統合失調症 疾患の詳細について-No.3

症状の背景にあるもの

 患者さんはなぜそのような妄想を抱くのか、それはどのような気持の動きによるものか、その背景を知ることは、患者さんの気持に寄り添ううえで重要なことです。たとえば、自分の家の向い側に見慣れない車が停まっていたとします。普通の人であれば、向いの家の知人が遊びに来たのかもしれない、近所に用事があって誰かが来たのかもしれない、と自分の経験や社会的な常識で考えて推測します。ところが、統合失調症になると、思考の柔軟性が失われるため、目の前の情報をうまく組み立てたり、処理することが難しくなります。つまり、総合的な判断が出来なくなります。しかも、一度思い込むと軌道修正ができなくなります。この背景には、強い不安感と神経の過敏さが深く関係しています。   神経がオーバーヒートしますと、身の回りで起きる沢山の情報が整理できなくなって、それが強い不安や焦りとなって心に充満してきます。自分の不安感の現因は何か、なぜこのような不快な思いを自分はするのか、その理由を探し、自分なりにストーリーを作り出すのです。しかし、そのストーリーを論理立てて組み立てることが出来ないために、「自分は狙われている」「自分は重要な秘密を握っている」と、現実離れした内容になってしまうのです。これが、妄想の本質ともいえるでしょう。したがって、急性期の患者さんは、自分の周囲で起こるすべてのことが、自分と何かしら関係があると思い込みます。それも、自分に良くない事柄として考えるのです。道で、知らない人とすれ違っただけでも、「あの人は自分の様子を見に来た」と思い込みます。  こうして、絶えず危険にさらされているという思い込みから、学校や会社の友達に対しても、皆敵だと思い込みます。妄想を否定する人は、すべて敵に見えます。こうして、周囲の人を疑うようになると、家族に対しても、親しくしていた友達に対してもつっけんどんになったり、突っかかったりするようになります。そして自分の身を守るために、他人との接触を拒み、避けるようになって、自分の部屋に引きこもったり、布団の中に閉じこもったりします。

刺激となる情報を遮断し、静かな環境をつくる

 過敏になっている神経を鎮めるには、医療機関での治療をうけるとともに、神経を刺激するもとを断つことが大切です。興奮が激しい時期は、身の周りのものすべてが刺激となります。受け取る情報が多いと、自分で処理できなくなり、それが不安を増幅させますので、できるだけ静かに過ごせる環境をつくってあげることが重要です。そのポイントをまとめると、以下の点です。

  • 1.外出は出来るだけ控える
  • 人込みへの外出は、患者さんにとっては神経が疲れるもとです。まったく関係ない他人同士の会話や視線が、患者さんにとっては大きな刺激となります。どうしても外出しなければならない時は、他の人が付き添って出かけるのが一番でしょう。
  • 2.テレビやラジオは出来るだけ遠ざける
  • テレビやラジオの音や映像も、患者さんにとっては刺激のもとです。できるだけつけないように気を配ることです。ただし、患者さんが楽しんでいる時は、無理に止めさせる必要はありません。
  • 3.会話はゆっくり簡潔に
  • 集中力を保つことができない患者さんにとっては、込み入った話は負担になります。伝えたいことがあったら、一つずつ、しかも簡単に伝えましょう。また会話は、ゆっくり、わかりやすく話すように心がけましょう。
  • 4.光や音は少なめに
  • 外からの強い光は、カーテンをかけて遮光し、あまり部屋を明るくしないことです。また、音楽などを聞くときは、音量を下げて静かに聞くようにするだけで、患者さんへの刺激はかなり少なくなります。
  • 5.できるだけ眠れる環境を整える

 睡眠は、興奮した神経を鎮めるうえで最も効果があります。患者さんは、普段良質の睡眠がなかなかとれない状態にあります。眠れる環境を整えてあげることが大切です。

治療を受けるきっかけ

 多くの患者さんは、家族や医師の説明を聞いて治療を受け始めますが、医師から適切な説明が行われなかった時は、服薬を嫌がったり、治療を拒否したりする場合もあります。人によって治療を始める過程はさまざまで、治療方法も違います。治療は、入院して治療を受ける場合と、自宅で療養しながら通院治療する場合の二つがありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。

◇入院治療(興奮が激しく、自分や他人を傷つけるリスクが高い場合は、入院して治療を受けます)
〈メリット〉…入院治療のメリットは、リスクを減らして、迅速な対応ができることです。急性期の患者さんは、発症直後は症状が激しく、強い不安や恐怖のなかで、自傷行為や暴力などのリスクが高いことが多いです。このような時は、家族だけでは対応するのが難しく、入院治療した方がスムーズに治療を受けられ、安心できます。

〈デメリット〉…デメリットは、自由行動が制限されることです。これは医療機関にもよりますが、統合失調症の治療は、閉鎖病棟で行われる場合があります。すると、外出が制限されたり、自由に行動することが出来なくなったりします。したがって、不便を感じたり、不愉快な思いをすることがあります。

◇自宅療養(外来での治療を受けながら、自宅で休養をとり薬を飲んで治療します)
〈メリット〉…生活している場所が変わらないまま治療できるので、患者さんにかかるストレスは少なくて済みます。

〈デメリット〉…服薬管理が難しいことです。飲み薬で治療する場合、本人が納得していないと、服薬を拒む場合があります。したがって定期的に薬を飲まないために、治療の効果が現れにくいことがあります。

 入院治療であっても、自宅療養であっても、統合失調症の治療の基本は薬の服用です。しかし、発症して間もない頃は、自分では違和感を感じていても、統合失調症だとは思っていないことが多いのです。したがって、病院へ行くのを嫌がったり、薬をのむのを拒んだりすることが時々見られます。そんな場合でも、医師や家族は「今の状態は、神経が疲れ果てて敏感になりすぎている状態だと思う。だから、薬を飲んで疲れをとれば、元気になり楽になれるよ」と、粘り強く伝えることが治療導入につながります。特に家族は時間をかけて、真剣に向き合えば、患者さんの心を動かすことはできると思います。  また、患者さんも家族も、薬についてよく知ることも大事な点です。急性期は睡眠を十分に確保し、症状をすみやかに鎮めるために、薬の量が比較的多くなります。そのため、眠気やだるさを感じることがよくあります。しかし、発症直後は本人も家族も薬の知識はほとんどなく、薬について疑問や不安を感じることが少なくありません。薬の説明書をよく読んだり、医師・看護師・薬剤師などに聞いて、薬への疑問を解消しておくことが必要です。本人はもちろん、家族も薬に対して抵抗を感じていたり不安をもっていたりすると、薬を飲み続けることが困難になり、治療がスムーズに行われなくなります。


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