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協調運動障害とは?

協調運動障害とは?

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協調運動障害

協調運動障害とは、手足の動きや会話などの身体の機能がうまくコントロールできない障害です。動作時に無意識的に体の震えが現れることもあります。つまり、身体のバランスや姿勢がうまく保てない状態であることが特徴となる障害です。この障害により、学校生活や会社での生活に困難を来す場合があるでしょう。

ただし、運動が苦手な子や周りと比べて成長がゆっくりな子もいるため、一概に協調運動障害と決めつけることは難しいものです。
ここでは、協調運動障害の原因や症状の特徴、診断、治療法などを詳しく解説します。

1.協調運動障害とは

協調運動障害とは、脳の中でも特に小脳に障害を来しており、ある動作において必要な身体の部位や筋肉を協調して動かすことが難しい状態である特徴があります。運動失調の一つとも言われています。小脳以外の筋肉や神経、視覚、聴覚などには異常がみられないにもかかわらず、年齢相応の運動機能が獲得できないことが特徴的です。
たとえば、「歩く」という動作において、障害がない場合は両腕と両足を同時に動かし、足を交互に前に出すことで前進するという動きになっています。これは、無意識に行う動作です。
しかし、協調運動障害の場合は、腕と足を協調して動かせず、一定の歩幅で歩けないことやふらつきが現れることがあります。このように、身体のバランスをうまく保てずに、スムーズな動きが出来ないという状態になってしまうのです。

学校生活において、走ることやボールを使った運動をすることなど、全身を使った運動は避けることが可能かもしれません。しかし、鉛筆や箸を持ったりボタンをかけたりといった細かな動作が難しい場合があります。
このような細かな動作は、日常生活において避けられない動作とも言えるでしょう。社会人となれば、より細かな動作が必要となり、そこを避けては仕事に支障を来す場合もあります。このように、協調運動障害の人にとって日常生活で避けられない細かな動作に対して、不便さと生活の困難さを感じている人が多いということが、この障害の特徴となります。

2.協調運動障害の原因

協調運動障害の原因として、主に小脳の病変が挙げられています。小脳の病変と言っても、病変を来す要因は様々です。要因については、次のようなものがあります。

原因

状態・疾患

小脳疾患

  • 小脳内の出血
  • 小脳卒中
  • 小児の脳腫瘍
  • 小脳の先天的異常

遺伝性

  • 脊髄小脳変性症
  • フリードライヒ運動失調症
  • 毛細血管拡張性運動障害

薬物・有害物質

  • 長期的に服用する高用量の薬物(抗けいれん薬、ベンゾジアゼピン系薬剤)
  • 長期にわたる飲酒
  • 一酸化炭素
  • 水銀や鉛などの重金属

その他

  • 熱中症
  • 甲状腺機能低下症
  • 多発性硬化症
  • 多系統萎縮症
  • ビタミンE欠乏症

上記に挙げた小脳疾患の他には、母親が妊娠中にアルコールを多量に摂取した場合や早産児、低出生体重であることも挙げられます。

3.協調運動障害の疫学

協調運動障害が発症しやすいと言われている人や、特徴については次のとおりです。

  • 発症頻度は約6~10%と言われ、小学校の30人クラスであれば2、3人が協調運動障害である
  • 5歳~11歳の子どもの発症率は、5~6%
  • 男児の方が発症しやすい
  • 自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害の子どもは協調運動障害である場合が多い
  • 男女比は、2:1~7:1と推定されている
  • 大人になっても、約50~70%の頻度で症状は残る

4.協調運動障害の症状・特徴

協調運動障害は、日常生活における様々な動作に対して困難を来すことが多い障害です。障害がない人は、無意識的に行っている様々な動作が難しいのです。
歩く、走る、話す、鉛筆を持つなどの無意識で行う動作は、それぞれ複数の筋肉を必要としています。それらの筋肉の動きが協調しており、動きの記憶やコントロールする部位が小脳の役割となっています。
協調運動障害の場合は、様々な要因で小脳に異常を来しており、筋肉のコントロールがうまくできない状態です。動作のぎこちなさ、過度な動きなどが現れてしまい、日常生活に支障を来すことがあります。単に不器用であるのか、極端に運動が苦手であるのか、その判断が難しい場合もあるでしょう。

現れる症状として、大きく分類すると「四肢協調運動障害」「起立・歩行障害」「構音障害」「眼震」といった、4つに分けられます。それぞれの症状について、具体的な例を以下に記していきます。

分類

症状の特徴

四肢協調運動障害

  • 鉛筆を持つ、文字を書くことが難しい
  • 箸を使うことができない
  • 手を伸ばして物を取る動作ができない

起立・歩行障害

  • まっすぐ立てない
  • 歩行時にふらつき、倒れてしまう
  • 歩幅が自分の体型に合っておらず、うまく歩けない

構音障害

  • 声を出す筋肉、口の筋肉がうまく使えない
  • 呂律が回らない

眼震

  • 適した位置に目を留められない
  • 見ている対象物から行き過ぎる、その後戻る

このような滑らかな運動機能というのは、日常生活動作や手作業、運動バランス、姿勢保持、学習の効率などの生活の質を保つために重要です。

また、人の運動は大きく分けて「粗大運動」と「微細運動」の2つがあります。様々な感覚器官から獲得された情報をもとに、大きな運動や細かな運動を行えるように、成長発達していくといった経過がありますが、協調運動障害はこの段階が止まってしまうのでしょう。

粗大運動

感覚器官からの情報をもとに、姿勢を保つことや移動することに関する運動

  • 寝返り、ハイハイ
  • 歩く
  • 走る
  • 泳ぐ
  • 自転車に乗る

微細運動

感覚器官や粗大運動からの情報をもとに、小さな筋肉の調整が必要となる細かな運動

  • 物をつかむ、つまむ、引っ張る
  • 絵を描く
  • ボタンをかける
  • 靴ひもを結ぶ
  • 字を書く

このように、様々な特徴が挙げられますが、個人差や成長・発達の程度により診断は難しいでしょう。特に判断が難しいとされる子どもの場合について、困りごとを以下に示します。

乳幼児期(1歳未満)

乳幼児期は、子どもによって成長スピードが異なるため、苦手なことと出来ないことの判別は難しい。その中でも、以下の特徴が多く見られると言われている。

  • 母乳やミルクの飲みが悪い
  • 離乳食を食べるとむせる、飲み込めない
  • 寝返りがうまくできない
  • ハイハイがうまくできない
  • 体がだらんとしている
  • 座る姿勢が不安定、左右差がある
  • 重心が不安定

幼児期(2歳~6歳ころ)

幼児期は、6歳前後になると運動能力の差がほとんど縮まってくることが特徴。よって、この時期に協調運動障害の診断を受けることが多くなるでしょう。主な特徴として次のとおり。

  • 歩く、お座りが難しい
  • 靴ひもを結べない
  • ボタンがかけられない
  • ファスナーを上げられない
  • 転んだときに手が出ない
  • 平坦で障害のない場所で転ぶ
  • トイレでお尻が拭けない
  • 滑舌が悪い
  • ジャンプできない

小学生(6歳~13歳ころ)

小学生になると学校生活が始まるため、より微細運動が必要となる。そこで、協調運動障害の症状が顕著となるでしょう。特徴としては、主に以下のとおり。

  • ボール遊びが苦手
  • 文字をマス内に収められない
  • 模型の組み立てが難しい
  • 階段の昇降が難しい
  • お箸が使えない
  • 消しゴムで消せない
  • 文房具を使った作業が苦手

子どもの場合は、はっきりと診断することが難しい上に、小学生になると周りからは「怠けている」「苦手なこを避けて、やる気がない」と思われてしまうことも多々あります。

大人になってからも症状が残ってしまうと、社会生活に支障が出ることでしょう。協調運動障害の症状から、精神障害のような二次障害を引き起こす可能性もあるのです。

そこで、できるだけ早く協調運動障害を診断し、子どもが自分に劣等感を抱くことを予防するために早期に対処する必要があります。

5.協調運動障害の二次障害

協調運動障害では、成長していくにつれて二次障害が起きる可能性があります。特に、周りの友達と比べ始める小学生以降の子ども、症状が残っている大人に多くみられます。

学童期に現れやすい問題としては、次のとおりです。

  • 情緒的な問題として、自己肯定感の低下、自尊感情の低下など
  • 行動的な問題として、学習意欲の低下、いじめ、不登校など
  • 身体的な問題として、肥満など

また、大人になってから現れる協調運動障害の症状としては、次のとおりです。

  • ひげそり、化粧がうまくできない
  • 料理が作れない
  • 自動車の運転ができない
  • パソコンのタイピングができない

このような問題から、うつ病や不安障害などの精神疾患を合併する可能性も考えられます。

6.協調運動障害の診断

協調運動障害の診断には、主に遺伝性のような家族歴がないか問診を行ったり、原因疾患がないかどうか検査を行ったりします。MRIなどの画像検査、脳波測定によって原因疾患を確定することもあります。

乳幼児期の協調運動障害では、運動面の発達から診断できる場合があります。定型発達の子どもと比べて、「ハイハイがうまくできない」「転んだときに手が出ない」といった特徴があり、成長発達が見られない場合は協調運動障害を疑うことがあるでしょう。

アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5では、以下のような診断基準を示しています。

A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習及び使用の機会に応じて期待されるよりも明らかに劣っている、その困難さは、不器用(例、物を落とす、またはぶつかる)、運動技能(例、物を掴む、はさみや刃物をつかう、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。

B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活活動(例、自己管理、自己保全)を著明及び持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前及び就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。

C.この症状の始まりは発達障害早期である。

D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例、脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。

 

7.協調運動障害に対する治療・対処法

協調運動障害は、その原因が人によって様々です。そのため、治療を行い原因を取り除くことができる場合と、取り除けない場合があり、治療の方向性も変わってきます。

協調運動障害の治療や対処法として、最も大切なことは「できるだけ早期に診断し、治療や支援を開始する」ということです。早期の治療とサポートは、大人になってからの二次障害を予防することにも繋がります。

ここでは、協調運動障害と診断を受けた子どもに対して、どのような治療や対処法があるのか具体的に紹介します。主に行われるのは、「理学療法」「作業療法」「感覚統合療法」「言語療法」などを組み合わせた治療となります。

①理学療法

理学療法とは、「現在の身体機能や健康を維持・増進し、未来のケガや病気を予防する」という目的があり、身体を動かす大きな運動が苦手な子どもに対して取り入れられる治療方法です。物理的な手段として、マッサージや電気刺激、温熱などが挙げられます。

また、運動機能の中で苦手な運動をサポートすることも理学療法の一つです。たとえば、歩く・走る、ジャンプ、スキップなどの粗大運動を改善させていきます。

②作業療法

作業療法とは、楽しい作業の中で手先を動かす訓練をしたり、友だちとのコミュニケーションを通して社会に適合する力を身につけたりする治療方法です。

行われる作業の内容は、日常生活で必要とされる作業がほとんどです。絵を描いたり、ハサミやノリを使って工作したりといった微細運動が特徴的です。

微細運動を苦手としている子ども多く、少しずつ個々のペースに合わせて訓練を続けていくことが大切になります。継続して作業を行うことで克服できるまでのスピードが速まり、自信につながるでしょう。

③感覚統合療法

協調運動障害の子どもは、普通よりも匂いや音、光などの刺激に敏感であるという特徴もあります。刺激によって、落ち着きがなくなることもあります。

感覚器官として、味覚や嗅覚、視覚、聴覚がありますが、これらがうまくコントロールできないことが原因と考えられています。この感覚を統合させるために行われる療育として、「感覚統合療法」を取り入れる場合もあるでしょう。

④言語療法

協調運動障害の症状の中で、「話す」という機能がうまく行えないというケースもあります。滑舌が悪く、スムーズに言葉が発せない場合は、言語聴覚士による言語療法を受けることが有効です。

また、口元の筋肉もトレーニングしていきます。

言語機能が正常化することで、言葉を発するだけではなく、飲み込みなどの食事面でも大きな改善が期待できるでしょう。

⑤その他

協調運動障害の原因がはっきりしている場合は、その原因を取り除く治療が行われます。

  • 過度な飲酒が原因であれば、飲酒を禁止
  • 抗てんかん薬などの薬剤が原因であれば、用量を減らす
  • 甲状腺機能低下症、ビタミンE欠乏症などの疾患が原因であれば、疾患を治療する

原因の中でも、遺伝性などの場合は根本的な治療はできません。症状を緩和させて、日常生活に支障を来すことがないように、薬物療法やリハビリなどの対処療法行うことが基本です。薬物療法が適応されるのは、脊髄小脳変性症や多発性硬化症、多系統萎縮症などの難病が挙げられます。

国際ガイドラインでは、協調運動障害の支援として、本人が「できるようになりたい」と思うことを優先として取り組むことが大切です。これを「活動指向型・参加指向型アプローチ(課題指向型アプローチ)」と言われています。

その子どもに合った支援方法を組み合わせて、楽しく運動や遊びができる環境を作っていきましょう。そして、できることを少しずつ増やし、自信を身につけられるようにサポートしていきます。

8.協調運動障害がある大人の就労支援

協調運動障害は、子どものうちから療育などのサポートを受けることが大切ですが、大人になってからも症状が残っている場合は様々な支援が受けられることがあります。

特に、協調運動障害の原因疾患である「脊髄小脳変性症」や「多発性硬化症」、「多系統萎縮症」などの難病指定を受けた場合です。

難病の診断を受けた場合は、就職・就労においてサポートが利用できることを知っておきましょう。

障害の程度によっては、身体障害者手帳が取得できることがあります。手帳を取得することで、企業の障害者枠で応募し採用されるため、合理的配慮が受けられるでしょう。

9.協調運動障害がある人への関わり方

協調運動障害がある子ども・大人への関わり方として、「怠けている」「やる気がない」「努力が足りない」「親が甘やかしている」ということは決して言わないことが大切です。

本人は決して、怠けているわけでも努力を怠っているわけでもありません。まずは疾患への理解を深め、本人がどのような動作に困りごとを感じているのか、しっかりと明確にすることが必要でしょう。

それだけ協調の問題というのは、子どもの認知機能や学習能力、情緒的な問題、行動的な問題に関わります。さらに、自尊心や自己肯定感にも影響を与え、その後の人生において良くも悪くも影響を与えてしまうでしょう。

また、職場の中で協調運動障害の人がいる場合は、次のような配慮をすると良いでしょう。

  • 話し方やコミュニケーションが円滑ではない場合、ゆっくりと話す
  • 身体をよく使う、重労働は避ける
  • 症状が出やすい時間帯や出にくい時間帯など、本人に聞き取りしておく
  • 食事に時間がかかる場合、休憩時間の設定を配慮する
  • 通院への理解、配慮

周りの方は、協調のどの要素が苦手なのかを把握し、専門的な医療機関や療育機関と連携することが大切です。必要なサポートが受けられるように、環境を整えてあげましょう。

10.まとめ

協調運動障害は、小脳の疾患を中心として遺伝要因などの様々な原因から発症すると考えられています。幼少期においては、子どもの成長・発達の程度、苦手なことへの取り組む姿勢などが関係し、診断に至るまで時間がかかってしまうことがあるでしょう。

協調運動障害は、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害などの発達障害に合併していることが多い障害です。

そのため、成長するにつれて、協調運動障害だけではなく様々な障害により、学校生活や社会生活において様々な支障が出てくることが多いです。大人になってからも症状が残ってしまう場合は、協調運動障害に併せてうつ病や不安障害などの二次障害が引き起こす可能性もあります。

そこで、できるかぎり早期に確定診断し、適切な療育や支援を受けることが大切です。

協調運動障害の子どもに対しては、その後の学校生活や日常生活が少しでも楽に送れるように療育する必要があります。そして、協調運動障害の大人に対しては、原因疾患の治療と共に就労支援を受け、障害を抱えても生活していけるように環境を整えていくことが必要です。

協調運動障害の人が今持っている最大限の力が発揮し、苦手な動作・作業を少しずつ克服していくことを目指して、本人や周りの人々が障害と向き合っていくことを大切にしていきましょう。