認知行動療法24

統合失調症/Schizophrenia

エクスポージャー(曝露療法)

不安な場面に自分を慣らす

 社交不安障害への認知行動療法で、必ずといっていいほど用いられるのがこのエクスポージャー技法です。一言でいうと、あえて苦手な状況に自分の身を曝して、不安や恐怖に対して慣らしていく方法で、曝露療法ともいいます。不安や恐怖をできるだけ避けたいと思うのは普通ですが、社交不安障害においては逃げてしまうと、ますます不安や恐怖は増大していきます。たとえ恐怖を感じても、命に危険が及ぶような状況でないかぎり、その場にとどまり続ければ、脳は「これは、それほど脅威ではない。大丈夫だ」と判断して、不安や恐怖感を徐々に和らげていくものです。どんなに強い不安でも、時間の経過とともに不安は自然におさまっていきます。しかし、回避行動をしていると、その場では不安はすぐに治まるものの、不安が完全になくなったわけではないので、また起こるのではないかという不安が常に持続していることになります。  ところが、逃げずに向き合っていれば、「苦手だ」「不安だ」「恐い」「うまくいくわけがない」と思っていた感情が、「不安はあるものの、耐えられないことはない」「意外と大丈夫だ」という感覚を、身をもって体感することができるのです。このエクスポージャーを繰り返し実行することによって、刺激に対する慣れが生じ、予期不安も軽減して、回避行動をとらなくてもすむようになるのです。安易に回避していると、かえって恐怖感が増して、自信をつける機会を逃すことになります。

エクスポージャーの進め方

 恐怖に慣れるといっても、いきなり一番自分が苦手としている状況に直面するというわけではありません。不安や恐怖の程度は、人によっても異なり、状況によっても違います。まず自分はどんな場面において恐怖を感じているのか、その不安度を軽い方から重い順にリストアップして並べてみます。この「エクスポージャー階層表」は、治療者と患者さんが話し合って作るとよいでしょう。

【エクスポージャー階層表】(一例)

項目不安度
駅のプラットホームに立つ。10
近くの個人病院に行く。20
デパートのエレベーターに乗る。25
賑やかな繁華街を1人で歩く。35
ショッピングモールで、知らない人に道を尋ねる。40
友達とファミリーレストランでランチをする。50
数人の同僚と大きなレストランで食事をする。65
親友と映画を見に行く。70
人が大勢のっている電車に乗る。85
高速道路を運転する。100

 次に、自分はどんな点を克服したいのか、具体的に考えてみる必要があります。漠然とした目標では、どのように行動してよいのかわかりませんので、まずは具体的な目標を定めます。

《具体的な目標の一例》

  • ○ 友達の結婚披露宴に参加して、周りの人と会話しながら食事をしたい。
  • ○ レストランのテーブルで、食事をしたい。
  • ○ 10人以上の会議で、発言出来るようになりたい。
  • ○ 電車に乗って、座席に座ってみたい。
  • ○ 合コンに参加して、初対面の人と5分くらい会話をしてみたい。
  • ○ その他…。

 具体的な目標が設定されたら、その目標を数段階に分けて、比較的抵抗なく臨める状況からエクスポージャーを始め、徐々に難しい課題へと進めていって、最終的に目標が達成できるようにします。恐怖に慣れていくには、「苦手だけれど、頑張ればできるかもしれない」というレベルから始めることが大事で、いきなり恐怖の強い課題に取り組んで、治療に失敗することもあるので、治療者と相談しながら課題を一つずつ克服していきます。また、一つの課題を克服するために、数回かけて行うことも必要で、繰り返して実践することによって、恐怖や不安の強さや時間は、次第に小さくなってきます。実践に当たっては、状況に応じて課題の変更や立て直しも行います。エクスポージャーの効果を高めるためのポイントを挙げておきます。


  • 1. 課題となる状況の設定は、自分でよく吟味して行う。
  • 2. 不安をなくすことを目標にしない。
  • 3. 1回で慣れることを期待しない。
  • 4. 短い間隔で何回もくり返す。
  • 5. クリアできたら、自分で自分に褒めてあげる。







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