認知症とうつ病の違い

認知症とうつ病の違い

高齢者のうつ病の特徴

高齢者のうつ病の現状
初老期から老年期にかけては、うつ病になりやすい要因が増えてくる時期で、この時期に初めてうつ病になる人も少なくありません。 統計によれば65歳以上の高齢者の約5%がうつ病にかかっているといわれています。
今後、高齢化が進むことにより、高齢者のうつ病もますます増えていくものと予想されます。 高齢者におけるうつ病発症の引き金として考えられるのが、まず、様々な身体疾患にかかりやすく、それが慢性化しやすいということです。 とくに高血圧や糖尿病、心臓病、脳卒中、そのほかの慢性疾患を持つ人たちの数が増えるため、これらの身体疾患に合併してうつ病にかかりやすくなります。 また、この時期には喪失体験が次々におこるということも、うつ病の誘因としてあげられます。
子どもの独立、配偶者との離別や近親者の死亡、仕事や社会的な地位から退くなど、自分にとって価値のあるものを失う体験や、病気によって従来の身体機能が失われること(歩行障害や手足の不自由さ・痛みなど)も含まれます。 このような喪失体験や孤立感がきっかけとなり、うつ病にかかりやすくなります。
高齢者のうつ病の特徴
高齢者のうつ病の特徴は、主観的に著しい憂うつ気分を訴えることが少なく、抑うつ症状よりも生きがいや興味の消失、漠然とした不安感が症状としてあらわれる場合が多いことです。 不安・緊張・焦燥感、そわそわと片時もじっとしていられない、イライラ感、訴えや要求が執拗で興奮状態になってしまう、といったタイプのうつ病もみられます。
一方で、精神症状が目立たずに、頭痛、腰痛、肩こり、全身倦怠感、食欲不振、めまい、不眠などの身体症状ばかりが目立つ、いわゆる仮面うつ病に相当するものも多く、身体疾患と間違われてしまうことも少なくありません。 ときに、「みんなが自分の悪口をいっている」というような被害妄想や「自分はがんに違いない」というような、実際には存在しない病気を恐れる、心気妄想などを伴うこともあります。高齢者のうつ病で注意すべき点は、認知症との区別、あるいは認知症とうつ病の合併です。
「1日中、なにもせずにボーッとしている」、「動作や反応が鈍くなった」、「説明しても理解が悪く、話が噛み合わない」など、家族に認知症を疑われて、病院やクリニックに連れてこられることがあります。しかし、いろいろな検査や診察をしてみますと、認知症はあったとしても軽度であり、むしろうつ病による症状が主であると考えられる場合があります。
実際、抗うつ薬で治療しますと、活気を取り戻し、笑顔がみられ、動作・反応が速やかになったりします。(仮性認知症) しかし、うつ病が存在していても、認知症もかなりの程度進行している場合も少なくありません。
うつ病が原因で、活動性が落ちてひきこもりがちになったり、不眠のために生活のリズムが狂ってしまったり、あるいは、食欲不振のために栄養状態が悪くなるといったことは、認知症の誘因となり、すでにある認知症をさらに悪化させることになります。 つまり、認知症に先だってうつ状態があらわれることもあれば、認知症のひとつの症状としてうつ状態を呈することもあるので、専門家の診察を受ける必要があります。
高齢者のうつ病の場合、もっとも危険なのが、死んでしまいたいという気持ち(希死念慮)を持つ患者さんです。 わが国の高齢者のうつ病患者さんの自殺率は高いといえますが、現実的にはその多くは専門的治療を受けられず、見過ごされたままの状態にあると考えられます。
高齢者の自殺の特徴としては、自殺の意図が確固としたものであること、サインが明確でない場合が多いこと、体力が衰えていることもあり、既遂率が高いことがあげられます。
注)仮性認知症
高齢者のうつ病の症状として集中力・記憶力・計算力・意欲などの低下や、見当識障害などが目立つ場合、あたかも認知症になったかのような印象を受けることがあります。
うつ病性仮性認知症のテストでは、質問に対して間違った返答をするというよりも「わかりません」と努力せずに答えたり、自らボケ症状を訴えるなどの点が、一般の認知症との違いとしてあげられます。 またうつ病性仮性認知症の症状は、1日のうちで症状の変動があることもあります。 計算力や見当識の障害は、治療によってうつ病が改善すれば回復します。 このように実際の知能低下がないにもかかわらず、あたかも認知症であるかのような症状を示す状態を、仮性認知症と呼ぶことがあります。