認知行動療法22

統合失調症/Schizophrenia

補助的方法・3〈呼吸訓練〉

 パニック障害の患者さんに共通する特徴のひとつとして、呼吸が浅く、不規則であるという点です。発作の際、ほとんどの場合で息が切れる、うまく呼吸ができない、という症状がみられることから、パニック発作と呼吸は深く関係していることは確かです。そこで、呼吸を強化し、改善する方法として考え出されたのが呼吸訓練で、行動療法の補助的方法として用いられています。呼吸が浅く、不規則な呼吸をしていると、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れやすくなり、パニック発作の身体症状がますます現れやすくなります。したがって、呼吸を改善することは、パニック発作の治療においては、非常に有効な方法となります。  まず、自分が呼吸を1分間に何回するか測ってみます。息を吸って吐き終わるまでを1回とし、時計を見ながら1分間に、何回呼吸をするかを数えます。意識的に呼吸を速くしたり、遅くしたりしてはいけません。治療プログラムの一環として、1分間の呼吸を1日に何回かおこなって記録していきます。

【呼吸記録表】

 午前8時正午午後6時午後10時
日付練習前練習後練習前練習後練習前練習後練習前練習後
         
         
         

《呼吸訓練の技法》

 これは、不安やパニックの最初の徴候が現れたら、まず最初に用いる技法です。過呼吸かなと思ったら、すぐに次の方法を実践してみてください。

  • ○ やりかけていることをやめて、腰をおろすか、何かにもたれかかります。
  • ○ 息を止めて、10数えます。(このとき深く息を吸わないこと)
  • ○ 10まで数えたら、息を吐きます。そして静かに、ゆっくりと、「リラックスしよう」「落ち着こう」と自分に言い聞かせます。鼻を通して息をすることを忘れないことです。
  • ○ 6秒に1回の速さで呼吸をします。つまり3秒間息を吐いて、3秒間息を吸います。これで、1分間に10回呼吸をすることになります。息を吐くたびに、「リラックスしよう」「落ち着いて」と自分に言い聞かせます。
  • ○ 10回呼吸するたびに(1分ごとに)、10秒間息を止めて、それからまた6秒に1回の呼吸を続けます。
  • ○ 過呼吸の症状がすべて消失するまで、この呼吸を続けます。

『社交不安障害』の認知行動療法

回避行動の改善が目的

 社交不安障害の人にみられる典型的な行動パターンは、「回避行動」です。回避行動の背景には、その人なりの考え方があります。社交不安障害で悩む人は、その考え方(認知)自体に、偏りがあったり、強い思い込みがあったりする場合が多いです。この思い込み、つまり認知の偏りこそが、回避行動を生み出すもとになっていることが、これまでの研究で明らかになっています。社交不安障害の人の場合、思い込み(認知)がどのようにして行動パターンを生み出していくか、一つの例として以下のようなものがあります。


① 「自分はうまくいかないに決まっている」(思い込み)
   ↓ 
② 「自分はうまくいくわけがないから、挑戦しない」(行動パターン)


① 「自分の恥ずかしい振る舞いを見て、他人は自分を見てバカだと思うだろう」(思い込み)
   ↓ 
② 「バカにされたくないから、人前に立つことは避けよう」(行動パターン)

不安に対処する方法を学ぶ

 社交不安障害の治療として注目されている認知行動療法は、問題行動を生むもとになっている思い込みを修正し、そのうえで新たな行動パターンを獲得することを目的に進められる治療法です。誰でも、不安に苦しむ自分を変えたいと思っています。しかし、誰かが変えてくれる訳ではありません。自分を変えられるのは、自分自身しかいないことをまず自覚することが大切です。どんな薬であっても、どんな医師であっても、どんなカウンセラーであっても、その人がどう行動し、どう感じるかまではコントロールできないのです。認知行動療法の技法は、自分を変えたいと思う人にとっては、強い見方になってくれますので、焦らず一つひとつステップを踏んで学んでいく必要があります。初めは、専門的な指導者のもとで治療法を学び、その考え方や進め方を習得すれば、あとは自分なりに生活の中で実践していくことは可能です。

《社交不安に立ち向かう4つの方法》

① 認知修正法(認知再構成法)
社交不安障害みられる回避の行動を生み出している「考え方のクセ」、行動の前提となる「認知の偏りや思い込み」などに気づき、その誤った認知を修正する方法です。(詳しくは後述)

② エクスポージャー(曝露療法)
あえて苦手な状況に身を曝すことによって、不安や恐怖に慣れていくための方法です。(詳しくは後述)

③ ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)
人間関係を円滑なものにするための社交術を学ぶことによって、対人不安の軽減をはかる方法です。(詳しくは後述)

④ リラクゼーション(筋弛緩法、呼吸法)
呼吸法や筋肉を弛緩させたりすることによって、心のリラックスをはかると共に、不安への対応力を高めるために、生活習慣全体を見直すことも行います。(詳しくは後述)

《認知行動療法を始める前の手順》

1. 心理教育
治療を始めるに当たって、まず治療者から、認知行動療法とはどのようなものか、またどのような効果が得られるのか、などについての説明があります。これを理解しておくことで、治療にスムーズに入りやすくなります。

2. 初期評価(アセスメント)
どのような状況の時に、どの程度の不安を感じるのか、不安の程度をはかる検査を初めに行います。

3. 治療計画
治療者と患者が話し合ったうえで、治療の目標を定め、症状に合った治療計画を立てます。

4. 治療の実施
治療の実施にあたっては、期間や回数、時間についてきめますが、医療機関によってさまざまです。

《大事なホームワークとセルフモニタリング》

ホームワーク(宿題)
 治療者のもとで学んだ技法を、宿題として出されることがあります。認知行動療法の考え方や行動を、自分一人で、実生活の中で生かすことによって自信がつき、治療効果を上げることができます。  

セルフモニタリング(自己観察)
 ホームワークを行ったときの自分の状態や結果、また苦手な場面にあって感じたことなどをシート(記録用紙)に記録していきます。セルフモニタリングは、治療による自分の変化を確認する作業であり、認知行動療法を進めていくうえで基本となるデータになります。







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