統合失調症 疾患の詳細について-No.4

統合失調症/Schizophrenia
②「消耗期」の症状と対応
子どもっぽくなり、よく眠る

 急性期に、心と体のエネルギーを使い果たし、興奮が鎮まってくると極端に活動性が低下してきて、今度は足りなくなったエネルギーをためるための消耗期に移行します。消耗期になると、患者さんはぼんやりしてよく眠るようになります。これは、急性期の激しい症状がおさまるにつれて、エネルギーが失われた状態の症状と言えます。この消耗期は、使い果たしたエネルギーを蓄え、充電する期間です。したがって、神経を休め、回復を促すために睡眠は欠かせませんが、よく眠るのはそれだけ神経が疲れているサインでもあります。朝寝でも昼寝でも、よく眠らせてあげることが必要です。  また、消耗期の症状では、態度が子どもっぽくなることがあります。甘えん坊になり、家族のそばにいたがったり、周囲の人にまとわりついたり、一緒に寝たがったり、煩わしく感じるほど子どもっぽくなります。また、食事時間以外にも甘いものをたくさん食べ、子どもに戻ったようになりますが、甘いものを食べたがる原因としては、薬の副作用が関係している場合がしばしばあります。消耗期の症状をまとめると、①寝てばかりいる、②感情の起伏が乏しい、③疲れやすい、④口数が少ない、⑤子どもっぽい感じになる、⑥外出しようとしない、⑦物事を進んでしようとしない、などですが、これらの症状はずっと続くものではありません。これはエネルギーが不足したための一時的な状態と考えられ、エネルギーの充電が進むにつれて、患者さんの状態は、薄皮をはぐように変わってきます。消耗期のポイントを挙げると、次の3点です。

1.患者さんのペースに合わせる
自分から何かを進んでやろうという意欲がなく、言われたことをゆっくりやってようやく出来る状態を見ていると、周囲の人はイライラしてしまいます。その患者さんの無気力な様子や、子どもじみた振る舞いをみると、「しっかりしろ!」と言いたくなりますが、ここは我慢して患者さんに付き合うことが大事です。患者さんのペースを尊重し、周囲の人はそのペースに合わせることが必要になります。

2.夜間の睡眠をチェックする
睡眠時間を多くとることは重要ですが、特に夜眠れているかが非常に重要です。昼によく眠っていても、夜に眠れないと良い睡眠にはなっていません。夜眠れているかチェックし、夜眠れていないようなら、昼間寝ているとき一度起こすなりして、生活のリズムを整えてあげることが必要です。また薬の使い方を変える必要もありますので、医師に相談してみましょう。

3.睡眠の質を回復の目安にする
睡眠時間が長いからといって、良い睡眠とは限りません。患者さんが「よく眠れた」「ぐっすり眠れた」と感じるようになれば、回復は順調と考えられます。

消耗期の患者さんの気持

 消耗期の患者さんは、何かしたいと思っても意欲がわかず、思うように体が動かない自分を歯がゆく思い、不安や焦りを抱えているものです。そんな時、患者さんはどんなことを感じているのか、また家族や周囲の人にどんなことを望んでいるのか、多い順に具体的に挙げると次のような点です。

  • ①もっと私の気持をわかってほしい。
  • ②口やかましく指示しないでほしい。
  • ③傷つけるような言動をしないでほしい。
  • ④人間として、大人として認めてほしい。
  • ⑤信頼してほしい。
  • ⑥世間体を気にしないでほしい。
  • ⑦私をそっとしておいてほしい。

 しかし、周囲から見ていると、このような患者さんの気持や思いは、なかなか理解しがたいものがあります。「こんなにダラダラしていて大丈夫だろうか?」と心配になり、イライラしてきます。悪気はなくても、心配のあまり患者さんをかまいすぎたり、叱咤激励したり、つい批判的な言葉を投げかけたりしてしまうことがあります。また、患者さんを守らなければと思うあまり、子ども扱いをしたり、気持を代弁したり、世話を焼き過ぎたりすることがありますが、この時期はこうした言動は禁物です。かえって、患者さんを傷つけることになります。大切なことは「待ってあげる」こと。あせらず、見守ってあげることです。  疲れ果てた神経が、元のように元気を取り戻すには、しばらく長い時間を要します。消耗期、そして次にくる回復期を経て本調子に戻るのには、患者さんにもよりますが、大体2~3年はかかるものと思われます。その間は、患者さんのペースを尊重し、少々のことは大目にみてあげることです。患者さんは何もしていないように見えても、体の中ではメンテナンスの最中です。患者さんは疲れやすく、集中できず、気持が落ち込むなどの症状に悩まされながらも、懸命にエネルギーを蓄え、充電しようとしています。「ゆっくり、休んでも大丈夫だよ」と、周囲の人から安心感を与えられる言葉が、患者さんにとっては何よりも治療の助けとなるのです。ここで、患者さんに対して、周囲の人が気をつけたい言葉を挙げておきます。

  • ①「いつまでダラダラしているの!」
  • ②「こんなことも出来ないの!」
  • ③「ちょっと手伝ったらどうなの!」
  • ④「心配で見ていられないわ!」
  • ⑤「大丈夫?本当にできるの!」
  • ⑥「私がやるから、あなた何もしなくていいわよ!」
  • ⑧「情けない!」
  • ⑨「いい子ね、きれいにしてね」(子供扱いしない)

 また、年齢や学歴、経歴など型にはめた言い方も本人を苦しめることになります。たとえ、それが正論であっても、患者さんの前では言葉にしないことです。ある程度の年齢になったら仕事をして当たり前、家にいたら家事をして当たり前で、以前の自分だったら当たり前のことが、普通に出来ていたのです。しかし、気力が低下してやりたくても、今は出来ないのです。そのジレンマをかかえている患者さんに、「当たり前」の言葉が発せられると心に刺さるのです。たとえば、次のような言葉が、患者さんを苦しめるのです。

  • ①「いい年をした大人が…」
  • ②「大学まで出たのに…」
  • ③「どうして働かないの?」
  • ④「家がお金持ちなの?」
  • ⑤「家事くらいしなさい」
  • ⑥「働かざる者は、食うべからず」

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