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デュロキセチン(商品名:サインバルタ)について

デュロキセチン(商品名:サインバルタ)について

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デュロキセチン(商品名:サインバルタ)とは

 デュロキセチンはサインバルタという商品名で販売されているSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)に分類される抗うつ薬です。ジェネリック医薬品も販売されており、その場合は商品名に「デュロキセチン」とつきます(以下「デュロキセチン」にて統一します)。2004年にアメリカおよびヨーロッパにて販売が開始され、日本においては2010年に販売されました。現在では100カ国以上で広く使用されているお薬です。

 うつ病は不安や気分の落ち込みといった症状が代表的ですが、それ以外にも頭痛や腰痛といった痛みを伴うこともしばしばあります。これらの症状には脳内に数多く存在する神経の内、セロトニン神経系やノルアドレナリン神経系という神経と深い関わりがあることが分かっています。セロトニンやノルアドレナリンは神経伝達物質といって神経の末端から放出された後、特定の神経に作用し精神症状や痛みの強さを調節する働きがあります。うつ病の患者さんは、これらの神経系の働きが通常よりも落ちており、セロトニンやノルアドレナリンの放出量が少ないとされています。その結果、不安や活力の減少、頭痛や腰痛といった痛みが発現しやすくなります。

 SNRIはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤といってうつ病に関わりがあるとされるセロトニン神経とノルアドレナリン神経に作用するお薬です。日本で販売されているSNRIはデュロキセチン以外にミルナシプラン(商品名:トレドミン)、ベンラファキシン(商品名:イフェクサーSR)があります。これらの作用メカニズムはいずれも同じでうつ症状に対して優れた改善効果を有しますが、副作用の頻度や服用回数が異なります。

また、似たような作用を有するお薬としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)があります。日本において販売されているSSRIは、フルボキサミン(商品名:ルボックス)やパロキセチン(商品名:パキシル)などがあります。セロトニン神経系とノルアドレナリン神経系に作用するSNRIとは異なりSSRIは選択的にセロトニン神経系に作用します。どちらもうつ症状に対して優れた改善効果を有しますが、一般的な違いとしてSSRIは不安に対して、SNRIは不安だけでなく気分・やる気の低下に対しても効果的とされています。(出典:Differential Antidepressant Symptom Efficacy: Placebo-Controlled Comparisons of Duloxetine and SSRIs (Fluoxetine, Paroxetine, Escitalopram))

 

デュロキセチンの作用について 

 SNRIに分類されるデュロキセチンはセロトニン神経系、ノルアドレナリン神経系に作用し、うつ症状を和らげる働きがあります。神経の末端からセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質が放出されると、それらが特定の結合部位に結合し、さまざまな作用が発現します。その後、使われなかった神経伝達物質は再び神経内に回収され次の放出のために保管されます。デュロキセチンは、一度放出された神経伝達物質が回収される経路にフタをする役割があります。そのため、回収されなくなったセロトニンやノルアドレナリンの量が結果的に増え、それら神経系の働きを高めることができます。

デュロキセチンは、以下のようにうつ症状だけでなく痛みに対しても適応を有しています。

  • うつ病・うつ症状
  • 糖尿病性神経障害
  • 線維筋痛症
  • 慢性腰痛症
  • 変形性関節症

 

 デュロキセチンが具体的にうつ病や痛みをどのようなメカニズムで改善させるかについてはまだはっきりと分かっていませんが神経末端においてセロトニンやノルアドレナリンが増えることで、「脳内に変化」が生じ徐々にうつ症状が改善に向かうと考えられています。一般的にこの「脳内の変化」はお薬を服用して最低2週間~4週間程度は必要とされています。飲み始めてからすぐに効果が得られるわけではないため、患者さん自身の判断で服用を中断するのではなく状態を医師や薬剤師に相談しながらお薬を継続していくことが必要です。

 

デュロキセチンの服用方法について

 デュロキセチンには以下の用量が販売されています。

  • 20mg錠
  • 30mg錠

患者さんの症状に応じて用法用量が異なります。

うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛に対して:

1日20mgの服用から開始し、1週間以上継続した後に状態をみながら20㎎ずつ増量します。基本的な用量としては1日1回朝食後に40mgを服用しますが効果不十分の場合は60mgまで増量します。

線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛に対して:

1日20mgの服用から開始し、1週間以上継続した後に状態をみながら20㎎ずつ増量します。基本的な用量としては1日1回朝食後に60mg服用します。

デュロキセチンの注意点について

 開発期間中に認められた副作用は以下の通りです。

  • 悪心(嘔吐前の胃のむかつき):6%
  • 傾眠(眠気):31%
  • 口渇:9%
  • 頭痛:21%
  • 便秘:9%
  • 下痢:8%

これらの副作用は空腹時に発現しやすいため食後にお薬を服用するようにしてください。また、デュロキセチンを服用開始初期にこれらの副作用は多く見られますが、継続しているうちに頻度は収まってくることが多いです。

副作用の頻度や程度がひどい場合は医師や薬剤師に相談するようにしましょう。眠気が発現することがあるため、自動車の運転などはなるべく控えてください。

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはデュロキセチンを服用することができません。

  • モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中または投与中止後2週間以内の方
  • 肝臓が悪い患者さん
  • 腎臓が悪い患者さん
  • 緑内障の患者さん

デュロキセチンはノルアドレナリンを脳内で増やす働きがあると既に書きましたが、ノルアドレナリンは精神症状だけでなく色々な作用を体にもたらします。特に以下の疾患をお持ちの方は医師に相談するようにしてください。

  • 心臓疾患を有する患者さん
  • 高血圧を有する患者さん
  • 前立腺疾患を有する患者さん など

また、妊婦や授乳中の患者さんにおいては、動物実験で胎児や母乳にお薬が移行することが分かっているため服用の必要性について医師・薬剤師に相談するようにしてください。