パロキセチン(商品名:パキシル/パキシルCR)について
パロキセチン(商品名:パキシル/パキシルCR)について とは
パロキセチン(商品名:パキシル/パキシルCR)とは
パロキセチンはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)に分類される抗うつ薬で「パキシル」や「パキシルCR」という商品名で販売されています。1990年にイギリスで抗うつ薬として承認を取得し、その後日本では2000年に販売が開始されています。
パロキセチンには「パキシル」と「パキシルCR」という2種類のお薬が販売されていますが、これらの違いはお薬の吸収速度が異なります。「パキシルCR」のCRとはControlled Release(コントロールドリリース)の略で服用後に体内で徐々に薬の成分が溶け出すように設計されたお薬のことです。なぜCR錠が開発されたかというとSSRIの副作用を軽減するためです(詳しくは「パロキセチンの注意点について」をご参照ください)。
過去に使用されていた三環系や四環系抗うつ薬と比べるとSSRIは副作用の頻度が格段に改善されています。しかし、それでも吐き気や便秘といった消化器系の副作用は発現しやすい傾向にあります。中にはそれらの副作用のためにお薬の継続を断念してしまう患者さんもいます。お薬服用後速やかに体内に吸収されると副作用の発現頻度も高くなりますが、ゆっくりと少しずつ吸収されていくと副作用は抑えられます。特に抗うつ薬は継続して服用しなければ効果が得られにくいため、副作用頻度を抑えお薬を継続しやすくするためにCR錠が開発されました。なお、この「パキシルCR」についてはまだジェネリック医薬品は販売されていませんが、通常タイプの錠剤(商品名:パキシル)については多くのジェネリック医薬品が販売されています。その場合は販売名に「パロキセチン」と付きます。
パロキセチンの作用について
パロキセチンは2000年の販売当初うつ病・うつ状態、パニック障害に対して適応を取得していました。その後、2006年に強迫性障害の適応を追加し、さらに2009年に社交不安障害、2013年に心的外傷後ストレス障害への適応を追加しました。なお、「パキシルCR」においてはうつ病・うつ状態のみ適応を有しますが、海外においてはパニック障害や強迫性障害など「パキシル」と同様の適応を有しています。
社交不安障害とは、他人(特に知らない人や上司等の偉い方と)と関わる場面や大勢から注目される場面において強い不安を生じ、仕事や学校生活といった社会生活を円滑に送れない病気の事です。
強迫性障害とは、頭の中に生じた不安にとらわれてしまい、それを払拭するために同じ行動を繰り返してしまう病気です。例えば家の鍵を閉めたか不安になり何度も鍵を閉めたか確認したり、トイレに行ったあとに何度も手を洗ったりします。
心的外傷後ストレス障害はPTSDとも言い、自身にとって大きなトラウマとなる出来事を体験し、後にフラッシュバックや悪夢といったさまざまな症状を発現する病気です。
これら疾患を発症する詳細なメカニズムははっきりと分かっていませんが、脳内のセロトニン神経系やノルアドレナリン神経系が深く関与していることが分かってきました。特にセロトニン神経系は不安症状に、ノルアドレナリン神経系はやる気や活力の低下に関係があるとされ、パロキセチン等のSSRIは選択的にセロトニン神経系に作用します。神経間の情報伝達を行うセロトニンの量を増加させることにより、神経系の働きを高め徐々に脳内に変化が生じます。この脳内の変化に伴い症状の改善がみられることが分かっています。
パロキセチンの服用方法について
パロキセチン(「パキシル」もしくはジェネリック医薬品)
- うつ病/うつ状態に対する投与方法:
1日1回10mg~20mgから開始し、1週間ごとに10mg/日ずつ増量していきます。症状や状態に合わせて20mg~40mgを1日1回夕食後に服用します。 - パニック障害に対する投与方法:
1日1回10mgから開始し、1週間ごとに10mg/日ずつ増量していきます。その後通常、1日1回夕食後に30mgを服用します。 - 強迫性障害に対する投与方法:
1日1回20㎎から開始し、1週間ごとに10mg/日ずつ増量していきます。その後通常、1日1回夕食後に40mgを服用します。症状や状態に応じて1日50mgを超えない範囲で適宜増減します。 - 社交不安障害に対する投与方法:
1日1回10mgから開始し、1週間ごとに10mg/日ずつ増量していきます。その後通常、1日1回夕食後に20mgを服用します。 - 心的外傷後ストレス障害に対する投与方法:
1日1回10mg~20mgから開始し、1週間ごとに10mg/日ずつ増量していきます。その後通常、1日1回夕食後に20mgを服用します。
パキシルCR
- 1日1回夕食後に12.5mgから開始し、1週間以上かけて25mg/日まで増量します。その後症状や状態によって1週間以上かけて12.5mgずつ増量していきます(1日50mgを超えない範囲で適宜増減します)。
パロキセチンの注意点について
パロキセチン(「パキシル」もしくはジェネリック医薬品)の開発期間中にみられた主な副作用は以下の通りです。
- 傾眠(眠気):5%
- 悪心(嘔吐前の胃のむかつき):4%
- 浮動性めまい(体がふわふわする感じ):3%
- 頭痛:1%
- 便秘:4%
他のSSRIと比較すると悪心や便秘といった消化器症状や、傾眠が多い傾向にあります。そのため、食後特に眠気が生じても問題がない夕食後に服用するようにしてください。また、これらの症状は服用開始当初に発現しやすく、飲み続けることで軽減していくことが多いですが、症状が重い場合などは医師や薬剤師に相談してください。副作用を軽減するために開発された「パキシルCR」も販売されています。「パキシルCR」の副作用の発現頻度は以下となっています。(CR錠の説明は「パロキセチン(商品名:パキシル/パキシルCR)とは」をご参照ください)
- 傾眠:7% (パキシル-11.8%)
- 悪心:1% (パキシル-10.3%)
- 浮動性めまい:3% (パキシル-6.0%)
- 頭痛:1% (パキシル-5.0%)
- 便秘:0% (パキシル-1.4%)
服用できない/注意が必要な患者さん
以下の患者さんはパロキセチンを服用することができません。
- モノアミン酸化酵素阻害剤(エフピーやアジレクトなど)を投与中または投与中止後2週間以内の方
モノアミン酸化酵素阻害剤というお薬はパロキセチンと一緒に服用することで効果や副作用が強く出てしまう可能性があるため併用できません。またその他にも併用するには注意が必要なお薬もいくつかあるため、現在服用しているお薬がある場合は医師・薬剤師に相談してください。
また、妊娠中の方や授乳中の方は胎児や母乳中へパロキセチンが移行することがわかっているため服用の必要性を確認するようにしてください。