわと浮いた感覚を伴うめまい):2.2%

 

ルラシドンは体内に吸収された後に肝臓で代謝され、腎臓や腸管から排泄されます。そのため、肝臓や腎臓の働きが弱っている患者さんの場合、通常よりも体内にルラシドンが留まりやすい傾向があります。そのため、そのような患者さんにおいては腎機能、肝機能の状態に応じて投与量を調節する必要があります。

 

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはルラシドンを服用することができません。

  •  アゾール系抗真菌薬やHIV治療薬など肝臓の代謝酵素を阻害する作用を有するお薬を使用している方
  •  リファンピシン(商品名:リファジン)、フェニトイン(商品名:アレビアチン)など肝臓の代謝酵素を強く誘導するお薬を使用している方
  •  過去にルラシドンを服用してアレルギー症状を発現した方
  •  アドレナリンを使用している方(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)

 

上記の併用できないお薬以外にも、ルラシドンと一緒に併用すると効果が減弱したり、副作用が発現しやすくなるお薬があります。現在服用中のお薬がある場合は医師、薬剤師に相談するようにしてください。また、ルラシドンを服用している間は眠気、めまいなどが現れることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意する必要があります。もし、これらの症状を自覚した場合には、すみやかに機械の操作を中断してください。

 

 

※ 日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅰ.双極性障害 2020