コラムcolumn

失声失歩

失声失歩

この記事のもくじ

1.失声失歩とは

失声失歩とは、病気や心理的なストレスにより「声が出なくなる(失声)」「歩けなくなる(失歩)」という状態のことを示しています。病気により声を出したり歩いたりする機能が失われたり、本人にとって避けたい辛い問題から逃げようとする傾向から、このように身体に症状として現れたりします。

病気によるものであれば、特定し治療を行うことで症状は改善されるでしょう。

ただ、心理的なストレスが原因となり起きた「失声」「失歩」においては、表出される症状には意味がある場合があります。声が出なくなるということは話したくないということ、歩けなくなるということは歩きたくないということです。

このようにストレスの内容と、身体に現れる症状には関連があるというケースが多いです。では、「失声」「失歩」について、具体的な症状について解説します。

①失声

「失声」とは声を失うと書くように、声が出なくなる状態のことを指します。そもそも、声というのは声帯を振動させることで発せられます。声が出ないという症状は、喉や気管、声帯の病気により起こることが多いです。

ただ、特に喉や気管、声帯に異常がみられないのにもかかわらず、「突然、声が出なくなった」「昨日までは普通に会話できていたのに、声の出し方も分からない」という症状が出る場合があります。それは、心理的なストレスがきっかけで起こる、「心因性の失声症」と考えられます。

男女比でいうと女性の方が多く、年齢層でいうと思春期から30歳前後の年代が発症しやすいと言われています。特徴として声が出てもかすれていたり、しわがれたような声だったりと周囲の人は聞き取りにくい声になります。

心因性の失声症は心理的な要因がほとんどであり、人間関係の悪化や責任重大な職務、孤独感などが強まり突然起きるという病気です。

②失歩

「失歩」とは、介助なしで一人では歩けない状態のことを指します。失歩が起こる原因として、脳卒中や脳梗塞などの脳疾患や筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経難病、交通事故などの外傷によるものが知られています。その他には、心理的なストレスが要因で、立てなくなったり(失立)、歩けなくなったり(失歩)といった脱力や筋力低下が生じることがあります。

このような心理的なストレスによって起きる「失歩」は、男女比でいうと女性の方が多く、発症年齢は10代~35歳までがほとんどであると言われています。

心理的な要因で起きる「失声」「失歩」どちらも、症状が起きてしまうと学校や職場、日常生活において大きな支障を来すことになるでしょう。特に一人では解決できない問題であるため、周囲のサポートや専門的な医療機関を受診することが重要となります。

2.失声失歩を引き起こす精神疾患

「失声」や「失歩」を症状とする精神疾患として最も多いものに、身体表現性障害である転換性障害が挙げられます。転換性障害は、心理的葛藤が身体症状に転換されることで様々な症状が発症します。この場合は、生理的・器質的には正常であるにもかかわらず、失立失歩や失声、他にも運動失調や運動鈍麻などが起きるとされています。

心理的なストレスが要因で起きる転換性障害ですが、たとえば交通事故などの外傷により一時的に歩けない状態になった場合では、症状が改善したにもかかわらず歩けない状態が続くといったケースもあります。

また、「失声」のみを症状とする精神疾患には、「選択性緘黙」という学校や職場などの特定の場面や状況で声が出ない病気もあるため、転換性障害との判別が必要になります。

このように失声失歩を引き起こす精神疾患は多々あるため、器質的な病気の有無を確認することと同様に何が原因なのかを明確にすることが大切になります。

3.失声失歩の検査・診断

失声や失歩の症状が出ている場合は、その背景にある病気を特定していくことが必要です。どちらも、まずは器質的な病気が隠されていないのか検査をしていきます。

それぞれの検査や診断について、詳しく解説します。

①失声

失声の場合は、まずは喉頭内視鏡などを使用して声帯や喉にポリープや炎症、腫瘍などの病気がないか確認していきます。特に器質的な病気がないと判断された場合は、患者さんの既往に精神疾患がないか、または現在発症しているのかどうか問診を通して確認します。

その後にカウンセリングによって、心理テストを行い原因となるストレスを特定することになります。声が全く出せない場合は、診察やカウンセリングは筆談で行うこともあります。

このようにして、失声の原因が器質的な病気かストレスによるものかを判別していくことになります。

②失歩

失歩の場合は、原因となる病気として脳腫瘍や脳血管障害などの脳疾患やてんかん、認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病による症状ではないか検査を行います。特に器質的な病気がないと判断された場合は、精神疾患の既往や現在抱えているストレスの有無について確認します。

失歩が症状として現れる精神疾患は、ほとんどが転換性障害です。そのため、失歩以外の症状が出ている場合もあります。患者さんへのカウンセリングを通して、心理テストを行い、原因となるストレスを特定していきます。

このように、失歩の原因が器質的な病気かストレスによる転換性障害なのかを判別することになります。

4.失声失歩の症状に対する治療法

心理的な要因で起きた失声失歩は、それぞれ日常生活において支障を来す症状です。他の病気との判別や適切な治療を受けるためには、早期に病院を受診することが大切です。

では、それぞれの治療法を具体的に解説します。

失声

失声の治療方法としては、心理療法、薬物治療、音声治療など患者さんの症状に合わせて行います。

心理療法は認知療法を行い、失声に至るまでの心的葛藤を深く見つめ直していきます。何が原因で、その時自分はどのような感情になったのかなどを思い出し、その要因に対しての正しい対処法を身につけます。

薬物治療では、声が出ないことで気持ちが落ち込んでいたり、うつ傾向が強くなったりしている場合に、抗不安薬や抗うつ薬を服用することもあります。

音声治療は、声をうまく出せるように発声の訓練を行います。まずは咳払いによって音を出すことから始め、ハミングの練習、単語の発声練習を経て、自由に会話する練習をしていきます。

失歩

失歩の治療方法として選択されるのは、環境調整、心理療法、薬物治療になります。

環境調整においては、家族や周囲の人からの理解とサポートが必須です。「心理的なストレスにより歩けなくなる」という症状を理解してもらいます。本人に対しては、心理療法により自分が抱えている葛藤状況やストレス状況を明らかにしてもらいます。その中で改善できるものを見つけ出し、環境調整を図ります。

薬物治療においては、転換性障害に伴ってうつ病や不安障害を発症している可能性もあるため、抗不安薬や抗うつ薬の服用も効果が期待できます。

5.日常生活を送るために注意すること

器質的な病気が隠されていない場合は、失声失歩どちらの症状も発症する原因には心理的なストレスがあります。そのため、これらの発症を予防するためには、日常生活においてストレスを溜めないように心がけることも大切です。

特に「強いストレスを感じている」という状況においては、そこから精神疾患に移行することを予防するために、次のような生活を意識してみましょう。

  • 規則正しい生活を送る
  • ストレス耐性を上げる、ビタミン類や良質なタンパク質を含む食べ物をとる
  • リラックスできる方法を自分で見つける
  • 同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
  • 睡眠時間はしっかり確保する
  • 軽い運動を取り入れる

失声失歩のような症状を引き起こさないためにも、「ストレスを溜め込まない工夫」「ストレスを発散する方法」「ストレスに負けない心身を作ること」を意識して、日常生活を送りましょう。