認知行動療法31

統合失調症/Schizophrenia
第2段階の治療

 第2段階の治療目標は、認知の修正が中心になります。治療は、週1回で8週間にわたって実施するのが一般的な基本ですが、1~2週に1回、2~6カ月かけて実施するケースもあり、患者さんの状況や治療者の判断で、アレンジすることは可能です。

【第2段階の治療目標】

1. 規則正しい食生活の維持。
2. 摂食制限の減少。
3. 過食が起きそうな状況の把握と、そのような状況の減少と対処。
4. 摂食行動異常を維持させている思考・信念・価値観の同定と改変。
5. 身体像の歪み、身体像の蔑視の改善。
6. 治療終結への準備。

9回目の面接

 通院回数を減らすと、摂食行動が少し悪化する患者さんがいますが、この場合、第1段階の治療をさらに継続して行います。第1段階の治療目標が達成できてから、第2段階の治療に入るようにします。

10~14回目の面接

 ここでは、規則正しい食生活を維持し、摂食制限の回数を減らしていきます。ただし、摂食制限するとその反動として過食が生じ、さらに摂食制限するといった悪循環が起きることについても、十分に患者さんに説明します。摂食制限のやり方には、1日の食事の回数を減らす方法と、太ると思われる食物については食べない方法の二つがあります。また、中にはカロリーが不明な食物は食べない、組成が明らかでないと食べない、家でしか食べない、といった患者さんもいます。このような摂食行動は中止して、どんな状況下であっても、いろいろな食物を自由に食べられることが、治療上の目標でもあります。これを食べると太るという特定の食物もあるので、そういう場合は、食物に順位をつけて、下位の抵抗の少ない食品から食べる練習をして、徐々に抵抗が多いものを食べられるようにしていく方法もあります。

《問題解決訓練》  過食は、不愉快なことが起きたり、抑うつ気分になったりすることが引き金になっているようです。この過食になるような状況や契機を明らかにし、これに対処する技能を高めることが必要になります。これには「問題解決訓練」が有効です。方法は以下の要領で行います。

  • ① 問題を具体的な形で明確化します。問題が単独ではなく、いくつか複数ある場合は、それぞれ個々に分けます。
  • ② 問題に対して、解決法をできるだけ多く列挙します。
  • ③ それぞれの解決法について、その実行可能性、また現実性について検討します。
  • ④ いくつかの解決法の中から、最上の方法を選びます。
  • ⑤ それを実行する際の必要な手順を検討し、心のなかでそれを練習します。 
  • ⑥ 解決法を実行します。
  • ⑦ 実行した全経過を10点満点で評価します。

 日常生活の中で、問題解決法をできるだけ多く用い、繰り返し練習をすると技能が高められ、困難な問題に直面しても解決できるようになります。そして、以前過食に導いた出来事が起きても、過食しないで済むことができます。また、「全か無か」の両極思考も改まっていきます。

《認知再構成法》  認知再構成法は、体型や体重に対して歪んだ信念や価値観(肥満恐怖、やせ願望、やせていることは美しい、など)、および摂食障害を持続させている思考・信念・信条(完全主義的傾向・2分割思考、など)を明らかにして、これを変えていくことにあります。そこで、この歪んだ自動思考の同定とその吟味について、また歪んだ信念や価値観の把握とその吟味について、少し詳しくみてみることにします。

1. <歪んだ自動思考を同定する>
 まず、患者さんの歪んだ自動思考を引き出して同定します。日常生活で、「過食したい衝動に駆られたとき」「食事を抜こうと思ったとき」「体重を測定しようとしたとき」「容姿について何か言われたとき」に生じた考えを記録してもらいます。そして患者さんに、その時どのように感じたか、思ったかについても尋ねます。また、患者さんが避けている食べ物を与えられたり、体重測定を求められたりしたとき、どのような考えが頭に浮かぶかについても尋ねます。こうして患者さんの自動思考を引き出していきます。摂食障害の患者さんによくみられる自動思考には、「一度食べ出すと止まらない」「食べ物に対する自制心を失っている」「どうでもよいと諦める」「すぐに吐いてしまわないと太る」といった他に、「私は太っている」「体重を減らさなければならない」「ダイエットしなければ」「また同じことをしてしまった」「明日から過食をやめよう」など、多くの自動思考が認められます。 2. <歪んだ自動思考を吟味する>

  • (1)その自動思考の意味を明確化します。たとえば「私が太っている」というのは、体重が重いことなのか、自分の目からみて太っていることなのか、他人の目からみて太っていることなのか、意味を明らかにします。
  • (2)その自動思考の妥当性を支持している根拠は何か考えてみます。たとえば、体重が少し増加して肥満したと考えるとき、過去に体重が増加して肥満になったことがあったことなどです。
  • (3)その自動思考の妥当性を疑わせる根拠を考えてみます。体重が少し増えたのを太っていると思うとき、実際は少し増えただけで肥満ではない、ということがその反証となります。この中で、患者さんの2分割思考、選択的抽出、過度の一般化などの認知の歪みが明らかになります。
  • (4)自動思考に代わる現実的妥当な結論を得ます。実際の場面で、今までの経過により得られた結論が、有効に機能することを確認します。

3. <歪んだ信念や価値観を把握する>
 体型や体重に関する歪んだ信念や価値観が、患者の行動に影響を与えています。その例を以下にあげてみます。
  • ・「私はやせねばならない」という価値観には、「やせは美と成功、幸福」を意味しています。
  • ・「太るのは避けねばならない」という価値観は、「太ることは失敗、醜い、不幸」を意味しています。
  • ・「わがまま」という価値観は、「弱さ、悪い」ことを意味しています。
  • ・「セルフコントロール」という信念は、「強さ、鍛錬、良い」ことを意味しています。
  • ・「完全に成功しなければ」という考えは、「まったくの失敗である」ということを意味しています。

4. <歪んだ信念や価値観を吟味する>
  • ・歪んだ信念や価値観の意味を明確化します。
  • ・歪んだ信念や価値観の妥当性を支持している事実と論拠を整理します。
  • ・歪んだ信念や価値観の妥当性を疑わせる事実と論拠を同定します。
  • ・これらをもっているときの有益性を認識します。
  • ・これらをもっているときの不利益性を認識します。
  • ・歪んだ信念や価値観の生じている源を明確にします。
  • ・結論を引き出します。たとえば、体型や体重によって人は評価されてはいけないし、またセルフコントロールはある程度望ましいが、これを全てに要求することは問題であるなどです。
15~16回目の面接

 前回の面接を継続しながら、治療が終わりに近づいていることも知らせます。また、患者さんがこの治療について感じていることを話してもらいす。喜ぶ患者さんもいれば、不安に思う患者さんもいます。しかし治療者は、これは患者さんが独り立ちするためのプロセスであることを伝えます。







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