認知行動療法25

統合失調症/Schizophrenia

ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)

先入観を捨てる

 ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)は、「社会生活技能訓練」といって、一般に、心の病気をもった人が、社会復帰する際に受ける訓練のひとつで、精神科のデイケアなどで行われています。社交不安障害の人の中には、人とのコミュニケーションが苦手で、対人関係を避けがちな人が多いです。人づき合いを円滑にするソーシャル・スキル(社交術)を身につけることは、対人場面での不安や緊張を和らげるうえで有効な方法といえます。  一般に社交下手な人は、人と人とのかかわりに対して、もともといいイメージをもっていない場合が多いです。「みんなに会っても、どうせ自分だけが浮いてしまうだろう」「会っても、会話のきっかけがつかめないのではないか」「人と会うことが煩わしい」「自分は人に溶け込めない」などといった否定的な考えをもっています。他人と良い人間関係をつくるには、こうした先入観をまずすてることから始めます。そして、肯定的なイメージを重ねるトレーニングがなによりも重要となってきます。「人と会話をすると、楽しいだろうな」「自分の知らない話をたくさん聞けて、世界が広がりそうだ」「話し友達がいることは、いいものだ」など、人付き合いを楽しむ自分をイメージすることです。

コミュニケーションの取り方

 まず、コミュニケーション力をつけるには、「聞き上手になること」、「自分の考えを伝えられるようになること」が2つの重要なポイントです。話すことに自信がもてない人は、まず聞き上手になることから始めます。聞くということは、相手の話に集中することですので、自分への集中(不安や体の変化など)が和らぐことにもなります。「聞き上手になる」には、①相手の話をよく聞く、②ただうなずくだけでも、相手は話しやすくなる、③「そうですね」という相づちを入れると、さらに相手は話しやすくなる、ことを知ることです。  次に、人の話を聞くことができるようになったら、今度は自分の言いたいことを、相手にうまく伝えられるようになることです。「自分の考えを伝えられるようになる」には、①「こんなことを言ったら笑われる」といった思考パターンをやめる、②相手の反応について、あれこれ考え過ぎない、③話すときは、穏やかに話す、④伝えたいことは、できるだけ具体的に簡潔に話す、などに心を配ります。このほか、声の調子や大きさ、相手との距離の取り方、会話の間やタイミングをつかむ、表情をつくる、挨拶をする、などの訓練も必要になります。

社交術は笑顔と姿勢で決まる

 社交術は、第一印象で相手に友好的な印象を与えられるかどうかで、その後の展開が決まってしまいます。好印象を与えるポイントは「笑顔」と「姿勢」です。ところが、人とのコミュニケーションが下手な人には、共通した問題点があります。「相手を見ない」「こわばった表情をしている」「背中を丸めてうつむいている」「まばたきばかりしている」「体を相手に向けていない」「全身を傾けている」「腕を組み、足を組んでいる」などの姿勢や表情です。この体全体が発しているメッセージは相手を拒否しているメッセージで、「溶け込みたくない」「声をかけないでほしい」と言っているのと同じです。これでは、相手も近づきたいとは思わないでしょう。  人と良いコミュニケーションをとろうと考えるならば、まず自分自身から相手に対し、「あなたを受け入れます」というメッセージを、体全体で発することです。最も効果的なメッセージは、「笑顔の表情をする」ことと、「リラックスした姿勢」をとることです。対面したときの第一印象は、ほんの数秒感で決まります。相手の顔を見るなり、自分からニッコリ微笑むのです。自分の心を開いた友好的な態度が、相手もまた心を開いて応じてくれるのです。  友好的な表情や姿勢というのは、「相手の方に顔を向け、できれば顔を見るようにする」「顔はリラックスした表情をつくり、口角を少し上げて笑みをつくる」「背筋を伸ばして、体を相手のほうに向ける」ことが、相手を受け入れる姿勢になり、コミュニケーションはここから始まるのです。  特に笑顔をつくれるかがポイントです。そのためには、鏡の前で笑顔の練習をするのも方法です。豊かな表情は、顔の筋肉を柔軟に動かすことから生まれます。鏡の前で、目や眉、頬や口を大きく動かして、いろいろな表情を作ってみましょう。笑顔をつくる練習は、前歯で軽くストロー(割り箸でもよい)をくわえ、口角を引き上げるようにして、そのままの状態からストローを外せば、やさしい笑顔ができあがります。口角を引き上げるには、頬の筋肉まで動かすようすれば出来ます。また、リラックスした姿勢を作るには、ゆっくりした呼吸をして、肩の力を抜きます。腕組みをしたり足を組んだりしないことです。近づいてくる相手に対して、体と顔をまっすぐ向けて、微笑みます。これで「あなたを歓迎します」というメッセージを送ることができます。  次に、会話もコミュニケーションをはかる上で大事な要素になります。ただし、社交術の観点からすれば、会話の内容よりも、スムーズな言葉のやりとりの方が重要です。何か面白いことを言わなければならないとか、話題を何にするのかということは、さして重要なことではありません。会話は、相手があってこそ成立するものです。自分一人だけで喋り続けようとせず、まず相手の話に耳を傾け、うなずくだけで会話は成立します。また、会話の最中の視線は、ときどき目を合わせるくらいが丁度良いでしょう。まったく目を合わせないのも、じっと目を見続けるのも、相手に居心地の悪さを与えてしまうことになります。良い聞き手こそが、気持ちよい会話を続けるテクニックなのです。







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