認知行動療法21

統合失調症/Schizophrenia

補助的方法・2〈リラクゼーション・トレーニング〉

 パニック障害のある人は、たいていの場合、緊張状態に置かれると発作を起こしやすい傾向にあります。普段から体が緊張していると、ちょっとした不安や恐怖でも、過呼吸から発作につながっていきます。したがって、緊張状態に陥らずに心身ともにリラックスすることができれば、パニック障害を改善することができることになり、この考え方に基づいた治療法が、リラクゼーション・トレーニングといわれるものです。すなわち、リラクゼーション・トレーニングとは、体をリラックスさせることで、不安やパニック発作の軽減を図ることができる行動療法の補助的方法です。繰り返し練習することで、よりリラックス出来るようになり、突発的な不安やパニック発作に備えます。リラクゼーション・トレーニング単独の治療反応率は56%との報告もあります。  では、自分の体は緊張していないだろうか? 緊張しているとすれば、体のどの部位あたりに緊張を感じるのか、知る必要があります。別表を使って、緊張している部位はどこか、どれくらい緊張しているかセルフチェックします。チェック期間は最低12日間行い、毎日同じ時間帯に記入しますが、出来れば夕食前に行うのがベストです。緊張の度合いは、0(なし)、1(低い)、2(中ぐらい)、3(高い)の数字で記入します。

【筋緊張の評価】
部位1日目2日目3日目4日目5日目6日目7日目8日目9日目10日目11日目12日目
目のまわり
あご
首の後ろ
首の脇
頭のてっぺん
背中
足の付け根
お尻
太もも
ふくらはぎ
上腕
前腕

《漸進的筋リラクゼーションと等尺性リラクゼーション》

 リラクゼーションの方法には、「漸進的筋リラクゼーション」と「等尺性リラクゼーション」の二つがあります。この二つのリラクゼーションは、それぞれ使う場所や使う目的が違います。漸進的筋リラクゼーションは、恐怖の対象にさらされる前に使う方法であるのに対し、等尺性リラクゼーションは恐怖の対象に直面している最中に用いる方法です。また、漸進的筋リラクゼーションはリラックスしていない状態からリラックスを得るための方法で、等尺性リラクゼーションはリラックスしている状態を維持するための方法です。   漸進的筋リラクゼーション練習は、筋肉を順番にリラックスさせる方法です。額→目のまわり→あご→首→肩→背中→上腕→下腕→手→胸→腹→腰→太もも→尻→すね→足先、といった順番に、筋肉を緊張させたり緩めたり(弛緩)させることを繰り返すトレーニングです。   練習方法は、椅子に座って行います。できるだけ頭と肩をもたれさせてくれる座り心地のよい椅子を選びます。適当な椅子がない場合は、背中にクッションをあてて、そこにもたれたりします。仰向けになると眠ってしまうことがあり、眠ると効果がないので、仰向けになって練習はしないほうがよいです。練習の効果を長持ちさせるためには、毎日欠かさず練習する必要があります。  等尺性リラクゼーション練習は、自分が恐怖を感じた時に行うトレーニングです。等尺性という意味は、筋肉の長さが同じままということで、筋肉を緊張させるときも筋肉の長さは同じままなので、他人から見ると一見なにもしていないように見えます。等尺性リラクゼーションの練習で間違いやすいのは、緊張を入れるのが急ぎすぎたり、強すぎたりすることです。優しくゆったりした練習が等尺性リラクゼーションの特徴です。

練習の方法
足の筋肉をリラックスさせる練習 

  • ・小さく息を吸い込み、7秒間息を止めます。
  • ・息を止めている間は、くるぶしのところで足を交差させておき、下になっている足は、上になっている足を持ち上げるようにし、上の方の足は下の方の足を押さえつけるようにし、ゆっくりと両足の筋肉の緊張を高めます。あるいは、息を止めている間に、くるぶしで両足をからめさせておきます。そして2本の足を反対方向に横に引っ張り合うようにして、ゆっくりと両足の筋肉の緊張を高めます。                       
  • ・7秒たったら、ゆっくりと息を吐きながら「リラックスしよう」と自分に言い聞かせます。そして、ゆっくりと筋肉の緊張をゆるめていきます。
  • ・緊張をゆるめたら目を閉じ、そのあと1分間は、息を吐くたびに「リラックスしよう」とつぶやきながら、緊張をゆるめた状態をそのまま続けておきます。
腕の筋肉をリラックスさせる練習

  • ・小さく息を吸い込み、7秒間息を止めます。
  • ・息を止めている間は、両手を向かい合わせにして重ね、膝の上におきます。そして、下の方の手は上の方の手を持ち上げるようにし、上の方の手は下の方の手を抑えるようにし、ゆっくりと両手や両腕の筋肉の緊張を高めます。あるいは、息を止めながら、座ったまま椅子の下側に手を差し入れ、椅子を持ち上げるようにします。または、椅子の後ろ側で手を組んで、両手を引っ張り合いながら、椅子の背にその手を押し当てるようにします。あるいはまた、息を止めながら、座ったまま首の後ろで両手を組み合わせます。そして、頭を後ろに押し付けながら、両手を引っ張り合います。
  • ・7秒たったら、ゆっくりと息を吐きながら「リラックスしよう」と自分に言い聞かせます。そして、ゆっくりと筋肉の緊張をゆるめていきます。
  • ・緊張をゆるめたら目を閉じ、そのあと1分間は、息を吐くたびに「リラックスしよう」とつぶやきながら、緊張をゆるめた状態をそのまま続けておきます。
以下同じ手順で、部位を変えて行う練習

  • 1. 首をすくめて肩を上げながら筋肉の緊張を高め、肩を落としながら腕の筋肉の緊張をゆるめる。
  • 2. 両方のこぶしをぐっと握りしめながら筋肉の緊張を高め、こぶしをひらいて、手のひらを上に向けて両手を膝の上におき、筋肉の緊張をゆるめる。
  • 3. 足首を体側にぐっと曲げて筋肉の緊張を高め、足の甲を伸ばして筋肉の緊張をゆるめる。
  • 4. 背筋をぐっと反らせて筋肉の緊張を高め、背中を丸めて脱力させ筋肉の緊張をゆるめる。
  • 5. 両足の関節を、本来曲がる方とは逆に目いっぱい伸ばし筋肉の緊張を高め、足の関節をゆるめて筋肉の緊張をほぐす。
  • 6. 体の後ろで手を組み合わせ、組んだ手を両方に引っ張り合って筋肉の緊張を高め、手の緊張をゆるめる。

 筋肉を緊張させて、緩めるバリエーションはいろいろ考えられますので、工夫して辛抱強く練習することが大切です。

《リラクゼーションの上達を速めるためのポイント》

  • ① 何回も、何回も繰り返して練習する。
  • ② 緊張が高まっているなと感じたら、いつでもすぐにリラクゼーションの練習をする。
  • ③ 緊張に対しては、リラクゼーションで反応するという習慣をつける。
  • ④ 練習を重ねれば、人が見て分かるような運動をしなくても、手足の筋肉の緊張を高めたり緩めたりすることができる。また人前で気づかれないように練習することは、緊張をゆっくり高め、ゆっくり緩めるコツをつかむのに適している。
  • ⑤ 他人の前で、7秒間緊張を続けることが難しい場合は、少し短い時間でもよい。ただし、その場で何度か同じ練習を繰り返したほうが効果がある。
  • ⑥ 苦しくなったり疲れたりするほど緊張させてはいけない。また、7秒以上緊張を続けるのもよくありません。
  • ⑦ 職場での仕事中や、列をつくって並んでいるときなど、さまざまな場面で緊張が高まってきたときの練習方法をアレンジしておくことも必要。
  • ⑧ 何週間か練習を続ければ、緊張が減って、緊張しにくくなる。自分で自分をコントロールできる感じが得られ、自信につながる。







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