認知行動療法15

統合失調症/Schizophrenia
参加者の共同関係を築く
参加者の主体性やペースを尊重しながら、それぞれの患者さん自身が抱えている問題の改善や課題解決にむけて、共に取り組む共同関係を築くことが大切です。

 集団認知行動療法では、集団の作用が参加者の認知や行動に関する知識や方法に大きく影響するため、いかにグループ全体が治療的な方向に向かえるかが鍵になります。したがって、患者さんと治療者(スタッフ)の1対1の関係性はもちろん、参加者同士、スタッフ同士の関係性が重要になってきます。関係性で大切なことは、患者さん一人ひとりの主体性やペースを尊重しながら、個々の患者さんが抱える問題の改善や課題の解決に向けて、実証的な視点から一緒に取り組む関係、すなわち共同関係を築くことが重要となります。  そこで、スタッフの役割としては、初めは参加者同士がお互いに知らないことが多いため、参加者の紹介や簡単なレクリエーションなどを通して、相互の不安や緊張感をほぐすことが大切です。また、参加者それぞれに、自分が抱えている問題や症状、現在の不安や緊張などの気分を語ってもらい、それを全体で共有するようにします。参加する患者さんの多くは、集団認知行動療法に参加するまでは、「自分の病気を、周囲に理解してもらえない」「誰にも相談できない」といった孤独感をもっています。最初のセッションで、自分と同じような問題を抱えている他の患者さんと出会うことで、安心感をもてるようになります。そこを表現できるように促すことも大切です。さらに、患者さん同士の会話の橋渡しをして活発に話し合える雰囲気づくりをし、その中で病気や治療などに関する情報交換をしやすくすることも大切です。このことは、特に集団認知行動療法の初期のころに必要なことで、その後のセッションに影響を与えます。  また、スタッフはセッションの進行に伴い、参加者の経験をできるだけ引き出して、それを参加者同士が、他者の経験を参考にするように伝えることも重要です。最初は、「自分の経験なんて、たいしたことはない」「こんなことを話しても役には立たない」と、参加者の多くは思っていますが、自分が話した経験を他者が参考にして行動に移すことで、経験を話した患者さんにとっては「自分の経験が役に立った」と感じ、大きな自信につながることがあります。また、参考にした患者さん側からすれば、同じ病気の人から聞いた経験は、専門家が同じ内容を話す場合よりも、説得力があって受け入れやすく、実際の変化にもつながります。このようなつながりが、共同関係を強めていくのです。  さらにまた、参加者が話すときは、話す時間が均等になるように心掛けることが大切です。ある人は、自分の経験ばかりを何十分も話す人もいれば、ある人は、一言二言しか話さない人もいます。こういう状態がいつも続くと、参加者の間に不公平感が生じ、関係性が崩れることがあります。話す時間や回数などは、できるだけ平等になるように気を配ることも必要です。特に、話が長過ぎたり、話す内容がセッションの目的からそれるような場合は、「ちょっとお話をまとめますね」と言って、途中で声をかけ、話の内容をまとめたり、セッション内容を整理し直すことも必要です。  またグループ内に溶け込めない患者さんがいる場合は、個別に面接して、どのような思いや気持ちで参加しているのか聴くことも大切です。もし、他の参加者との関係で、困っているようなことがある場合は、適切に対処することも必要です。構造化されたセッションであるため、基本的に話す内容はある程度決まっていますが、経験をなかなか話せない患者さんに対しては、積極的に働きかけたり、逆に活発に話し合えている場合は、適宜話をまとめて、聞き役になることも必要です。

《協同関係を築くためのポイント》


○ 集団療法参加への不安や緊張をほぐします。
○ 抱えている問題や課題、考えや気持ちを共有します。
○ 参加者同士の会話を活発にします。
○ 参加者がお互いに情報交換をしやすくします。
○ 参加者それぞれの経験を引き出します。
○ 他者の経験を参考にするよう伝えます。
○ 参加者それぞれが均等に話せるようにします。
○ 集団に溶け込んでいない参加者には、個別に対話をします。
○ 参加者の状況に応じて、スタッフの話す内容や量を調整します。

自問を促すコミュニケーション


□ セッションに入る時、各参加者との間で目標を共有し、終了後は達成状況を確認します。
□ ソクラテス式質問を活用し、各参加者の自問を促します。
□ 参加者間で、認知や行動に関する発言を活発にし、気づきを深められるようにします。
□ 参加者の良い点、できたことに対し肯定的なフィードバックをします。

 まず、セッションに入る前に、スタッフは各参加者の集団療法への参加の動機や期待を確認します。「どうして参加したいと思ったのか」「参加して、どうなりたいのか」などについて十分に話を聞き、目標を共有することが重要です。同時に、スタッフ側からも、集団認知行動療法の目的や実際の進め方などについて説明し、相互に理解し合っておくことです。そうすることが、参加の継続にもなり、認知や行動の変化にもつながります。そして、次の治療につなげるためにも、セッションごとに達成状況を確認し、終了後に面接を行うと良いでしょう。  認知行動療法では、面接や会話の手法として、ソクラテス式質問を活用します。一般的には、オープン・クエスチョン(開かれた質問)といって、自由に回答できる質問方式を行います。「今日の調子はいかがですか?」「昨日は何をしていましたか?」などの質問がこれに当たります。これに対し、ソクラテス式質問というのは、古代ギリシャの哲学者・ソクラテスが、人々と対話する際に用いた質問方法で、内容を特定したクエスチョンを行うことで、ある程度限定された回答が得られるというものです。  このソクラテス式質問を活用すると、参加者の自問を促し、自ら答えを導きだせる質問の仕方ですので、これを適宜用いることによって、参加者自身が新しい認知や行動の仕方を見つけ出せるようになります。ソクラテス式質問の一例としては次のようなものがあります。

  • ◇「最近、落ち込んでしまったとき、どんなことがあったのですか?」
  • ◇「そのとき、どんな気分だったのですか?」
  • ◇「○○という気分のとき、どんな考えが頭に浮かびましたか?」
  • ◇「もし、友人が同じようなことで悩んでいたら、どうアドバイスしますか?」
  • ◇「元気だったころ、同じ状況でどんな見方をしましたか?」
  • ◇「今まで、同じような問題のときどう対処してきましたか?」






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