統合失調症 薬物治療について-No.3

「定型抗精神病薬」(従来型抗精神病薬)

 定型抗精神病薬は、非定型精神病薬より先に登場した薬で、1952年にクロルプロマジン塩酸塩が最初に統合失調症の治療薬として導入され、半世紀以上が経過しています。定型抗精神病薬には3つのタイプがあり、「フェノチアジン系」「ブチロフェノン系」「ベンザミド系」に分類されます。効果は、主にドーパミン受容体D2に結合して、過剰に作用しているドーパミンを遮断する働きがあります。特に、陽性症状である幻覚や妄想などに対しては高い効果を示し、鎮静作用があります。  しかし、感情の平板化、意欲の低下などの陰性症状に対しては、効果は不十分です。また副作用においても、体がこわばったり手が震えたりするパーキンソン症状、じっとしていられず下肢を動かしたり歩き回ったりするアカシジア、悪性症候群(発熱、発汗、嚥下困難、頻脈、血圧上昇など)といった錐体外路性の副作用が認められます。このほか、自律神経系の副作用(のどが渇く、便秘など)や、女性では高プロラクチン血症によって、月経が止まる、乳汁の分泌などの副作用を引き起こしやすくなります。陽性症状を改善する主な定型抗精神病薬には、以下のような特徴や効果があります。

【フェノチアジン系】
・クロルプロマジン(商品名:コントミン、ウインタミン)
1952年から使われている最も古典的な抗精神病薬で、定型抗精神病薬の代表的な薬のひとつです。主な作用は、ドーパミンやアドレナリン受容体の遮断です。この他、アセチルコリン受容体、セロトニン受容体などに結合して働きます。幻想や妄想などの陽性症状に効果があり、興奮や攻撃性、不安などの鎮静作用にも効果をもたらします。

・レボメプロマジン(商品名:ヒルナミン、ソフミン、レボトミン)
遮断作用は、ドーパミン、アドレナリン、ムスカリン、ヒスタミンなどの受容体において有効です。また、鎮静・催眠作用や、情動の安定作用が高いため、興奮しやすい、よく怒る、攻撃性が強い、不安や焦燥などといった激しい症状を鎮めるために処方されることが多い薬です。一方、幻覚や妄想などへの効果が弱いため、このような症状がある場合は、他の薬と合わせて使われます。服用の際の注意点としては、強い鎮静作用をもつため、眠気、ふらつきなどの副作用に注意する必要があります。また、抗コリン作用があるため、口の渇き、かすみ目、便秘、不整脈、腸閉塞などにも注意が必要です。

・フルフェナジン(商品名:フルメジン)
強力なドーパミン遮断作用がありますが、セロトニン、アドレナリン、ムスカリン性アセチルコリンなどの受容体遮断作用は弱いです。幻覚、妄想、不安、緊張感には有効です。通常の量を使っている限り、鎮静作用は弱く、過鎮静は少ないといえます。この薬は陽性症状が多い急性期によく使われ、また亜急性期から慢性期にみられる陽性症状や陰性症状などの改善にも使われます。注意点は、副作用として錐体外路症状、口の渇き、便秘などがみられます。この場合は、抗パーキンソン薬など、他の薬に変更することで対処は可能です。また、白血球減少、血小板減少、体重増加、血圧降下、女性の月経異常、乳汁異常、悪性症候群、麻痺性イレウス(腸閉塞)、睡眠障害などの副作用が現れる場合がありますので、身体的な対症療法が必要です。

【ブチロフェノン系】
・ハロペリドール(商品名:セレネース、ケセラン、ハロステン、リントン)
抗精神病薬の中でも代表的な薬のひとつで、ドーパミン神経系の活動を下げるとされています。認知症やアルコール依存症のせん妄状態の改善にも使われます。幻覚や妄想の治療に使われますが、反応しない場合もあります。その時は他の薬に切り替えたりします。注意点は、体調が悪くなったり、発熱などがあったりする場合は、服用を止めて、必ず医師に伝えます。また、錐体外路症状が現れた場合は、早めに他の薬に変更します。

・ブロムペリドール(商品名:インプロメン)
より選択的なドーパミン受容体遮断作用があります。ハロペリドールと同じく、幻覚や妄想に効果がありますが、体の動きがおかしくなる錐体外路症状や過鎮静は比較的少なくなります。若い患者さんで病気への意識が少ない人には、抗パーキンソン薬を併用します。年齢の高い人はふらつきに注意する必要があります。

【主な抗精神病薬】

非定型抗精神病薬(新規抗精神病薬)

分類薬品名商品名効果や特徴
SDA系リスペリドンリスパダール幻覚や妄想に有効。錐体外路症状などの副作用が少ない。
 ペロスピロンルーラン幻覚や妄想に有効。陰性症状や神経症状にも効果が認められている。
MARTA系フマル酸クエチアピンセロクエル陽性症状、陰性症状、認知機能の改善。
 オランザピンジプレキサ陰性症状や抑うつ症状の改善。
DSS系アリピプラゾールエビリファイ陽性症状や陰性症状の改善。副作用がすくない。


定型抗精神病薬(従来型抗精神病薬)

分類薬品名商品名効果や特徴
フェノチアジン系クロルプロマジンコントミン、ウインタミンなど鎮静効果。幻覚、妄想、興奮にも有効。
 レボメプロマジンヒルナミン、レボトミンなど鎮静や催眠効果。情動安定作用が高い。
 ゾテピンロドピンなど鎮静効果。陰性症状や認知機能の改善。
 プロペリシアジンニューレプチルなど高い攻撃性に有効。起立性低血圧を起こすことがある。
 フルフェナジンフルメジン幻覚や妄想、不安や緊張感に有効。
 ペルフェナジンマレイン酸塩ピーゼットシーなど錐体外路性の副作用が比較的少ない。
 プロクロルペラジンノバミンなど吐き気、嘔吐などを抑える作用もある。
ブチロフェノン系ハロペリドールセレネースなど幻覚や妄想に対する作用が強い。不安や緊張感に有効。鎮静作用は弱く、錐体外路性の副作用が起こりやすい。
 ブロムペリドールインプロメン幻覚や妄想に効果がある。不安や緊張感をやわらげる。
 チミペロントロペロン○○○○○○○○○○○○○
 スピペロンスピロピタン○○○○○○○○○○○○○
 モペロン塩酸塩ルバトレン○○○○○○○○○○○○○
ベンザミド系スルピリドドグマチールなど高用量では統合失調症の陽性症状を抑える作用がある。低用量では抗うつ作用がある。
 スルトプリド塩酸塩バルネチール幻覚、妄想、興奮に対して強く作用する。
 ネモナプリドエミレース興奮を抑える作用がある。
 チアプリド塩酸塩グラマリール精神疾患に対する作用は弱い。脳梗塞の後遺症に伴う興奮や徘徊、せん妄およびジスキネジアの改善に用いる。
その他ゾデピンロドピンなど鎮静作用に優れ、錐体外路性の副作用は起こりにくい。
 ピモジドオーラップ統合失調症のほか、小児の自閉症症状や精神遅滞に伴う諸症状にも用いる。

インデックス
前のページへ 次のページへ

 

インデックス 次のトピック