緘黙column

緘黙

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緘黙とは

緘黙(かんもく)とは、生活全般にわたり全く話せない全緘黙と、家庭などの安心できる場所ではふつうに話すことができるにも関わらず、学校や職場など特定の場所や状況で話せなくなってしまう選択性緘黙のことを言います。とくに多くみられているのが、選択性緘黙になります。

緘黙は決して一時的なものではなく、長く症状が続くため、大人になってからの緘黙は社会生活に大きな影響を与えるでしょう。周りが症状に気づくのは、幼稚園などに行き始めてからの5~6歳前後が多く、小学生や中学生になってから症状が現れる人もいます。この幼少期に適切な支援や治療を受けられずに大人になると、生きにくさを感じながら社会生活を送っているというケースも存在します。

周りの人が緘黙への理解が乏しいと、性格によるものだと誤解されることがあります。人見知りや極度の恥ずかしがり屋なのではと思われてしまうでしょう。しかし、これらと緘黙には違いがあります。それは、特定の場所で話せないという症状が何ヵ月、何年も長期的に続くことや、リラックスできるような場面でも話せないことが続くということです。

緘黙症の本人は、自分が話している場面をクラスメイトや職場で聞かれたり注目を浴びたりすることに、強い恐怖を抱いてしまいます。特に選択性緘黙症の子どもは比較的おとなしい性格の子が多いため、口数が少なかったり積極的にお友達と関わろうとしなかったりします。先生や保護者は、それを「その子の性格」と考えてしまい、気長に見守っていこうと思うケースは多いでしょう。

しかし、緘黙症は適切な支援と治療を早期に行うことが大切になります。

緘黙の原因とは

緘黙症を発症する原因は明確なことが分かっていないのが現状ですが、主に「本人側の要因」と「環境側の要因」に分けて考えられています。

本人側の要因

緘黙症の多くには、本人側の要因として「不安になりやすい」「緊張を感じやすい」という気質があるという共通点があります。そこに、社会不安や分離不安のような不安症が加わる人も多いようです。

また、ASD(自閉スペクトラム症)を併存している緘黙症の人が多いという研究結果も上がっていることから、選択性緘黙の背景にはASDが大きく影響しているということを知っておく必要があるでしょう。

その他の要因として、ことばの発達の遅れやコミュニケーション能力の問題、吃音や構音障害のような言語障害、知的障害などが影響していると言われています。

環境側の要因

緘黙症は、本人の問題だけではありません。緘黙症の発症に最も大きな影響を与える環境因子は、人との関わりです。選択性緘黙のある人は、家庭などの安心できる場所では話せるのですが、これは「話せなくさせてしまう社会的状況」の影響が大きいと言われています。

学校ではクラスメイトや教師、職場では同僚や上司、仕事の取引相手などの存在が大きく影響します。その中で、「話さなくても済んでしまう状況」や「あまり話さない人と思われている状況」においては、話さなくても生活できたり話しづらかったりします。

緘黙の症状・合併症

選択性緘黙は気質や性格によるものや、わざと話さないことを選んでいるわけではありません。話したいと思っていても、話せないという状態なのです。

もし、幼少期に発症した緘黙症に対して適切な支援が受けられずに成長すると、症状の改善が遅くなるだけではなく、うつ病や不安障害などの他の精神障害や、不登校や引きこもりなどの二次的な問題を生じやすくなります。

この緘黙症は、人によって症状に差がありますが、ほとんどの人の共通点は「不安になりやすい」「緊張しやすい」ということです。ここでは、子どもの場合と大人の場合でよく起きる状況について、まとめてみました。

子どもの場合

  • 学校のトイレに一度も行けない
  • 話し方や動作が遅く、過保護で育ったと誤解される
  • 授業中に意見を求められても発言できない
  • 体育が苦手で評価してもらえない
  • 挨拶ができないため、無視していると思われる
  • わからないことがあっても質問できない
  • 発表会や卒業式で声を出せない
  • 出席をとる時に声をだしたり挙手したりできない
  • 配布されるプリントが足りなくても言えない

子どもの場合は、特に小学校や中学校などの学校生活で大きな影響が出てしまいます。適した支援や配慮があればこのような悩みは少しずつ減っていくのですが、周りの生徒たちはもとより、教師ですら緘黙症への理解が乏しい状況にあります。

大人の場合

  • 不明な点を聞かなければいけない時に話しかけられない
  • のどが圧迫される感じになり、声が出せない
  • 相手の指示にすぐ反応できない
  • 分からないこと、困っていることがあっても言えない
  • 挨拶や雑談ができない
  • 視線が気になってストレスになる
  • プレゼンのような話さなければいけない時がつらい

大人の場合は、つらい症状をごまかしながら働くことで会社に居づらい感覚になってしまい、二次的な問題を引き起こすきっかけになります。

緘黙の診断

緘黙症の多くは、幼少期である2~6歳頃から発症します。保育園や幼稚園などの家庭ではない場所で、日中生活をした時に気付かれることが多いです。有病率は0.21%と報告されており、数百人に1人の確立だとされています。つまり、緘黙症は決して珍しい障害ではないということです。

選択性緘黙症の診断には、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5を用います。

  1. 他の状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)において話すことが一貫してできない
  2. その障害が学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている
  3. その障害の持続期間は、少なくとも 1 ヶ月(学校の最初の 1 ヶ月だけに限定されない)である
  4. 話すことができないことは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない
  5. その障害は、コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない.

問診により人見知りや恥ずかしがり屋などの気質的なものや、周りに対する反抗、わざと話さないなどのケースを除きます。診断の一番のポイントは、「他の状況では話せるのにも関わらず、特定の場面や状況では話すことができない」という症状があることです。

緘黙の治療

緘黙を疑った場合は、心療内科やメンタルクリニックに受診し専門医に診察を受けるようにしましょう。人によってはうつ病のような障害を合併している可能性があるため、自己診断はやめましょう。

認知行動療法

自分の考え方や行動のクセや特徴を把握し、どのようにすれば症状を和らげられるか整理していくことでストレスを軽減させていきます。

薬物療法

不安症状を緩和するために行われる薬物療法は、うつ状態や不安症状を緩和・軽減する効果が期待できますが、緘黙症状自体の治療効果があるわけではありません。

言語聴覚士による支援

言語聴覚士は言葉や聴覚に関する問題に、身体機能の面からサポートする専門家です。一人ひとりにあったトレーニング方法などを支援します。

子どもの場合は家庭と学校などが協力して、まずは安心できる環境を調整してあげることから始めましょう。一気に症状を治すのではなく段階的に治療や訓練を行い、無理せずにスモールステップを踏んでいくという考え方が大切です。

緘黙症状は適切な支援と周りの配慮によって、症状を改善させることができます。ライフステージごとに対応の仕方も変わってきます。周りの人は、緘黙の人が安心して話せるような環境を提供するようにしましょう。