認知行動療法16

統合失調症/Schizophrenia
認知の変化を促す方法


□ 認知を検討し、バランスのとれた考え方を導き出す方法(認知再構成法)
□ 心理教育
□ 新しい考え方、別の考え方の確信度を高める方法(行動実験表の活用)

 集団認知行動療法の中で用いる認知の変化を促す方法として、認知再構成法があります。これは、認知を検討してバランスのとれた考え方を導きだす方法で、個人療法でも集団療法でもよく用いられます。認知再構成法には、ステップ1から3までの手順があり、それに沿ってワークシートを活用しながら進めていきます。ここで大事な点は、考え方の幅を広げて気分を改善することです。考え方の幅を広げるには、参加者同士がいろいろな考えを出し合った方が効果的です。

【認知再構成法の手順】

ステップ1 : 状況とそのときの気分、自動思考の特定
ステップ2 : 自動思考の検討
ステップ3 : バランスのとれた考え方の案出と、気分の変化

【認知再構成法で用いるワークシート(自動思考記録表)】

① 状況② 気分(%)③ 自動思考④ 根拠⑤ 反証⑥ 適応思考⑦ 気分(%)
       
       

 次に大切なことは、認知行動療法の考え方や方法について、またうつ病やその治療などについて、参加者がより理解を深めるための心理教育です。方法としては、構造化されたセッションの内容に沿って、テキスト(他にワークシート、市販の自助本、DVD、コンピュータプログラムなど)を使いながら、認知や行動に関する知識や方法を説明したり、また症状のチェックリストを使いながら自分の状態を把握したりする中で行います。  この時の注意点としては、参加者の状況や理解力に応じた説明に心掛けると同時に、参加者の経験をできるだけ引き出し、経験と認知行動療法の考え方とを結びつけながら説明します。また説明の際は、客観的なデータや根拠をきちんと提示すると、いっそう理解が深まります。さらにワークシートを活用して、自分で書いて確かめるという作業も効果的です。

【心理教育のポイント】


◇ 参加者の理解力や状況に応じた説明をします。
◇ 参加者の経験と結びつけながら説明します。
◇ データなど、根拠を提示しながら説明します。
◇ 実際に自分で書き込むなどの作業を行います。

 認知再構成法によって導きだした、新しい考え方や別の考え方の確信度を高めるために、行動実験表を使って実生活の中で確認するという方法があります。しかし、いざ実験しようとすると、それを妨げるような出来事が生じ、実験できなくなることがあります。従って、実験を始める前に、実験している様子をイメージし、予測される問題が生じる可能性がある場合は、事前に問題が起こったときの対処法を考えておくと、実験が成功しやすくなります。実験の結果、出来たこと、出来なかったことの両方を記入し、吟味するようにします。そして、今回の実験から学んだことを整理し、次の行動につなげます。

【行動実験表】


① 試してみる考え
② 実際に実験すること
③ 予測される問題
④ 問題が起こったときの対処
⑤ 実験結果
⑥ 結果から得られる考えの確信度
⑦ この実験から学んだこと

 集団認知行動療法のプログラムによっては、スキーマの修正までを目指したものもあります。その場合、下向き矢印法を用いることが多くみられます。自動思考の検討を繰り返していくと、その人の自動思考に共通したテーマが見えてきますので、下向き矢印法を用いてスキーマをみつけていきます。共通のテーマ、例えば「能力がない」というテーマがみえてきたら、その自動思考に対して「それは自分にとってどういうことか」「それは他人にとってどういうことか」などの質問を繰り返していく中で明らかにしていきます。

行動の変化を促す方法


□ 問題解決策リストを使って問題を整理し、解決策を導き出す。
□ アクションプランを作成して、実際に行動に移すプランを立てる。
□ 活動記録表を作成して、モニタリングする。
□ コミュニケーションチェック表を作成して、コミュニケーションの状態をチェックする。
□ ロールプレイングを活用して、アサーションを学ぶ。

 問題の解決においては、認知の変化と同時に行動の変化も重要です。集団認知行動療法の参加者の多くは、自分の問題をなんとか解決したいと思いながら、なかなか行動を起こすことができないでいます。行動を阻んでいる背景には、「こんな大変なこと、自分にはとても無理だ」という自動思考があります。そういときの自動思考を跳ね返す方法として、別の考え方を自分に向かって言ってみることで、行動を促すきっかけとなります。

【行動を阻む自動思考を跳ね返す考え】

◇ 気楽にやろう。
◇ まずは方法を知ろう。
◇ ゆっくり、ひとつずつ取り組もう。
◇ 結果にとらわれず、チャレンジの機会ととらえよう。
◇ すぐに解決しなくても焦らない。何が問題なのかはっきりするだけでもよい。

① 問題解決策リスト
問題を整理し、解決策を導きだす方法として、「問題解決策リスト」の作成があります。これは、今自分は何に困っているのか、問題が見えないときに用いると効果的です。このリストの作成においては、ブレインストーミング(枠を定めず、皆で自由に討論し合う中から、独創的なアイディアを導き出す集団思考開発法)が有効です。

【問題解決策リストの活用の仕方】


◇ 不安や抑うつ感に流されて、「今自分が何に困っているのか」という具体的な問題が見えてこない。
◇ 「何もしていない」という感覚が、焦燥感や抑うつ感を強めている。
    ↓
問題解決策リスト
問題の整理、解決策の案出

② アクションプラン  現実的で具体的な行動計画
行動したいことがあっても、最初の一歩が踏み出せないときとか、いろいろと考えているがうまく行動を起こせないときに、アクションプランの作成を行います。プランのポイントは、プランを立てた後、実際に行動している場面をイメージします。しかし、行動を起こせなくなる心配事が生じたら、それに対処する方策を事前に考えておくと、行動に移せる可能性が高くなります。

【問題解決策リストの活用の仕方】


◇ 「実行した、しなくては…」と思う課題は決まっているが、最初の一歩が踏み出せない。
◇ いろいろ試行錯誤してはいるが、うまく実行できない。
◇ いろいろ試行錯誤してはいるが、うまく実行できない。
    ↓
アクションプラン
 現実的で具体的な行動計画

③ 活動記録表
日々の生活リズムや活動状況を、活動記録表に記入することによって、達成感や快感など、気分と活動の関連を把握でき、行動活性につなげることができます。この活動記録表は、セッションの中で説明し、参加者はそれぞれホームワークとして行うことができます。初めに、モニターする項目を決めておき、1時間ごとに実際に行った活動と、その気分の程度を点数化(0~100)して書き込みます。この際、無理にすべての欄に書き込む必要はなく、出来そうな期間帯から書き込めば良いでしょう。また、活動内容もおおざっぱに、一つか二つ選んで書けば良いでしょう。

【活動記録表の作成例】

時間○月○日(月)○月○日(火)………○月○日(日)
午前6~7時睡眠起床(10)………起床(10)
午前7~8時起床(10)洗面・朝食(20)………朝食(20)
午後9~10時入浴(50)入浴(50)………テレビ・入浴
午後10~11時就寝(20)就寝(20)………睡眠
※活動内容と、その時の気分(達成感)の程度を点数(0~100)で書き込む。


④ コミュニケーションチェック表
多くの参加者は、人とのコミュニケーションにおいて問題や課題を抱えていることがほとんどです。行動の一側面として、コミュニケーションが適切にとれるようになることが重要です。そのためには、コミュニケーションの状態をチェック表などを活用して調べ、その後にアサーションの方法を学べるようにすると効果的です。アサーションの方法を学ぶには、セッションの中でロールプレイングを行うとよいでしょう。





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