認知行動療法6

統合失調症/Schizophrenia

自動思考とスキーマ

 うつや不安の根源である認知の正体は、「自動思考」とさらにその奥に潜む「スキーマ」にあると言われています。人間の認知を分析してみると、日頃から意識している考え方のほかに、何気なく思い浮かぶ心の声があることに気づきます。それを自動思考といいます。自動思考は、根拠なく自動的に思い浮かぶ考えで、自分では考えているつもりはないのに、瞬間的に頭に浮かんでくる考えです。「どうせやっても、失敗するだろう」「どうせ頑張っても、自分はダメだ」「どうせ、嫌われるだろう」「今度失敗したら、俺はもう終わりだ」「友達はきっと怒っているに違いない。全部自分のせいだ」「今日もまたつらい。生きている価値がない」などの考えです。  たとえば、会議で資料を作成して報告しなければならない時、「失敗したらどうしよう」「きっと失敗する」という思いが、瞬間的に思い浮かびます。この自動思考は、行動や感情にもすぐに影響を与えます。会議が始まると、緊張感が生じ、あわててしまってミスの連続となることがあります。それは、根拠のない自動思考がつぎつぎと思い浮かび、悪循環に陥ってしまうからです。  認知の内容を詳しくみていくと、認知というのは意外と自分ではコントロールできないものです。自分では意識しているつもりであっても、いざその場になると、自動思考が思い浮かび、それに支配されてしまいます。自分が考えている通りことが運ばず、生活や仕事がうまくいかない場合は、自動思考を疑ってみます。その場合、紙に書き出してみるとか、人に話したりして、自動思考を言葉にしてみることです。言語化することによって、考え方を見直すきっかけになります。頭でもやもや思い悩んでいて、気付かなかった感情や行動が、自動思考の言語化によって明らかになることがあります。認知行動療法では、自動思考から行動への流れ、また感情への流れがどのような影響をおよぼしているのか、そのメカニズムをくわしく見ていきます。  さて、自動思考をとらえることができると、さらにその先に認知の意外な姿が見えてきます。それが、スキーマ(考え方のクセ)と言われるものです。スキーマとは、考え方のクセをつくる設計図のようなもので、中核信念(コア・ビリーフ)とも言われ、自動思考よりもさらに奥深くあって、心の中核にある考え方のパターンのことです。自動思考はこのスキーマから生まれるのです。「自分はダメ人間」というような自己否定的な中核信念があると、それがその人の生き方すべてに影響し、毎日がつらいものになります。自己否定的なスキーマとしてよくあるのが、「自分は何の才能もないダメ人間だ」「いつも人から嫌われ、一人ぼっちだ」「誰かに助けてもらわないと、何もできない」「人はいつも自分を利用しようとしている。人を絶対信じない」「物事が完璧でないと、無意味だ」などです。  認知の中核にある信念、また考え方のクセが見えてくると、それが症状を引き起こしている大きな問題であることに気づきます。こうしてスキーマをとらえることができれば、認知の全体像を掴むことができます。中核信念は、いつも正しいわけではなく、むしろ誤っていることの方が多いのです。そこに気づけば、そこを変えるのが治療であるという認識につながります。凝り固まった考え方、考え方のクセや思考のゆがみを修正していくことで、考え方にはいろいろあることを発見し、柔軟な思考を獲得できるようになります。認知の修正が感情や行動にも相互作用して、よい影響を与えるのです。





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