認知行動療法29

統合失調症/Schizophrenia

その他疾患の認知行動療法

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

トラウマに悩まされるPTSD

 事件や事故に強いショックを受けた人が、それ以来トラウマを抱いて、つらく恐ろしい記憶を繰り返す状態をPTSD(心的外傷後ストレス障害)といいます。この不安障害も、認知行動療法によって、トラウマを全体的にとらえなおすことによって、症状を軽減することができます。  トラウマとは、事件や事故、また災害などによって生じた精神的外傷のことで、後遺症として残るような心理的なショックや体験が特徴です。自分の心身の外にあるものから受けたダメージが、トラウマとなって症状を引き起こすもので、独特なメカニズムから生じる不安障害です。ふとしたことで、事件や事故のことを生々しく思い出し恐怖を感じますが、このトラウマを、実態よりももっとひどいものだとネガティブに考え、いまなお恐怖が続いていると感じます。  このPTSDには、事件や事故のことをありありと思い出す「再体験」、不安が消えずつねに緊張する「過覚醒」、恐い場面を過剰に避けたがる「回避」の三つの症状があります。こうした症状から、不安、恐怖、罪悪感、恥ずかしさなどを強く感じ、加害者よりも自分を責める気持ちが強くなります。何ごとにも警戒して、以前と同じように活動ができなくなり、日常生活にも支障をきたします。トラウマは、自分をこんなふうにしてしまった恐ろしいものだと感じ、もう立ち直れないと感じるようになります。

記憶を再構成する

 PTSDの治療では、記憶の再構成を行います。過去の記憶を思い出すのは辛いことですが、それは「あくまでも記憶にすぎないので、恐れることはない」と考えられるように認知を修正することから始めます。事件や事故の記憶をさけるのではなく、できるだけ詳細を思い起こします。バラバラになっていた記憶をつなぎ合わせ、記憶のアップデートを繰り返すことによって、出来事の詳細が見えてきて、ホットスポットが明確になってきます。  悪夢やフラッシュバックとして再体験し、トラウマ記憶の中でもっとも辛く苦しい部分である「ホットスポット」が、記憶全体のなかでどのような位置にあるかを把握すると、記憶が整理できて、気持ちも整理されます。事件や事故は不可抗力であって、自分の責任ではないと理解できるようになり、記憶を再構成することができるのです。

持続エクスポージャー(PE)

 認知の再構成と同時に、行動治療が重要になってきます。その最も有効な治療法とされているのが「持続エクスポージャー」で、これは以下のような理論モデルから成り立っています。つまり、PTSDのトラウマ記憶が、自然に治癒しないのは、その記憶に対する恐怖のあまり、事件や事故などの出来事や状況、記憶に対して回避しているからで、それを回避することによって、ますます恐怖の記憶が維持され、悪化していくというものです。したがって、それらの状況や出来事、記憶にわざと触れていくことが、最終的に処理可能な普通の記憶のように自然治癒していくのです。  持続エクスポージャーでは、事件や事故の記憶を、最初から最後まで順を追って話し続けます。感情を抑え過ぎないように、また流されないようにして、繰り返し語り続けます。そのうちに、記憶を怖がる必要はないということがわかってきて、自信がついてきます。記憶がよみがえるからといって、ニュースや新聞を見ないとか、事件や事故の現場に行かない、などといった回避行動はしないようにします。不安に立ち向かうことが重要なのです。持続エクスポージャーの第一回目のセッションでは、患者さんにおいては不安と恐怖と絶望感でいっぱいですが、数回のセッションを経れば、出来事は出来事として消化されてきます。もちろん嫌な出来事であるとの認識はありますが、激しい苦痛や感情の起伏はなくなってきます。  トラウマ記憶を思い出すのは非常につらく、目をそむけたくなります。しかし、目をそむけ続けると、結局、心の傷は治癒せず、いつまでも生活に支障をきたすことになります。つらい記憶を整理して正確にとらえ、過度の不安を解消するために認知行動療法が活用されるのです。最初のセッションは45分ぐらい、2回目のセッションは40分くらいかかります。セッションの内容はテープに録音して、ホームワークとして毎日家で聞くようにします。次回のセッションの初めに、何回聞いたか確認します。このようなセッションを通常9回ぐらい行います。患者さんの症状や状況にあわせて、セッションの回数や内容は異なることもあります。この治療法は、症状を消し去るのではなく、軽くするための方法なのです。







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