慢性頭痛
慢性頭痛 とは
慢性頭痛とは、頭痛がほぼ毎日続くこと、頭痛の種類(片頭痛、緊張型頭痛など)が異なること、頭痛が軽度から中程度の痛みであること、吐き気や光過敏などの症状が伴うことなどがあります。個々の症状は人によって異なりますが、痛みが長期間にわたって続くことが特徴です。
1.慢性頭痛とは
頭痛には、原因となる病気がないのにもかかわらず、頭痛を繰り返す一時性頭痛と、原因となる病気によって頭痛が引き起こされる二次性頭痛の2パターンがあります。一時性頭痛は、頭痛を繰り返すため「慢性頭痛」と言われることが多いです。
この慢性頭痛は、日本人の約4割が悩まされている頭痛だとされています。病気が隠されているわけではありませんが、強い痛みが長く続くことで、日常生活に支障をきたすケースも多いでしょう。
慢性頭痛には特徴が異なる3つのタイプがあり、ご自身がどのタイプの頭痛もちなのかを見極めることが大切です。「たかが頭痛」だとは思わず、適切な治療を受けて症状をコントロールするために、痛みが辛い場合は病院に受診すると良いでしょう。
2.慢性頭痛のタイプ・症状
慢性頭痛には、「片頭痛」「緊張性頭痛」「群発頭痛」といった3つのタイプがあります。ここでは、それぞれのタイプで起きる頭痛の特徴と症状について、詳しく解説します。
ご自身の頭痛がどのタイプか判断するためには、まずは3つの特徴を知っておきましょう。
片頭痛 | ズキンズキンと脈打つような痛みが、片側まれに両側に起きる。月または週に何回か起き、数日続くことが多い。吐き気や嘔吐を伴うこともある。光や音、においなどに過敏になりやすい。 |
緊張型頭痛 | 頭全体が重苦しく、締め付けられるような圧迫感がある痛み。毎日あるいは数時間~数日にわたり起こる。首や肩の凝りを伴うこともある。 |
群発頭痛 | 片側の目の奥がえぐられるような強烈な痛みが起こる。年1~2回ほど発症。頭痛が起こる群発期には、1回につき1~2時間の激しい痛みが1~2ヵ月間にわたり続くことが多い。 |
このように、「頭痛」と言っても痛みの特徴が3タイプあることが分かります。この他に、薬の飲み過ぎによって頭痛を引き起こすケースもあります。
3つの頭痛のタイプについて、それぞれの具体的な特徴は次のとおりです。
①片頭痛
片頭痛は、片側または両側のこめかみに、ズキンズキンと脈を打つように痛む頭痛です。心臓の拍動と呼応するように脈を打つのが特徴的です。
痛みだしてから1~2時間で痛みのピークに達し、4時間~数日続きます。痛みの程度は1~2ヵ月に1~2回が一般的です。
また、片頭痛は痛み以外の症状にも特徴があるため知っておきましょう。次のような症状があれば、片頭痛である可能性が高いです。
- ズキンズキン、ドクンドクンと脈を打つ痛み
- 片側または両側のこめかみが痛む
- ふだんは気にならない光や音、においに敏感
- 身体を動かすと痛みが増す
- 吐き気や嘔吐を伴うことがある
- 片頭痛の前兆に、「目の前がチカチカする」「目が回る」症状が起きる
②緊張性頭痛
一時性頭痛の中で最も日本人の患者数が多いのが、緊張性頭痛です。ストレスが引き起こす頭痛とも言われています。痛みは後頭部やこめかみ、ひたいのあたりに重苦しさや圧迫感を感じることが特徴的です。
次のような症状があれば、緊張性頭痛だと疑いましょう。
- 長時間、同じ姿勢でいた後に締め付けられる痛み
- 首や肩に強い凝り
- めまいやふらつき
- 目の疲れ
- 全身のだるさ
- 体を動かすと、少し楽になる
- 午後から夕方にかけて症状が現れる
③群発頭痛
慢性頭痛の中で、最も激しい痛みを伴うのが群発頭痛です。片側の目の奥がえぐられるように強烈に痛むことが特徴的です。群発期と言われるように、一定の期間または毎日激痛が起きます。この痛みの恐怖から、パニック障害や眠るのが怖くなり睡眠障害に陥るケースもある頭痛です。
次のような症状があれば、群発頭痛だと疑いましょう。
- 痛みは片側だけに起きる
- 片側の目の奥がえぐりとられるように激しく痛む
- 痛みは15分で鎮まることもあれば、数時間続くこともある
- ひたいや顔に汗をかく 痛む方の目が充血、涙や鼻水が出る、鼻づまりになる、まぶたが下がる
- 痛くてじっとしていられない
- 睡眠中に起こることが多く、激痛で目が覚める
このように、頭痛といっても「片頭痛」「緊張性頭痛」「群発頭痛」の3タイプがあり、それぞれ痛みやそれ以外の症状に特徴があります。上記に示した特徴をもとに、まずはご自身の頭痛がどのタイプなのか知ることが大切です。
3.慢性頭痛を起こしやすい人・状況
慢性頭痛は、何らかの病気が隠されているわけではなく、生活や環境によるもの、ストレスの感受性、遺伝性などが関係していると考えられています。その多くは、心身の緊張によるものです。
ここでは3つのタイプそれぞれの頭痛において、症状を起こしやすい人の特徴、原因など詳しく紹介していきます。ご自身がどのような状況下で頭痛を起こしやすいのかチェックし、痛みの発作パターンを知ることで適切に対処することができるでしょう。
①片頭痛
片頭痛は、身体的・精神的なストレスや体内のセロトニンという物質が関係している頭痛です。過度なストレスで体内に放出された大量のセロトニンにより、脳血管が収縮し血流が悪くなります。その後、セロトニンが出尽くして減少すると、脳血管が急激に拡張し、三叉神経を圧迫することで痛みを生じます。
頭痛に伴い目の症状や吐き気、嘔吐などさまざまな症状が起きる頭痛でもあります。片頭痛を起こしやすい人の特徴、原因は次のとおりです。
- 睡眠不足、寝すぎ
- 女性ホルモンの変化(月経周期)
- 風邪 気圧や気温の変化
- まぶしい場所や騒がしい場所
- アルコール、チョコレート、ワインなどの摂取
- 空腹
- 疲れ
- 精神的な緊張から解放されたとき
- 20~40代の女性
- 運動で身体が温まる
②緊張性頭痛
緊張性頭痛は、長時間のデスクワークや車の運転をした後に、締め付けられるような頭の重苦しさと、首や肩に強い凝りを伴うのが典型的です。
心身のストレスから筋肉が緊張し、硬くなります。その後、筋肉内にある血管の血流が悪くなり、乳酸などの老廃物がたまります。これが原因で、神経を刺激し痛みを生じるとされています。
緊張性頭痛を起こしやすい人の特徴、原因は次のとおりです。
- 身体的、精神的なストレス
- 顎関節症
- 長時間同じ姿勢でいる(デスクワーク、ドライバーなど)
- うつむき姿勢が多い
- 運動不足
- 眼精疲労(合わないメガネ、パソコンを長時間見ている)
- 女性が多い
- 低血圧、貧血がある
- 冷え性
- 高い枕で寝ている
- いつも同じ肩でショルダーバッグを持つ
- 肩こりがある
③群発頭痛
群発頭痛は、他のタイプの頭痛とは異なり患者数は少ないですが、最も強い痛みを感じる頭痛です。主に体内時計の乱れにより、三叉神経が冷たい・温かいなどの情報を痛みとして捉えてしまい、炎症物質を放出します。この炎症物質によって、激しい痛みを生じると考えられています。
また、耐えられない激しい痛みが来る恐怖から、パニック状態や睡眠障害などを引き起こす可能性もあります。群発頭痛を起こしやすい人の特徴、原因は次のとおりです。
アルコールの多量摂取 喫煙(ヘビースモーカー) 気圧や気温の変化 血管拡張剤、狭心症の治療薬の内服 20~40代の男性に多い
このように頭痛のタイプによって、発症しやすい人や状況は異なります。ご自身の頭痛のタイプが分かり、頭痛が起きやすい状況も知ったことで、今後は適切な対処ができることでしょう。
4.慢性頭痛の診断・治療や対処法
頭痛の診断で最も重要なことは、頭痛に隠されている病気の有無を調べることです。慢性頭痛なのか、何らかの病気による二次性頭痛なのかを区別する必要があります。
そのために、まずは問診によって頭痛の症状や日常生活について詳しくお話を聞きます。その後、医師の判断によりMRIやCTの検査を行うことで、画像し診断をしてきます。その結果、他に隠されている病気がないと判断できれば、慢性頭痛の可能性が高いとして、今後の治療方針を決めることになります。
ただし、3つのタイプでそれぞれ適切な対処法があり、緊張性頭痛と片頭痛では対処方法が反対の場合があります。次に慢性頭痛の治療や対処法について、詳しくお話していきます。
①片頭痛
片頭痛の治療には、痛みを緩和するだけではなく、興奮した脳をクールダウンさせるためにトリプタンという製剤を使った治療が欠かせません。これは痛みの発作が出てから服用するお薬で、服用のタイミングに注意が必要になります。
また、発作が起きてから服用するトリプタン製剤と併せて、発作が頻繁に起こる場合は予防薬も服用します。予防薬として使われるお薬は、降圧薬や抗うつ薬、抗てんかん薬、抗ウイルス薬など多種多様です。痛み止め、トリプタン製剤、発作予防薬を併用させることで、重症な片頭痛に対応していきます。
片頭痛を楽にするために、頭を冷やして暗い部屋で安静にすると良いでしょう。身体を動かすと痛みが増すため、痛みが治まるまで横になって寝るのがおすすめです。
②緊張性頭痛
緊張性頭痛だけの発症である場合は、まずは血行を改善させることが一番の治療法です。そもそも、緊張型頭痛は筋肉の緊張によって血液の流れが滞ることで頭痛が起きます。そこで、痛みの緩和と併せて、筋肉の緊張を緩めるために筋弛緩剤や抗不安薬を使って治療をします。また、抗うつ約を使うことで痛みの閾値を引き上げ、痛みに対する過敏な反応を抑えることも必要です。
緊張型頭痛を楽にするために、お風呂やマッサージ、ストレッチをして血行を促進させます。長時間デスクワークをしている場合は、適宜休憩を取り入れて凝り固まった筋肉をほぐしましょう。
ただし、片頭痛も合併している場合は、血流を促すことで頭痛がひどくなる場合があります。症状がひどくなってきたと感じたら、クールダウンを試しましょう。
③群発頭痛
群発頭痛は、他の2つの頭痛とは異なり、痛みや症状に特徴があります。激しい痛みに対しては、トリプタン製剤を使うことが効果的です。そして、発作が起きやすい時期や時間帯などの発作パターンを知り、発作が起きる時間にお薬の効果が最大となるよう調整することが必要になります。
トリプタン製剤の中でも、点鼻薬や自己注射をすることで即効性が期待できます。また、痛み止めやトリプタン製剤と併せて、予防薬も併用していきます。
激しい痛みと目の奥がえぐられるような衝撃があり、発作時間は耐えられないでしょう。それでも自然に痛みが落ち着くため、適切な治療を行い、痛みが消えるのを深呼吸しながら待ちましょう。
5.慢性頭痛とストレスの密接な関わり
仕事や人間関係などで大きいストレスがかかると頭痛が起きたり、過度な緊張から解放されると頭痛が起きたりと、頭痛とストレスは密接に関わっているということを実感する出来事があるでしょう。
慢性頭痛を持つ人は、頭痛が起きるという恐怖や不安により、うつ症状や不安障害を合併するケースもあります。逆に、心に不調を来している時に頭痛が起きやすいケースも存在するでしょう。これらは、脳内にあるセロトニンという物質が減少することで、頭痛と心の不調を引き起こすと考えられています。
このように、慢性頭痛とストレスは密接に関わっており、うつ病やパニック障害などの不調を来す可能性もあります。
6.ご自分でできる頭痛対策
慢性頭痛は、痛みによって日常生活に影響を及ぼすことがあります。痛みが出たときには痛み止め、トリプタン製剤によって症状を落ち着かせたり、あらかじめ予防薬を使って痛みをコントロールしたりすることが大切です。
その他にも、ご自身の日常生活でも意識することで、できるだけ痛みを軽減させられる場合もあります。その具体的な方法は、次のとおりです。
- 睡眠不足、寝すぎ、過度なダイエット、休息をとらないなど、身体にストレスをかける生活をしない
- 長時間同じ姿勢で作業を続けず、適度に休憩を入れる
- 明るすぎる照明や冷たすぎる空調は避ける
- 禁煙、アルコールを控える
- 食生活では、納豆やひじきなどのマグネシウムを多く含む食材、レバーや卵黄などのビタミンB2を含む食材を摂る
規則正しい生活を送る、発作が起きやすい状況を避ける、刺激のやさしい住環境などを意識して頭痛対策をしましょう。