認知行動療法18

統合失調症/Schizophrenia

身体感覚への誤解をとく

 パニック障害の患者さんは、息切れ、動機、発汗、めまいなどのような、ちょっとした体の変化に対して、悪い方向に拡大解釈する傾向があります。誰でも不安になれば感じる正常な身体感覚でも、患者さんにしてみればそれが心臓発作や脳卒中のような一大事の病気と考えてパニックになります。「このまま死ぬのではないか」と強い不安に襲われます。したがって、身体症状をたえず気にし、小さな変化に過敏になります。発作が起きるのがこわくなり、外出や運動をひかえるなどの回避行動をとるようになります。また回避することが、身体症状を抑える方法だと考えたりします。身体の変化を何度も繰り返すパニック発作を起こすと、さらに不安が強まって悪循環し、ついには死の恐怖に襲われるのです。そして強い緊急性や危険性を感じるようになるのです。  パニック障害の背景には、身体感覚への誤解があると考えると、その誤解を特定して客観的に分析し、症状に危険性がないとわかれば不安は和らぐはずです。そこで認知行動療法では、その認知をとらえて、治療技法でもって介入することにより、誤解をといて危険がないことを実感できるようになります。治療を通して、息切れやめまいは誰にでもあることだと認識しなおすと、パニック発作に襲われることは減ってきます。パニック障害に対する認知行動療法の評価点としては、①治療期間が比較的短期である、②治癒率が高い、③再発率が他の治療法に比べて低い、④患者さんにとって問題の理解と治療法の理解が得られやすい、などが挙げられています。

【パニック発作の症状】

(1) 心悸亢進、心臓がドキドキする、または心拍数が増加する。
(2) 発汗。
(3) 身震い、手足の震え。
(4) 呼吸が速くなる、息苦しい。
(5) 息が詰まる。
(6) 胸の痛み、または不快感。
(7) 吐き気、腹部のいやな感じ。
(8) めまい、不安定感、頭が軽くなる、ふらつき。
(9) 非現実感、自分が自分でない感じ。
(10) 常軌を逸してしまう、狂ってしまうのではないかと感じる。
(11) 死ぬのではないかと恐れる。
(12) 知覚異常(しびれ感、うずき感)。
(13) 寒気、またはほてり。

具体的なプログラム内容の狙い

 パニック障害に対する認知行動療法のねらいは、患者さんを取り巻く生活状況と身体感覚が、パニック発作とどのように関連しているのかを学び、発作をコントロールすることができるように援助することです。そのための具体的なプログラム内容をまとめると、次のような点になります。

  • ① 患者さんが抱えている問題を、客観的に理解することができるように、問題点を整理し、自己理解をはかる。
  • ② 症状、とりわけ予期不安と回避行動がどのように獲得され、維持されているかを学ぶ。
  • ③ 適切な振る舞いをどのようにすると身につけることが出来るかを学ぶ。つまり、回避している場面や状況に身を曝す(エクスポージャー)ことによって不安を消去するとともに、そのような場面に安全に対処することを学ぶ。
  • ④ リラクゼーションや拮抗動作法など、不安に対処することができる具体的な対処方法を学ぶ。
  • ⑤ 患者さん特有の認知の修正をはかる。つまり、多くの普通の人に起きている出来事を「危険で最悪の事態である」という誤った考え方や、不安を生じさせる原因となっている「考え方のスタイル」を明らかにし、修正することができるように援助する。
  • ⑥ しばしばパニック発作の引き金となっている「過呼吸状態」を予防する練習をする。また、「死にそうだ」という危険信号となる考え方を、「ちょっと過呼吸になっているだけで、対処できる」という適切な考え方に置き換えることができるように練習をする。
  • ⑦ 将来起こりうる問題に対しても、適切な対処が自分で出来るように自身の向上をはかり、セルフコントロールをめざす。

 認知行動療法の実際にあたっては、まず心理教育が行われます。パニック発作や予期不安、広場恐怖が起こるしくみを理解することから始めます。また、認知行動療法の意義についても、正しい理解が得られるような説明が行われます。次に患者さんは、毎日の自分の状態を観察し、パニック発作の起こる頻度や症状などを記録していきます。これによって、どんな刺激があるときに発作が起こるのか、自分は何を回避しているのか、客観的に見ることができます。さらに、物事に過敏に反応しないように、呼吸法や自律訓練法などの訓練を受けたりします。その後、自分の身体感覚に対する認知に誤りがないか、治療者とよく検討して認知を再構築します。そして最後に、実際に恐れている状況に曝されることによって、誤った学習を修正していきます。

《認知行動療法の一般的な手順》

  • ① 心理教育を受ける。
  • ② パニック症状を観察して記録する。
  • ③ 呼吸法や自律訓練法など、リラクゼーション法の訓練を受ける。
  • ④ 身体的感覚の誤った解釈を是正し、認知を再構築する。
  • ⑤ 恐れいている状況に曝されることによって、恐怖感や不安感を取り除く。

【パニック障害に対する認知行動療法の構成要素】

●患者さんの自己理解と疾患そのものの客観的理解を促進し、治療への動機づけをはかるための心理教育。 【不安に関する認知行動的心理教育】
① パニック発作および不安を感じたときの一般的な変化(不安の継時的変化)を理解する。
② 不安を感じたとき、どのような変化が起きているかを理解する。(不安の3要素である「心理的反応」「身体的反応」「行動的反応」について)
③ 回避行動の獲得と維持(安全確保行動)の仕組みを理解する。
④ 予期不安の発生の仕組みを理解する。 【予期不安の低減と回避行動の消去に関する認知行動的心理教育】
① 不安階層表の作成を通して不安の構造を理解する。
② エクスポージャーの原理を理解する。
③ 認知を修正することの意義について理解する。
④ 逆制止法の原理を理解する。
⑤ 新しい対処行動を獲得する必要性について理解する。 ●不安を自己管理し、適応した対処行動の獲得をねらった治療コンポーネント。
【身体反応のコントロール法の練習】
① リラクゼーション法の導入。
② 拮抗動作法の導入。 【行動と認知の修正(不安管理訓練と対処行動の獲得)】
① 問題点の整理。
② 認知的再体制化法。
③ 破局的な考え方の修正。
④ 自己教示法。
⑤ 思考中断法。
⑥ 選択的注意の振り分け方の練習。
⑦ 自己効力感の増大。 ●予期不安の低減と広場恐怖(回避行動)の消去の核となる治療コンポーネント。
【エクスポージャー法の導入と回避行動の消去】
① 段階的エクスポージャー。
② フラッディング法。
③ ホームワーク・エクスポージャー。
④ 自己強化法。




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