オランザピン(ジプレキサ®)について

2024-06-10
監修:本 将昂

オランザピン(ジプレキサ®)について とは

 オランザピン(ジプレキサ®)について -  日本精神医学研究センター

オランザピン(商品名:ジプレキサ)とは

 オランザピンは双極性障害(躁うつ病)や統合失調症に主に使用されるお薬で、「ジプレキサ」という商品名で販売されています。ジェネリック医薬品も多く販売されており、その場合は名前に「オランザピン」とつきます。

 オランザピンは1996年にアメリカで開発されたお薬で比較的新しいお薬です。日本では2000年から販売されており、現在では90か国以上で使用されています。

双極性障害は、感情が異常に高ぶり衝動的、危険な行動がみられる躁状態と、憂うつで感情が乏しくなるうつ状態、そして躁状態でもうつ状態でもない通常状態、この3症状が繰り返される病気です。躁状態とうつ状態の間隔は数か月だったり数年だったり患者さんによって異なりますが、治療としてはいずれの状態においても薬物治療が主で、いかに通常状態を維持させるか(再発を防止するか)が重要となります。オランザピンは、躁状態やうつ状態の改善作用、そして再発の抑制作用を有することが分かっています。

 日本では双極性障害の患者は、軽症のものから重症のものも含めると全国民の0.4~0.7%は双極性障害といわれており、これは1,000人のうち4~7人は双極性障害ということになります。双極性障害を発症すると、多くは症状が落ち着いても再発してしまうことが多いです。そのため、長期間に渡りお薬を服用する必要があり、病気の状態だけでなくお薬の効き目、副作用の有無などに注意しながら治療を継続しなければなりません。

 

オランザピンの作用について

 私たちが感じる様々な感情は全て脳内の神経系によりコントロールされています。愉悦感や不安感などの感情は、セロトニンやドパミン、アドレナリンといった神経伝達物質がそれぞれの神経間で綿密なコミュニケーションをとることによってバランスが保たれています。オランザピンは多くの種類(多元的)の受容体に対して作用し、なおかつ、それらは脳内に選択的に作用するため副作用が少ないという特徴があります。これらの特徴からオランザピンは多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)と言われ、複数の神経伝達物質のバランスを整えることにより、気持ちの高ぶりや不安感を改善し、心身の活動を安定化させる働きがあります。

 

オランザピンの服用方法について

オランザピンの服用方法については以下の通りです。

双極性障害の場合、成人の躁状態の改善には1日1回オランザピンとして10mgの用量で服用を開始します。うつ症状の改善には1日1回就寝前に5mgから開始し、10mgまで増量します。なお、どちらの服用方法も年齢・症状により適宜増減できますが、1日最大量は20mgです。

オランザピンには以下の剤形が販売されておりますが、いずれも用法用量は同様です。なお、ザイディス錠とは口腔内崩壊錠の1つで水無しで服用できるように設計された剤形のことです。一般的に口腔内崩壊錠にはOD錠と呼ばれるものが多いですが、ザイディス錠の方が速やかに崩壊します。先発品であるジプレキサではザイディス錠、ジェネリック医薬品の場合はOD錠となります(ザイディス錠とOD錠は、崩壊にかかる時間は異なりますが作用発現までの時間は同等です)。

  • 1%細粒
  • 2.5mg錠/5mg錠/10mg錠
  • 2.5mgザイディス錠(OD錠)/5mgザイディス錠(OD錠)/ 10mgザイディス錠(OD錠)

 

オランザピンの注意点について

躁状態の患者さんにオランザピンを使用した際に確認された主な副作用は以下の通りです。

  • 傾眠(眠気):26.8%
  • 体重増加:13.98%
  • 口喝:11.83%
  • 血中トリグリセリド増加:8.06%
  • 血中コレステロール増加:4.3%
  • 便秘:7.53%
  • 倦怠感:6.45%
  • 食欲亢進:5.91%
  • 浮動性めまい(ふわふわと宙に浮いたような感覚を伴うめまい):3.76%
  • アカシジア(静かに椅子に座っていられない、そわそわする):2.15%
  • 振戦(手足が勝手に小刻みに振える):2.15%

オランザピン服用中に血糖値の著しい上昇や低下といった症状が発現する可能性があります。なお、血糖値異常は自覚しにくく、そのまま放置すると重い状態へ繋がる危険性があるため注意が必要です。脱力感や倦怠感、口喝、手足の振るえといった症状の発現の有無、定期的な血糖値の測定を行われることが推奨されています。

うつ症状が重い方に対しては、服用開始初期や用量変更時に不安感などの症状が強くなることがあります。そのため特に開始初期、用量変更時は患者さんの病状、状態の変化に注意するようにしてください。

 

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはオランザピンを服用することができません。

  •  バルビツール酸誘導体などの中枢抑制系のお薬を長期的に服用されている患者さん
  •  過去にクエチアピンの服用で過敏症を発現した患者さん
  •  アドレナリンを使用している人(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)
  •  糖尿病、または過去に糖尿病になったことがある患者さん

 

また、オランザピンを服用している間は眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので、高い場所での作業や自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意する必要があります。もし、これらの症状を自覚した場合には、すみやかに作業を中断してください。