統合失調症 疾患の詳細について-No.6

統合失調症の病型

 統合失調症の病気の現れ方は、人によってさまざまです。10人の患者さんがいれば、10人ともそれぞれ病気の現れ方が違うのが特徴的です。これが、同じ精神疾患である「うつ病」の場合は、10人いれば10人ともほぼ同じ症状・経過・転帰(病気が経過してほかの状態になること)をたどりますので、この違いからみても、統合失調症の診断や治療の難しさがここにあります。また、1人の患者さんに、すべての症状が現れるわけではありません。  統合失調症はこのところ軽症化してきており、急速に荒廃状態になるケースは少なく、軽症のまま推移したり、神経症と見分けがつかないようなケースもあります。そのため、病型(症状や経過、予後の特徴に基づいて分類したタイプ)についても、明確に分類することは難しいですが、これまでの伝統的な精神医学の中で分類された病型としては、「妄想型」「破瓜型」「緊張型」の3つが代表的なタイプです。このほかに「分類不能型」「統合失調症後抑うつ」「残遺型」「単純型」といったタイプもあります。病型によって、発病の時期や症状、予後が異なりますので、3つのタイプを中心に概略の説明をしておきます。

【妄想型】 

 妄想型は、幻覚(幻聴)や妄想を伴うことが多い陽性症状が中心の病気で、現在では世界の統合失調症の中で最も多い病型です。感情鈍麻や思考貧困はほとんど見られず、あっても軽度のものです。そのため、患者さんの中には、妄想以外は一見問題なさそうな人も見られます。発症時期は、他の病型より遅く18歳くらいで、中には30歳代の発症もみられます。妄想や幻覚には、抗精神病薬がほかの症状より効きやすいので、治療の面では進めやすいタイプです。  ただし、患者さんによっては、少量の薬物で症状が改善する人もいれば、治療しても長期間にわたって症状が継続する場合もあります。また、感情が不安定で怒りっぽい人や、思考障害のためにひとつの判断に固執する人など、生活行動に問題があるケースもまれではありません。長期的にみると、予後はさまざまですが、高年齢で発病した人ほど治療成績はよく、特に中年女性の場合は予後がよいとされています。この妄想型は、欧米で最も高頻度に出現しており、日本でも増えている病型です。

【破瓜型】 

 破瓜とは女性の16歳の称のことで、この頃を破瓜期ともいい、初めての月経が起こる15~16歳の思春期のことです。ただ、統合失調症の破瓜型は、もう少し年齢幅が広く、15~25歳の青年期に発病する病型で、男女を問いません。統合失調症は、人生でも前半の早い時期に発病する病気ですが、その中で破瓜型が最も早く発症し、10代前半から始まる病気です。アメリカ精神医学では、この破瓜型を「解体型」と呼んでいます。日本では最も多い病型ですが、最近は頻度が減っているといわれ、これには診断概念の変化が影響している可能性があると言われています。   破瓜型の症状は陰性症状を主体としており、思考の障害が中心です。妄想や幻覚も起こりますが、あまり顕著ではありません。目立つ症状といえば、性格が急に変わったように見えたり、身仕舞がだらしなくなったり、また奇妙な服装になったり、風呂に入りたがらないなど、生活行動に乱れが生じます。一般的には静かで表情に乏しく、時にはニコニコと笑い顔を見せる人もいますが、これは表情を消す空笑いです。  何をたずねても反応が少ないのが特徴ですが、感情が鈍っているのかと思うと、ささいなことに敏感すぎるほど反応を見せることもあります。普段は温和なのが、突然、激しい感情のほとばしりを見せることもあり、過敏と鈍感が一緒に存在している状態です。典型的な破瓜型の患者さんと接したとき、表面的な挨拶は交わせても、それ以上に互いの気持や感情を通じ合わせることは難しく、疎通性に乏しいと言えます。この人間的な接触の欠落こそ、統合失調症の特性でもあります。したがって、家に引きこもり、自閉的になりがちです。治療においては、興奮した時などは薬が有効ですが、一般に破瓜型は生活指導を早くから根気強く行う必要があります。3病型のなかでは、最も予後不良の病型です。

【緊張型】 

 破瓜型と並んで若年発症で、20歳前後で急激に発症します。妄想や幻覚はありますが、行動面の症状に隠れてわかりにくい面があります。妄想や幻覚の症状につづいて、また理由のわからない不眠などのあとに緊張病症状が現れます。緊張病症状というのは、興奮した状態と昏迷(意識はあるが無動・無言)した状態をいいます。緊張病症状には次のようなものがあります。

  • 興奮=叫び声をあげながら、壁にぶつかったり、戸を叩いたりします。時には暴力などがみられることもあります。
  • 昏迷=急に体を硬くして動かなくなったり、声をかけても返事をしない無言になったりします。意識は正常なのに、全く反応を示さない状態です。
  • 拒絶症=食事もとらず、風呂にも入ろうとしません。着替えをさせようとすると、強くて抵抗します。
  • 表情の変化=うつろな顔つきになって、急に眉をひそめたり、しかめっ面をしたり、また尖り顔をしたりします。
  • 硬直=全身を曲げたまま、あるいは伸ばしたままじっとしています。
  • 常同=体を前後にゆするなど、同じ動作を繰り返します。
  • 反響動作=目の前の相手と同じ動作をします。

 これらの症状がすべて起こるというわけではありません。主には、非常に興奮した状態(緊張病性興奮)か、または極端に動きがなくなる昏迷の状態のどちらかの症状が多いようです。また、興奮が昏迷に変わったり、昏迷が興奮に変わったりすることもあります。興奮や昏迷などの症状が現れている最中は、妄想や幻覚などはありませんが、普通はこの緊張型の前後に、妄想型や破瓜型の症状が認められます。また、感情的ストレスの後に、急に緊張病症状が発現する場合もありますので、注意が必要です。  緊張型は薬がよく効いて、症状は比較的すみやかに消失し、正常な状態に戻ることが多いです。時には、症状の悪化が繰り返され、周期性の経過をたどる場合もありますが、普通、症状が消えているときは、それほど重篤な障害は残らず、ほぼ完全に治ります。緊張型の予後は、比較的よいとされています。

【その他の病型】 

《分類不能型》
上記の3病型(妄想型、破瓜型、緊張型)のいずれにも属さない病型で、症状が重なっていたり、また十分に強く出ていなかったりした時に診断されます。当初は3病型のいずれかに診断されていても、時間の経過とともにこの分類不能型に診断されることが多くなっています。また、統合失調症の軽症化もこの病型を増やしている一因となっています。
《統合失調症後抑うつ》
急性期の症状が改善したあとも、うつ病症状が持続する病型です。急性期で、入院治療を受けた患者さんの4分の1に生じています。 
《残遺型》
診断基準に示されているような著明な症状はないが、何らかの陰性症状が長期間持続した場合です。長期経過後は、この型に分類されることが多いです。
《単純型》
陰性症状のみを呈する病型です。アメリカ精神医学会のDSM-Ⅳ-TRでは、この病型は、今後の研究のために提案された基準案に含まれているものです。非常にまれにしか出現しない病型で、実際、経過中に陽性症状がなかったことを証明することは困難といわれています。



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