ADHDの薬物療法と弊害
ADHDの薬物療法と弊害 とは
ADHDの薬物療法は刺激薬(メチルフェニデートやアンフェタミン)が主流で、注意力や集中力向上。しかし、副作用として不眠、食欲減退、心拍数上昇が見られることがあり、適切な使用と医師の指導が不可欠で過剰摂取による依存や心血管リスクも懸念される。個人差があり、適切な医師の指導が重要。ADHDの薬物治療とは
ADHDを含めた発達障害における薬物治療では、障害を根治したり、その特性を消失させるような治療薬はありません。症状を軽減させる目的として、薬物治療が行われます。この薬物治療の効果によって症状が軽減し、その人の生きづらさを感じにくくなることでしょう。そして、親や周りの方が適切な関わりができるようになります。
薬物治療を行う上で、薬に関する副作用や弊害、安全性への懸念などは多くの方が感じていることでしょう。薬物治療の副作用は、どのような薬でもあります。
ADHDの薬物治療は、根本的な治療ではなく補助的な手段として、あくまでも生活を改善するために薬を使用します。より生活のしやすい環境を整えるためには、環境調整や行動療法を用いて症状の緩和を図ることが必要です。
子どもが飲む薬の効果だけではなく、副作用や弊害などはどのような症状があるのか知っておくことが大切です。また、万が一何かの症状が起こった場合、どう対処すればよいのか把握することも必要でしょう。
薬を使って症状を抑えることで、ADHD本人が生活しやすい環境を作ることができます。そのために、ADHDの治療薬の効果や使われる薬、治療薬による弊害などを知り、お薬との上手な付き合い方を知りましょう。
ADHDの薬がなぜ効果があるのか
ADHDの原因はハッキリと明確になっていませんが、本人の気質や遺伝、育ってきた環境など様々な原因が考えられます。ADHDは多動や衝動の症状がありますが、脳内では逆の状況が起きており、神経伝達物質がうまく効率的に伝わらない、という状態になります。
ADHDの場合は、脳内のドーパミンやノルアドレナリンの機能低下が原因で、これらの物質が不足することで特有の症状が出てくると考えられています。特にドーパミン不足に陥ると、「順序立てて物事ができない」「待つことができない」という行動が現れます。
そこで、ドーパミンやノルアドレナリンの量を適切に調整したり、神経伝達物質がしっかり伝わるようにしたりすることが、ADHDの薬の役目になります。薬物治療は、ADHDの患者さんの脳内の神経伝達物質をうまく調整します。
ADHDで使われる3つの薬
ADHDで使われる代表的なお薬には、日本で処方が認められている3種類の薬があります。「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」という薬です。それぞれの薬はADHDの症状の軽減、緩和を目的としており、実際には効果のある強さや領域は異なります。
3つの薬は、服用から効果が現れるまでの時間や効果の持続時間、身体への作用に違いがあります。作用するメカニズムは異なりますが、ADHDに現れる多動性、衝動性、不注意の症状に効果を発揮します。
コンサータ
コンサータは、ADHDの「不注意」に効果があります。学校や仕事に行く前など、一日の始まりに一度服用することで、日中の効果は持続します。薬の効果が切れるのもハッキリしています。
ドーパミンやノルアドレナリンの再取り込みを抑え、これらの働きを増加させます。副作用には寝つきが悪くなること、食欲減退により昼食があまり食べられなくなることがあります。そのため、朝に服用したり朝や夜で栄養を補う食事が大切になります。
ストラテラ
ストラテラは、ADHDの「特性全体」に効果があります。24時間の血中濃度が安定させるために、朝・晩の2回の服用で症状が穏やかになるように作用します。
即効性はなく、効果が感じられるまで数週間かかります。およそ2~4週間かかりますが、効果がゆっくり出る方であれば8週間ほどかかるケースがあります。また、副作用には眠気や吐き気、腹痛などがありますが、コンサータよりも少ない、感じにくいとされています。
ノルアドレナリンの再取り込みを抑えて、量を増やす働きがあります。子どもから大人まで使用できるため、治療薬として選びやすい薬です。
インチュニブ
インチュニブは、ADHDの「多動性・衝動性」に効果があります。コンサータやストラテラとは異なり、神経伝達物質を受信する側の漏れを防ぐ仕組みがあります。体重に合わせて、服用量が変わります。
ノルアドレナリンが働きやすい環境を整える薬であり、効果が出るまでの時間は約1~2週間と早いことが特徴です。ストラテラと比較すると、効果はマイルドになっています。副作用には、眠気や頭痛、血圧低下などがあります。
以上3つの薬について、表にまとめると次のようになります。
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コンサータ |
ストラテラ |
インチュニブ |
服用回数 |
1日1回(朝) |
1日2回(朝・夕)、大人は1日1回 |
1日1回 |
効果発現までの期間 |
3回程度の服用で、効果の程度を判定 |
1~2ヵ月 |
1~2週間 |
持続時間 |
10~12時間(夕方に効果が消失) |
24時間 |
24時間 |
主な副作用 |
食欲低下、体重減少、寝つきが悪い、チック症状 |
眠気、気持ち悪い、食欲低下、頭痛 |
血圧低下、食欲低下 |
その他に併発している疾患に応じて、リスパダールやエピリファイ、パキシルなどの精神疾患に用いる薬や抗てんかん薬、睡眠導入剤が処方される場合があります。
ADHDの治療薬による弊害とは
ADHDの治療において、医師から服用が必要だと言われたときに一番懸念することは、薬の効果だけではなく、「依存性」や「長く飲み続けた場合の影響」についての不安が多いでしょう。ほとんどの薬には、長く飲み続けていることで、これまで飲んでいた量では同じ効果が発揮できなくなるような耐性がついてきます。そして、長く服用を続ければその分多くの量が必要になるでしょう。
しかし、精神疾患に対するお薬は、たいていは長く飲み続けることを前提としており、依存や耐性に十分留意して配合しています。服用の回数や服用の時間帯は決められており、体重により1日に飲む量を正確に測り、安全性を確かめた上で処方することになっています。
前述しているADHDの主な治療薬、「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」の3つうち、最も依存性が強いと言われているのは、中枢神経刺激薬である「コンサータ」です。薬をやめた後のイライラ、震えなどの離脱症状はみられませんが、精神依存が出てくる場合があります。
この精神依存とは、「薬をやめたくない」「この薬がないと症状が出るのではないかと考え、生活するのが怖い」という気持ちが強くなるということです。そのため、コンサータを処方する際は、医師の指示のもとで週に1回休薬する日を設けるといった調整をすることもあります。
これらの精神依存は、服薬を止めれば少しずつ消失するのですが、本人の判断で服薬を中断したり、飲み忘れたからと言ってまとめて一気に飲んだりということはやめましょう。必ず医師の診断のもとで、服用を行います。
ADHDの薬物療法は「薬との付き合い方」が大事
ADHDの薬物治療においては、3種類のお薬が選ばれます。これらの作用や服用の回数、時間帯、副作用の出現についての知識を得て、自分の症状に合わせたお薬と上手に付き合っていくことが大切です。
何を目的として、どのような作用のお薬を飲むのか、飲むメリットとデメリットは何か、などを医師と相談し、納得した上で薬物治療を始めましょう。
また、お薬の効果は一時的なものが多いですが、ADHDの方が褒められたと感じることで、その感情の記憶はしっかりと頭に刻み込まれます。このようにADHDの方でも、その特性を活かせる環境調整を行い、薬の効果も最大限に発揮できるようになるでしょう。