認知行動療法27

統合失調症/Schizophrenia

『強迫性障害』の認知行動療法

治療効果が高い療法

薬物療法と併用で効果をあげる

 強迫性障害における認知行動療法は、薬物療法と並んで効果が高い治療法です。認知とは「考え方、思い、言葉、視覚的なイメージ」のことで、行動とは「体を動かす」ことです。これを強迫性障害にあてはめると、強迫観念が認知に生じる症状であり、強迫行為が行動に現れる症状です。たとえば汚染恐怖の人の場合でいうと、汚染されると思う強迫観念が認知の症状で、それによって過剰に手を洗ってしまう強迫行為が行動の症状になります。強迫性障害の治療は、この「認知」と「行動」の両面に働きかける技法です。認知への働きがうまくいくと行動面も改善され、行動面が改善されれば、強迫観念である認知や不安や恐怖の感情も改善されます。これらは相互に影響しあっているのです。  また、認知行動療法は単独で行う場合もありますが、多くの場合、薬物療法と併用されることが多いです。薬を使って不安を軽くしておくことによって、認知行動療法の課題にとりくみやすくなります。薬物療法と認知行動療法はまったく別のものではなく、薬を飲みながら生活の中でチャレンジしていきます。お金に触る、つり革にさわる、鍵の確認は1回だけ、トイレの後の手洗いは石けんを使わない、ドアノブにさわるなど、毎日の暮らしの中で、できなかったことを少しずつ出来るようにしていきます。

「学習理論」に基づく治療法

 「学習理論」というのは、その人の問題のある考え方や行動は、それまでの生活体験の中で誤った学習をしてきた結果だととらえる理論です。それを正しく学習し直して、考え方や行動を変えていこうというものです。認知行動療法は、この「学習理論」をふまえた治療法といえます。

玄関のドアにきちんと鍵がかかっているかが気になり、何度も確認する症状がある。

医師や治療者に正しい知識や情報を提供してもらって、一緒に行動実験をし、「心配する必要はないかもしれない」と考えるようになる。

確認行動をしないで、がまんする練習をくりかえして行う。

確認しないでいることへの不安に、だんだん馴化(徐々に慣れていくこと)していく。

 患者さんが、強迫行為にかりたてられるのは、「なにかしなければ不安が強まる」という実体験ですが、不安から逃れようと強迫行為をくりかえすと、ますます恐怖や不安が高まるだけです。逃れようとしないで、がまんしていれば次第に慣れてきて、不安が和らいできます。そうした体験をつんでいけば、「逃げなくても平気」という正しい学習をすることになります。

責任感の拡大が認知のゆがみ

 手の汚れや玄関の施錠、また不吉な思いつきなどに心をとらわれ、なにか行動せずにはいられなくなる状態を、強迫性障害といいます。ふと、不安になることは誰にもあり、多くの人はそれをあまり深く考えず、大抵はやりすごすことができます。しかし、強迫性障害の人はそれをやりすごすことができず、何かしなければいけないという強迫行為にかられてしまうのです。  強迫性障害の発症メカニズムを、もう一度確認しておきます。まず、「手が汚れていないかどうか」「家の鍵をしめたかどうか」などが気になること自体は、誰にでもあることで、これを「侵入思考」といいます。ところが強迫性障害の患者さんの場合は、この「侵入思考」に対して、非常に強い責任感を感じるようになり、その範囲が拡大して必要のないところまで責任を感じるようになります。手がきれいで、施錠も十分確認できているのに、さらに責任を感じ、不安という「侵入思考」に反応して、すぐに行動しなければ不安でたまらなくなるのです。そのまま反応しなかったら、後悔の念や罪悪感を抱くことになるため、手がきれいであっても、石けんをつけて何十回も手を洗ったり、何回も戻っては施錠を確認したりする儀式行動(反応)をとるようになるのです。「こんなに不安になるのだから、行動しなければ」と考え、「行動したら安心できた」という思いに変わり、反応したことを肯定します。この負の連鎖が、認知の歪みを増していくのです。  そこで、この認知のゆがみである「反応しなければならない」という誤解を、「反応しなくてもいいのだ」、または「心配する必要はないのだ」という正しい認知に変える必要があります。この場合の認知は、侵入思考とその侵入思考を拡大解釈しようとしている責任感ですが、修正しなければならない認知は責任感の方です。責任感を修正すれば、侵入思考は気にならなくなり、放置しても恐ろしい事態にはならないことが理解できます。この修正技法が「曝露反応妨害法」と言われるもので、不安と思うものに触ったり聞いたりして不安になっても、反応しないように練習します。つまり反応を抑える治療法です。

不安階層表の作成と治療の流れ

 考え方や行動を変えていくためには、自分の状態を知ることです。自分の症状を客観的に把握することによって、治したい症状を具体的に整理することができます。どんな時にどれくらい不安になるのか、自分で自分の症状をチェックしてみます。そして、何ができないのか、何を出来るようにしたいのか、具体的な治療の目標を考えてみる必要があります。セルフモニタリング(自己観察)といって、専用のシートを自宅に持ち帰り、症状のあった日時、症状の内容、苦痛の度合いなどを具体的に記入します。このように記録することで、目標と治す方法がみえてきますし、治療への意欲も高まってきます。  苦痛の度合いを表す尺度としては、「主観的不安尺度表=SUD」、または「不安階層表」などが用いられます。不安・苦痛などがまったくない状態を0点、最も不安や恐怖を感じる状態を100点として、どんな時にどのくらいの不安や恐怖を感じるか、数値にして示します。たとえば「電気を消して、一度確認しただけで部屋を出る…30点」「台所のガスを消して、元栓を一度確認しただけで外出する…50点」「家族が家にいないときに、一度鍵を確認しただけで一人で外出する…100点」などのように、項目をリストアップして数値化し、それを不安・恐怖が強いものから弱いものへ順に並べます。  ここで、認知行動療法を始めるまでの、標準的な流れを紹介しますと、最初に初期評価としての「アセスメント」があります。治療者と患者さんで、何回か面接を行い、治療者は患者さんからの訴えを十分に聞き、患者さんの抱えている状況を把握します。またそのとき、セルフモニタリング(自己観察)といって、患者さんに症状の様子を自宅で記録してもらい、それを評価に利用したりします。次に行うのが「心理教育」です。これは認知行動療法の治療を始めるにあたって、患者さん本人や家族に対して、病気と治療法についての説明が行われます。この心理教育が終わったら、次は「治療計画作成」です。治療者と患者さんで治療計画を作成しますが、どのような順番で治療を始めるかを検討します。出来そうなものから始めることもあれば、生活に支障をきたしているものから優先して行うこともあります。治療計画ができたら、いよいよ治療開始です。







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