統合失調症 疾患の詳細について-No.2

統合失調症の3つのステージ

 統合失調症は、時間の経過とともに症状が変化していくのが特徴的です。病気は大きく分けると、「急性期」「消耗期」「回復期」の3つステージを経ていきます。急性期は、精神的な興奮が激しく、幻聴・幻覚・妄想などの症状が現れる時期です。患者さんを周囲で見ていると、その症状の特殊さや現れ方に驚くほどです。けれども、それは最初のうちだけでやがて精神的に落ち込み、身体的な活動性もグッと少なくなくなる消耗期に入ります。消耗期は、急性期にエネルギーを使い切った結果、症状は収まったものの、元気が出ない状態になります。その後、長い時間をかけて、精神的にも肉体的にも、徐々にエネルギーが戻ってきて回復期へと移行します。回復期は、ゆっくり体を休める充電期間です。エネルギーが戻ってくると、少しずつ活動の範囲が広がり、その内容も増えてきます。  エネルギーとは、精神的、身体的な発散量のことで、このエネルギーが高いと精神的に興奮してきて、落ち着きなく動き回るなどの状態になります。逆にエネルギーが低くなると、感情の起伏がなくなり、ぼんやりしていたり、寝てばかりいるような状態になります。このように、統合失調症は病気の状態が少しずつ変わっていくのが特徴で、最初は激しい興奮状態ですが、それは最初のうちだけで、やがて変化のスピードがゆっくりとなり、少しずつ改善に向かうようになります。

前駆症状の特徴

 発病する前は、それが病気なのか、そうでないのか、よくわからない曖昧な時期がありますが、これを前駆期といいます。統合失調症の前駆期の特徴は、一見すると「ひきこもり」や「うつ」のように見えることが多いです。この症状はある一定の割合で、統合失調症の前駆期に含まれているので、特に発症しやすい20歳前後の人に「ひきこもり」や「うつ」が見られた場合は、注意する必要があります。統合失調症になれば、幻聴や妄想の症状がはっきり現れますが、前駆期でははっきりしません。しかし、よく観察すれば、統合失調症の兆しが見られます。たとえば、人を怖がったり避けたりするようになります。また物音に敏感になりますし、学校や職場や地域でいじめられている、疎外されていると訴えたりします。不眠も見られます。幻聴についても、必ずしも「声が聞こえる」と本人が言わなくても、何かに聞き入っている様子や、独り言を言っている様子が見られる場合には、幻聴の兆しとも考えられます。  また、統合失調症のはじまりは、脳内の変調のはじまりでもあります。脳内で変化が起こると、表情がそれまでと違ってきて、硬い表情になったりします。本人は、自分の心の中に起きている変化に戸惑っているためか、不安や緊張感を現わし、これから何か起こりそうな緊迫感を漂わせていますので、こうした変化を家族や周囲の人は感じとることができます。しかし、こうした状態を統合失調症とは気付かずに、放置してしまうと、病気は進行して急性期へ移行してしまいます。前駆期から急性期への移行は、何日も何カ月もかかって徐々に進むこともあれば、ある日突然激しい症状が出ることもあります。興奮状態になったり、自分や他人に攻撃が向くこともあります。

①「急性期」の症状と対応
2種類の症状

 急性期には、妄想や幻覚などいろいろな症状が現れます。急性期に現れる症状を分けると主に2通りあって、一つは神経の興奮から起こる「陽性症状」と、もう一つはエネルギーが低下して起こる「陰性症状」です。統合失調症にはいくつかのタイプがありますが、急性期に陽性症状を起こすタイプのほうが多く見られます。陽性症状の主な症状は、妄想、幻覚や幻聴です。妄想は、危険にさらされていると思い込み、強い不安や敵意を抱きます。「自分はやくざなどに狙われている」「スパイにつけ狙われている」「自分の行動はすべて監視されている」など、あり得ないことを思い込みます。幻覚や幻聴は、あるはずのない声が聞こえ、命令されたり監視されたりします。「死んでしまえ」など自分を脅す内容の声が聞こえ、実際に痛みなどを感じる場合もあります。このほか、誰かに操られているような感覚を抱いたり、集中力が続かず、ものの見方や考え方に一貫性がなくなったりします。このように陽性症状は、神経が興奮して過敏になるために起こる症状です。イライラして怒りっぽくなるなど、身体的、精神的に活発になるため、周囲に気づかれやすいのも特徴です。  一方、陰性症状は意欲の低下や無気力、感情の起伏がなくなり、自分の殻に閉じこもってひきこもり、うつ状態になります。精神的にも身体的にも、エネルギーが下がるような症状の現れ方をします。たとえ妄想があっても、それを表現しないため、周りにはわかりにくい状態です。

言動を否定しない

 幻聴や妄想の内容は、周囲の人にとっては非現実的ですが、患者さん本人にとっては現実の問題です。自分で否定し、打ち消そうとしても出来ないのです。起こっている事実に追い詰められ、強い緊張や不安をかかえているのに、周囲の人にはわかってもらえない、受け入れてくれない、と孤独に陥ってしまいます。たとえば、患者さんが「家の前に停まっている黒い車は、私を監視するために停まっている」と言えば、家族の者は「そんなわけないでしょう。なんでそんな風に考えるの!」「バカなこと言わないで!」と、つい言ってしまいます。そう言えば言うほど、自分の行動は全部監視されている、と患者さんは主張し続けます。そんなことは誤りだと、いくら論理立てて説明し、説得したとしても、患者さんは自分なりに筋道をたてて納得しているので、受け入れようとしません。  この患者さんの思い込みや妄想の背景には、強い不安感があります。こんな時、最も大切なことは、頭ごなしに否定したり、説得しないことです。まずは、患者さんの言い分をそのまま受け止め、共感してあげることです。「そう、それは不安でしょう。でも、ここにいれば絶対に大丈夫」「私たちはあなたの味方。守ってあげるから、ゆっくり休んで」と声をかけてあげれば、患者さんは何よりの助けとなるのです。また、話を聞く際には、「そうなの? どんなことがあるの?」といったように、妄想を具体的に説明させるような質問は、控えたほうがよいでしょう。説明させることで、かえって不安を煽ることにもなります。  確かに家族や周囲の人からすれば、発症直後の本人の言動は、あまりにも突飛なので、すぐには受け入れ難いものがあります。また、統合失調症という病気に対する知識もないので、戸惑うのも当然です。何よりも、この病気は身体的な不調として現れないため、その症状が病気とは思えないところが、統合失調症の特徴であり、難しさでもあります。    


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