ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス)
ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス) とは
ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス)とは
ロフラゼプ酸エチルは1975年にフランスのサノフィ社が開発したお薬で、国内では1989年にメイラックスという名称で販売が開始されました。販売開始から30年以上経過しており現在はジェネリック医薬品も多く販売されています。ジェネリック医薬品の場合は「ロフラゼプ酸エチル」が商品名につきます(以下、ロフラゼプ酸エチルで統一します)。
ロフラゼプ酸エチルは、ベンゾジアゼピン系という種類のお薬になります。ベンゾジアゼピン系のお薬は、作用の強弱や持続時間がそれぞれ異なりますが全般に抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用(筋肉のこわばりを抑える作用)、抗けいれん作用を有します。ロフラゼプ酸エチルもそれら作用を有しますが、選択的に抗不安作用が強いという特徴があります。患者さんの主な訴えが不安感である場合(不安感以外の症状が比較的軽い場合)などに使用します。他のベンゾジアゼピン系のお薬の中には、強い筋弛緩作用を有するお薬があり、肩こりなどの症状に対して使用されます。しかし、肩こり症状が軽い患者さんや高齢者の患者さんの場合、足腰の筋肉にお薬が作用すると躓いたり転倒する危険性があります。こういった患者さんに対して、筋弛緩作用が弱いロフラゼプ酸エチルを選択することができます。このようにベンゾジアゼピン系のお薬のそれぞれの特徴を考慮し、患者さんの年齢や症状に合わせて使い分けます。
ロフラゼプ酸エチルは、服用後の作用持続が長く超長時間作用型のお薬に当てはまります。服用後約1時間で血中濃度が最高になりますが、その後ゆっくりと体内で分解されていき4日~5日間は作用が持続するといわれています。ベンゾジアゼピン系のお薬には注意すべき副作用として依存性や離脱症状がありますが、これらは短時間作用型のお薬ほど危険性が高いとされています。短時間作用型のお薬は、血中濃度が急速に上昇した後、急速に減少していきます。このような場合、身体がお薬の濃度変化についていけず副作用発現に繋がりますが、長時間作用型のお薬の場合は、ゆっくりと上昇しゆっくりと体内から分解されていくため、濃度変化に身体がついていきやすく副作用が発現しにくい特徴があります。
ロフラゼプ酸エチルの作用について
ロフラゼプ酸エチルは、比較的抗不安作用が強く、催眠作用や筋弛緩作用は弱いです。また、これらの作用はロフラゼプ酸エチル自体が直接作用を引き起こすのではなく、一度体内に吸収された後に肝臓で一部の構造が分解されることにより活性化され、作用を発現します。
ロフラゼプ酸エチルに認められている効能効果は以下の通りです。
- 神経症※1における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
- 心身症※2における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
※1神経症:心が原因で生じる不安やパニックなどの精神症状を引き起こす病気
※2心身症:心が原因で生じる胃潰瘍や頭痛、過呼吸といった身体症状を引き起こす病気
また、抗不安作用よりも作用は弱いとされますが催眠作用や筋弛緩作用を有しますので作用時間が長いロフラゼプ酸エチルの服用期間中は日中の眠気やふらつきに注意をしてください。
ロフラゼプ酸エチルの服用方法について
ロフラゼプ酸エチルは以下の用量が販売されています。
- 1㎎錠
- 2㎎錠
- 1%細粒
成人の場合、原則2mgを1日1〜2回に分けて服用しますが、患者さんの年齢や症状に応じて適宜増減します。
ロフラゼプ酸エチルの注意点について
ロフラゼプ酸エチル販売後に実施された大規模な調査においてみられた主な副作用は以下のものがあります。
- 眠気、集中力低下など:2.45%
- ふらつき、頭重感(頭が重い感じ):0.90%
- 倦怠感(だるさ)、脱力感:0.30%
- 便秘、胃不快感:0.29%
眠気や集中力低下といった副作用の危険があるため、自動車などの運転をしてはいけません。また、外出等の際は、ふらつきや脱力感などによって転倒の恐れがありますので、なるべく単独での行動は避けるようにしましょう。
その他に注意すべき副作用として、長期間このお薬を服用していると薬物依存や離脱症状を生じる危険があります。他のベンゾジアゼピン系のお薬と比べる可能性は低いとされていますが、漫然とした長期使用は避けるようにしましょう。
また、胃薬などドラッグストアで購入できるお薬の中にはベンゾジアゼピン系のお薬と併用すべきでないものがあります。飲酒も避ける必要があります。アルコールとベンゾジアゼピン系のお薬は作用がよく似ているため、副作用のリスクを高めてしまいます。現在服用しているお薬や飲酒の習慣などあらかじめ医師や薬剤師に相談するようにしてください。
服用できない/注意が必要な患者さん
以下の患者さんはロフラゼプ酸エチルを服用してはいけません。
- ベンゾジアゼピン系薬剤に対して過敏症の既往歴のある患者さん
- 緑内障の患者さん
- 重症筋無力症のある患者さん
また、以下の患者さんは医師の指示を仰ぎ、少量から開始するなど慎重な服用が必要です。
- 心臓や肝臓、腎臓に障害のある患者さん
- 高齢者の患者さん
- 妊娠中や授乳中の患者さん
特に、高齢者の患者さんは副作用が出やすいため、少量の服用から始めるなどが必要です。また、妊娠中や授乳中の患者さんにおいては、母乳や胎児へお薬が移行することが分かっているため服用の必要性を医師が判断する必要があります。