認知行動療法11

統合失調症/Schizophrenia

治療の手順と手法・7…悪循環を発見してそのパターンを変える

 自分の認知・感情・行動をとらえることができれば、その三つが影響し合って悪循環のパターンが生じていることに気づきます。認知行動療法の治療は、この悪循環のパターンを変えることにあります。では、この悪循環のパターンを生み出している原因はどこにあるのでしょうか。フォーミュレーションした三つの要素のうち、認知の部分を掘り下げていくと、問題のもととなっている「中核信念」があることに気づきます。  たとえば、「人間が嫌いだ」「世間話ができない」「なるべく人を避けて生きよう」「話が下手だから嫌われる」「どうせ、誰にも好かれないんだ」「自分は口下手だ」という患者さんの認知の部分を詳しく見ていく段階で、治療者が「子どもの頃も、同じような場面では同じパターンでしたか?」と聞いたとします。すると、「あの、ぼくは子どもの頃、口下手だと言われ続けたことがあります」と話します。こうして、生育歴を確認したり、過去にさかのぼって情報を集めたりしていくと、そこに問題となっている悪循環のパターンが見えてくるのです。  この悪循環のパターンは、セッションを繰り返していくと、さまざまな問題に共通している中核信念であることがわかります。次のようなケースがそれに当てはまります。

◇出来事・A《偶然、人に出会った》
【認知】口下手だ(中核信念)→【感情】話すのがつらい
              →【行動】会話をしない

◇出来事・B《女性との共同作業》
【認知】口下手だ(中核信念)→【感情】嫌われそうで恐い
              →【行動】一人で作業する

◇出来事・C《昇進のチャンス》
【認知】口下手だ(中核信念)→【感情】失敗しそうで不安
              →【行動】昇進を辞退する 


 このケースでわかるように、「口下手だ」という中核信念こそが、悪循環のパターンをつくりだしている元凶なのです。ですから、このパターンに陥っている患者さんに、治療者は「口下手でも嫌われない、と考えるとどう変わりますか?」と聞きます。患者さんは「口下手でも嫌われるとは限らないのだ」と考えを修正します。この考えを練習していけば、徐々に雑談ができるようになることを理解するようになります。

「悪循環を発見する」

認知の歪みが、不適切な感情や行動を生み出し、歪みがさらに強化され、悪循環のパターンを作り出していることに気づきます。

「対策を考え、実践する」

パターンが把握できれば、対策も自ずと見えてきます。患者さんは治療者の援助を受け、対策を考え、実践の段階に進みます。対策は、思いつくままに行うのではなく、その後も対話や分析を続けて、根拠ある対策を打ち出します。そのためにも、患者さんは治療者と丁寧に話し合う必要があります。そして、対策を実践することにより、認知の歪みを修正し、行動も同時に変えていき、悪循環を好循環に変えていくのです。

治療の手順と手法・8…何かひとつ、治療技法を試す

 悪循環のパターンをとらえることが出来れば、治療の道も半ばです。認知行動療法は、実践的な治療法ですので、あとは問題のある認知や行動を、特別な治療技法を用いて、少しずつ変えていく段階です。治療者と患者さんは、悪循環から良い循環にもどす方法について何ができるか、よく話し合います。そして、治療者が患者さんの問題に合わせて、具体的な治療技法をいくつか提案しますので、その中からテクニックを選び、それをもとにして治療に取り組むようにします。認知や行動を変える治療テクニックには、たくさんあります。初めは一つか二つを試してみて、自分に合わなければ他のテクニックを試します。自分に合った方法でそれを継続して身につけ、いずれは自分一人で認知のゆがみに対処していけるようになることが目標です。

《治療技法》

◇アサーション・トレーニング
 自己表現訓練のことで、自信をもって自分の意見や主張、また感情を表現できるようにする訓練方法です。攻撃的でもない、非主張的でもない、適度な自己表現を練習します。

◇イメージ法
 日頃と違う行動のイメージを具体的に思い描くことによって、新たな視点に気づく方法です。

◇ロールプレイ
 今後とりたい行動を、その役になりきって練習します。治療者や家族にも意見を聞きます。

◇良い点・悪い点の比較
 認知や行動の良い点や悪い点を列挙して比較します。価値観の見直しになります。

◇不安階層表
 行動にともなう不安を0~100の数字で表現します。不安数値の低い行動から挑戦して、生活を立て直します。

◇日記を書く
 チャレンジしたテクニックがどのようにできたか、日記に書きます。自分を励ます記録になります。

◇認知の修正
 完璧主義や、白か黒かの二分思考など、片寄った考え方を変えます。それらに当てはまっていないか確認して、考え方の幅を広げます。

◇呼吸法
 ホットな認知に支配されそうなとき、息を吐いて、頭から体へと注意を切り替えます。

◇コラム法
シートのコラム(枠)内に、認知や感情、行動を書き留めます。枠をつくることで、区別しやすくなります。






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