自律神経失調症の治療方法

自律神経失調症の治療方法

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自律神経失調症の治療は、心と体の両面からアプローチすることが大切です。また食事や睡眠、運動などの生活習慣に問題がある場合は、医師の指導のもとに改善する必要もあります。 これを「全人的治療」といいますが、心療内科で行われるのが、まさにこの全人的治療です。 身体面からの治療は、不快な症状を取り除くための「薬物療法」が中心になります。 自律神経の働きをととのえる薬や、抑うつ状態や不安、不眠を解消する薬などが用いられます。

一方、精神面からの治療は、患者さんの不安や緊張をやわらげたり、ストレス耐性を高めたりする「心理療法」が行われます。 心理療法には、簡易精神療法や自律訓練法、認知行動療法、交流分析など、さまざまな療法があります。 また、このほかに指圧やマッサージ、温熱療法などの理学療法や、音楽療法などもあります。 これら多くの治療法の中から、その人の状態や性格などを考慮し、さらに、目指す治療の方向性(つらい症状さえとれればよいのか、根本的な治療を望むのかなど)についての患者さんの希望も取り入れて、もっとも適切な療法を組み合わせていきます。

自律神経失調症 心理療法

心理療法とは、薬物を用いず、自律神経失調症の背後にひそんでいる心理面の問題に目を向け、ストレスを取り除いていく治療法です。 再発を防止するためにも重要な治療法といえます。 自律神経失調症には、不安感や悩み、人間関係などのトラブル、病気に対する恐怖心など、心理的な問題がかかわっていることがよくあります。

心理療法とは、医師と患者さんが力を合わせて、そこにある不安や緊張を解消していくことで心の重荷を取り去り、さらにストレス耐性を高めたり、心のバランスをよくしていく治療法です。 心理療法という大きなくくりの中には、約40もの種類があるといわれています。 多くの療法のうちどの方法を用いるかは、ケースバイケースです。 症状や心理的・社会的要因の程度、患者さん本人の性格やライフスタイルなどを考慮して、最適なものが選ばれます。
大切なことは、どの療法を受けるにせよ、患者さんと医師の間に強い信頼関係があるかということです。 病気を少しでも早く治すために、この点をしっかり理解しておきましょう。

自律神経失調症 認知行動療法

ものごとの受けとめ方、考え方などを「認知」といいます。認知は一人ひとりの生き方を左右し、個性の基盤となっています。 もしこの認知に”ゆがみ”があると、誤った判断をしてしまったり、現実の状況に適応できなくなってしまい、やがて自律神経失調症が引き起こされてしまうことがあります。 実際、自律神経失調症の誘因となる不安や葛藤の背景には認知のゆがみがあるケースが少なくないのです。 認知行動療法は、「刺激を受けたときの認知に問題があると、体や行動面に悪影響を及ぼす」という考えが基本になっています。そこで、

  1. 認知のゆがみにつながったきっかけを明らかにする。
  2. 認知のゆがみを患者さん自身に気づいてもらう。
  3. 柔軟性をもった考え方に変えていく。 という手順で症状の改善を図り、現実社会に適応できる心と体を取り戻していきます。

たとえば、電車内で突然、動悸やめまい、息苦しさなどを感じ、激しい不安や恐怖におそわれた場合。 気分が悪くなったのは「電車に乗ったためだ」と思い込み、「私は電車に乗ると気分が悪くなる」「また発作が起きたら対処できない」と考え、電車に乗れなくなってしまう人がいます。 これはパニック障害と呼ばれる、自律神経失調症に関連した病気です。 体の変調を発作が起きたときの状況や場所に結びつけてしまい、その状況や場所そのものが不安の対象になったケースです。 この場合、医師は次のような段取りで治療を進めていきます。

  1. 始めに面接や心理テストを行って、認知のゆがみを把握する。
  2. 本当に電車に乗ったことに問題があるのか、疲れがたまっていたとか、自分では気づかず体調をくずしていたことはないかなど、いろいろな可能性を患者さん自身が考えられるように話し合う。
  3. 患者さんの理解と承諾を得て、始めは一駅だけ電車に乗ってもらい、問題が起こらないことを確認しながら徐々に距離を延ばし、電車に乗ったことそのものが変調の原因ではないことを、実体験として確認してもらう。

このほか、客観的に自分をみつめるために症状の現れ方を記録したり、日々の考え方について日記を付けてもらうこともあります。 これらの治療を積み重ねて認知のゆがみを修正し、考え方の選択肢を増やして、心理的に余裕をもった生活ができるようにしていくことが、目標となっています。 認知行動療法の特徴は、最初に思考パターンや、心・体に現れる症状、行動、強いストレスを受けた状況を明らかにしてから治療に入るので、症状が改善されていく様子が、患者さん自身にもはっきりわかる点にあります。 前述のパニック障害の患者さんの場合なら、「昨日は一駅分乗れた、今日は二駅分乗れた」というように、改善の度合いがはっきりとわかり、「電車に乗ったからといって、必ず起きるものではない」ことを、実感することができるわけです。

自律神経失調症 薬物治療

自律神経失調症の治療は、まず薬によってつらい症状をやわらげることから始まります。医師と十分に話し合い、薬を用いる理由や効果、副作用などをよく理解しましよう。 症状を緩和させる自律神経失調症の治療では、ほとんどのケースで、まず最初に薬を用いた治療、いわゆる薬物療法が行われます。 この病気を自覚するのは、イライラやめまい、頭痛や動悸、不眠、食欲不振など心身に現れるさまざまな症状によってですが、これらの自覚症状を放っておくと、それを気に病むことで、さらに症状を悪化させるという悪循環に陥りがちです。 薬物療法は、つらい症状を緩和させると同時に、このような悪い流れを断ち切るためにも必要な治療法なのです。

患者さんの中には、「副作用があるから薬を飲むのはイヤ」と、薬物療法をためらう人もいます。 確かにどれほど優れた薬でも、何らかの副作用は必ずあるものです。 しかし、自律神経失調症の治療で用いられる薬の副作用は、眠気や便秘など、あらかじめ知っておけば大きな問題とはならないものがほとんどです。 医師は、副作用を最小限にとどめ、効果(主作用)を最大限に発揮させるために、種類や組み合わせ、量、使い方を考えて処方しています。 疑問があれば質問し、納得したうえで薬を服用するようにしましょう。 その際、必ず医師の指示どおりに服用することが大切で、勝手に量や回数を減らしたりしてはいけません。 副作用を必要以上に心配したり、あるいは勝手に薬の飲み方を変えてしまうことが、病気を長引かせたり、悪化させることにもつながるのです。 医師は患者さん一人ひとりの病歴を聞き、症状や体質、薬の特性を十分に考慮したうえで薬を選んで用いています。 なお、服用後の体の変化などは、必ず医師に報告するようにしましょう。その様子を聞きながら、医師は薬を調整します。

抗不安薬」は、「弱力精神安定剤(マイナートランキライザー)」とも呼ばれています。精神安定剤と聞くと、「怖いもの」とか「強い薬」というイメージがあるかもしれませんが、自律神経失調症の治療では、ごく一般的に使われている薬です。 ですから、ことさらに警戒する必要はありません。 この種の薬は、喜怒哀楽などの感情や本能的欲求をつかさどっている大脳辺縁系の一部分に作用して、不安をやわらげ、筋肉の緊張をほぐし、リラックスさせる効果があります。そのため、症状にこだわりすぎたり、強いストレスが原因になっているタイプの自律神経失調症には、主要な薬として使用されています。 抗不安薬には、作用の強いものや弱いもの、作用の持続時間が長いものや短いものなど、いろいろなタイプがあり、個々の症状によって使い分けられます。 抗不安薬の副作用として、眠気、ふらつき、脱力感が現れることがあります。これらの状態は、緊張や疲労感が緩和されてきたために起こるものです。 薬の効果が現れてきた証拠でもありますから、心配する必要はありません。このほかに、便秘が起こる場合もあります。ひどい場合には、医師に相談して便秘薬を処方してもらいましょう。 注意したいのは、重症のぜんそくなどの呼吸器系の疾患や、心臓病、肝臓病、腎臓系の病気をもっている人の一部です。 発作を誘発したり病状が悪化する可能性がありますから、事前に医師に伝えておきましょう。 また、妊娠中の女性も注意が必要です。 胎児の発育に影響が出る可能性が高いとされていますから、妊娠中や治療期間内に妊娠する可能性のある人は、必ず医師に報告してください。

「自律神経調整薬」は、体質的に自律神経が乱れやすい人や、症状が軽い場合に用いられる薬です。 自律神経の中枢である視床下部に働きかけ、交感神経と副交感神経のバランスを調整します。 効き方がおだやかで、副作用は眠気を誘う程度です。肩こりや冷え症などの場合と、頭痛やめまい、立ちくらみなどでは、使われる薬が違います。 「自律神経末梢作用薬」は、自律神経の末端部分に働きかけ、特定の場所に現れた症状を改善するために使われます。 自律神経末梢作用薬には、3種類があります。頻脈や不整脈、動悸など循環器に症状が現れるときには、交感神経の興奮をしずめる「ベーターアドレナリン受容体遮断薬(βブロッカー)」が用いられます。 腹痛や下痢、吐き気、頻尿などの症状に対しては「副交感神経遮断薬」が使われます。また、低血圧や立ちくらみがあるケースでは、「交感神経興奮薬」が効果があるとされています。

自律神経失調症 漢方薬治療

頭痛

  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):気温の高さに反応して起こる頭痛
  • 呉茱萸湯(ごしゅゆとう):冷え症に加え、吐き気を伴う頭痛
  • 五苓散(ごれいさん):雨や湿度の高さに関連して生じ、痛みより頭重感主体の頭痛
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):月経周期に関連して生じ、肩こりを伴う頭痛
  • 釣藤散(ちょうとうさん):イライラして強迫的傾向のある人の頭痛
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう):過敏性腸症候群やストレス性胃炎を伴う場合の頭痛

胸痛・胸部の締め付け感(心気症的で女性に多い)

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):月経や更年期に伴う胸痛・胸部の締め付け感
  • 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):動悸が主体の胸痛・胸部の締め付け感
  • 半夏厚朴湯(のどが詰まる感じの胸痛・胸部の締め付け感

腹痛・腹部膨満感・下痢・便秘

  • 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):神経質なタイプの人で、腹痛や下痢便秘交代がある場合
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう):胃痛や頭痛を伴う腹痛・腹部膨満感・下痢・便秘
  • 人参湯(にんじんとう):冷え症で冬に下痢しやすい場合
  • 大建中湯(だいけんちゅうとう):冷え症でお腹が張り、便秘気味の場合

関節痛(関節変形が少ないもの)

  • 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう):胃腸が弱く、冷えやすい体質の人で関節痛の場合
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):月経周期や更年期によって生じるこわばり、指の場合
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう):頭痛や胃痛などを伴う関節痛
  • 麻杏遵甘湯(まきょうよくかんとう):痛みが強い関節痛(体質が弱い人は禁忌)

のぼせ・ほてり

  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):暑がりの人で夏季や高気温時にのぼせ・ほてり
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):更年期・胸部症状・不安を伴うのぼせ・ほてり
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):便秘・神経症状を伴うのぼせ・ほてり

めまい・むくみ

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):色白かつ低血圧の人で月経に関連して生じるめまい・むくみ
  • 五苓散(ごれいさん):雨や湿気に関連して生じるむくみの場合
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):めまいと動悸を併発する場合

動悸

  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):不安・緊張・神経過敏が強い場合の動悸
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):めまいと動悸を併発する場合
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):月経や更年期に関連して起こる動悸
  • 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう):パニックに至ったり、不安で泣いてしまったりする人の動悸

発汗・冷え

  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):社交不安障害のように緊張すると発汗する場合
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):めまい・頭重感・月経の不調を伴う冷え
  • 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう):胃腸が弱い人で、冷えると関節が痛くなる場合
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):冷えが主症状でしもやけが多い場合

慢性疲労

  • 基本は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):胃はそれほど弱くはないが、貧血気味でめまいがする場合
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう):身体の疲労に肺の弱さを伴う場合
  • 加味帰脾湯(かみきひとう):不安や不眠があり、体が疲れやすい場合