認知行動療法23

統合失調症/Schizophrenia

認知修正法

一度、立ち止まって考える

 社交不安障害に悩む人には、きまって「考え方のクセ」があります。思い込みともいえるそのクセが、不安な感情を呼び起こし、回避行動を生み出しているのです。ある場面に対して不安な感情が起こるのは、その場面や出来事に原因があるのではなくて、その人がその場面や出来事をどのように受け止めるか、つまりその人の認知の仕方に原因があると考えられます。  例えば、「人前で上がったら、人はみな私のことを変な人だと思うだろう」と考えたとします。そのように考える背景には、「私は、人前でうまくやらなくてはいけない」「人に好かれなければ、私には価値がない」という思い込みがあります。そう考えただけで、緊張し不安になります。「その不安な様子を相手に見せたら、私は嫌われてしまう」と思うと、さらに緊張と不安が高まります。そして、顔が赤面し、口元がこわばり、額から汗が出てくると、緊張と不安と動揺がいっそう高められて、ついには「私は、変な人だと思われている」と考え、「私はダメな人間だ」と決めつけてしまいます。  この思考パターンは、本当に正しいのでしょうか?一度立ち止まって考えてみる必要があります。「もしかしたら、みんなは私にそれほど関心をもっていないのではないか」「他の人でも緊張することがあるので、少しぐらい上がっても変な人だとは思わないかもしれない」と考えることができれば、クセになっていた誤りに気づくことができるかもしれません。つまり、他人からみた自分へのイメージと、自分が考えている自分へのイメージに、大きなズレがあるということです。このズレが、認知の誤りとなって、考え方のクセになったり、思い込みになったりしているのです。

社交不安障害の人に多い思考パターン

 自分のいつもの考え方を、一度検証してみる必要があります。そこには、独特な考え方のパターンがあることに気づきます。社交不安障害の人に多い思考のパターンをまとめると、以下のような項目にまとめられます。

① 全か無かの考え(オール・オア・ナッシング)
物事を両極端に考えて、全か無か、白か黒か、すべてOKかすべてダメかをつけたがるクセがあります。ちょっとでもミスしたり、良くないことがあると、「すべて失敗だ」と考え悲観的になります。

② 長所の過小評価
うまくいったことでも、「こんなことはたいしたことではない」と過小評価します。

③ 短所の過大評価
自分が思い通りにならなかったことや、他人のちょっとした反応を過大に評価し、思い詰めてしまう傾向です。

④ 「~すべき」思考
「自分はこうすべきだった」と自分の行動を自分で制限し、少しでもその基準から外れると「自分は価値のない人間だ」と自分を責めてしまいます。いつも完璧を求める思考です。

⑤ レッテル貼り
「自分はダメな人間だ」「私は嫌われ者だ」と、すぐに自分で自分に否定的なラベルを貼り、それを繰り返しイメージすることで、さらに悲しい気持ちになっていきます。

⑥ マイナス化思考
やってみないとわからない場合でも、「うまくいくわけがない」とマイナスに考えます。また、うまくいったことや自分の長所があるのに、失敗したことや自分の欠点、また苦手なことばかりを考え、否定的にとらえます。

⑦ 結論の飛躍
たとえば「私が話している時に、相手が笑ってくれなかったのは、私を嫌っているからだ」と、確かめずに、また根拠もないのに信じ込んで、結論をだす場合です。

⑧ 過剰な自意識
他人の目が常に自分に集中しているように感じたり、自分の行為が他人にいつも不快感を与えたりしていると思い込んでしまうことです。

⑨ 感情的な決めつけ
その時の自分の感情だけで、その場の状況を判断し、決めつけてしまうことです。

思考のクセに気づいたら、別の考え方をしてみる

 思い込みが強くなればなるほど、不安感や身体症状が増してきます。思い込み、つまり認知の偏りを修正することは、この悪循環を断ち切ることになります。頭にすぐに浮かんでくる思いにとらわれそうになった時は、ひと呼吸おいて「他の見方はできないものか」と自分で自分に問いかけてみることが大切です。どんな事柄でも、視点をかえれば別の局面が見えてきます。

  • ○ 自分の考えに、しっかりした根拠があるのか?
  • ○ 別の考え方、見方はできないものか?
  • ○ 恐れている事態が起きたからといって、何か大きな影響や変化があるのだろうか?このようにして自分に問いかけてから、別の考え方をしてみます。今までクセになっていた考え方(自動思考)以外の答えを探してみるのです。視点をひろくして、さまざまな角度から、できるだけプラス思考で、前向きに考えてみるのです。すると、次のような新たな視点が浮かんできます。
  • ○ 全か無かではなく、その中間もある。白や黒だけではなく、灰色もある。
  • ○ 今はうまくいかなかったにしても、次回は状況も変化して、うまくいくかもしれない。
  • ○ うまくいかなかったことばかりではなく、うまくいった時もあった。
  • ○ 否定的なことばかりが起こると決まったわけじゃない。
  • ○ どういう結果が出るか、やってみないとわからない。
  • ○ 「~すべきだ」なんて、誰が決めたの?
  • ○ 人は他人のことに、それほど関心をもっていない。
認知を修正する技法

 では、「ありのままの現実」と、心の中につくられた「思い込みの現実」とのズレをどのようにして現実的なものへ修正していくか、それにはいくつかの技法があります。ただし、修正方法については、医療機関や治療者によって異なり、さまざまな手法が用いられます。

1. 治療者との対話
治療者と患者さんが一対一で対話し、問答をしながら、考え方のクセや思い込み、またいつもしてしまう思考のパターンに気づき、それが現実に即しているかどうかを検証していきます。記入用のシートを使って行う場合もあります。

2. ビデオモニタリング
実際の会話の場面などをビデオに撮影し、それを客観的に見ながら、現実の自分と相手の反応を確認します。

3. 行動実験
たとえば、レストランなどで実際に食べ物を落として、本当に周りの人がみんな自分に注目するかどうか、確かめる方法です。

4. ロールプレイ
グループで役割を演じ、他の人の反応が、自分が思い込んでいる通りかどうかを検証します。







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