ベンラファキシン(商品名:イフェクサーSR)についてcolumn

Update:2022.11.04

ベンラファキシン(商品名:イフェクサーSR)について

目次

ベンラファキシン(商品名:イフェクサーSR)とは

ベンラファキシンは、イフェクサーSRという商品名で販売されているセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)呼ばれるタイプの抗うつ薬です。脳内においてセロトニンとノルアドレナリンの作用を活発にすることで、うつ病やうつ状態を改善します。

ベンラファキシンは、当初1日2回~3回投与の即放錠※1としてニュージーランドで販売されました。その後、患者さんの治療継続性などの向上を目的として1日1回投与の徐放性カプセル剤※2であるイフェクサーSRが1997年にスイスで販売されました。日本においては、2015年9月に「うつ病・うつ状態」を効能・効果として販売が開始され、現在では80カ国以上で使用されています。

イフェクサー<EFFEXOR>の“OR”は「実行する者」を意味する接尾辞です。Efficacy(有効性)に関連する”EFFEX”を実行する者という意味でイフェクサーと命名されました。その名の通り、イフェクサーSRは国内臨床試験において、うつ病・うつ状態に対して優れた有効性を示しています。

※1即放錠:お薬を服用後すばやく有効成分が放出され、体内でスムーズに吸収されるため効果の発現が速いお薬です。
※2徐放性カプセル剤:お薬を服用後、ゆっくりと有効成分が放出されます。そのため、効き目の発現は緩やかですが、効果の持続や副作用の軽減が期待できます。

ベンラファキシンの作用について

 脳内には数多くの神経が存在し、それぞれ重要な働きを担っています。セロトニンやノルアドレナリンという物質は、神経伝達物質とよばれ、特に不安や喜びなどの感情や、痛みなど感覚系の神経に対する働きを調節しています。うつ病の患者さんは一般的にセロトニン神経やノルアドレナリン神経の働きが弱っていること多く、それによって強い不安を感じたり、やる気などの活力が減退しているとされています。ベンラファキシンは脳内においてセロトニンやノルアドレナリンを増やし、それらの神経系の働きを高める作用があります。しかし、この優れた抗うつ作用は、服用後すぐに発現するわけではなく、数週間~数か月かけて徐々に改善していきます。そのため、患者さんの状態を見ながら継続的に服用していく必要があります。

また、同じSNRIに分類されるお薬としてミルナシプラン(商品名:トレドミン)という薬があります。ミルナシプランは日本で初めて販売されたSNRIで、広く使用されている代表的な抗うつ薬です。ミルナシプランは1日2回服用するのに対して、ベンラファキシンは1日1回の服用となります。過去にうつ症状に対する効果について2つのお薬で比較した結果、ベンラファキシンはミルナシプランと同等の抗うつ効果があることが分かりました。

ベンラファキシンの服用方法について

 一般的には、初期用量として1日37.5㎎を内服し、1週間後から1日75㎎へ増量します。その後は年齢や症状に合わせて用量を調整しますが、1日225㎎を超えない範囲で調整します。増量する場合は1週間以上の間隔をあけて、効果と副作用を確認しながら徐々に増量します。

イフェクサーSRカプセルは、有効成分であるベンラファキシンを含む徐放性顆粒をカプセルに充填した徐放性カプセル製剤で、1日1回の内服で安定した効果を得ることができます。1カプセルあたり37.5㎎のものと75㎎のものがあり、サイズと色が異なります。イフェクサーSRカプセルの働きは内服する時間や食事の影響を受けないことが報告されていますが、消化器系の副作用を回避するなど安全性の観点から、食後に内服することとされています。

ベンラファキシンの注意点について

 ベンラファキシンの開発期間中に見られた副作用は以下の通りです。

  • 悪心(嘔吐前の胃のむかつき):5%
  • 傾眠(ねむけ):9%
  • 浮動性めまい(ふわふわと浮くような感覚):4%
  • 頭痛:3%
  • 動悸:2%

ベンラファキシンはうつ病・うつ状態の患者さんに効果を示しますが、内服中に注意すべき点がいくつかあります。

  1. 心拍数が増加したり、血圧が上昇したりする場合があります。内服中は適宜血圧測定や脈拍測定を行いましょう。
  2. 眠気、めまいが現れる場合があるため、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意が必要です。
  3. 内服を突然中止することで、攻撃性、不安、神経過敏、睡眠障害、けいれん、頭痛などの症状が現れることが報告されています。投与を中止・減量する場合は突然の中止を避け、徐々に減量する必要があります。
  4. 不安、興奮、パニック発作、不眠などの症状が現れる場合がります。これらの症状がみられた場合は、徐々に減量や中止が必要となることがあります。

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の方はベンラファキシンによる治療を受けることができません。

  1. イフェクサーRの成分に対して過敏症の既往がある患者さん
  2. モノアミン酸化酵素阻害薬と呼ばれるお薬を内服中または投与中止後2週間以内の患者さん(モノアミン酸化酵素阻害薬はセロトニンの分解を阻害するため、併用により脳内のセロトニン濃度が高まります。これにより、発汗、全身けいれん、異常高熱、昏睡などの症状が現れることがあります)
  3. 重度の肝機能障害がある患者さん(臨床試験を実施していないため、有効性・安全性が示されていません)
  4. 重度の腎機能障害がある患者さん、または透析中の患者さん(ベンラファキシンは腎臓から排泄されるお薬のため、腎機能が低下している人では体内のお薬の濃度が上昇することが報告されています。また、ベンラファキシンは透析では除去されません)