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メインテート/インデラル - 社交不安障害(あがり症)の薬物治療

メインテート/インデラル - 社交不安障害(あがり症)の薬物治療

この記事のもくじ

社交不安障害(あがり症・SAD)とは

社交不安障害とは、人前での発表や目上の人との会話といった特定の状況で強い不安を感じたり、緊張してしまう病気のことで、以前は社会不安障害とも言われていました。大きな括りでは不安障害に分類され、生涯のうち10%程度の方が発症するとの報告もあります。発症年齢は比較的若年期に多く、15歳ころの思春期が多いとされています。

社交不安障害では身体的な症状と精神的な症状が見られ、主に以下のような症状が見られます。

身体症状

  • 顔が赤くなる
  • 顔がこわばる
  • 心拍数の増加(心臓のドキドキ)
  • 汗をかく
  • 声が振るえる
  • 手足が振るえる など

精神症状

  • 頭が真っ白になる
  • 強い不安を感じる など

そして上記の症状は以下のような場面で出やすいです。

  • 大勢に注目される場面(発表や会議中の発言など)
  • 目上の人との会話
  • 複数人での会話
  • 人前での電話 など

社交不安障害(あがり症・SAD)の薬物治療

社交不安症に対する薬物治療としては、不安感などの精神症状へのアプローチと、手の振るえや心拍数などの身体的症状へのアプローチの2種類あり、患者さんがどのような症状に悩まされているのかによって適切な薬物を選択します。

不安感などの精神症状が強い場合、多くはベンゾジアゼピン系やSSRI、SNRIといったお薬を選択します。また、手が振るえる、心臓がドキドキするといった身体症状に対しては抗コリン薬やベータ(β)遮断薬というお薬を選択します。症状にあわせて、これらを単一もしくは組み合わせで使用します。

今回は身体的症状に対するお薬であるβ遮断薬のメインテート・インデラルについて紹介します。

 

メインテート/インデラルについて

 緊張する場面では、手や声の振るえ、心拍数増加、体温上昇といった症状が発現することが多いです。これらはアドレナリンが交感神経のβ受容体を刺激することで発現します。メインテート、インデラルというお薬はこのβ受容体にフタをする働きがあり、それによりアドレナリンが作用できず、結果的に症状が抑えられます。β受容体にフタをする(=遮断する)ことからβ遮断薬やβブロッカーと一般的に呼ばれます。β遮断薬は、社交不安障害以外にも内科領域で血圧や心臓疾患に対して使用されることも多いお薬です。 

メインテートは2012年に販売されたお薬で、「ビソプロロール」という成分が入っています。ジェネリック医薬品も多く販売されており、その場合は商品名に「ビソプロロール」とつきます。
インデラルは1966年に販売されたお薬で「プロプラノロール」という成分が入っています。ジェネリック医薬品の場合は、商品名に「プロプラノロール」とつきます。

作用について

メインテート、インデラルは前に書いた通り交感神経のβ受容体にフタをすることで交感神経の働きを抑えるお薬です。β受容体は心臓や血管、気管支といった全身の至る所に存在しており、β遮断薬の中でもお薬によって身体のどのβ受容体に作用するかが異なります。

  • メインテート
    • 選択的に心臓に存在するβ受容体をブロックします。
      そのため、心臓のドキドキを効果的に抑えることができます。
  • インデラル
    • 心臓以外に血管や気管支、筋肉などに存在するβ受容体をブロックします。
      心臓や筋肉に作用するため心臓のドキドキや手や声の振るえに対して効果的です。
      なお、後ほど記載しますが気管支にも作用するため気管支に疾患がある患者さんは服用できない場合があります。

服用方法について

お薬は服用してから徐々に吸収され最高濃度に達したのち、徐々に分解され血中濃度が低下していきます。一般的にはお薬の血中濃度が高くなれば作用も強くなります。血中濃度が最大になるまでの時間はお薬によって異なり、メインテートとインデラルの場合はメインテートが服用約3時間後、インデラルが約1.5時間後とされています。

β遮断薬は、緊張する場面の前にのみ服用する「頓服」として使用することが多く、その場合服用のタイミングは血中濃度が最大になる時間を考慮して設定します。目安としてはメインテートは発表などの2時間程度前、インデラルは1時間程度前に服用します。

副作用について

お薬の開発時に認められた主な副作用はそれぞれ以下の通りです。

  • メインテート:徐脈(必要以上の心拍数低下)、倦怠感、ふらつき、めまい
  • インデラル:徐脈(必要以上の心拍数低下)、脱力感、めまい

メインテートとインデラルはどちらも心臓に対して作用するお薬であることから、心拍数に影響を与えることがあります。また、心拍数が下がることで血流の勢いが抑えられ、結果的に血圧が低下することで、ふらつきやめまいに繋がることがあります。 

服用できない/服用に注意が必要な方について

メインテートとインデラルは緊張する場面において身体的な症状に対して効果的です。既に書いた通り、これらのお薬は作用する部位が違うため服用する際の注意点や他のお薬との相互作用も違います。

服用してはいけない患者さんは以下の通りです。

  • メインテート:
    • 高度の徐脈や心不全を有する患者さん
    • 妊娠中の患者さん など
  • インデラル:
    •  気管支喘息の患者さん
    • 高度の徐脈や心不全を有する患者さん
    • 低血圧を有する患者さん など

また、相互作用の点から併用してはいけないお薬については以下の通りです。

  • メインテート:
    • 併用してはいけないお薬はありませんが、糖尿病薬など併用する場合注意が必要なお薬は複数あります。他に服用しているお薬がある場合は医師や薬剤師に相談してください。
  • インデラル:
    • リザトリプタンという片頭痛のお薬と併用してはいけません。

その他に、糖尿病薬など併用に注意が必要なお薬が複数あるため他に服用しているお薬がある場合は医師や薬剤師に相談してください。

上記以外にも65歳以上の高齢の患者さんはお薬の分解に時間がかかることが多く、効果が強く発現してしまうことがあるため慎重な投与が必要です。また、メインテートに関しては妊娠中の患者さんは服用ができませんが、インデラルにおいても基本的に服用は避けなければいけません。授乳中の患者さんも母乳にお薬が移行することが分かっているため服用しないようにしてください。